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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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赤信号


 翌日の迷宮探索は二階層の途中にある多分魔物の出ない小部屋からスタートした。
 このまま迷宮にこもるだけでロクサーヌを手に入れるだけのお金を獲得できるかどうかはかなり疑問だが、深夜なので他にやることもない。
 ベイル亭の玄関を出たすぐ横の壁から迷宮内にワープする。

 二階層の探索は結構進んでいたのか、迷宮に入ってすぐ、ボス部屋に隣接するであろう小部屋にたどり着いた。
 深夜のせいか、順番を待っている人は誰もいない。

 ボスと戦うときはデュランダルを使うべきだろう。
 デュランダルを出し、MP回復速度五倍をはずしてフィフスジョブをつけ、小部屋の奥に向かった。
 つけるジョブは戦士と剣士だ。

 サードジョブのままなら必要経験値十分の一をつけることができるが、やめておく。
 ボス戦なので経験値よりも安全を優先した方がいい。
 何かのときに魔法やラッシュが役に立つかもしれないし。

 奥の扉はすぐに開いた。
 気を引き締めて、隣の部屋に入る。
 煙が集まり、魔物が現れた。


ホワイトキャタピラー Lv2


 名前のとおり、グリーンキャタピラーの白いやつだ。一回り大きい。
 一階層のウドウッドもそうだったが、その階層に現れる魔物と近しい種類のものがボスになるのだろうか。

 などと考えていると、ホワイトキャタピラーの胸部の下にオレンジ色の魔法陣ができた。
 やば。糸を吐くつもりだ。
 グリーンキャタピラーとは別の魔物だから違う特殊攻撃をしてくるということも考えられるが、同じ芋虫だから口から何かを吐き出す可能性が高いだろう。
 魔物の口元を注視しながら、ファイヤーウォールと念じる。

 ホワイトキャタピラーが糸を吐いた。やっぱり糸だ。
 ホワイトキャタピラーが糸を吐いた直後、俺の正面に火の壁ができる。
 俺にかかるはずだった糸がファイヤーウォールにくべられた。
 糸の燃える音がかすかに響く。

 さっそく魔法が役に立った。
 サードジョブのまま魔法使いをはずして戦士にしていたら、どうなっていたことか。

 横に移動して、デュランダルで攻撃する。
 ラッシュで追撃を加えたところで、また魔法陣が出てきた。

 一歩下がり、魔物の動きを見ながらファイヤーウォールと念じる。
 馬鹿め。何度やっても同じことだ。

 もっとも、こっちは一人である。
 ボスだから多分長期戦になるだろう。
 敵の狙いとして、まず糸を吐いてこちらの動きを封じようとするのは正しい戦略だ。

 逆にいえば、ホワイトキャタピラーの吐く糸に絡めとられてしまってはまずい。
 満足に動けないところをボコボコにされるだろう。
 その前に倒す。

 横に移動して、デュランダルをスイングした。
 続いて剣を振り上げ、ラッシュと念じて斬りつける。
 デュランダルが魔物の頭に叩きつけられた。

 まだ倒れないのか。
 さすがはボスLv2か。

 いったん引いて、足元に魔法陣が出ないか観察する。
 ホワイトキャタピラーはしかし、糸は吐かず体当たり攻撃をかましてきた。
 あわてて避けようとするが、右肘に喰らってしまう。

 痛みを堪え、魔物の横っ腹へデュランダルをスイングした。
 ようやくに剣が魔物を切り裂く。ホワイトキャタピラーが倒れ伏した。


絹の糸


 魔物が煙となって消え、光沢のある糸が残る。
 ただの糸よりは高級品だろう。

 ホワイトキャタピラーは結構賢いようだ。
 最初はこちらの足を止める作戦を行い、余裕がなくなると直接攻撃に切り替えた。
 知性があるのか。

 もっとも、単純なプログラムで実現できそうではある。
 デュランダルで一撃だと分かりにくいが、グリーンキャタピラーも同じような行動パターンだったかもしれない。
 知性と呼べるほどでもないか。
 ファイヤーウォールで無効化された特殊攻撃を二度も行ったし。
 あるいは二度やって駄目だと悟ったから物理攻撃に切り替えたのか。

