挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

204/220

REM

「今日はまず三十階層を突破する。地図は持ったな?」
「はい」

 今日も元気に朝から迷宮に入る。
 迷宮へは皆勤賞だ。
 サボるのも怖いんだよな。

 一流のピアニストは一日ピアノを弾かないと下手になるという。
 迷宮へ入るのも、一日休めば腕が鈍るのではないだろうか。
 技術が落ちたときどうなるか。
 迷宮では、下手をすれば命の危険がある。

 一日くらいで急激に弱くなることはないだろうし、現状では余裕を持って戦えているのだから多少勘が鈍ったくらいですぐピンチにはならないかもしれない。
 客観的に判断すれば確かにそうである。
 そのはずではあるのだが、休むのはやはり怖い。

 自分の命を賭け金にしているのだ。
 リスクがでかい。
 下の階層から入りなおせばいいとしても、判断力が鈍っていて、違和感なく普段どおり戦えていると錯覚する可能性もあるわけだし。
 ゆっくり時間をかけて上がりなおすのは、ロスが大きすぎる。

 それにこの世界では休んだからといってたいした娯楽があるのでもない。
 俺は色魔があるからいいとして、相手をするロクサーヌたちも一日中では大変だろう。
 娯楽といえばその程度だ。

 それなら、サボらずに毎日迷宮に入り続けるのがいい。
 多少神経は使っていると思うが、気疲れするほどでもない。
 そして迷宮に入った後は毎日きっちり楽しむ。
 毎日発散すれば翌日に心労が残ることもない。

 それで十分だ。
 ロクサーヌの案内で迷宮を進む。
 なかなかいい感じだろう。
 三十階層のボスは、ハートハーブだった。

 ハート型に曲がった茎を持つ草の魔物だ。
 曲がった茎はちょっと心臓を連想させる。
 心臓のように急所、かどうかは分からなかったが。
 ミリアがすぐに石化させてしまったし。

 ミリアは続けて三匹めも石化させる。
 競争は今日も持続のようだ。
 というか、上の階層に進めば戦闘時間が長くなるのだから、ミリアがどんどんと有利になる。
 俺には勝ち目のない競争だ。

 もっとも、上の階層では石化の通用しない魔物が出てくる可能性もある。
 ミリアの石化をレジストするような相手に俺たちがかなうかどうかはともかく。
 是非ミリアには連勝街道のばく進をお願いしたい。

「やった、です」

 石化した魔物をゆっくりと片づけていると、ミリアが叫んだ。
 全部石化したので残った魔物はいないはずだが。

「なんだ?」
「魔結晶のようです」

 ボス部屋の隅へ駆け出したミリアに代わってロクサーヌが教えてくれる。
 魚貯金こと魔結晶か。
 ボスを相手に連戦するようになって、魔結晶を拾うことは増えた。

 ボス部屋なら戦う場所はほぼ一定だし、連戦していれば他のパーティーに持っていかれることも少ないのだろう。
 ミリアならまず間違いなく拾えるし。
 拾えるといっても黒魔結晶なので、すごいお宝ではない。

 結晶化促進にボーナスポイントも振ってないから、魔結晶の成長も早くはない。
 別にお金に困っているわけではないから問題はないだろう。
 白金貨一枚も手元にある。
 今持っている黄魔結晶も、そのうち白魔結晶まで成長して白金貨になるはずだ。

 最後に残ったボスを単体魔法で始末し、ミリアから黒魔結晶を受け取る。
 煙となって消えたハートハーブは緑豆を残した。
 これがハートハーブのドロップアイテムか。

 何の変哲もない緑色の種だ。
 草の魔物だから種を残すことは不思議ではない。
 とはいえ鞘には入っておらず、豆一粒である。
 緑豆だからモヤシでもできるのかもしれないが、アイテムなのでそれも怪しい。

 博徒をはずし、薬草採取士をつける。
 薬草採取士は昨日Lv15まで育てた。
 今のところ片手間であっさり育てられるのは薬草採取士ではLv15までだろうか。

 その上は少し時間がかかる。
 といっても、Lv20まではたいしたことはないと思うが。
 それ以上のレベルがいるなら、少し本腰を入れて育成する必要があるだろう。

 ハーフハーブがドロップする麻黄から生薬を生成するのに薬草採取士のレベルがいくつか必要らしかった。
 思うに、薬草採取士Lv5ではないだろうか。
 普通に考えてそのボスであるハートハーブのドロップから生成するにはもっと高いレベルが必要だ。
 最低でもLv10かLv15が必要だろう。

