挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

67/220

合理的


 翌朝、俺はベイルの冒険者ギルドに向かった。
 ロクサーヌは洗濯、セリーは朝食を作っている。

 ペルマスクは、クーラタルから見て帝都の向こう側にあるということだから、帝都より東、帝都の東にあるベイルよりもさらに向こうにあるのだろう。
 とりあえずベイルから東に飛んでみたい。
 東に行けば時間が早まるから、朝がいい。
 セリーに書いてもらった帝都からペルマスクに至る都市名のメモを冒険者ギルドの壁の張り紙と見比べる。

 冒険者ギルドには、駐留する冒険者がいて、他の場所に飛ばしてくれる。
 値段は基本的に一人銀貨二枚だ。
 だから、字の読めるロクサーヌやセリーは連れてこず、俺一人である。

 冒険者ギルドからどこの都市に飛べるかは、張り紙に書いて貼ってある。
 特別に頼んだり他の冒険者に依頼することもできるらしいが、特別に頼めば高くなる。
 ペルマスクは遠いらしいので、無理かもしれないし、注目を集めてしまうかもしれない。
 どうしても急ぐというわけではないのだから、地道に進めばいいだろう。

 張り紙を見ると、ドホナという都市があった。
 昨日聞いたような気がする都市だ。

「ドホナまで頼めるか」

 ベイルの冒険者ギルドにいる女性の冒険者に話しかける。


 次にドホナの冒険者ギルドで張り紙を見た。
 ここが本当にドホナの冒険者ギルドかどうかは来たことがないので分からないが、ギルドに駐留する冒険者が変な場所に連れてくることはないだろうから、ドホナの冒険者ギルドだろう。
 セリーによればドホナの次はドブローだが、その名前はない。
 メモに書いてある他の都市名もなかった。

「ドブローに行きたいのだが、ここはドホナの冒険者ギルドだよな」

 駐留するおっさんの冒険者に訊く。

「そうだ。しかしドブローは遠い」
「遠いのか」
「銀貨二枚で行ける距離ではないな。俺は行ったことがあるから連れて行ってはやれるが。銀貨八枚でどうだ」

 どうやら、張り紙に書いてあるのは近場の都市だけらしい。
 それ以外は応相談ということか。
 銀貨八枚だと、四回乗り継ぐ値段になる。

「八枚か」
「銀貨二枚だとドブローに一番近くまで行けるのはシュポワールの町だな。だがシュポワールに行っても、次にドブローまで飛べるかどうかは分からんぞ」

 いうことはもっともだ。
 もっともではある。
 しかし、なんか足元を見られているような。
 この世界では普通の商行為なんだろうか。

「もしシュポワールからドブローに飛べれば、銀貨四枚ですむ」
「それもそうだな。では六枚でどうだ」
「むむむ」

 確かに、フィールドウォークの消費MPが距離に応じて変わるのなら、遠い場所に簡単に連れて行くわけにはいかないだろう。
 MPを使い切ってしまえば疲労回復薬が必要になるかもしれない。
 割増料金というのも分からなくはないのか。

「しょうがねえな。では銀貨五枚で連れて行ってやろう。これ以上は安くできんぞ」

 悩んでいると、おっさんはどんどん値段を下げてきた。
 シュポワールからドブローに行けない可能性もある。
 銀貨五枚ならしょうがないか。

「では、銀貨五枚でドブローまで頼む」
「まいど」

 おっさんが笑った。
 イケメンならともかく、おっさんが笑っても不気味なだけだ。

 くそっ。
 最初から銀貨五枚で飛ばしやがれ。
 やはり納得いかん。

 ドブローの冒険者ギルドに着くと、おっさんは「ドホナの町まで片道銀貨三枚だ」と言って客を呼んでから、帰っていった。
 誰も名乗り出なかったが。
 単にがめついだけか。
 ざまあみやがれ。

 ちなみに、ドブローの冒険者ギルドからシュポワールまでは銀貨二枚でちゃんと行けるらしい。
 ドブローからドホナまでは乗り継いで銀貨四枚。
 片道三枚ならそれよりは安いことになる。

 あのおっさんはそれを分かっていたのだ。
 乗り継ぐ手間もあるから、銀貨五枚というのは多分無茶ではない。
 最初から銀貨五枚が相場であり、おっさんはそれを隠して吹っかけてきたのだろう。
 八枚はぼりすぎだ。

 ドブローの冒険者ギルドからは家に帰る。
 無駄な値段交渉で時間を取ったし、朝食を待たせても悪い。
 ドブローは銀貨二枚で行ける距離ではないらしいし、一度で帰れるか確認する必要もあるだろう。