 部屋の中を見渡す。
 別に何もない。
 俺の前に通ったパーティーも全滅することなく通過したようだ。

 俺は隣の部屋へ行き、三階層へと移動した。


 三階層の入り口となる小部屋も、一階層二階層とほぼ同様だ。
 後ろに黒い壁があって、道が三方向に延びている。

 二階層のボス部屋は、結局正面の道が近道だった。
 一階層は右、二階層は正面だ。
 なら三階層は左だろう。

 デュランダルは持ったまま、サードジョブにして左の道に入る。


ニードルウッド Lv3


 最初に出てきた魔物はニードルウッドだった。
 三階層はLv3なのか。
 駆け寄ってデュランダルを振り落とす。

 デュランダルだとLv3でも一撃だ。
 魔物がLv3で強くなっているのだとしても、こちらも順調にレベルアップしているのだから、このくらいでなければ困る。


コボルト Lv3


 次に現れたのが、この階層の魔物であるらしいコボルトだ。
 濃い青色をした小人。大きな目と尖った耳、牙もはえている。顔がでかい。まさに二頭身、体の半分くらいが顔だ。
 右手にはナイフを持っている。あれが攻撃武器か。

 刃物は怖い。
 魔物の体当たりを喰らってできた擦り傷はデュランダルのHP吸収で消えたが、刃物の切り傷はHP吸収で消えるだろうか。
 切り傷なら大丈夫かもしれない。しかし、切断されたらどうだろうか。

 腕を切り落とすのは大変でも、指くらいなら落とせそうだ。
 あるいは、内臓をえぐられたら。神経が切れたら。
 流れ出た血液はHP吸収で復活するのだろうか。

 いろいろと不安になる。
 もちろん試してみたくはない。

 刃物を持った敵には先手必勝だ。
 俺はファイヤーボールと念じた。
 頭上に火の球ができる。

 遅っ。

 コボルトの動きは鈍かった。
 火の球が近づくまで二、三歩しか動けていない。
 まごまごしている魔物を火球が捉えた。
 コボルトが炎に包まれ、倒れる。

 弱っ。

 コボルトはファイヤーボール一撃で沈んだ。
 弱い。弱いよ、コボルト。
 ファイヤーボールで一撃はないだろう。
 グリーンキャタピラーLv2で二発、ニードルウッドLv2だと三発は耐えるのに。


コボルトソルト


 コボルトが煙となって消えると、白い牙が残った。
 白い牙、といえば聞こえはいいが、名称的にただの塩なんじゃないだろうか。
 レベルが上がって余裕があるので、アイテムボックスに突っ込む。

 アイテムボックスは、一応人がいないことを確認しながら出した。

 今、アイテムボックスには金貨三十三枚に加えて銀貨も二十一枚入れている。
 リュックサックに背負うよりアイテムボックスに入れた方が安全だろう。
 人前で出すのは呪文を唱えるのが面倒なので、アイテムボックスの銀貨は使わないかもしれないが。
 アイテムボックスの中身を盗むような魔法はない、と思いたい。

 三階層の敵と一通り当たるまでは、と思ってデュランダルは出したままできたが、この弱いコボルトが相手なら必要ないだろう。
 俺はデュランダルをしまった。
 サードジョブのまま、MP回復速度五倍をつける。


グリーンキャタピラー Lv3

コボルト Lv3


 次に出てきたのは二匹連れだ。都合がいい。
 発見すると同時にファイヤーストームと念じた。火の粉が二匹の魔物に襲いかかる。
 コボルトはやはりそれだけで倒れた。

 残ったグリーンキャタピラーにファイヤーボールをぶち込む。
 魔物が劫火を耐えた。
 グリーンキャタピラーLv2は二発で沈んだが、Lv3だと二発では足りないようだ。
 Lv2からLv3でやはり強くなっているらしい。

 近寄ってくる芋虫に三発めをお見舞いする。
 最初の一撃が引きつけてからではなくファイヤーストームだったので、三発めも余裕で放てた。
 グリーンキャタピラーが倒れる。糸を残し、煙となって消えた。

