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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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地図


 ロクサーヌに抱きついたまま目覚めるのは気持ちがいい。
 まどろみながらロクサーヌの抱き心地を味わうのも快い。

「ん……」

 そして目覚めたとき、ロクサーヌからキスをしてくれるのは最高の気分だ。

 ロクサーヌの口づけは、柔らかく、甘い。
 舌をうごめかせながら、徐々に頭を起動させる。
 ひとしきりロクサーヌの口を吸った後、ゆっくりと唇を放した。

「おはようございます、ご主人様」
「おはよう、ロクサーヌ」

 目を開けるが真っ暗だ。
 装備品も含め、着るものは全部ベッド横のマットの上に置いてある。
 生活の知恵らしい。
 暗い中、感覚だけを頼りに全部着けた。

 迷宮に行くのをおろそかにするわけにもいかないし、他にやることもない。
 いや。やることはあるのだがあまりそういうわけにも。

 一日だけなら、ちょっとだけならと思わなくもないが、どこかで歯止めは必要だ。
 今の俺なら誰はばかることなく二十四時間ロクサーヌとベッドの中ですごすことができる。
 淫靡で自堕落な生活には憧れるが、ブレーキが効かなくなるだろう。

 せめてもう一度キスを。
 ワープで移動する前に、ロクサーヌを抱き寄せた。
 ロクサーヌの舌を絡め取り、吸い込む。

「んん……」

 ロクサーヌが軽くうめくが、拒否するような様子はない。
 唇で甘噛みするようにロクサーヌの舌を圧迫すると、ロクサーヌは俺の口の中で舌をちろちろとうごめかせた。


 ベイルの迷宮から帰って食事をしながら、ロクサーヌと会話する。

「このおひたしはなかなか旨いな」
「ありがとうございます。ハムエッグもとても美味しいです」

 朝食は、買ってきたパンと、ロクサーヌが作った何かの葉野菜のおひたしと、俺が作ったハムエッグ。
 おひたしは塩茹でして酢であえたもの、ハムエッグは焼いただけという、極めてシンプルな料理だ。
 シンプルな分、味は悪くない。悪くなりようがないというところか。
 煮込んでブイヨンを採ったりするのは難しいのだから、こういう料理にすべきなのだろう。

「パンはこっちにして正解だったな」

 昨日の夕食の一個二ナールのパンはパサパサしてあまり美味しくなかった。
 ケチっても駄目ということだ。
 迷宮帰りに買った今日のパンは一個八ナール。それをロクサーヌと半分ずつ食べる。

「ですが、私も同じものをいただいてよろしいのでしょうか」
「迷宮に入ってもらう以上、体が資本だからな」
「ありがとうございます。がんばります」

 卵は一個五ナールを一人二つ、ハムは、百ナールの燻製肉の塊から切り出したから、一人分十五ナールと考えて、全部で一人前三十ナールくらいか。
 おひたしの葉野菜は、昨日の野菜シチューに使ったものとあわせて、一山数ナールだ。

 この世界では結構豪華な部類に入る食事だと思う。
 ハムだって、切って焼いただけでこれだけ旨いのだから、塩も香辛料も効いた高級品だろう。

 量も多めだ。
 一日二食のこちらの生活にも慣れてきた。
 朝食は日が昇ってから、夕食は日が沈む前に。
 時間があくので、朝食前は結構腹が減る。

 食事に関しては、妥協するつもりはない。
 江戸時代の日本人と現代の日本人とでは平均身長が二十センチくらい違うという。
 DNAに違いはないのだから、栄養がいかに大切か分かろうというものだ。
 一日二食だし、甘いものはそれほどないし、迷宮にも入っているのだから、太ることはそれほど考えなくていいだろう。

「今日はクーラタルの迷宮に行ってみたいと思う」

 食事をしながら、予定についても話す。

「かしこまりました」
「後は、部屋が殺風景なのをなんとかしたいが」

 なにしろ家具がいくつか置いてあるだけだ。

「絨毯を飾ればよいと思います」
「絨毯を、飾る?」
「はい」
「敷くんじゃなくて?」
「はい」

 ロクサーヌによれば、絨毯を敷くのは金持ちだけらしい。
 普通の家では絨毯は壁掛けとして使うそうだ。
 文化の違いか。
 まあ壁紙がない世界だから、いい装飾品なのだろう。

