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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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宝箱


 たらいの完成を待つ間、探索を進め、ベイルの迷宮でようやく四階層のボス部屋に到着した。
 ロクサーヌがいると便利だが、探索は進めにくい。
 魔物の出た方向が分かっても反対側なら来た道を戻ることになる。
 隠し扉の向こう側のにおいは察知しにくいということなので、下手をすると同じところを行ったり来たりになってしまう。

 探索を進めるか、狩を優先するか。
 ベイルの迷宮と、人のいない早朝に入るようにしたクーラタルの迷宮とでもまた異なる。
 クーラタルの迷宮は地図があるから、攻略する必要はない。
 かといって同じ場所を何度うろついても魔結晶も宝箱も見つかるはずはないから、ある程度は動かなければならない。

 ベイルの迷宮で四階層のボス部屋に到着したのは、少し時間が経って探索の進め方に慣れたころだ。
 四階層のボスはハチノスLv4。ミノと同じような牛の魔物である。
 正面はロクサーヌにまかせて、後ろからデュランダルで殴るだけの。
 と思っていたら、蹴りが飛んできてびびったのは内緒だ。

 お返しとばかりにめったやたらと斬りかかる。
 右から袈裟がけ、左から袈裟がけ、右下から左上へと逆袈裟に斬り上げた。

 真後ろへの攻撃手段も持った恐ろしい敵を打ち破り、五階層に移動する。
 まずロクサーヌが見つけたのはミノLv5だ。
 デュランダルを一振りするが倒れない。

 さすがのデュランダルも一撃で屠れるのは四階層までのようだ。
 知力をアップするジョブが中心で英雄以外には腕力上昇の効果を持ったジョブをつけていないし、しょうがないだろう。
 二振りで倒す。

 デュランダルをしまって、次にロクサーヌが見つけたのがチープシープだった。
 クーラタルの迷宮では四階層に出てくるこの魔物が、ベイルの迷宮だと五階層から出てくるらしい。
 羊といっても結構凶暴そうで、不敵な面構えをしている。
 ツノまである。

 ファイヤーボールを放つが、懸念したとおり三発では倒せなかった。

 これもまあしょうがない。
 ロクサーヌが対応している間に横に動き、斜めからファイヤーボールを撃ってしとめる。
 三匹出てきたときが大変だ。

 一応、ロクサーヌにそう言えば三匹の団体を避けることはできるが、においで数まで完璧に分かるわけではないので、完全に回避することは無理らしい。
 逃げてばかりでいざというときに対応できなくても困るので、積極的に狙っていく。
 基本的にはたくさん倒した方が稼げるのだし。

 とはいえ、狙っているとなかなか出ないもので、団体でも二匹だったり、三匹いても一匹はコボルトLv5だったりということが続いた。
 コボルトLv5は魔法二発で沈む。

 ロクサーヌは宣言どおり、魔物二匹をまったく相手にしなかった。
 ミノの攻撃もチープシープの攻撃もかすりもしない。
 優雅に、軽々と、ほんの紙一重のところでかわしていく。

「ロクサーヌの動きはすごすぎて、手本として参考にすべきなのか、まねなんかできっこないから参考にすべきではないのか、よく分からんな」
「私程度の動きなら、ご主人様にもできると思います」

 自己認識もおかしいしな。
 ロクサーヌの意見は参考にならないだろう。

 ようやく出会った三匹の団体は、チープシープ一匹、ミノ一匹、グリーンキャタピラー一匹の組み合わせだった。

「ロクサーヌ、頼む」

 まずファイヤーストームを三発お見舞いする。
 三発めを放った直後、ミノが追いついてきた。
 続いてチープシープとグリーンキャタピラーもやってくる。

 ロクサーヌがミノにシミターを入れ、振られたツノを軽く避けた。
 かわしながら、さらに一撃。
 俺も、左に来たチープシープのツノをワンドで受ける。

「来ます」

 ロクサーヌの警告が飛んだ。
 横にチラリと視線をやると、グリーンキャタピラーの胸下にオレンジ色の魔法陣ができていた。
 糸を吐くつもりだ。

 かまうことはない。
 俺は動じずに四発めのファイヤーストームを念じた。
 グリーンキャタピラーが倒れれば、糸も消える。

 ロクサーヌが飛び退くのと、グリーンキャタピラーが糸を吐くのと、俺が念じた四発めのファイヤーストームが発動するのがほぼ同時だった。
 火の粉が舞う中、白い糸が大きく広がり、周囲を覆いながら伸びる。
 糸が俺に少しかかった。

 ときを同じくして魔物三匹も倒れる。
 魔物が煙となり、糸も空気に溶けるように消え去った。

「ふう。グリーンキャタピラーはこれがあるから厄介だな」

 息を一つはく。かまえていたワンドを下ろした。

「そうですね。今回は二人を狙える位置に巧く回りこまれてしまいました」

 ロクサーヌは一メートルくらい後ろに下がっている。
 糸はかからなかったようだ。
 あれをかわすのか。

「糸を吐かれても避けられるか?」
「どうでしょうか。今回は途中で魔物が倒れて糸が消えたので。消えなければさらに移動するつもりではいましたが」

 一メートルも飛び退いているのに、さらに動けるとか。

「さすがだな。まあ、糸を吐かれるのと同時に四発めの魔法を撃てるのなら、五階層はなんとかなるか」
「はい。三匹出てきてもご主人様が一匹相手にしてくださるのなら、私も楽に戦えます」

