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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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盗賊

 
 村全体に響くような大きな声が轟いた。

 声のする方を見る。
 さっき村の外に出て行った二人連れの男が、大慌てで戻ってきていた。

 なにやら叫んでいるが、何を言っているのかは聞き取れない。
 そのうち、村の人たちが武器を持って家から出てきた。
 剣や鍬を持っている。

 まさか。見つかったか。
 と思ったが、どうやら俺目当てではないようだ。

 村人たちは何人かまとまると東に向かって駆けていく。
 俺も森の中をひっそりと移動した。

 東の方を見ると、砂煙が立っている。
 何人もの人が村に押し寄せてきていた。


盗賊Lv7
装備 銅の剣 皮の靴

盗賊Lv11
装備 銅の剣 皮の鎧 皮の靴

盗賊Lv4
装備 銅の剣


 盗賊たちはまだ遠くにおり米粒ほどにしか見えないが、必要な情報は浮かんでくる。
 便利だな、鑑定スキル。

 何が起こっているのか、この鑑定結果を見れば明らかだ。

 ゲームスタートが盗賊襲撃イベントかよ。
 このまま森の中に隠れていればやり過ごせるのかもしれないが。

 盗賊たちのレベルはおしなべて低い。
 レベル一桁なら俺でも十分相手になるだろう。
 こっちには聖剣デュランダルがある。
 村人までが持っている初期装備っぽい銅の剣では対抗できまい。

 村人たちは、俺が寝ていた馬小屋の少し先、村の境目に陣取っていた。
 そこで盗賊を迎え撃つようだ。
 さっきのLv25のおっさんが中心にいる。
 村長もいた。
 無理すんな、Lv8。

 対する盗賊は……。


盗賊Lv41
装備 鉄の剣 盗賊のバンダナ 鉄の鎧 皮の靴


 この男が頭目だろう。
 一人だけレベルが高い。
 盗賊のバンダナなんていうしゃれた装備品まで身に着けている。

 その次は、がくっと落ちてLv19。
 さっきのLv11で三番目だ。
 あとは一桁。

 レベルが低いのは最初のイベントだからか。
 頭目に注意すれば、俺でもなんとかなりそうだ。


 盗賊たちは、やがて村にたどり着くと、剣をかざして斬り込んできた。

 村人がそれを迎え撃つ。

 すぐ目の前で、敵味方入り乱れての戦いが始まった。
 何か叫んでいるが、何を言っているかはさっぱり分からない。

 戦っている場所は俺が隠れている森の端からはすぐ先だ。
 森から飛び出せば不意をつくことができるだろう。

 盗賊も村人も両方レベル低いせいか、どちらかが圧倒することはなく、互角のつばぜり合いを展開している。
 Lv41の頭目はLv25のおっさんが相手をしていた。

 しかし、さすがにレベル差があるせいか、やがて頭目が優位に立つ。
 頭目がおっさんを押し倒して馬乗りになった。おっさんを抱きかかえ、腕を動かしてなにやら懸命に突いている。

 何をしているのか。
 おっさんが着けている鎧の間から、剣を刺しているのだろう。
 甲冑を着けて戦うことが前提の古武術ではこうすると聞いたことがある。

 おっさんを組み伏している頭目は、当然下を向いていた。
 ひょっとして、今がチャンスか?

 今なら、気づかれずに頭目のところまで行けそうな気がする。
 聖剣デュランダルで背後から一撃を加えれば、かなりのダメージを与えられるだろう。

 心臓が高鳴った。
 腰に差していたデュランダルを鞘から抜き、両手で握り締める。

 デュランダルは、木刀よりは重いが、振り回せないほどではない。
 剣道をやっていた俺には楽勝だ。
 ゲームの初期イベントなら、Lv1の俺でも倒せない相手ではないだろう。

 ならば行くしかない。

 大きく息を吸う。
 周囲の音が聞こえなくなった。
 もう、誰が何を言っているのかさっぱり分からない。

 俺は森の中から飛び出す。
 Lv41の頭目めがけ、一目散に駆けた。

 途中、気がついた賊の一人が間に立って防ごうとする。
 俺はデュランダルを振り下ろし、盗賊Lv2を一刀の下に斬り捨てた。
 Lv2だとこんなものか。

 再びデュランダルを振り上げ、走り寄る。最後に少し飛び上がり、頭目の横に着地した。
 勢いを殺すことなく、そのまま腕に伝える。しっかりと足を踏ん張り、剣を振り下ろした。
 下を向いている頭目の首元に剣を落とす。デュランダルが盗賊の首を捉えた。
 頭目の頭が撥ね跳ぶ。
 残された首元から、赤い血が吹き出た。

 うわっ。
 どんなスプラッターだよ。
 クソゲー決定。

 などと考えている余裕はない。
 俺は他の盗賊に挑みかかる。

 頭目の周りにいたレベル一桁は、全部一刀で片がついた。
 デュランダルを振るうたびに、血しぶきがあがり、敵が数を減らしていく。

 俺は頭目の次にレベルが高いLv19を探した。
 レベル一桁の雑魚を片づけながら、首を左右に振り、盗賊たちをチェックする。
 盗賊Lv19は、頭目からは少し離れた位置で村長のいるところを攻撃していた。
 村長の周りには何人かの村人が集まり、防御を固めている。

 誰かが何かを叫んでいた。
 盗賊Lv19がこちらを見、やはり何かを叫ぶ。

 盗賊たちが戦いを止めて逃げ出し始めた。
 頭目がやられたので撤退するのだろう。

 むしろ背中を見せる今がチャンス。
 俺も追撃戦に移る。

 何人かの盗賊を背中から屠った。
 目の前に、Lv11の盗賊が立ちふさがる。三番目の男だ。
 左から振られる剣を右から受け止め、今度は俺が左から剣を振って、受け止めさせた。
 相手は鎧を着けているので、胴に一撃を入れても倒せないだろう。

