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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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クーラタルの迷宮

 
 翌朝、クーラタルの迷宮に入った。
 暗い中装備を整え、一階層入り口の小部屋にワープする。
 空いていると期待した割にはすぐ見える場所に人がいたが、入り口の小部屋はダンジョンウォークでも移動できるので問題はない。

「ええっと。まっすぐ前みたいですね」

 ロクサーヌにも見せ、攻略地図を確認した。
 地図は、階層全域が載っているわけではなく、二階層へ通じる壁への順路を示しただけの簡略な攻略図だ。
 それ以外の情報があるわけでもなく、しかも紙質も悪い。

「しかし大丈夫かね、これは」
「パピルスですね」
「パピルス?」
「はい」

 おおっ。これがパピルスなのか。歴史の授業で習った。
 茶色でごわごわした薄っぺらい紙。いや紙もどきか。
 いかにもすぐに破れそうだ。
 初めて見た。

 片面にしか書いてないのは、裏も使うと破れそうだからか。
 あるいは、ばらで売っている地図を九十枚まとめただけだからなのか。

 昨夜のうちに紐で閉じられているだけの冊子を解き、一階層から三階層までの地図をリュックサックに入れておいた。
 全階層の攻略地図があるという冊子は九十階層まで九十枚。
 階層を示すだろう数字が書いてある。
 一から三までの数字はベイル亭で覚えた。

「結構人がいるな」
「一階層だと特に、時間をずらして入るパーティーもいるみたいです」
「ふうん」
「それに、お金を払うので、無理して長時間こもる人も多いそうです」

 早朝だというのに、結構人は多い。
 昨日の昼よりは少ないという程度だ。
 というか、前のパーティーも地図を見ているらしく、常に二、三十メートルほど前を進んでいた。
 地図いらなかったじゃん。

 地図どおりに進み、ボス部屋に到着する。
 ベイルの町の迷宮の軽く三倍以上は歩いた。
 やはりクーラタルの迷宮は広いようだ。
 人には会ったが、魔物には遭っていない。

 ボス部屋横の待機部屋にも何組かパーティーがいた。
 多少待って、順番が巡ってくる。
 一階層ボスのコボルトケンプファー戦は、正面をロクサーヌが受け持ってくれたので、非常に楽だった。
 ロクサーヌが敵の攻撃をかわしている間に後ろからデュランダルで体力を削るだけの簡単なお仕事です。

 二階層は一転してまったく人がいない。
 何度も魔物と遭遇した。
 ただ、いつ人に見られるか不安なので、魔法は使わずに全部デュランダルで倒す。
 ボス戦はやはりロクサーヌと前後から挟撃して。
 デュランダルで体力を削るだけの簡単なお仕事です。

「三階層って二階層より人多くない?」
「そうですね。二階層の半分はコボルトなので」
「あー。なるほど」

 二階層の魔物と戦えるくらい力をつけたなら、もうコボルトはおいしくないということだろう。
 それで二階層には人がいなかったのか。

「コボルトは弱くて初心者向きの魔物なので、コボルトが出てくるクーラタルの迷宮の一階層には人が集まります。しかし、二階層の魔物も半分はコボルトになってしまうので、二階層には人気がありません。三階層になるとコボルトも減るので、人が増えます」

 三階層は一階層ほどではないが何度か人に出会った。
 デュランダルを使っているところもできれば見られたくないが、しょうがない。
 ボス戦は、やはり正面はロクサーヌが担当するので後ろからデュランダルで叩くだけの。

 三階層のボス、スパイススパイダーはペッパーを残した。

「おお。胡椒だ、胡椒。確か金と同じ重量で取り引きされるという」
「まさか。そんなに高くはありません」

 勝手な思い込みだったらしい。
 考えてみれば肉料理に結構使われていた。
 特殊なレアアイテムというわけではなく、スパイススパイダーを倒せばいつでも手に入るのだろう。
 ぬか喜びか。

 四階層に移動する。

「混み具合はどうだ」
「そうですね。三階層よりさらに少なくなっています。奥の方まで行けば、誰にも見られずに狩ができるでしょう」
「では、奥まで行くか」

 攻略地図も持ってきていないし、今四階層をクリアするつもりはない。
 クーラタルの迷宮には攻略地図があるからどんどん上の階層に行けばいいようにも思えるが、そういうわけにはいかない。
 必ずどこかで壁にぶち当たる。
 今のレベルではとても攻略できない階層、倒せないボスがいるはずだ。

 それがどこかが分からない。
 もっと上の階層かもしれないし、五階層のボスかもしれない。
 ほいほいと進んでいけば必ず危険なことになる。
 だから、ベイルの迷宮の探索を自力で進め、クーラタルの迷宮の進行状況はそれにあわせることにしていた。