 コボルトは弱い。
 二階層のグリーンキャタピラーよりも弱い。
 何か強力な魔法を撃ってくる可能性もなくはないが、旅亭の男にも騎士にも、三階層のコボルトは残念な魔物扱いされていた。
 本来なら一階層にでも出てくるべき初心者向けモンスターなのではないだろうか。

 弱いからといって低階層に出てくるべき理由があるかどうかは分からないが。
 実際出てこないのだから、そんな理由はないのだろう。
 現実はそんなものであるのかもしれない。

 それに、俺の場合限定でいえば、コボルトが三階層でよかったとも思う。
 コボルトは、顔がでかいし青くて気持ち悪いが、やや人間に似ている。最初から人型の魔物を相手にしていたら、冷静には対処できなかったかもしれない。
 ニードルウッドは明らかに植物だし、グリーンキャタピラーは芋虫だ。
 徐々に慣れていくことで、コボルトにも対処できているのではないだろうか。

 また、コボルトは刃物を持っている。
 刃物を持った敵と対峙すると、どうしても恐怖心が先に立つだろう。
 迷宮や魔物にも少し慣れ、何度も戦闘を繰り返してレベルが上がった今だから、その恐怖に打ち勝てているのではないだろうか。

 一階層の魔物がコボルトだったら、どうなっていたか分からない。
 そのときはそのときでどうにかなったのかもしれないが。


コボルト Lv3


 火属性が弱点という可能性もある。次は水魔法を放ってみた。
 ウォーターボールでも一撃だ。

 弱いということはこっちが得る経験も少ないだろう。
 効率的には問題がある。


ジャックナイフ 片手剣


 コボルトが倒れると、今度は持っていた刃物が残った。
 折りたたみナイフらしい。
 敵が持っていると恐ろしく感じるが、小型のナイフだ。

 折りたたんで刃をしまう。


 戦ってみると、コボルトはジャックナイフをよく残した。
 ニードルウッドがリーフを残すのは十匹に一匹くらいだが、ジャックナイフは三分の一くらいの確率で残る。
 魔物によって落とすアイテムの確率は異なるらしい。グリーンキャタピラーはいまだ糸しか残さないし。

 ジャックナイフの売値がどのくらいになるかは分からない。
 あまり高くはないだろう。
 ただのナイフだし、その上コボルトのドロップアイテムだ。
 弱いが残すアイテムが高く売れるというのなら、残念な魔物ではない。


 思ったとおりだと判明したのは、冒険者ギルドに行ったときだ。
 俺は、宿屋に戻って朝食を取った後、冒険者ギルドに向かった。

「コボルトソルトの買取はできるか」

 カウンターのアラサー女性に訊いてみる。

 しかし、何を売ってくるかを見れば、こちらの迷宮探索状況はギルド側に筒抜けだな。
 今のところ、別に知られて困るようなものでもないが。

「はい、できます。ギルドで買取を行っているアイテムの中で、一番安いものですね」
「具体的には」
「一本四ナールです」

 安っ。
 落ち込んだ俺を見て、アラサーの女性が笑った。
 その笑顔はプライスレスだ。

「うむ」

 しょうがないので、コボルトソルトを全部トレーに載せる。
 三割アップが効くので五本単位で売れば一ナールの得だが、それでも一ナールだ。そこまでする気力はない。

「ギルドではジャックナイフの買取も行っております」

 アラサーの女性が告げてきた。
 やはりこちらの状況は筒抜けか。
 コボルトソルトとジャックナイフを一緒に持ち込む冒険者が多いだけかもしれないが。

「装備品は駄目だと聞いたが」
「装備品の中でもジャックナイフだけは扱っております。数が多いので、鋳潰して銅貨を作る材料にするそうです」

 ジャックナイフは赤銅色ではなく普通に白銀色だったが、銅でできているのだろうか。

「ちなみに、買取価格は?」
「一本十ナールです」

 安っ。
 まあ小さいものだし、一本のジャックナイフから百枚も二百枚も銅貨は作れないだろう。
 価格はこんなものか。

「分かった。八百ムニャムニャ、アイテムボックス、オープン」

 アラサー女性に聞こえないよう、横を向いて小さな声で呪文を唱える振りをした。
 八百のお宝というよりは、八百屋の長兵衛さん、略して八百長だ。
 ジャックナイフを取り出してトレーに載せる。