 Lv15あれば大丈夫だろうか。
 失敗する可能性もある。
 失敗したとき恥をかかないように、何食わぬ顔で生薬生成しなければならない。

 緑豆はロクサーヌが拾ってくれた。
 なんでもない顔をして手のひらで受け取る。
 すぐに生薬生成と念じた。
 緑豆が手のひらを転がる。

 薬の原料アイテムなら、これで生薬に変わるはずだ。
 緑豆が手のひらの中央に落ち着いた。
 そして丸薬に、ならない……だと……。

「よかったです。さすがに万金丹は作れないようです」
「万金丹ですか?」
「はい。あれは五年や十年の修行では作れるようにならないそうです。知り合いの薬草採取士が薬草採取士になって二十何年目でようやく作れるようになったと喜んでいました」
「どういうことでしょう。誰か薬草採取士のかたがいらっしゃるのでしょうか?」

 セリーと会話してルティナが首をかしげている。
 ルティナには分からないようだ。
 というか、セリーには分かるのね。

 分からないようにやったはずなのに。
 おかしい。
 何故ばれたのか。

 顔色にでも出たか。
 いや。単に俺のやりそうなことだったからか。
 見抜かれている。
 ここはごまかすしかない。

 ルティナが分からないのは、まだルティナの前で生薬生成をしたことがないからだろう。
 さっきの失敗を除いて。
 麻黄は生薬生成せずにすべてアイテムボックスに入れているから、ルティナは俺が薬草採取士のスキルを使えることを知らない。

「あー。今はちょっと使えないんだ。後でな」

 セリーに向かって告げた。
 隣のルティナにもバッチリ聞こえるように。
 生薬生成はしていない。
 していないんだよ。

「そうなのですか」

 セリーがうなずいた。
 やけに素直だな。
 その素直さに免じて、先ほど主人である俺の謀略を疑った発言は大目に見てやろう。
 疑ったのではなく見抜いたんだけど。

「うむ」
「何か重要な実験をされているのでしょうか?」

 あら。
 まずい方向に。
 重要どころか実験すらしてないです。

「あー。いや。あーまあたいしたことでは」
「そうですか」
「ミチオ様が万金丹を作成されるのですか?」
「あーいや。あーどうだろうな」
「どういうことでしょう?」

 ルティナの質問に乗じてごまかしたかったが、こっちの質問もやばい。
 万金丹というのが、おそらく緑豆から生薬生成で作られる薬剤なのだろう。
 作るのに結構なレベルが必要のようだ。

 薬草採取士Lv15では作成できない。
 つまり今の俺では作れない。
 ルティナの質問に是と答えるわけにはいかない。
 作れなかったら後でばれる。

 ピンポイントの質問じゃなく、薬草採取士のスキルが使えるか、なら肯定できたのに。
 今日はこのまま薬草採取士をつけてレベルアップさせていくつもりだ。
 昨日と違って料理人がいらないから、それくらいは大丈夫だろう。
 うまくいけば万金丹を作れるようになるかもしれない。

 あるいは、遊び人のスキルに生薬生成を設定するという手もある。
 探索者のアイテムボックスを遊び人のスキルに設定すると、アイテムボックスの容量は遊び人のレベルに従った。
 生薬生成がレベルによって機能拡張するなら、薬草採取士よりもレベルの高い遊び人のスキルに設定してやればいいのだ。

 そんなめんどくさいことをせずとも麻黄から万能丸なら作れる。
 こんなことならめんどくさがらずにルティナの前でやっておけばよかった。
 いまさら遅いが。
 ここはさっさと次の階層に行くべきだろう。

「それより三十一階層へ行くか」
「ええっと。クーラタルの迷宮三十一階層の魔物は、ノンレムゴーレムです。弱点となる魔法属性はありません。魔法使いにとって厄介な相手です。岩でできた魔物のため、土属性に耐性があり、ときどき土魔法も放ってきます。ただしメインとなる攻撃手段は単純に腕で殴ってくることのようです。かなり強力らしいので注意が必要です」

 セリーが説明してくれる。
 さすがに次の階層に移動するとなれば、詮索や突っ込みは後回しだ。

「ノンレムゴーレムか。ロクサーヌは戦ったことがあるんだっけ?」
「はい。攻撃は強力らしいですが、モーションも大きいため、よそ見でもしていなければまず当たることはありません」

 ロクサーヌがノンレムゴーレムで狩をしていたという話は前に聞いた。
 だからといってくみしやすい相手かどうかは話半分に聞いた方がいい。
 ロクサーヌだし。
 その他の魔物よりは動きが分かりやすいと期待しよう。

「弱点属性がないのは残念だが、俺は雷魔法もあるし、一緒に出てくる魔物に合わせればいいだろう」
「そうですね」

 使用する魔法についてルティナと確認した。
 遊び人のスキルは雷魔法のままがいいのか。
 ちなみに三十階層では、ハーフハーブの弱点は火属性だが、その他に出てきやすいモロクタウルスもサイクロプスもシザーリザードも火属性に耐性があるため、火魔法は活躍する場面が少ない。
 遊び人のスキルには雷魔法をセットしている。

