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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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融合


 商人ギルドを出て、近くの洋品店に行った。
 ロクサーヌとセリーが仲良く服を選んでいる。
 仲良きことは美しきかな。

「悪いな。待たせたか」
「いいえ。全然大丈夫です」

 まだまだ余裕で選び終わっていないようだ。
 まあロクサーヌの買い物がそんなに早く終わるはずもないか。
 一つため息をついた。
 しょうがない。

「そうか」
「これなんですけど、ご主人様はどっちがいいと思いますか」

 ロクサーヌが二つのチュニックを出してくる。
 一応、候補を絞ってはいたらしい。

「ロクサーヌなら何を着ても綺麗だけどね」
「あ……ありがとうございます」

 仕方がないので、終わるまでつきあった。

「では、これでいいか」
「本当に新品の服を買っていただいてよろしいのですか」

 ようやく選び終わって服を集めると、セリーが訊いてくる。
 セリーが着るドワーフ用の服というのは、この世界では子供服と同じカテゴリー扱いになるらしい。
 その分、子供服も大人用の服と同じくらいの種類や品数がある。
 ドワーフがいなかったら子供服は品数も少なかったのかもしれない。

「大丈夫だ」
「ありがとうございます。まあ、奴隷が着る服も当然所有者の持ち物になるのですが」

 セリーが最後の方は小さくつぶやいた。
 一言余計だといいたい。

「あとすみません。これを買っていただいてもよろしいでしょうか」

 ロクサーヌが遠慮がちに追加の服を出してくる。
 この謙虚さをセリーも見習ってほしい。
 出してきたのは、服というよりただの布切れだ。赤い。
 越中ふんどし?

「必要なものなのか?」
「えっと。すみません。今日から始まってしまって。肌着を汚さないためのものです」

 なんだかよく分からないが必要なようだ。

「ふうん。まあいいだろう」
「あとすみません」

 ロクサーヌが小声で告げてくる。
 すみませんばっかりだな。

「何?」
「始まってしまったので、今夜はお情けを受けられません」

 ロクサーヌが俺の耳元でささやいた。
 始まったって。
 生理か。
 この布はナプキン代わりなのか。

 まあ生身の人間だからしょうがない。
 こればっかりはな。
 今夜こそ色魔のスキル精力増強の威力を確かめたかったのだが、延期するより他にないようだ。


 色魔のスキルよりも、今は他に試さなくてはならないスキルがある。
 服と食材を買って家に帰った後、俺はテーブルをはさんでセリーを目の前に座らせた。

「何でしょうか?」
「うん。まあなんというかだな」
「はい」

 セリーを鍛冶師にしたのはいいが、どうやって説明したものか。
 そこが悩みどころだ。

 ここはやはり正攻法でいくべきだろう。
 というか、からめ手が思いつかない。
 一つ息を吐いてから宣言する。

「今日からセリーは鍛冶師だ」
「は?」

 突然の宣告に、セリーは口をあけたまま固まってしまった。

「びっくりしただろ。分かるよ。思うようにいかないことたくさんあるよな」
「あ、あの……」
「鍛冶師になるのは無理だって、諦めてるんじゃないですか」
「え、えっと……」

 俺は銅の剣とモンスターカードを取り出す。

「もうプロだよ君は。融合してごらん」
「い、いえ……」

 ここはもう勢いでごまかすしかない。

「がんばれがんばれできるできる絶対できるがんばれもっとやれるって」
「で、でも……」
「でも大丈夫。分かってくれる人はいる。そう、俺についてこい。モンスターカード融合。リピートアフターミチオ、モンスターカード融合」

 無理やり強制する。

「モンスターカード融合?」

 強制すると、何故かロクサーヌが復唱した。
 いやいや。
 ロクサーヌがやっても無理だから。 
 わけが分からず首をかしげているロクサーヌも可愛い。

 しかし、ロクサーヌまでがやる空気にのまれたのか、勢いに押されたのか、ロクサーヌに続いてセリーも少しだけやる気を見せた。

「……も、モンスターカード融合」

 小さな声で、ひっそりとスキル名称を口にする。
 唱えると、セリーの目が大きく見開かれた。
 とても驚いたような、大きな眼。

 セリーのジョブはちゃんと鍛冶師Lv1にセットしてある。
 その状態でスキル名称を唱えれば、どうなるか。
 スキル呪文が頭に浮かんでくるはずだ。
 セリーは信じられないという表情で俺を見た。

「もっと熱くなれよ」

 こぶしを握って、セリーにガッツポーズを見せる。

「で、でも、どうして……」
「本気になれば自分が変わる。本気になればすべてが変わる。これを融合してくれ」

 銅の剣とウサギのモンスターカードをセリーの前に差し出した。
 疑問は後回しにして既成事実を作ってしまうのが得策だろう。

「いいのですか?」
「何やっても大丈夫だ」

 この銅の剣には空きのスキルスロットがある。
 俺の仮説が正しいなら、融合は百パーセント成功するだろう。
 失敗したとすればそれは俺の仮説が間違っていたのだから、仕方がない。
 まあ詐欺の可能性はあるが。

