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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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赤い彗星


 その日の夜は色魔のスキル精力増強の効果をテストできなかった。
 ロクサーヌが生理になったので。
 別に色魔はつけないでもセリーを余裕で何度も可愛がり、ロクサーヌとはたっぷりと口づけをかわしたから、不満はない。

 最後にロクサーヌと長いキスをして、ベッドの上に寝転がった。
 仰向けになって手足を伸ばしてから、改めてロクサーヌを抱き寄せる。

 そのままゆっくり息をしていると、セリーがベッドに入ってきた。
 ネグリジェを着なおしてきたのだろう。
 セリーが俺の隣で横になる。
 ややあって、セリーは小声でロクサーヌに話しかけた。

「おやすみになられましたか」
「そのようですね。ご主人様は寝つきがいいですから」

 そんなことはないといいたい。
 何かの雑誌に、女性を喜ばせるには前戯よりも後戯に力を入れるべしと書いてあった。
 だから毎回、終わった後はたっぷりとキスをして、こうしてロクサーヌを抱きしめている。
 そして気づくと朝まで抱きついて。

 あれ?
 反論できないかもしれない。
 ここは寝たことにしておくのが得策だ。

「そうみたいですね」
「セリーもおつかれさま。押しつけたみたいで、悪かったですね」
「いえ。あの、別に嫌というわけじゃないので」

 嫌じゃないのか。
 よかった。
 嫌いじゃないから好きまではあと一歩のところだ。

「そうですか。ふふ」
「きょ、今日はびっくりしました」

 ごまかしたな。
 セリーが話題を変える。

「そうですね。ご主人様があんなこともおできになるなんて。でも、セリーは本当に鍛冶師になったのですか」
「え? えっと。モンスターカードも融合しましたし、間違いないです」
「そうですか。そうですよね」

 信じてなかったのか。

「モンスターカード融合は失敗することも多いので、心配です」
「不安ですか?」
「はい、とても。いろいろ酷い話も聞いたので」

 やはりそこが問題になるようだ。

「そうですか」
「失敗が続くと、奴隷の鍛冶師は追い出されたりするそうです。体罰を加えられたり、転売されたり」

 体罰はしてみたいかもしれない。
 ほーれお仕置きだべぇ。

「大丈夫ですよ。ご主人様ですから」
「そうでしょうか」
「そうですよ」
「なんだか、すごいんだかすごくないんだか分からない人ですよね」

 俺のことか?

「すごいおかたですよ、ご主人様は」

 俺のことだ。
 ロクサーヌが頭だけ上に持ち上げた。
 セリーと顔をつき合わせる。
 これから昨日のように二人で話しをするのだろう。

 日中はたいがい俺と一緒だ。
 俺に気兼ねなく話せる機会は少ない。
 今日は洋品店で少し話せたはずだが、話し足りないのか。

 仲が悪いよりは仲良く会話でもしてくれた方がいい。
 女性同士の話もあるだろう。
 邪魔をするのは野暮というものだ。

 俺は一人、夢の中へ落ちていった。


 朝、ロクサーヌに抱きついた状態で目覚める。
 やはりロクサーヌは抱き枕として優秀だ。
 身体は柔らかで背中の毛は滑らかで、胸の弾力もある。
 抱き心地がすばらしい。

 足は伸ばして、反対側のセリーの足と絡んでいた。
 体半分ひねった少し不自然な体勢だ。
 違和感はないので、筋を痛めたりはしていないと思う。

 少し体を動かして状態を確認していると、ロクサーヌがキスしてきた。
 俺より遅くまで起きていたのに、俺より早く目覚めていたようだ。
 ロクサーヌはいつも俺より起きるのが早い。
 あるいは、目が覚めやすいたちなのか。

 ロクサーヌを強く抱き寄せ、口と胸の弾力を同時に味わった。
 舌を絡めとり、俺の口に誘い入れる。
 ロクサーヌの舌が積極的に動き、俺の口を蹂躙した。
 たっぷり堪能してから解放する。

「おはようございます、ご主人様」
「おはよう」
「あ、おはようございます」

 セリーも起きたようだ。
 左腕をロクサーヌから放し、セリーを抱き寄せた。

 セリーがキスしてくる。
 舌と舌を絡ませあった。
 昨日薬を口移しで飲ませてから、セリーの舌もやや積極的になったようだ。
 ゆっくりと動かし、セリーの口の中を蹂躙する。

「セリーもおはよう」

 存分に味わってから、口を放した。


 今日はクーラタルの迷宮も八階層に移動だ。
 装備を整えると、クーラタル迷宮七階層にワープする。

「スローラビットのボスはラピッドラビットになります。動きが早くて厄介な魔物です。魔法やスキル攻撃は避けられるので、あまり使わない方がいいでしょう。長期戦になりやすいので注意が必要です」

 途中、セリーからボスの情報を聞いた。

「三人で囲むのは難しそうか」
「そうかもしれません。私も槍で戦った方がいいと思います。槌を振り回しても、動きが大きすぎて多分避けられてしまうでしょう」

 一度、ボス部屋のあるところまで行き場所を確認する。
 攻略地図を見て、大体のめどはついていた。
 待機部屋をのぞいてみるが、誰もいない。
 長期戦になりやすいというので心配したが、早朝では人も多くないようだ。