「少し数は多いようですが、こっちへ行けばすぐにいます」
「ものは試しだ。なにはともあれ戦ってみよう」
「はい」

 三十一階層に上がると、ロクサーヌがすぐに魔物の位置を探し出してくれた。
 ロクサーヌの先導で移動する。
 魔物が現れるとすぐにオーバードライブを念じた。

 オーバードライブのゆっくりした時間の流れの中で、魔物を観察する。
 魔物は五匹。
 少し多いというかこの階層での最大値だが、それはいい。
 ノンレムゴーレムが四匹にモロクタウルスが一匹だ。

 サンダーストームを二回念じ、ノンレムゴーレムを注視した。
 ノンレムゴーレムは黄褐色の角ばった魔物である。
 両腕と両足がついて二足歩行をするらしい。
 体は多分岩でできているのだろう。

 俺たちのことを認めると、ゆっくりと近づいてくる。
 いや。ゆっくりなのはオーバードライブ中だからか。
 オーバードライブが切れると、モロクタウルスと速度は変わらなかった。

 動けるところを見ると、別に寝ているわけではないようだ。
 顔のようなものはあり、目と鼻と口はある。
 線だけど。
 眠って目をつむっているから目が線なのか、人形だから目が線なのか。

 サンダーストームが発動して雷が当たっても素早く動き出したりはしなかったから、やはり寝ているわけではない。
 逆に三匹も動きが止まってしまった。
 麻痺だ。

 残ったノンレムゴーレム一匹とモロクタウルスが前衛陣に接近する。
 ノンレムゴーレムがゆっくりと腕を後ろに引いた。
 そしてぎりぎりまで引き絞ってから、正面にパンチを突き出す。
 ロクサーヌの言ったとおり確かにモーションは大きいようだ。

 これならそうそう当たることはないかもしれない。
 二匹以上を相手にするときには注意も分散するから、気をつけなければならないが。
 パンチそのものは、スピードの乗った素早い攻撃だ。

 ロクサーヌが軽く体をひねっただけでこれを苦もなくかわした。
 代わりに催眠のレイピアを叩き込む。
 ノンレムゴーレムの頭がガクリと下がった。

 睡眠だ。
 普段のノンレムゴーレムは寝ているわけではなく、こっちが睡眠状態のようだ。
 ノンレム睡眠になっているのかは知らない。
 レム睡眠かもしれない。

 そもそも、岩でできた人形にそんなものがあるのだろうか。
 眠っているときには目をつぶっていても眼球が動くことがあるらしい。
 眼球が動くのがレム睡眠、眼球が動かないのがノンレム睡眠だ。
 レム睡眠かノンレム睡眠かはラピッド・アイ・ムーブメントの有無で決まる。

 線が引かれただけの目に眼球もくそもないだろう。
 睡眠状態のときにはうつむいているので目は確認できなかった。
 雷魔法で叩き起こせば、目は線だ。

 眠っているかどうかはともかく、ノンレムゴーレムはほどなく片づいた。
 強さとしては、特筆するような点はない。
 三十一階層の魔物なりの強さというところだろうか。

 弱点がないのは厄介だが、その分雷魔法を使うので石化が出やすいだろう。
 MP回復が楽になる。
 今回は少し足りなかったが。

 ノンレムゴーレムは、煙となって消えると岩を残した。
 これがドロップアイテムらしい。
 そこまででかくはないが、バレーボールくらいはありそうな普通の岩だ。
 鎧も入るくらいだし、アイテムボックスに入れるのに問題はない。

「岩か」
「比較的楽に砕け、砕いてセメントや遮蔽セメントと一緒に使うと建材として一級のものになるそうです」

 セリーの方に目を向けると、すぐに教えてくれる。
 砕いた岩とセメントで作る建材。
 それはただのコンクリートではないだろうか。

 わざわざアイテムの岩を使う必要があるのか。
 かえって高くつく。
 アイテムのセメントと岩がそろって、合せ技で一本なのかもしれないが。

「セリー姉様、そのくらいのことミチオ様なら知らないはずがないと思いますが」

 ルティナがセリーに声をかけた。
 この世界では誰でも知っている事柄のようだ。
 もちろん俺は知らなかったが何か。

 まずい。
 ここでセリーを悪者にするわけにはいかない。
 かといって知らなかったと正直に告白してもルティナに馬鹿にされる。

「いや。これは俺の方から頼んでいることなんだ。俺は知らないことも多いから、何でも教えてくれと」
「そうなのですか?」
「そうなんだ」

 なんとか割り込む。
 セリーは、すべて分かっていますという表情をして、無言で引き下がった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