 ロクサーヌがもう人がいないというところまで進み、小部屋を見つけて、朝の探索を終了する。
 家に帰り、朝食を作った。

 今日俺が作るのはシェーマ焼きだ。
 シェーマというのは、香味野菜っぽい何かの葉っぱ。
 これで肉を巻いて焼くらしい。

 肉を包丁代わりのジャックナイフで叩いて下ごしらえをする。
 コボルトソルトとペッパーをミルで砕いたもので塩コショウし、シェーマで巻く。
 中華鍋にオリーブオイルをひいて、焼く。

 オリーブオイルはクーラタル迷宮の二階層に出てきた植物魔物ナイーブオリーブのドロップ品だ。
 コボルトソルトはコボルトの、ペッパーは三階層ボスの落し物である。

 味の方もまずまずだった。
 シェーマの味はピリ辛系。葉唐辛子みたいな感じか。
 ここまでできればとりあえず上出来だろう。


 朝食の後、クーラタルの街中にある服屋へ行く。
 俺もロクサーヌもほとんど一張羅だから、いつまでもこのままというわけにはいかないだろう。
 俺にはジャージが、ロクサーヌにはメイド服もあるが。
 帝都にある高級ブティックは、ロクサーヌにはともかく俺には必要ない。

「上下二着ずつくらい買っておくか?」
「ここは新品の服を売っている店だと思いますが、よろしいのですか」

 店の入り口でロクサーヌが訊いてきた。
 俺の外套が中古品みたいなのだが、中古品というのは、現代日本人としてはどうもあまりぴんとこない。
 ジーンズのヴィンテージとかなら逆に高そうだ。

「別にいいんじゃないか」
「奴隷には中古の服を着せるのが一般的だと思います」

 なるほど。貴族→庶民→奴隷という流れなのか。
 金持ちや貴族が新品を買って、数回着て中古に売る。庶民がそれを買って、着たおして、また売る。それを奴隷が、と流れていくのだろう。

「かまわないだろう。好きなのを選べ」

 背中を押して、ロクサーヌを店に入れた。

 服の上下といっても、あまり種類はない。
 上はだぼだぼのチュニックかシャツ、下もやはりだぼだぼのズボンがほとんどだ。
 ちなみに、チュニックというのは頭からかぶるタイプ、シャツは前開きで袖を通して着るタイプのものを、俺が勝手にそう呼んでいる。
 村人の女性は裾の長いスカートをはいていたりもするが、迷宮に入るような女性はみんなズボンをはいていた。

 そんな少ない種類の服を、ロクサーヌが丹念に選んでいく。
 ロクサーヌの分だけでなく、俺の服も一着一着細かく見ていった。
 ときおり俺の体に服を合わせ、「これはどうでしょう」とか「これは色が」とか駄目出ししている。

 服を買って店を出たとき、日は頭上を過ぎていた。
 借りた家は、町の中心から見ると東側にある。
 半日くらいはかかるかもしれないと覚悟していたら、本当に半日以上かかってしまった。

「ありがとうございます、ご主人様」
「俺の服も選んでもらって、ありがとうな」

 まあロクサーヌのこの笑顔が見られただけでよしとしよう。
 服代は全部で千五十ナール。特に高いということもないだろう。


「服を買ったので洗うために大きめの桶がほしいのですが、よろしいですか」

 帰りがけ、途中にある木製品を扱う雑貨屋をロクサーヌが指差した。
 一つものが増えると、付随して必要なものが増えてしまうようだ。

「いいだろう」

 店に入ると、入り口横に桶やたらいが並んでいる。
 ロクサーヌが大きめの桶を選んで俺に渡した。

「らっしゃい」
「たらいというのは、これが最大か?」

 出てきた職人に、直径が一メートル弱くらいある店頭で一番大きなたらいを示して訊いてみる。
 この雑貨屋は、店といっても奥で職人が木を加工している工房だ。
 ここなら、アレが手に入るかもしれない。

「特注で作ることもできるぜ」
「頼む人もいるのか?」
「おうともよ。大きな布を何人かで手分けして洗う場合なんかに使われることがある」
「できるのか」

 何がほしいのかというと、バスタブだ。
 せっかく家を借りたのだから、次は風呂場をなんとかしたい。

 この世界では一部の金持ちを除いて風呂に入る習慣はないらしい。
 水を運んで火をたいて、となるとコストもかかる。
 春なのでまだ分からないが暑くもなく湿ってもいないので、気候的にもどうしてもということはないのだろう。

 俺だって、日本にいたときにはほとんどシャワーだったし、どうしてもというほどではない。
 たまには入りたい、という程度だ。

 しかし、今の俺なら事情が異なる。
 今俺が風呂に入るとすると、ロクサーヌがついてくる。
 俺が風呂に入るということはロクサーヌも一緒に入るということだ。

 ロクサーヌも入るのだから、風呂に入りたい。
 というか、ロクサーヌと一緒に入りたい。

 ロクサーヌと一緒に湯船につかって、ロクサーヌに洗ってもらう。
 じゅるり。
 これはもう風呂を作るしかないわけだ。

 なんとしても、風呂は作らなければならない。
 絶対に作らなければならない。
 いらないと言うのか?
 よろしい、ならば戦争クリークだ。

 しかしどうやって作るのか。
 それが問題だった。

 家具屋でもクーラタルの他の店でも湯船は見たことがない。
 家の内装は勝手にいじっていいと世話役のおばちゃんから言われているので、業者に頼むという手もあるが、ごまかすのが大変だ。