「もう少しスローラビットを狩っておこう。今日は朝食の後、帝都に行く。ロクサーヌ、この辺りでスローラビットを探してくれ」
「かしこまりました」

 ロクサーヌがセリーに白のネグリジェを分けたので、買い足す必要がある。
 帝都の服屋に行って、ついでに兎の毛皮も売る。

 というのは半分建前で、実際にはセリーが鍛冶師Lv1なので怖いからだ。

「セリーは鍛冶師になったばかりだから、無理はしないように」
「はい」
「スローラビットに一撃でやられることはないと思うが、心配ならもっと下の階層に行くか」
「いいえ。大丈夫だと思います」

 俺がつけている英雄のジョブ効果であるHP中上昇や体力中上昇などがセリーに効いているはずだから、セリーの防御も紙ではないはずだ。
 昨日の村人のときも大丈夫だったし、スローラビットが相手なら問題はないだろう。

 ボス戦のときにどうするかは様子を見てからだ。
 探索者Lv10につけ替えるという手もある。
 しばらく周囲で狩を行った。

「魔物の攻撃はどうだ」

 三匹を相手にしてセリーが攻撃を喰らったときに訊いてみる。

「大丈夫です」
「昨日と比べてどうだ」
「そうですね。探索者だった昨日よりはさすがにきついです」

 当然といえば当然か。
 昨日は探索者ではなく村人だったが。

「ボス戦もいけそうか?」
「がんばればいけると思います」

 危なそうだな。
 がんばればいけるというのは、普通なら無理ということだ。
 テストだけなら試してみる価値もあるだろうが、迷宮の場合、失敗すれば死が待っている。
 ここのボスは動きが速いそうなので、連続で攻撃を受ける可能性も考えておくべきだろう。

「ではボス部屋に行くが、念のため、セリーのジョブは元に戻しておく」
「そんなこともおできになるのですか?」
「当然、だな」

 セリーのジョブを探索者Lv10にする。
 昨日は探索者をつけないでよかった。
 昨日一日セリーが探索者だったら、多分Lv12以上になっていただろう。
 探索者のレベルはアイテムボックスの大きさから分かるので、確認されたらまた変な問題になるところだった。

 デュランダルなどを準備してボス部屋に入る。


ラピッドラビット Lv7


 現れたのはちょっと赤みがかった体色の兎だ。
 大きさはスローラビットと変わりがない。

 デュランダルを振り上げ、駆け寄った。
 振り下ろすと魔物が右に逃げる。
 速い。

 右へはロクサーヌが追いかけた。
 ラピッドラビットは右へ走りながら、突然床を蹴って九十度角度を変え、ロクサーヌに体当たろうとする。
 ロクサーヌが体を入れ替えながら、盾で受け流した。

「セリー、そっちへ」

 弾き出された兎が、セリーに向かって走る。
 セリーは槍をかまえて待ち受けた。
 魔物を引きつけ、セリーが槍を突き出す。
 その瞬間、ラピッドラビットが横へ飛んだ。

 一度はすに跳ね、槍をかわすと方向転換して、セリーに突撃する。
 セリーがよろめいた。
 探索者Lv10につけ替えて正解だ。

 赤い魔物は、今度は俺の方へ向かってくる。
 速い。
 デュランダルをかまえて待ち受けるが、直前で向きを変えられた。

「ええい。ちょこまかと」

 あわてて斬りつけるが、空振りしてしまう。
 隙を見せたわき腹に体当たりを喰らってしまった。

 ぐわっ。
 結構な衝撃がくる。
 鍛冶師Lv1だと本当にまずかったかもしれない。

 兎がロクサーヌの方へ走った。
 その間に、セリーと俺に手当てとメッキを。
 体当たりをかまそうと魔物が空中に飛び上がった。
 そこをロクサーヌがシミターで弾く。

 なるほど。
 あのタイミングか。

 あのタイミングというか、あんなタイミングというか。
 相当に引きつけないと無理のようだ。
 あそこまで近寄られると、今度は体当たりをかわす自信がない。

 弾かれたラピッドラビットが俺の方に走ってきた。
 近づいたとき、ファイヤーストームと念じる。
 全体攻撃魔法なら、回避不能だ。

 火の粉の中、兎が一瞬立ち止まった。
 魔物であっても、攻撃を喰らえばどうしても怯む。
 その隙を逃さず、デュランダルを。

 かー。
 また避けられてしまった。
 今のところ物理攻撃が当たったのはロクサーヌだけだ。
 もう全体攻撃魔法だけで倒すか。

 しかし、何発かかるか分からない。
 Lv7の通常モンスターなら五発。ボスなので通常の三倍は必要だろう。
 パーンにだってデュランダルを何発も浴びせている。
 最後まで倒しきれるか。
 デュランダルでMPを回復できないと厳しいかもしれない。