「それでは少々お待ちください」

 しばらくしてアラサー女性が持ってきたお金は八百八ナールだった。
 ほんとに八百か。

 弱いだけあって、コボルトはやはりお金にならない。
 遅い弱い安いの三拍子だ。


 と同時に、期限までにロクサーヌを購入する金額を用意することに赤信号が点った。

 ロクサーヌを獲得するための資金を迷宮で稼ぎ出すことは無理だと判断すべきだろう。
 コボルトが主体の三階層でお金を稼げないことは明白だ。

 ならば下の階層に進めばいいかというと、そう甘くはない。
 三階層は半分がコボルトだが、ニードルウッドやグリーンキャタピラーも出る。
 一階層のニードルウッドが三階層に登場するのなら、三階層のコボルトだって四階層五階層に現れるだろう。

 二日に一階層ずつ攻略するとしても、期限までには六階層にしか進めない。
 確実にコボルトが足を引っ張る。
 迷宮で荒稼ぎすることは絶望的だ。

 迷宮入り口の探索者にお金を払ってもっと下の階層に連れて行ってもらうという手はある。
 しかし、下の階層に行ったからといって、ロクサーヌを購入するだけの金額を確実に稼げるという保証はない。

 第一に、コボルトの出現で下の階層へ行けばより稼げるだろうという期待が崩壊した。
 第二に、危険性を考えれば一足飛びに進むわけにはいかない。
 グリーンキャタピラーはLv2からLv3で強くなったから、下の階層へ行けば魔物が強くなることはほとんど確実だ。
 四階層や五階層で足を取られないとも限らない。
 第三に、三日前の時点で四階層までしか探索が進んでいなかったから、進むとしても、それほど下の階層までいけるわけではないだろう。 

 迷宮で稼ぐ以外の手段を考えた方がいい。
 そちらに力を注ぐべきだろう。

 リーフで稼ぐ手も考えたが、どうやら無理っぽい。

 毒消し丸は一個二十五ナール、三割アップが効くから十個三百二十五ナールで売れる。
 リーフをギルドへ売る価格は八十ナール、倍額が相場だと代読屋の女性が言っていたので、百六十ナールで買い取ることができれば、リーフ一枚から毒消し丸十個が生成できるから、百六十五ナールの儲けとなる。
 一日に百枚近くも集められれば、優に金貨一枚以上を稼ぐことが可能だ。

 しかしギルドのアラサー女性に訊いたところ、リーフはギルドでは買えないらしい。
 冒険者ギルドや探索者ギルドで買えないだけでなく、買取募集の依頼を出すこともできないという。
 薬師ギルドとの取り決めで、薬の材料となるアイテムはすべて薬師ギルドに回す契約になっているそうだ。
 そして、薬師ギルドがギルド員に分配するのだという。

 それではしょうがない。
 俺自身がどこかのギルドに加入するのは慎重になった方がいいし、入れたところで一日に百枚もの分配は受けられないだろう。
 百枚も分配されたら薬草採取士はみんな大金持ちだ。

 まあ、薬草採取士が我も我もと買取依頼を出したら収拾がつかなくなる。
 参入障壁を作って、新参者が荒稼ぎすることはできないようにしているわけだ。
 世の中はうまくできている。

 リーフで稼ぐことは無理のようだ。
 迷宮やリーフで稼げなければ、どうするか。

 その選択肢は、一番最初からあった。
 賞金首、ということになる。


 午前は、迷宮に入らずベイルの町の中を歩くことにした。

 見かける人ごとに鑑定をして、ジョブをチェックする。
 鑑定が使えるのは大きなアドバンテージだ。
 誰が盗賊か、見れば分かるのだから。

 正直、賞金稼ぎは気乗りしない。
 しないが、鑑定を使える俺にはかなり強みのあるビジネスであることは間違いないだろう。

 ベイルの町を出歩く人に、盗賊はいなかった。
 午前中から街中を歩いたりはしないようだ。

 ただ、盗賊を見つけたとしてどうするか。
 人を殺すことには抵抗がある。
 魔物を殺すことには慣れたが、倒せば煙となって消える魔物とはやはり異なるだろう。
 もちろん、賞金を稼ごうと思ったら、やらなくてはいけないわけだが。

