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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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ガンマ線バースト

 ガンマ線バーストの呪文を唱えた。
 今の俺ならば発動させることができるだろう。

 する。
 するはずだ。
 いや。させてみせる。

 今回はその覚悟の程を示すために呪文つきだ。
 どうせ実験を行うことはロクサーヌたちに言ってしまった。
 自信の一点勝負。
 必ず成功させる。

 決して引かぬ不退転の決意だ。
 これでもし失敗したらどうなるか。
 突然ボス部屋の中心で痛いセリフを叫んだ中二病の俺。

 受けるダメージは昔メテオクラッシュに失敗したときの比ではない。
 今回はみんながいる。
 衆人環視だ。

 ロクサーヌはあきれたような顔で、セリーは冷たい目で見上げてくるだろう。
 ミリアですら見逃すのと引き換えに朝食に魚を要求してくるかもしれない。
 ベスタは、きっとやや投げやりに慰めてくれる。
 ルティナも築きつつあった俺への信頼を吹き飛ばすだろう。

 損害がでかい。
 でかすぎる。
 俺はなんという馬鹿なことをしてしまったのか。

 黙ってやっておけば、ばれなかったものを。
 相変わらず才能のかけらもない。
 信頼をするにたる人格も能力もない。

 いや。そもそもルティナは俺のことを微塵も信用などしていないだろう。
 奴隷に落とされ、ロクサーヌに強制されて仕方なく付き合っているだけだ。
 この俺のどこに信頼する要素があるというのか。
 駄目人間の俺に。

 ああ。いや。違う。
 MPだ。
 MPが減っている。
 こんなにネガティブな思考に陥るのはMPが減ったからだ。

 つまりガンマ線バーストは無事発動した。
 成功だ。
 特段変わったところはないが。

 部屋がいつもより少し明るいといえば、明るいだろうか。
 それ以外に変化はない。
 ガンマ線バーストにはエフェクトがないのだろうか。

 あるいは能力のない俺が使ったから効果もしょぼいのか。
 違う。
 そうじゃない。

「え?」
「これは……」
「すごい、です」

 魔物が倒れた。
 ボスのお付の魔物二匹が、現れた直後にそのまま煙となって消える。
 ガンマ線バーストの威力だ。

 倒れたのは二匹ともグミスライムっぽかった。
 二十三階層の魔物でも一撃か。
 ボスは残っている。
 使う人間がしょぼいせいか、さすがにボスまで一撃とはいかないらしい。

「ベスタ、剣を」
「はい」

 一応アイテムボックスは開けてMP回復薬をいつでも取り出せるよう準備はしていたのだが、残ったのがボスだけならその必要はないだろう。
 せこい俺のちんけな作戦が砕け散った。
 ベスタからデュランダルを受け取るとボスの側面に回る。
 横からボスを斬りつけた。

 MPを吸収したのだろう、一撃ごとに俺の心が満たされていく。
 大丈夫だ。
 俺は戦える。

 ミリアとやや遅れてベスタもボスの包囲に参加した。
 ボスの正面にはロクサーヌが立ちはだかっている。
 セリーは少し後ろから槍を突き入れ、ルティナも包囲に参加するようだ。

 ボスは、数回デュランダルを叩き込むだけで倒れた。
 ガンマ線バーストはかなりのダメージを与えていたようだ。
 ボスは倒せなかったが、雑魚敵は一掃したのだから、相当の威力はある。
 前にやったとき使えなかったのも、むべなるかな。

「実験の魔法はどうだった」
「一瞬、眩く光ったようです。後ろが明るくなりました」
「光ったか?」

 ロクサーヌに聞いてみると、ガンマ線バーストは光を放ったらしい。
 俺にはそうは見えなかったが。
 ガンマ線だから目には見えないのかと思っていたが、そうでもないのか。