 俺は水も火も魔法で用意できるが、それを明かすことはやめた方がいい。
 水を井戸や川から持ってくる、柴で湯を沸かす、となれば、本来なら相当なコストになるだろう。
 風呂好きの趣味人ということで、納得してもらえるものだろうか。

 業者に頼むとしても、ボイラーは必要ない。
 ファイヤーボールで水を温められることはすでに検証済みだ。
 必要のないものを作ってもらうことはないが、どうやっていらないと断るのか。

 湯船はDIYで素人にも作れるものなんだろうか。
 などと考えていたのだが、たらい職人が作ってくれるらしい。
 案ずるより産むがやすしだ。

「実績もあるので、間違いのないものを作れると思うぜ」
「そうなのか」
「どの程度の大きさのものがいるんだ」
「人の高さよりも少し大きいくらいのものがほしいが、可能か」

 葛飾北斎の絵に描いてあったようなやつ。

「大丈夫だ。深さは普通サイズでいいか」
「そうだな。これくらいでいい」

 置いてあるたらいの中で一番深いサイズのものを指差す。
 せっかく他の需要もあるというのに、変なものを頼んでは目的が疑われてしまう。
 深さは五十センチをちょっと切るくらいだろうか。
 底の厚みがあるから、実際にはもう少し浅いか。

 目的はただ風呂に入ることではなく、ロクサーヌと一緒に入ることだ。
 それなりの大きさがなければいけない。
 ただし、広い分、浅くてもいいだろう。
 深い風呂は心臓によくないというし。

「うむ。……そうだな、二千ナールほどかかるが、いいか」

 職人がしばらく考えてから値段を提示した。
 思ったより断然安い。
 まあ、他のたらいは、二十ナールとか、いっても百ナールもしないような値段なのだから、それに比べればうんと高いが。

「頼む」
「受注生産になるので、五日ほどもらうぜ。できあがったら、連絡に使いをやる。都合のいい日にこっちから届けよう」

 送料はジャパネットが負担してくれるようだ。
 ちなみに、この世界の都市にはちゃんと住所がある。
 クーラタルの六区、七丁目、百二十三番地が借りている家の住所だ。

「分かった。これももらおう」
「ありがとよ。そっちは五十ナールだ」

 ロクサーヌが選んだ洗濯桶を見せる。
 職人はジョブ村人なので、三割引は効かなかった。

「大きなたらいを、何に使うのですか」
「まあ楽しみにしていろ」

 服をロクサーヌに持たせていたので、桶は俺が持って家に帰る。
 家に帰り、買ってきたばかりの服に着替えた。

「服は洗濯します」
「そうだな。だいぶ時間も使ったので、今日は迷宮に入るのは休みにしよう」
「かしこまりました。それでは、あいている時間に掃除も進めますね」

 日の出前に迷宮に入ったのは別カウント。
 洗濯用と掃除用と夕食用と湯浴み用に水を大量に作り出したのでMP回復のために二回迷宮に行ったのも、数のうちに入らないだろう。
 洗濯桶でこれだと、湯船に水を張るのがちょっと心配だ。

「では夕食は俺が作ろう。メニューはホワイトシチューだ」
「ホワイトシチュー、ですか?」
「食べたことないか」
「ありません」
「まあ楽しみにしていろ」

 ホワイトシチューなら、この世界の食材でも作れるはずだ。
 まず、寸胴鍋の肉をワインと水で煮込む。
 エキスを採るために三十分は煮込んだ。

 この世界では、ワインと牛乳は持っていったビンに店で入れてもらう。
 紙パックとかペットボトルとかないし。

 次にロクサーヌが野菜シチューで使っていたような野菜を加え、弱火でさらに煮込む。
 肉の臭みを取るにはネギがいいが、ネギは犬に毒だ。
 ロクサーヌに訊いたところ、食べられない野菜はないと言っていた。
 ロクサーヌが自分で使っていた野菜だから、問題ないだろう。

 煮込んでいる間にホワイトルーを作る。
 中華鍋にバターをひいて、小麦粉を炒めた。
 そこに牛乳を入れ、とろみが出るまでよくかき混ぜながら弱火で煮る。

 ホワイトルーはきっちりとできた。
 これでクリームコロッケやクラムチャウダーも作れるはずだ。
 グラタンは、オーブンで焼くので難しい。

 できたホワイトルーと緑の色合いをそえる葉野菜を寸胴鍋に入れる。
 最後に、味見をして、塩と胡椒で味を調えた。
 成功だ。
 ロクサーヌもおいしそうに食べてくれた。

「ご主人様、とっても美味しいです」

 白いものを口の中に入れたまま言うんじゃないといいたい。
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