 二匹を相手にしている時点で楽もないもんだ。
 とはいえ、魔物三匹でもなんとかなる。
 五階層でも戦えそうだ。


 ベイルの迷宮は五階層でも無事戦えたので、クーラタルの迷宮も五階層に移動することにする。
 翌朝、四階層の攻略地図を持って、ボス部屋まで進んだ。


ビープシープ Lv4


 これがクーラタルの迷宮四階層のボスらしい。
 メェメェうるさいだけの普通の羊だ。
 凶暴そうな顔つきには慣れた。

 ツノがある正面はロクサーヌにまかせる。
 攻撃を警戒しながら横に回り、背後からデュランダルで斬りつけた。
 ビープシープの足元にオレンジ色の魔法陣ができる。
 もう一度デュランダルで叩き、中断させた。

「ビープシープは何のスキルを持っている」
「分かりません」

 ロクサーヌに訊くが、知らないらしい。
 グリーンキャタピラーみたいに糸を吐くわけではないだろう。
 糸ならばファイヤーウォールで防ぐ手もあるが、どんなスキルか分からないのでは防ぎようもない。
 詠唱中断のスキルがついているデュランダルで斬りつけるしかない。

 もう一度デュランダルで攻撃したところで、今度は羊が前脚をかがめた。
 これは後脚で蹴りが来る。
 ビープシープが後ろを蹴ったところで、大きく飛び退いた。

 馬鹿め。
 後ろ足で蹴られるのはハチノスで経験済みだ。
 ちゃんと見ていれば対応できる。

 グリーンキャタピラーの吐く糸から飛び退いたロクサーヌのように、一メートル以上は後ろに下がった。
 追撃がこないかビープシープの様子をしっかりうかがう。
 羊の足元にオレンジ色の魔法陣が浮かんだ。

 やばい。
 デュランダルを振り上げ、あわてて駆け寄る。
 馬鹿は俺だった。

 ビープシープは最初からスキル発動の時間を稼ぐのが目的だったのだ。
 こちらが大きく飛び退くよう、わざと力をためるところを見せたのだろう。
 ものの見事に引っかかってしまった。

 デュランダルを振り下ろすが間に合わない。
 今から念じたのではオーバーホエルミングも間に合わないだろう。
 メェメェ啼いていた羊が、ビー、と警告音を発した。


 ……。
 …………。
 ………………。


 ぐおっ。

 いきなり、ビープシープに突き飛ばされた。
 二歩、三歩とよろけ、なんとか踏ん張る。
 何が起こった?

 ロクサーヌも攻撃されたらしい。
 おなかを押さえている。

 瞬間移動?
 あるいは無差別同時攻撃?

「どうなった」

 次のビープシープの頭突きは、なんとかデュランダルで受けた。
 ツノがあるのにあんな攻撃を繰り返されてはたまらない。

 最初の攻撃は皮の鎧にクリーンヒットしたらしい。
 それがかえってよかったのだろう。
 当たりどころが悪ければ突き破られていた可能性もある。

「分かりません。私は突然攻撃を受けました」

 デュランダルで羊の攻撃をいなし、隙を作る。
 ビープシープの攻撃の合間に、ロクサーヌの方を見て手当てと念じた。
 俺はデュランダルで回復できるが、ロクサーヌはそうはいかない。
 レベルも低いので、ロクサーヌの回復が優先だろう。

「俺も突然攻撃を受けた」
「ご主人様はずっと動きませんでした」
「動かなかった?」
「はい。眠ったように」

 なるほど。
 ビープシープのスキルは敵を眠らせるか気絶させる技なのだろう。
 あの警告音とともに意識を失ってしまったのだ。
 攻撃を入れられて、ようやく意識が戻る。
 だから、突然攻撃されたように感じると。

「敵を眠らせるスキルか」
「確かに。そのようです」

 あのスキルが出ると、最低でも一撃は必ず攻撃を喰らってしまう。
 そんなスキルを何度も出させるわけにはいかない。
 俺はいつでもデュランダルで攻撃できるよう、魔物に張りついた。

 ロクサーヌがどのくらいのダメージを負ったのか、俺には分からない。
 そもそも、どれだけのダメージを喰らい、どの程度回復したのか、自分でさえ大体の感覚でしか分からない。
 とりあえず三回も手当てをしておけばいいだろうか。

 前後が入れ替わってしまったので横に回ろうとする。
 羊もツノをこちらに向けたままついてきた。
 俺の方がくみしやすいとばれてしまったか。

 振られたツノを剣で受け、弾きざまに一撃入れる。
 そこにまたツノが振られた。
 あわてて腕を引き、攻撃をかわす。

 ビープシープが小さくかがみ、半歩下がったところに突進してきた。
 大きくのけぞって、なんとかそらす。
 さっきから後手後手に回っているような。

 その間ロクサーヌも攻撃しているが、シミターでは大きなダメージは与えられないだろう。
 羊が小さくかがんだ。
 後ろに蹴りを飛ばす。
 ロクサーヌは真横に静かに動き、伸ばしてきた脚に攻撃を加えた。