 ドブローから家に帰ったとき、MPは少し減った気がした。
 フィールドウォークだけでなく、確かにワープも距離に応じて消費MPが変わるようだ。
 それほど減った感じでもないのは、ワープの方がフィールドウォークよりもMP効率がいいのか、魔法使いを兼任している俺のMP保有量が多いのか、他の冒険者の消費MPも実際のところ俺と同じ程度なのか。
 俺はフィールドウォークを持っていないから確かめようがない。

 冒険者ギルドに駐留していれば休む暇もなく客が来ることもあるだろう。
 MPが減って回復薬が必要になるようでは商売にならない。
 銀貨二枚で行ける距離はそれほど遠くではないのかもしれない。


 翌朝は、さらに進んでから家に帰った。
 MPも昨日より減った気がする。
 行程的には全体の半分以上進んだだろうか。
 ペルマスクまで行けなくもなさそうか。

 帰ってから、セリーに皮の靴を作ってもらう。
 これで昨日から、皮のミトン、皮の帽子、皮の靴と完全制覇だ。
 鍛冶師に関して教えてくれた人に対するセリーの信用がさらに下がったような気がしたが、もう知ったことではない。

「皮の靴の次に鍛冶師が作るものは何だ?」
「棍棒になります」
「棍棒か」

 セリーがいま現在使っている武器だ。
 ついにセリーの技術が追いついてきた。
 棍棒までスキルで作るのか。

「ただし、棍棒を作るにはラブシュラブが落とす板が素材として必要です」
「板?」
「もっと上の方にいる魔物が残すアイテムです」

 なるほど。そんな罠が。
 鍛冶師の腕が上がっていけば、いい装備品を作れるようになる。
 そこまではいい。

 しかし、いい装備品とはいい素材を使った装備品だ。
 安い素材を使っていては限界がある。
 そしていい素材とは、より強い魔物が残すドロップアイテムである。

 魔物が残すアイテムは、元々魔物の体の一部だったものだ。
 鋼鉄だのオリハルコンだのを弱い魔物が落とすわけもない。
 オリハルコンを残す魔物は、体のどこかがオリハルコンでできている。
 当然強いわけだ。

「こういう場合はどうすればいいんだ。買うのか」
「えっと。ラブシュラブを狩れるようになるまでは、皮の装備品を作って売るのが一般的なはずです」
「そういうもんか」
「素材を購入すると儲けが減ってしまいます。依頼でもなければ、無理に作ることはないと思います。棍棒の次にまだ皮だけで作れる装備品もありますが、私に作れるかどうかも分かりません。皮の装備品をたくさん作れば、修行にもなるし、結局一緒のことです」

 ミサンガよりダガーを作る方がMPを消費したように、同じ皮製品でも複雑なものは簡単なものより消費MP量が多いだろう。
 簡単なものを多く作れば、複雑なものを少なく作るのと結局儲けはそれほど変わらない。
 難しいものは作れる人が減るから多少は高くなるだろうが、無理をすることもないか。

「分かった。じゃあしばらくは皮のミトンと皮の帽子と皮の靴で」
「はい。それと、今は九階層で狩を行っています。九階層での狩を重視するなら、ミノが九階層で出てくる迷宮に行くという方法もあります」

 そういうやり方もあるのか。
 九階層でミノを狩れば、九階層での戦いにも慣れ、素材も集まって一石二鳥だ。

「うーん。まあそこまですることもないだろう」

 皮はミノの通常ドロップだから、集めるのにそれほど苦労することはない。
 ベイルの迷宮九階層のスローラビットは倍額で売れる兎の皮を落とすから、効率もいいし。
 スローラビットのボスのラピッドラビットとはあまり戦いたくないという気はするが、だからこそ逃げるべきではないだろう。
 苦手な魔物を作ることはよくない。

「分かりました」
「それより、板を残す魔物が九階層で出てくる迷宮はないのか」
「えっと。ラブシュラブは最低でも十二階層から出てくる魔物です。一階層から十一階層で出てくる魔物はどの迷宮でも同じになります。十二階層から二十二階層で出てくる魔物も同じです」

 そうだったのか。
 初めて知った。

 コボルトやミノやスローラビットは、一階層から十一階層の間で出てくる魔物ということなのだろう。
 確かに、クーラタルでもベイルでもそうなっている。
 ラブシュラブは十二階層から二十二階層の間で出てくるらしい。

「じゃあ十二階層にラブシュラブが出てくる迷宮を探してもらうかもしれん」

 とりあえず、次の装備品を作ることはここで一段落だ。
 相場が変わってしまうほど大量に作ることもないだろうし、しばらくは皮の装備品を作ってもらえばいいだろう。


 その日の午後の探索は早めに打ち切った。
 今日はセリーがうちに来てちょうど十日後。
 セリーのメイド服ができる約束の日だ。

「今日は少し早いのですね。お風呂をお入れになるのですか?」

 家に着くと、ロクサーヌが期待のこもった目で尋ねてきた。
 いや。確かに期待のこもった目だろう。
 風呂を気に入ってくれたようで、何よりだ。
 残念ながら、風呂ではないのだが。