 北の方にあるというスラム街にも行ってみる。

 南の方や中心部は大きかったり綺麗な建物が並んでいるのに、北に行くにつれて家がだんだんぼろくなった。
 確かに貧乏くさい。
 どこからがスラム街という明瞭な区別はないみたいだ。

 いや……。

 一歩足を踏み入れて分かった。
 明確に異なる。

 ここから先がスラム街だ。

 匂いが違う。人が違う。空気が違う。
 建物はさらに汚くなり、よどんだ空気が辺りを支配していた。
 路上生活者もいるみたいだ。

 道のかなり先に子どもが立っている。
 何をするでもなく、どこを見るでもなく、ボーっと突っ立っていた。
 道端で遊んでいるのではなく、ストリートチルドレンの類だろう。

 ここはやばい。
 初めてだからそう思うだけかもしれないが、第六感が警鐘を鳴らした。

 この雰囲気は危ない。
 絶対に危険だ。
 コンビニの駐車場でヤンキー座りしている兄ちゃんとか、ここに比べたら可愛いもんだから。

 俺はただちに回れ右をしてスラム街を後にする。
 安全と思える場所まで早足で避難した。

 少し戻り、東側に回り込む。
 東には娼館があるらしい。スラムとはいえ娼館があるなら、男が出歩いても不自然ではないだろう。

 行く途中に、人だかりがあった。
 大勢の人が道に集まっている。

 何だろう。
 鑑定をしながら俺もその輪に加わった。
 行列を見るととりあえず並んでみたくなるのは何故だろうか。

 人は道沿いに並んでいる。道の向こうに空き地があり、誰か倒れていた。


皮の鎧 胴装備


 鑑定してみると、名前やジョブではなく皮の鎧と浮かぶ。

 ……つまり死んでいるようだ。
 死体は鑑定できないのだろう。

「ありゃあ盗賊だな」
「なんで分かるんですか」

 人ごみの左の方で、おっさんの冒険者と商人がブラヒム語で会話をしていた。

「左手が切り取られている。三十分出てこないからな」

 あまり見る気もしないが、倒れている人の左手がないらしい。
 インテリジェンスカード目当てということか。
 インテリジェンスカードは死後三十分経つと自然に排出されるのだった。

 被害者の身元を隠すために持ち帰ったとも考えられるのではないか、と思ったが、まあ口にはしないでおく。

「ちょっと通してください」

 誰かが伝えたのだろう。そこへ騎士団の面々が到着した。
 美人騎士や見習い騎士もいる。
 騎士団には治安維持の役目もあるのだろう。

「盗賊か。おまえたち、死体置き場に捨てておけ」
「はっ」

 美人騎士はしかし、遺体を一目見ただけで命じた。
 殺人事件なのに、その程度の扱いなんだろうか。
 あまりにもぞんざいだ。

「あれは盗賊だ。全員解散」

 美人騎士は、野次馬にそう告げると、左手を上げて振る。
 野次馬を追い散らし、大またで帰っていった。
 顔を知っていたのだろうか。

 美人騎士が去ると、ざわざわと野次馬に喧騒が戻る。

「賞金稼ぎでしょうか」
「どうかな。ま、仲間割れってところじゃないか」

 商人とおっさん冒険者も会話を再開した。
 盗賊ではインテリジェンスカードを持っていっても換金できないが、誰か他の人間に頼めば済む話か。
 スラム街の路上生活者なら喜んで応じるだろう。

「町を追い出された盗賊が復讐しに帰ってきたらしい」

 商人たちの会話を聞いていると、後ろの方で誰かが話すのが聞こえた。
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