 失敗したときには素材が残るという話だ。
 それを用意できた時間はない。

「そ、その前に、一度スキル呪文を確認してもらってもいいですか」

 慎重だな。
 頭がいいやつというのは常に冷静なんだろうか。

「分かった」
「今ぞ来ませる御心の、こと××蔭の天地の」

 セリーがゆっくりとスキル呪文を口にした。

「うーん」
「多分、こうだと思いますが」
「こと、なんだ?」

 翻訳されなかったところをチェックする。

「違っていますか? 言葉でお祝いするとかいうことだと思いますけど」
「言祝ぐ、じゃないか」
「言祝ぐ……あ、それです。今ぞ来ませる御心の、言祝ことほぐ蔭の天地の」

 セリーが再度呪文を確認した。
 これで完璧だろう。
 違っていたとしても、俺にはもう訂正のさせようがない。

 セリーが意を決したように俺を見る。
 無言でうなずくと、銅の剣とモンスターカードを手に持った。
 銅の剣を右手に。ウサギのモンスターカードを左手に。
 モンスターカードを持った左手を剣に置き、真上から押さえる。

「今ぞ来ませる御心の、言祝ことほぐ蔭の天地の、モンスターカード融合」

 スキルを唱えた。

 一瞬、セリーの手元が光る。
 まばゆいばかりに白く輝いた。
 光はすぐに収まっていく。

 剣が残った。


妨害の銅剣 両手剣
スキル 詠唱遅延


 成功だ。
 銅の剣に詠唱遅延のスキルをつけると、妨害の銅剣になるようだ。
 そして、空きのスキルスロットにモンスターカードを融合できるという考えも多分正しい。

「セリー、よくやった」

 セリーから剣を取り、かざして見る。
 見た目も、拾い物の妨害の銅剣と違いはないようだ。

「ご主人様、成功したのですか?」
「間違いない」
「やりましたね、セリー」

 疑問に答えると、ロクサーヌがセリーを祝福した。

「よくやったぞ、セリー」
「……です」

 しかしそのセリーの様子がおかしい。
 食卓にうつぶしたまま、何ごとかうめいている。

「なんだ?」
「……なさいです」
「どうしました」
「ごめんなさいです。成功してごめんなさい。鍛冶師になんかなろうとしてごめんなさい。生まれてきてごめんなさい」

 ひたすらに謝ってきた。
 困惑げなロクサーヌと視線をかわす。

 ああ。そうか。
 俺にも記憶がある。
 MPを使い果たした状態だ。
 MPがなくなると、精神状態がやたらとネガティブになるのだった。

 鍛冶師になったとはいえLv1だ。MPは少ないだろう。
 モンスターカード融合を使えるぎりぎりの量くらいしかなかったのではないだろうか。

 俺は、剣をロクサーヌに渡し、食卓の向こう側に移動した。
 アイテムボックスから強壮丸を取り出す。
 万が一の用心に買っておいたものだが、こんな風に使うとは思わなかった。