「絨毯となると帝都か。ロクサーヌは帝都に行ったことある?」
「残念ながらありません。私は家の掃除をしたいので、その間に行かれてはどうでしょうか」
「じゃあ、午前中はちょっと帝都に行ってみるか。クーラタルの迷宮は午後からで」
「かしこまりました」

 クーラタルの迷宮にワープするにはどうせ一度は俺が中に入らなければならない。
 帝都の帰りがけに寄ればいいだろう。

 朝食の後、家から帝都の冒険者ギルドにワープした。
 帝都をぶらついて、どこにどんな店があるか確認する。
 帝都は広く、あちこちに様々な店があった。

 クーラタルにある店は、ほとんど探索者相手なので、店の数も商品の種類も多くはない。
 装備品や、ドロップアイテムの買い付けも兼ねた食材屋などが中心だ。
 多くの店や商品が集まるのはやはり帝都らしい。

 絨毯屋、服屋、調味料屋などを見つけ、場所を覚える。
 見るだけで買いはしなかった。
 買うときにはロクサーヌを連れてきた方がいいだろう。

 それに、場所柄なのかたまたまなのか、高そうな店しかない。
 服屋なんかも、クーラタルにあるのを田舎の洋品屋とすれば帝都にあったのは銀座の高級ブティックだというくらいに違いがある。
 見るからに高そうだ。

 一階なのに段差があって何段か上がるようになっているし、入り口にはマットが敷いてあるし、中は広々としているし。
 奥には生地が置いてある。
 オートクチュールってやつだろう。

 帝都だからなのか、冒険者ギルドのある一角が特別に高級店ぞろいなのかは知らない。
 おかげで高級品の絨毯を売っている店が見つかったのだからよしとしよう。

 昨日あれこれ買いそろえたので残金も心もとない。
 金貨は二枚残っているが、銀貨は残り百枚を切った。

 帝都からの帰りがけ、その少ない銀貨の中から入場料一枚を払おうと騎士団詰め所に並ぶ。

「迷宮攻略地図もいかがっすかー」

 騎士団詰め所ではクーラタル迷宮の攻略地図も売っていた。
 商売っ気の多い騎士団だ。
 台の上に、茶色い粗末な紙が並んでいる。
 紙には簡単な矢印が書いてあって、地図になっているようだ。

「階層別の攻略地図は一枚二十ナール、全階層がそろった冊子は一冊千ナール、羊皮紙の謹製本は二万ナールになりま~す」

 とりあえず分かることは、二万ナールは高い。
 地図を一枚一枚買いそろえるよりは冊子を買った方が安いだろう。
 九十一階層は攻略できていないはずだから、全階層という冊子が九十ページなのか九十一ページあるのかは知らない。

 しかし、どうにもペラッペラの小汚い紙だ。
 それほど時間が経たないうちにボロボロになるのではないだろうか。
 冊子で買っても無駄になる可能性がある。
 一枚一枚買うべきか、冊子を買うべきか。

「この冊子もくれ」

 冊子にすることにして、差し出した。
 一階層から順に地図を買っていくと、こちらの攻略状況をかんぐられる可能性もある。
 地図だけ買って迷宮に入らないのも、変に思われるだろうし。
 きちんと保管しておけばすぐ駄目になることもないと期待しよう。

「ええっと……。全部で銀貨十一枚になります」

 騎士が悩みながら伝えてくる。
 三割引は効かないようだ。
 騎士なのに売り子までさせられて、大変ではあるのだろう。

 入場料とあわせて銀貨十一枚を払った。迷宮の入り口に向かう。
 迷宮入り口には案内の探索者もいた。

 クーラタルの迷宮の案内をする探索者は、初代皇帝の偉業を今に伝える者なので、格が高いらしい。
 今は九十階層を突破できるパーティーはないが、行くだけならば九十一階層にも行ける。
 案内をする探索者が代々伝えてきたからだ。

 この探索者に金を払って三階層か四階層に飛んでもいいが、将来何かのときに必要になることがないとも限らないから、一階層から入る。
 前のパーティーに続いて、迷宮に入った。
 中はベイルの町近くの迷宮と変わりがない。
 殺風景の見慣れた洞窟だ。

 違いは、クーラタルの迷宮には人が多いということだ。
 結構そこかしこに人がいる。
 こんなんで狩になるのだろうか。
 先の方に進んでも、人影が途絶えることはなかった。