 俺は素早く判断すると、剣を小さく動かし、小手に入れる。
 剣道をやっていればこその動きだ。
 盗賊Lv11の右手首がすぱりと切断され、斬り落ちた。さすがはデュランダル。
 手首から吹き出る血を無視し、返す刀で切り上げる。手首を落とされては、剣で受けることはできない。
 盗賊Lv11の首を跳ね飛ばした。

 血しぶきの中を駆ける。
 盗賊たちは完全に退却モードに入っていた。
 盗賊Lv19は我先にと逃げている。情けないやつだ。というか、所詮は盗賊か。

 俺は逃げようとする盗賊をさらに屠った。そして、盗賊Lv19にも斬りつける。
 逃げ出そうと無防備な背中を見せるLv19はデュランダルの相手ではなかった。

 残っている残党を蹴散らす。
 結局、盗賊たちは誰も逃げ出すことができず、俺の経験値になった。


「ふう」

 すべての盗賊を倒すと、俺はその場にへたり込んだ。
 ゲーム上のこととはいえ、息が荒い。
 大きく息をはく。気を落ち着けた。
 周囲の音が再び耳に入ってくるようになる。

 フィールド上には、盗賊の死体や血しぶきが散乱していた。
 こんなところまでリアルにしなくてもいいのに。
 倒した相手が消え去るのに時間がかかるようだ。

 βテスターは文句を言わなかったのだろうか。
 完全なヴァーチャルリアリティーのゲームなんて聞いたことがないので、ひょっとして俺が今やっているのがβテストかもしれないが。
 なら俺が文句をつけてやる。

 座って息を整えていると、村長が近づいてきた。
 Lv8の微妙にレベル低い村長。

「××××××××××」
「何言ってっか分かんねえ」
「失礼。ブラヒム語の話者でしたか」

 あったな。そんな設定。

「そうだ」
「おお。さすがです。冒険者の方ですか」

 何がさすがなのか。あんたもしゃべってるじゃん。

「そんなところだ」

 適当に相づちを打っておく。

「村の窮地を救っていただき、ありがとうございます」
「いや。よい」

 そういうイベントだし。

 しかし妙に生意気そうだな、俺。
 村長がへりくだりすぎなのが原因だ。
 レベル低いとはいえ、一応村長なのに。
 丁寧語を使うのも面倒だし、なんとなく、こうなってしまう。

「できる限りのお礼はさせていただきます」
「そうか。では、どこか横になる場所はないかな。少し疲れた」

 ゲームとはいえ、実際に体を動かしたような疲れがある。
 さすがヴァーチャルリアリティー。
 それに、盗賊の死体が転がっているここには長居したくない。早く消えろ。

「それでは、わたくしどもの家へお越しください。村長のソマーラと申します」


ソマーラ 男 68歳
村長Lv8
装備 銅の剣 ローブ サンダルブーツ 村長の指輪


 情報に間違いはないようだ。

「頼む。俺の名はミチオだ」

 こいつら苗字ないみたいだし、道夫だけでいいだろう。
 村長が先に進みだしたので、あわてて立ち上がり、追いかけた。

「××××××××××」
「××××××××××」

 村長と村人たちの会話は、何を言っているのかさっぱり分からない。
 どうなってるんだろうね、このゲーム。

「ブラヒム語を話せる人間は少ないのか?」
「この村では、わたくしと商人のビッカー、宿屋の女将だけでございましょう」
「ふうん。そんなものか」
「ミチオ様も見たところまだお若いのに、ブラヒム語を操るとはさすがでございます」
「うーん」

 何がさすがなのか。
 ちなみに、ブラヒム語は日本語ではない。日本語ではない変な響きだ。
 もちろん俺に話せるはずはないのだが、何故か完全に理解し、しゃべることができる。
 よく分からないヴァーチャルリアリティー。

「もう一人、ブラヒム語を話せる元冒険者の男がおったのですが、先ほどの戦闘で……」

 村長が声を落とした。
 Lv25のおっさんだろうか。あるいは、元冒険者ならジョブは村人以外なのか。それらしい人間はいなかったが。
 どうなっているのだろう。

 俺は自分を見る。


加賀道夫 男 17歳
村人Lv2 盗賊Lv2
装備 デュランダル サンダルブーツ 決意の指輪


 おおっと。
 先ほどの戦闘でレベルが上がったようだ。
 激闘だったから当然というべきか。あれほどの戦いだったのに1しか上がっていないと嘆くべきか。

 俺たちはそのまま村長の家に向かった。

「××××××××××」
「××××××××××」
「お湯を用意させましょう」
「悪いな」

 村長が家の者に何か話しかけ、俺を家の中へと導き入れる。
 村長の家は二階建ての民家だった。土壁造りの、田舎風のたたずまい。
 あまり文明レベルは高くないようだ。古代から中世前期といったところだろうか。
 銃も弓もなかったしな。

 玄関から入ると大きな土間がある。
 そのすぐ横の小さな部屋に、俺は案内された。

「こちらの部屋でしばしお休みください」
「そうさせてもらおう」
「それでは」

 部屋は、やはり土間であることに変わりはないが、奥に木の板が渡してあった。
 俺は板の上で横になる。

「ふう」

 ため息をはいた。
 いったん、ログアウトするか。

 ……。

 あれ?
 ログアウトって、どうやるんだ?
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