 敵の攻撃を避ける見本のような動きだ。
 まったく体の軸を動かさず、ゆったりと平行移動している。
 ぎりぎりのところでかわしているので、敵を射程外に逃すこともない。

 大きく飛び退いて隙を作ってしまった俺とは対照的だ。
 今の俺も、前に突進してくるかと警戒して攻撃できなかったというのに。

 魔物がけん制するように小さく振ったツノを弾き、ようやく一撃入れる。
 ビープシープの頭が右に動いた。勢いをつけて振られる。

 今の攻撃は読めた。
 のけぞってツノをかわし、隙となった首元にデュランダルを叩きつける。
 柔らかな首をデュランダルが切り裂いた。

 ようやく魔物が倒れる。
 アイテムを残し、煙となって消えた。

「ようやく倒れたか。身体は大丈夫か」
「はい。何度か回復していただいたので、もう平気です。ありがとうございます」
「少しでもダメージが残っていると思ったら、言え。体力の回復は第一に優先させるべきだ」
「分かりました。そうさせていただきます」

 デュランダルを出したまま、五階層に移動する。
 ロクサーヌの先導で奥に進んだ。
 五階層は四階層よりも人が少ないが、それでも結構いるらしい。


コラーゲンコーラル Lv5


 クーラタル迷宮五階層の魔物は、このコラーゲンコーラルのようだ。
 丸っこい岩石型の魔物である。
 下から一本足が生えており、ホッピングしながら迫ってきた。

 デュランダルで斬りつける。
 コラーゲンというので硬くないかと思ったが、表面はしっかりと硬かった。
 見た目どおりの岩石か。
 いや、岩石ではなくて、珊瑚コーラルなのか。
 一撃では倒れなかったので、もう一振りして倒す。


コーラルゼラチン


 煙が消えてアイテムが残った。
 残るアイテムの方は、しっかりコラーゲンらしい。

「ゼリーでも作るのか」
「ゼリー?」
「いや。なんでもない」

 拾い上げて渡してきたロクサーヌに訊くが、違うようだ。

「コーラルゼラチンは接着剤です。お湯に溶かすと粘着力が出ます。絨毯を壁に貼るときにも使えます」

 なにやら便利なアイテムらしい。

 コラーゲンコーラルLv5も現状魔法三発では倒せなかった。
 ゴロゴロと転がりこそしなかったが、近寄ると飛びかかってくる。
 ロクサーヌが半身になってかわした。
 かわされて着地したところに、四発めのファイヤーボールをぶち当てる。

「飛びかかるのか」
「そのようですね。飛び上がるタイミングが分からないので、一瞬ヒヤリとしました」

 その割には華麗に避けていた。
 ジャンプする前に脚を曲げて力をためる動物と違って、コラーゲンコーラルの足は曲がらない。
 予備動作が分かりにくいのだろう。

「まあ慣れるしかないか」
「そうですね。よく見れば大丈夫だと思います」

 俺なら大丈夫な気はしない。
 コラーゲンコーラルの表面はでこぼこしている。
 あれに当たったらちょっと痛いのではないだろうか。

 それでもツノのあるチープシープよりは怖くないので、三匹の団体のときには積極的に俺が受け持った。
 体当たり攻撃なので、俺でもなんとかワンドでいなせる。
 避けるのではなくワンドで魔物の体当たりを受け流すので、コラーゲンコーラルが飛び上がってから反応しても十分に間に合う。
 基本的には一対一だし。

 二匹を相手にしても余裕でかわし続ける狼人のことは気にしないことにしよう。
 気にしたら負けかなと思っている。

 そのロクサーヌの先導で進みながら、ときには袋小路にも寄ってみた。
 こうして移動していかないと、魔結晶や宝箱が見つからない。
 隠し扉が開き、その向こうに小部屋が現れる。

 中に入った。
 いつもの小部屋だが、真ん中が微妙に盛り上がっているような。

「ご主人様、宝箱です」
「宝箱? これが?」
「はい、そうです」

 これが宝箱か。
 宝箱というよりも、床がせり上がったただのこぶだ。
 そのこぶに、ロクサーヌがためらわずシミターを突き入れた。
 罠とかないんだろうか。

「大丈夫なのか」
擬態ミミックだったとしても、倒すより他にありません」

 力強い返事をありがとう。
 せめてデュランダルを出しているときにしてほしかった。

 シミターで床が切り裂かれる。
 新聞紙のように大きくめくれた。


皮のグローブ 腕装備


 中から、一個の籠手が出てくる。
 何の変哲もないただの装備品だ。

 なるほど。迷宮内で斃れた人が着けていた装備品が宝箱として出てくるというのは、本当のことらしい。
 軽く黙祷して元の所有者の冥福を祈りつつ、俺は装備品を手にした。
+注意+
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