 なるべく人の少ないところで、ワープと念じ家に帰る。
 探索者がダンジョンウォークを使うことは何もおかしくないので、無詠唱がばれなければ問題ない。

「ただいま、ロクサーヌ」
「お帰りなさいませ、ご主人様」

 家に帰った俺をロクサーヌが迎えた。
 拭き掃除の手を休めて、頭を下げる。

 これでメイド服だったら完璧だったのに。
 まあかなり高価な衣装だったので、実作業をするときに着ないのはしょうがない。

「そういう挨拶って、ベイルの商館で習ったのか」

 ロクサーヌの立ち居振る舞いは堂に入ったものだ。
 誰にも教えられずに身につけたということはないだろう。
 奴隷商人の下にいた時代のことは、少なくとも愉快な思い出ではないだろうから、あまり思い起こさせたくはないが。

 今回はあえて訊いてみた。
 次の奴隷を買うときにも必要な情報だろうから。

「はい、そうです。おかしいでしょうか」
「いや。すばらしい」

 やはり奴隷商人のところで覚えたらしい。
 近くに寄って、イヌミミをなでる。

「はい。ありがとうございます」
「クーラタルの迷宮にちょっと行ってきた。あそこは人でいっぱいだな」

 すぐに話題を変えた。

「クーラタルの迷宮は、攻略地図が誰でも簡単に手に入り、人が多いので魔物が大量に湧く小部屋に遭遇する危険があまりありません。倒される魔物も人も多いので魔結晶や宝箱が多く出ます。お金を払っても、それ以上の恩恵があるとされています」
「倒される魔物が多いと魔結晶が多いのは分かるが、宝箱はなんでだ」

 魔結晶は魔物を形作っていた魔力が集まってできる。
 人が多くいてたくさん魔物が倒されれば、魔結晶も多くできるのだろう。

「魔物に倒された人が着けていた装備やアイテムボックスの中身が宝箱の実体だといわれています」

 うーん。なんかひどい話のような。
 身もふたもない。

 人が多ければ倒される人も多い。
 だから宝箱がたくさん出る。
 その宝箱を目当てにますます人が集まる、ということか。

「しかしあれだけ人がいて、狩になるのか」
「クーラタルの迷宮は相当に広いので、奥へ行けば人も少なくなります。それに、一階層は初心者が多いので、周りに人がいた方が安全なのです」
「それもそうか」
「上に行けば、人はだんだん減っていくはずです。あるいは、人の少ない夜中に探索するという手もあります」

 惑星の裏側から飛んできたりしたら、向こうは昼間だが。
 さすがにそんな遠くからは来ないのか。
 フィールドウォークで飛べる距離にも限界があるかもしれない。

「じゃあクーラタルの迷宮に行くのは明日の朝にして、今日はベイルの迷宮に行くか」
「かしこまりました」

 その後、掃除などで使った水を補給して、ベイルの迷宮に行った。
 帰ってから魔法で水を作るが、まだ足りない。
 夕食用、トイレ用、寝る前の湯浴み用と、必要な水は多い。

「悪い。ちょっと手伝って」

 MPをかなり消費したので、ベイルの迷宮の四階層に飛ぶ。
 ロクサーヌの案内にしたがって進むと、ミノ二匹、グリーンキャタピラー一匹の団体がいた。
 糸を吐かれると厄介なので、まずグリーンキャタピラーから片づける。

 ミノ二匹はロクサーヌが相手をして。
 と思ったら、うち一匹が俺を狙っていた。
 ツノが振られる。

 あわてて避けたが、かわしきれなかった。
 デュランダルを握っていた左手人差し指が、ツノとデュランダルの間にはさまってしまう。

 いってええぇぇ。

 思わず涙が出るくらい痛い。
 打ちどころが悪かった。
 ジンジン響いてくる。

 報復のため、ミノ二匹を思いっきり斬りつけた。
 八つ当たりだ。
 分かっている。油断した俺が悪かった。

 少し狩るだけだからと、皮のグローブもはめていない。
 ロクサーヌには皮のミトンを渡したが、自分に着けるのはさぼっていた。

 魔結晶もアイテムボックスに入れたままだ。
 これはしょうがない。
 デュランダルを出すときには、結晶化促進と獲得経験値のスキルから削っている。
 必要経験値は、どういう風に働くのか仕様が分からないので、なるべくいじらないようにしていた。