「悪いな。風呂ではないのだ。ベイルの商館に行く」
「商館ですか。仲間が増えるのですか?」

 ちょっと期待のこもらない目で訊いてきた。
 いや。確かにそんな気がする。
 多分さっきとは温度差があるだろう。
 こっちがそう思っているだけかもしれないが。

「残念ながらそれでもない。まだお金も足りないしな。もちろん、パーティーメンバーはいずれ増やすつもりでいる。戦力の充実を図るのは当然だからな。二人ともそのつもりでいるように」
「はい。もちろんです」
「かしこまりました」

 こういうことはあらかじめそうなると宣言しておいた方がいい。
 常に言い聞かせておくくらいでちょうどいいだろう。

 もちろん、パーティーメンバーを増やす目的は戦力の充実だ。
 それ以外にやましい目的はない。
 ちょっとしか。

「目的はあくまで戦力の拡充だ。ロクサーヌやセリーとうまくやっていけない者を入れるつもりはない。その点は安心していいぞ」
「はい」

 二人に手を出す危険性のある男の奴隷など論外だ。
 パーティーメンバーに入れるつもりはもはや微塵もない。
 ジジババも駄目だ。
 戦力の充実というからには、若い人がいいだろう。

 そして、なるべくなら俺のやる気が高まるメンバーがいい。
 士気というのも戦力の重要な構成要素だ。
 若い女性、できる限り美しい女性がいいだろう。
 俺のやる気が異なる。

 戦力の充実というただ一つの目的から、このように結論づけられた。
 戦力の充実というただ一つの目的からいって当然の選択だ。
 戦力の充実を図るにはこの結論のとおりに進むべきだろう。
 戦力の充実を図る以上、しょうがない。

 うん。
 しょうがないな。

「それはそれとして、今日行くのは別の理由だ。服を取りに行く。後は遺言かな。ロクサーヌに対する遺言は、変更なしでいいか?」
「はい。もちろんです」

 ロクサーヌは自信たっぷりにうなずいた。
 ロクサーヌがそれがいいというのならいいだろう。

「セリーもよくがんばってくれるしな。セリーは遺言によって俺が死んだら解放されるようにしてこようと思う」
「私はまだお世話になり始めたばかりですが、よろしいのですか」
「問題ない」
「ありがとうございます」

 戦闘以外で死ぬ可能性もあるから、一蓮托生にするメリットはあまりない。
 セリーを俺の死後解放するように遺言したとして、デメリットもそれほどはないだろう。

「まあ遺言したからといって、寝ているときにベッドでいきなり刺してきたりはしないだろう」
「家の中で主人が殺されれば、生き残った奴隷が真っ先に疑われます。やるのなら迷宮ではないでしょうか」
「こ、怖いな」
「いえ、私はもちろんやりませんが」

 セリーが冷徹に告げる。
 迷宮なら死体処理に悩むことはないのか。
 魔物にやられたと主張すれば、詮索もそれほどないかもしれない。
 確かに殺るのなら迷宮だ。

 しかし、迷宮に入るときにはロクサーヌもいる。
 セリーもそう無茶はできない。

「セリーのことは信用している」
「信用に報いられるようにがんばります。ロクサーヌさんも、もう解放という遺言になっているのですか」
「いや」
「私はご主人様がお亡くなりになっても解放されません」

 ロクサーヌが自ら言明した。
 俺が話すよりはいいだろう。
 俺が説明すると、強制したかのように捉えられかねない。

「そうなのですか?」
「ご主人様をお守りするのが私の役目です。何があっても、身を挺してでもご主人様をお守りしなければなりません。だから解放される理由はないのです。ご主人様が亡くなられるときは私の任務が失敗したときです。後を追うのも当然です。それに、ご主人様のいない世界で生きていたいとも思いません」

 改めて聞くとすごい理屈だ。
 ありがたいことはありがたいが。

「えっと」
「ロクサーヌの思い入れだ。ロクサーヌが強く主張するのでそうしているが、セリーまでがまねをする必要はないぞ。俺が病気や事故で死ぬ可能性もある。そのときセリーを巻き添えにするのはしのびない」

 なんか嫌な空気だ。
 特攻隊員の応募を期待している雰囲気というか。
 ここで、私は解放してくれとは言い出しにくいのではないだろうか。

 だから強めに説明した。
 セリーまでが後を追うことはない。

「奴隷を相続させるようなおかたはおられないのですよね」
「いないな」
「そうですね。それでは、私に対する遺言は解放することにしていただきたいと思います」

 おお。すごい。
 言い切った。
 さすがセリーだ。
 セリーは合理的だ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