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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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窃盗


 目の前に並べられた盗賊たちの装備品。その中に、バンダナがある。

 違う。
 頭目が頭につけていた装備は、これではない。

 盗賊Lv41の男がつけていたのは、バンダナではなく、盗賊のバンダナだった。

 ただのバンダナと盗賊のバンダナ。
 バンダナを頭に装着すると、盗賊のバンダナになるとか。
 そんなわけはないよな。
 おそらくは別の装備品だ。

 では、このバンダナは何か……。

「このバンダナは何だ?」
「盗賊がつけていたものだと思いますが」

 商人には分からないようだ。
 村全体で仕組んでいるのではないということか。

 それならば、ここは強気で押してもいいか。

 ただのバンダナをつけた盗賊はいなかった。
 盗賊Lv41の男がつけていた盗賊のバンダナはここにはない。
 となれば、すり換えられたと考えるのが妥当だろう。

 現代日本ならば、俺は泣き寝入りするかもしれない。
 別に目立ちたくもないし、もめごとは嫌だ。
 しかしここは現代日本ではない。
 こっちの世界では、なめられたら終わりのような気もする。
 この世界にやってきて、村を守って盗賊を殺した(まあ村を守るためにやったわけではないが)。
 その仕打ちがこれではひどすぎるだろう。

 あるいは、思い違いか。
 いや。頭目がつけていたのは、確かに盗賊のバンダナだった。

「あの男がつけていたのは、盗賊のバンダナだ」
「そ、それは……」

 商人の顔が驚愕にゆがむ。
 商人は無実のようだ。よほど芝居が上手ければ別だが。

「××××××××××」
「××××××××××」

 そこへ、村長が戻ってきた。
 反応を見るに、村長もぐるではないようだ。

「まさか……。すぐに調べさせましょう。少々お待ちください」

 村長が足早に去っていく。

 さて、どうなるんだろう。

 本当のところ、俺は村人Lv2だ。
 あまり騒ぎが大きくなるのはよろしくない。

 盗まれた装備品がそんなに簡単に見つかるものなのか。
 ひょっとして村長がぐるだったら、村民全員でこちらに襲いかかってくるかもしれない。
 村民全員でかかってこられたら、俺では勝てないだろう。

 早まったか。
 とはいえ、盗まれて黙っているのも癪にさわる。
 こちらの世界では変な我慢はしない方がよいだろう。

 せめてデュランダルを準備しておくか。

 と思って周囲を確認すると、剣を三本持った女性が立っていた。

 元冒険者の人の剣か。

「あの剣が」

 商人に訊いてみる。

「さようでございます」
「見せてもらってもよいか」
「××××××××××」
「××××××××××」

 商人が何か言うと、女性が剣を差し出してきた。


ティリヒ 女 31歳
村人Lv12
装備 ほむらのレイピア


 元冒険者の未亡人だろうか。
 東欧の田舎にでもいそうな金髪の女性である。
 高校生の俺から見ればババアはババアだし、薄汚れた田舎のおばさんだが、悪くはない。

 外国の人は年齢がよく分からんしな。
 一生面倒を見ろ、と言われたら嫌だが、一夜を共にするくらいなら大歓迎だ。

 他の村人たちを見ても、この世界、美男美女ばかりというわけではないようだ。ゲームの中でないのなら、しょうがない。
 このおばさんでも十分美人の部類に入るだろう。

 正直、ちょっと食指が動く。
 一晩くらい是非お願いしたい。
 未亡人だしな。
 ありだな。

 俺の妄想が爆発する。

 こちとら村を救った英雄だ。
 お礼に今夜ゆきずりの関係を、とか迫ってこないものか。

 せめてここは親切にしておくか。
 剣を手に取って見る。


ほむらのレイピア 片手剣
スキル 火炎剣


「これはなかなかよい剣のようだ」
「さようでございますか」

 俺はほむらのレイピアをかまえた。

「火炎剣!」

 そのままレイピアを振り抜く。

 ……。

 何も起こらなかった。
 剣はただ振られただけだ。

 またやってしまった。

 ティリヒさんと商人が不審な目で俺を見ている。
 フラグが折れたな。

 しかし、振ってみたことで呪文が頭の中に浮かんだ。
 これを唱えるのか。

 この剣が火炎剣のスキルを持っていることは間違いない。
 スキルの名称からいって、斬りつけたときに火炎による追加効果があるのだろう。

「呼びかけたるは我が心、感じ現る剣の意思 奔流、火炎剣!」

 俺は呪文を口に唱え、レイピアを振る。
 すると、レイピアの周囲を炎がおおった。

 おおっ。
 すごいな。

「はぅ……」

 ティリヒさんも驚いた表情で見ている。
 あんたの旦那の剣じゃないのかよ。
 まあ、知っていたらわざわざ俺に鑑定させることもないか。

 視界の端っこでは、村長が村人と何か話していた。
 その村人も今のを見たようだ。驚いたような顔でこっちを見ている。
 他人の持ち物をくすねるとどうなるか。いいデモンストレーションになっただろう。