 例えば、魔物を二十匹倒してレベルが一上がるとしよう。
 必要経験値十分の一をつければ、魔物二匹でレベルが上がる計算だ。
 では、必要経験値のスキルをつけずに一匹倒し、必要経験値十分の一をつけてもう一匹倒したとき、どうなるだろうか。
 逆に、必要経験値十分の一をつけて一匹倒し、必要経験値のスキルをつけずに十匹倒したら、レベルは上がるのだろうか。

 ある程度の感触は得ているが、厳密に検証しようとすると大変だ。
 二階層より上では魔物の種類と数を完全にそろえることはできないし、一匹の魔物の経験値がすべて同じとも限らない。

 検証するときにデュランダルをつけたりはずしたりはできないから、武器六をつけたままでの検証になる。
 それでは必要経験値や獲得経験値のスキルに多くのボーナスポイントを回すことができない。
 下手をすれば魔物を何十何百と狩ることになるだろう。

 そこまでして検証するメリットがあるだろうか。
 魔物を二十匹倒してレベルが一上がるときに、必要経験値のスキルをつけずに一匹倒し、必要経験値十分の一をつけてもう一匹倒しても、多分レベルは上がらない。
 それが分かればとりあえず十分ではないだろうか。

 後は、無駄になる可能性を考えて、必要経験値のスキルをなるべく動かさないようにすれば、それでいいだろう。

 迷宮から家に帰ってきた。
 指がまだ痛い、ような気がする。
 慣れのせいか、隙があった。侮っていた。
 やはり迷宮は恐ろしいところだと、いい教訓になったろう。

 人差し指を見てみるが、一応、何ともないようだ。
 あの痛みから察するに内出血ぐらいはしていたかもしれないが、デュランダルのHP吸収で治ったのだろう。

「どうかしましたか」

 指を見つめる俺に、ロクサーヌが訊いてきた。

「ちょっとかすってしまった」
「大丈夫ですか」

 割と心配そうだ。
 ロクサーヌの忠告を無視して皮のグローブをつけなかった俺が悪いのに。

「大丈夫ではないな。ちょっとなめてもらえるか」

 そんなロクサーヌの眼前に、人差し指を差し出す。

「え……あ、あの……」

 ロクサーヌは戸惑ったようだが、特に拒否するでもない。
 いけそうだ。
 そう判断して、指を口元に近づけた。

 ロクサーヌが唇を開く。
 淡い薄紅色の唇がゆっくりと隙間を広げた。
 深紅の中身がさらされる。
 真っ赤な舌が艶かしい。

 ロクサーヌが指に顔を近づけ、唇を閉じた。
 人差し指がふわりとした感触に包まれる。
 しっとりとして温かく、そして柔らかだ。
 肉厚の舌が優しく絡みつき、俺の指を包み込んだ。

 ロクサーヌが瞳を閉じ、俺の指をしゃぶる。
 ロクサーヌの栗色の睫毛は、狼人族のせいか、量が多く、長い。
 妖艶というほどではないが、華麗だ。
 しっかりと化粧をした大人の女性という趣があった。

 俺は指を動かさず、ロクサーヌのするがままにまかせる。
 人差し指の周りをロクサーヌの舌が何度か往復した。
 優しく絡みつくようにこすられる。
 穏やかで慈愛に満ちた口の中で、人差し指が癒された。

 再び薄紅の唇が開かれ、深紅の口の中が見える。
 指と口蓋の間に白い糸ができるが、舌が動き、なめとった。
 ロクサーヌの顔がゆっくり離れていく。

 追撃したくなるのをかろうじてこらえた。
 これは追撃したくなる。
 ロクサーヌ、あんたなんちゅうことを。

「う、うむ。完璧なまでに痛みが引いた。ありがとう」
「はい……」

 ロクサーヌが恥ずかしげに顔を背けた。

「これは何かのスキルか」
「いいえ。違います」
「それにしてはすごいな。治癒魔法レベルだ」
「そんなことはないと思います」
「いや、絶対にすごい。これからも何かあったら、頼む」
「……あ、あの……はい」

 褒めちぎり、最後にはまたやってもらうことを認めさせる。
 すごいことをしてもらった。
 油断して痛い目にあってしまったが、これでプラマイゼロ、むしろ差し引きプラス、怪我の功名だ。
舌でなめて傷を治すスキルは、『はいぱーわんこすとーりー』作者のaketiさんからいただきました。
ロクサーヌはそんなスキルを持っていません。
+注意+
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