 再び兎が襲いかかってくる。
 今度はもっと引きつけて。
 と思っていたら、体当たりを喰らってしまった。

 メッキをかけなおし、手当てをする。
 回復の分のMPも残しておかなければならない。

 ラピッドラビットがジグザグに移動しながら、ロクサーヌに向かった。
 あんな動きまでするのか。
 左に飛び、右に跳ね、そのまま脇を抜けるように見せかけて、左に飛ぶ。
 直前で進路を変え、ロクサーヌに飛びかかった。

 ロクサーヌは半歩下がるとわずかにスウェーし、突撃コースを避ける。
 すれ違いざまシミターを下から振るい、兎を弾き飛ばした。

 あれだけ速いラピッドラビットよりもロクサーヌの動きの方が勝るようだ。
 ロクサーヌ一人なら完封シャットアウトも狙えるだろう。
 どれだけ時間がかかるか分からないが。

 弾き飛ばされた魔物が着地する。
 そこにセリーの槍が突き出された。
 斜め横から突きを喰らい、兎が転がる。

「やりました」
「おおっ。すごい」
「考えましたね」

 確かに、ロクサーヌに弾き飛ばされているときならコースを転換できない。
 ラピッドラビットもさすがに空中では進路を変更できないようだ。
 そこを狙えれば、当たる。
 長い間合いを持つ槍ならではの攻撃といえるだろう。
 セリーは賢いな。

 魔物はすぐに起き上がると、走り出した。俺に向かってくる。
 ロクサーヌに続いてセリーも攻撃を当てた。
 俺だけが空振りを続けるわけにはいかないだろう。

 ラピッドラビットを引きつける。
 ギリギリまで。
 本当にギリギリまで。
 体当たりを確実に喰らってしまうくらいにギリギリまで。

 兎が跳ね上がったのを確認し、オーバーホエルミングと念じた。
 突然、魔物の動きが遅くなる。
 俺はゆっくりと体当たりの進路からそれ、横に回った。
 走るスピードの違いが戦力の決定的差でないということを教えてやる。

「チェストー」

 兎にデュランダルを叩き込んだ。
 ラピッドラビットが吹き飛ぶ。
 一撃で弾き出してしまった。
 二の太刀が存在しないのが惜しい。

 一の太刀でもオーバーホエルミング分のMPくらいは吸収できただろうか。
 これならば負ける可能性は大きく減った。

 再び接近してきたときには、デュランダルを真上から振り下ろす。
 兎を真下に叩きつけた。 
 続けざま、二発めを振り下ろす。
 ラピッドラビットが弾き出されて転がった。

 弾き出したというよりは、魔物が巧く受身を取った感じか。
 結構ぎりぎりだ。
 二撃めはいつもうまくいくとは限らないだろう。

 まあ無理に狙うことはない。
 一発でも使用したMP分くらいは吸収できているから、後は冷静に回数を重ねるだけだ。
 現状ほとんど詰んでいる。

 何度めかに弾いたときには、セリーの近くに落ちるよう飛ばしてやった。
 そこをセリーが逃さず槍で突く。

 ラピッドラビットが再び俺に向かってきた。
 ジグザグに進路を変えながら進んでくる。
 これは魔物に難敵と認められたと判断してもいいのだろうか。

 しかし、どんなに動きで翻弄しようとしても俺には関係がない。
 最後に体当たりのために飛び上がるタイミングだけを待てばいい。
 ふっ、甘いな。
 跳ねた瞬間、オーバーホエルミングと念じた。

 ラピッドラビットの動きが遅くなる。
 真正面すぎたのでかわすのは難しいが、落ち着いて待ち受けた。
 デュランダルをかぶせる。
 ラピッドラビットを弾き返した。

 魔物が床に転がる。
 正面で受けるのは無理があったのか、セリーの方へは飛ばせなかった。
 兎はそのまま立ち上がってはこない。
 ついに力尽きたようだ。
 ラピッドラビットが煙となって消えた。


兎の肉


 残ったのは兎の肉か。
 スローラビットではレアドロップでも、ボスでは通常ドロップというところなんだろう。

「チェストーというスキルがあるのですか? 聞いたことありませんが」

 セリーがそのアイテムを拾って持ってくる。

「いや。別にスキル名称ではないが」
「でも私には動きが見えませんでした」
「オーバーホエルミングというスキルだ。聞いたことあるか?」
「いいえ、ありません。すばらしいスキルを持っておられるのですね」

 セリーの目に尊敬の感情が。
 主人生活二十五年、こんなに嬉しいことはない。

「人に知られてよいものではないので、内密にな」
「あ、はい。そうですね」

 セリーには釘を刺さなくても大丈夫か。
 初代皇帝はオーバーホエルミングを使わなかったのか。
 それとも伝わらなかったのか。

「さすがです、ご主人様」

 ロクサーヌも褒めてくれた。

「ありがとう」
「私の目でも危うく見失いかねない、すごい動きでした」

 見失いかねないであって見失ったではないのか。
 ロクサーヌにはオーバーホエルミングの動きがきっちり見えていたようだ。
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