 俺も他人のサンダルブーツをくすねているのだが。

「××××××××××」
「××××××××××」

 商人とティリヒさんもなにやら話している。

 うーん。
 しかしなんか体が重いな。
 肉体的な疲れではなく、精神的な疲れ。
 ドッと疲れて、何をするのも億劫になる感じがする。

 あれか。
 スキルを使ったので、MPを消費したのか。
 多分魔力的なものが足りていない。
 村人Lv2では、連発は難しいのだろう。

「高く売れそうでございましょうか」

 商人が訊いてきた。

「どうかな。すまんが、相場にはあまり詳しくないんだ。どの程度の値がつくのか、まったく分からん」
「ミチオ様に買い取っていただくわけにはまいりませんでしょうか」
「本当に相場が分からんのだ。一度武器屋に見せて、値段を聞いた方がいい。もし武器屋にこの剣の価値が分からないようなら、俺が高く買ってもいい」

 相場どころか、通貨単位さえ知らないからな。

「××××××××××」
「××××××××××」

 商人が何を伝えると、ティリヒさんが俺に向かって頭を下げる。

 よいよい。
 その代わり、今夜はゆっくりと。
 た、たまらんッ。

 俺はほむらのレイピアをティリヒさんに手渡しして、次の剣を見た。


シミター 片手剣
スキル 空き 空き


 空きのスキルスロットが二つある。
 かなりいい剣だと考えた方がいいよな。

「スキルはないが、こちらもいい剣のようだ」
「亡くなった元冒険者が大切にしていたものだそうでございます」

 空きのスキルスロットがあることを知っていたのだろうか。
 冒険者の勘か。あるいは偶然か。

「相場が分からないので、これも一度武器屋に見せた方がいいな。武器屋が買い渋るようなら、少々色をつけて俺が買ってもいい」
「××××××××××」
「××××××××××」

 頭を下げるティリヒさんにシミターを渡す。


ダガー 片手剣


 最後の一本は、何の変哲もない剣のようだ。
 ただのダガーではな。
 あまり金にはならないだろう。

「これは普通のダガーのようだ。悪い剣ではないが、高くは売れぬであろう。この剣であれば女性にも使えよう。元冒険者の遺品として、大切に使ってあげてはどうかな」

 俺はダガーをティリヒさんに手渡した。

「××××××××××」

 商人から話を聞き、ティリヒさんの目が赤くなる。

 あれ。
 やばい。
 対応間違っただろうか。

 ティリヒさんは涙をこらえ、剣を持って帰っていった。
 最後に亭主のことを思い出させて、フラグがバキバキに折れたような気がする。

 こ、今夜待ってますよ、ティリヒさん。


 ティリヒさんが去ると、入れ替わりに村長が数人の男とやってきた。

「ミチオ様、申し訳ありませんでした。こちらの男が、バンダナをすり替えておりました」

 村長の後ろでうつむいている男には、木の手枷がはめられている。
 単独犯なのか。それともスケープゴートか。

「××××××××××」
「××××××××××」
「こちらが正しい遺留品でございます」

 村長が促すと、隣の男がバンダナを差し出した。


盗賊のバンダナ 頭装備


 スキルはないみたいだ。

「確かに。これで間違いない」
「それで、この男の処罰ですが……」

 村長が俺の表情をうかがうように問う。

 うん。まあ、いいたいことは分かった。
 つまりは罪を軽くしてくれということだろう。
 村の中で内々に処理すれば、大ごとにはならない。

「村には村の規定もあるであろう。俺としてはそちらの処罰に異議を唱えるつもりはない」

 これで完璧だろう。
 俺は空気の読める男だ。

「さ、さようでございますか」

 村長の目に軽い失望の色が浮かんだような気がする。

 あれ?
 また対応間違った?

「××××××××××」
「××××××××××」

 村長が犯人の男に何か告げた。
 犯人の手枷を持ち、目の前に引き上げる。

「滔々流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、インテリジェンスカード、オープン」

 村長が唱えると、犯人の左手の甲からカードが飛び出した。
 うおぉ。
 なんだ、あれ?
 すごいな。
 先ほど俺に渡された盗賊たちのインテリジェンスカードと同じものだ。
 どうなってるんだ?

 村長は、犯人のカードに何かつぶやいている。

「何をしたのだ?」
「この男のインテリジェンスカードに奴隷身分であることを書き込みました。これで、この男は解放されるかお金で買い戻されない限り、奴隷身分となります」
「分かった」

 いや、全然分かっていないが。
 とりあえず、インテリジェンスカードはその人についての大事な情報が書き込まれたものであるらしい。
 だからこそ、懸賞金のかけられた盗賊たちの身元証明にもなるのだろう。

「村の規定では、盗みがあったとき、家族の働き手が犯人である場合には、犯人を奴隷身分に落として売却し、売却額の半分を家族へ、残り半分を賠償金として被害者へ支払うことになっております」

 厳しいな。
 奴隷なんてのがあるんだ。

 なるほど理解できた。
 村長としては最初、俺に罪には問わない、と言ってほしかったのだろう。
 被害者である俺がよいと言えば、なかったことにできると。

 いまさら遅いが。

「初犯であるとも限らん。情けをかけるだけでは村人のためにもならんだろう」
「確かにおっしゃられるとおりでございます。申し訳ございません。村人が大変なご迷惑をおかけいたしました」
「犯人は捕まったのだ。村長が謝られることではない」
「ありがとうございます。装備品の検品は終わられましたでしょうか」
「ああ」
「それではわたくしの家にお越しください。そろそろ支度ができるころでございます。朝食を差し上げましょう」
「すまんな」

 話題を変えてくれるならありがたい。
 俺はとっととこの場から逃げ出すことにした。
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