「大丈夫だ。セリーはえらい。セリーはすごい。ほら、この薬を飲め」
「私なんかのために貴重な薬を使うことはないです。いいんです、私なんか。本当にごめんなさい」

 セリーが首を振る。
 薬も受けつけない状態なのか。
 別にこのままでも死ぬことはないだろうが。

「安心しろ。成功したセリーはすごい」
「そんなことはないです。成功したのは私が駄目だからです」

 こんな思考回路だっただろうか。
 今は何もかもがネガティブになっているようだ。

「えっと。モンスターカードの融合に成功したセリーはほんとに立派ですよ」

 ロクサーヌの応援を聞きながら、強壮丸を自分の口に入れた。
 この状態は精神的にかなりつらいはずだ。
 早く治す手段があるなら早く治してやるべきだろう。

 セリーを抱きかかえ、俺の方を向かせる。
 淡く赤みがかった小さな口が可愛らしい。
 その唇に吸いついた。
 口をこじ開け、舌を差し入れる。

 セリーの舌がすがるように絡みついてきた。
 こんなにも情熱的なのは初めてだ。
 今は藁にもすがる思いなんだろう。

 俺も舌を動かし、絡めとった。
 しばらく舌を重ねあい、落ち着かせる。
 通路を確保してから、強壮丸をセリーの口に流し込んだ。

 いったん舌を引き、唇は押しつけたまま飲み込むまで待つ。
 のどが動くのを確認してから、口を放した。

「どうだ、少しは落ち着いたか」
「……はい。えっと、あの」
「謝らなくていい。大丈夫だ」

 ふわふわの髪に手を置き、頭をなでる。
 少し落ち着いたのか、セリーは深呼吸をした。

「そういえば聞いたことがあります。鍛冶師になったばかりの者はモンスターカード融合はしないようにと。失敗を嘆いて自殺する人が多いのだとか」

 成功してさえあの有様だ。
 モンスターカード融合に失敗したら、自殺したくもなるのだろう。
 ほっておいたら死ぬ可能性もあった。

「一時的な発作のようなもんだ。気にするな」
「はい」

 セリーはゆっくり息をして気を落ち着かせている。
 鍛冶師になったことはこのままうやむやにできそうだし、結果オーライというところだろう。

「えっと。それで、セリーは鍛冶師になれたのですか?」

 と思ったのに、予期せぬところから弾が飛んできた。
 ロクサーヌめぇ。

「そうだ」
「でもどうして」

 どうしてと訊かれても俺にも分からない。

「方法は内密だが、俺にはそれができる」
「そうなのですか?」
「そうだ」
「さ、さすがはご主人様です。すごいです」

 ロクサーヌが尊敬のまなざしで引き下がった。
 まあロクサーヌの方はこれでいいだろう。

「本当におできになるのですね。すごいです」

 セリーの方も、今は状況を把握するので精一杯のようだ。
 強く追求してはこない。
 むしろ輝いた目線で俺を見てくる。

 少しは俺のことを認めただろうか。
 千里の道も一歩から。
 信頼を得るには少しずつ着実に積み重ねていくことが大切だろう。

「セリーが鍛冶師になると、私の攻撃力も上がりますね」

 突然、ロクサーヌが変なことを言い出した。

「はあ?」
「鍛冶師になったので、これからはパーティーメンバーにその恩恵を与えられます。ようやくですね」

 セリーも同様だ。

「獣戦士ではパーティーメンバーの攻撃力は上がらないので、セリーはすごいです」
「どういうことだ?」

 セリーに尋ねてみる。

「鍛冶師がパーティーメンバーにいると、メンバーの攻撃力が上がるのです。これは昔からよく知られた事実です」
「そうなのか?」
「はい」
「そうなの?」
「はい」

 ロクサーヌにも訊くと、うなずかれた。

「知らなかったのですか?」

 一転してセリーの目が冷たいものに。
 その目はやめて。

 せっかくさっきは尊敬の目で見てくれたのに。
 一進一退だ。
 いや。三歩進んで二歩下がった状態だといっておこう。
 そうに違いない。

「鍛冶師が入るとパーティーメンバーの攻撃力が上がるのか」

 そんなスキルはなかったはずだが。
 あれ?
 そうでもない?


鍛冶師 Lv1
効果 腕力中上昇 体力小上昇 器用小上昇
スキル 武器製造 防具製造 モンスターカード融合 アイテムボックス操作


 効果のところに腕力中上昇とある。
 腕力が上がれば、攻撃力が上がる。
 つまり攻撃力が上がるとは、この腕力中上昇のことをいっているのではないだろうか。


獣戦士 Lv20
効果 敏捷中上昇 体力小上昇 器用小上昇
スキル ビーストアタック


 獣戦士の方には、腕力上昇はない。

「何でしょう」

 ロクサーヌの方を見てジョブを確認していたら、いぶかしがられた。

「獣戦士では攻撃力は上がらないんだよな」
「はい。残念ながら」
「代わりに機敏に動けるようになるとかって話は」

 獣戦士には腕力上昇がない代わりに敏捷中上昇がある。

「はっきりしたことは」
「獣戦士がパーティーメンバーにいると、よく動けるようになるという話はあります。ただ、あくまでも主観ですし、確かめようもありませんので」

 ロクサーヌに代わってセリーが説明した。

「攻撃力が上がるのは確かめた?」
「鍛冶師がパーティーメンバーにいると、ある階層の特定の魔物をスキル何回で倒せるようになったとか」
「なるほど」

 この世界でも、科学的検証が少しは行われているらしい。
 鍛冶師がいるとパーティーメンバーの攻撃力が上がるのは確かなようだ。

「そうやって、昔の偉い学者さんが確認したそうです」

 昔の学者がかよ。
 昔の偉い学者は本当に偉大だったらしい。

「鍛冶師以外に攻撃力の上がるジョブはないか。例えば剣士とか」
「よくお分かりですね。剣士でも攻撃力が上がるとされています」

 やっぱりそうか。
 剣士には腕力小上昇の効果がある。
 腕力上昇の効果を持つ鍛冶師や剣士がいると、パーティーメンバーの攻撃力が高まるということか。
 つまり、ジョブについている効果というのは、パーティーメンバーに対して与えられる効果だ。

 そうだったのか。
 今まで勘違いしてた。
 効果というのは、てっきり自分に対して効果があるものかと。
 そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

 まあ、剣士だから腕力が強くなって攻撃力が上がるとしても、それはジョブが持つ効果というよりはジョブの特質というべきか。
 獣戦士だと腕力が上昇しないということは多分ないだろうし。
 英雄をはずすと魔法攻撃力が落ちることは確認済みだから、英雄に知力上昇の特質があることは多分間違いがない。
 効果としての知力中上昇は、俺にではなくパーティーメンバーであるロクサーヌやセリーに対して働いていたということか。

「魔法使いがパーティーに二人いると、魔法の強さが上がったりとか」
「そのとおりです」
「そうすると、魔法使い六人でパーティーを組むとすごいことに」
「魔法攻撃力だけをとればそうなるでしょう。ただ、魔法使いは希少ですし、前衛がいないと攻撃を受けたときに不安です」

 それもそうか。
 当然、スキルの構成なども考えなければいけない。
 何ごともバランスが重要のようだ。
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