「私は横にいたからはっきり見ました。光っていました」
「わたくしも、ミチオ様が光り輝くのを見ました」

 後列にいたセリーとルティナは、しっかり光を見たようだ。
 光ったのか。
 ガンマ線バーストの光は、本当はガンマ線ではなくもっと周波数の低い光で、光速近くまで加速された中で出てくる光なので、ドップラー効果によって周波数が高くなっているのだという。

 逆に、中心にいる俺から見ると、ドップラー効果によって周波数が下がり、可視領域からはずれているのかもしれない。
 すさまじい赤方偏移だ。
 ガンマ線を大量に浴びたらロクサーヌたちも無事ではすまないだろうから、そうではないのかもしれないが。
 全体攻撃魔法は味方を巻き込まないので助かる。

「こんな魔法を使えるなんて、さすがご主人様です」
「この魔法はあまり使うことはないと思う。かなり大変だ。それでも、いざというときに使えないでは話にならないからな」

 ガンマ線バーストは、威力もすごいが消費MPもすごい。
 ボスを倒してもMP全快とはならなかった。
 MP効率では断然、魔法使いや魔道士の魔法の方に軍配が上がる。
 雑魚なら一発で倒せるからしょうがないとはいえ。

 メテオクラッシュと一緒で、普段使いすることはないだろう。
 何かあったときの切り札だ。
 デュランダルで回復しながら戦う手もあるが、俺がデュランダルで正面から挑んで問題のない敵なら、普通の魔法で倒すまでの間ミリアやベスタが相手をしても問題はないわけで。
 ロクサーヌはいうまでもなく。

「確かに、こんなすごい魔法が使えるのでしたら、実験しておくべきでしょう」
「大変なので二発は撃てないがな」

 セリーも実験の大切さに賛同してくれる。

「あんしん、です」
「確かに、いざというときでもこんなすごい魔法があると思うと安心できると思います」
「やはり相当にすさまじいおかたのようです」

 実験は、ミリアやベスタやルティナにも感銘を与えたようだ。
 大成功といっていいだろう。

「では、二十九階層に移動する、前に、ロクサーヌ、二十四階層で魔物を探してくれ」
「分かりました」

 二十九階層には移動せず、そのまま二十四階層に抜けた。
 二十九階層のボス部屋へはMPを回復してから赴く。

「ルティナも、一度ボスを殴ってみて少しは感じがつかめただろう。ボスといっても横からならそれほど恐れる相手ではない」
「分かりました」
「二十九階層のボスは五人で戦って問題のない相手だからな。心配はない」

 二十九階層のボス部屋に入り、ボスタウルスと戦った。
 戦闘は順調に進む。
 博徒がないせいかやはりボスは最後まで石化しなかったが、問題なくボスを倒した。

「多少気は張りましたが、わたくしにもこなせそうです」
「期待している」
「それにしてもこれを繰り返すのですか。いえ。わたくしにもできるはずです」

 慣れればそこまで気を張る相手でもないだろう。 
 ルティナがボスの正面に立つことはないし。
 ボスの前に立つのは、自らボス戦を繰り返せと提案してきたロクサーヌだ。

 あら。
 ひょっとして、ロクサーヌも大変は大変なんだろうか。
 強情を張っているだけという可能性があるのだろうか。

 ボス戦はそれなりに苦労するはずだ。
 俺だったらプレッシャーで胃に穴が開くところかもしれない。
 ロクサーヌもつらいのだろうか。

 言い出した手前、引けなくなっているのだろうか。
 意地を張って、誰でもできると涼しい顔をしているのだろうか。
 もういい、もう、休め、と言ってあげる必要があるのだろうか。

「ロクサーヌも、いつも悪いな。ボスは大変だろう」
「そうですか? でも、ありがとうございます」
「少しでも危惧を感じたら、すぐに言ってくれ」
「はい。それはもちろんです」

 一応気を使ってみたが、そんな必要は全然なかったようだ。
 俺が何に気を使ったのか、勘付いてさえいない。
 いいのならいいだろう。

「一応三十階層でも戦っておくか。ルティナはまだハーフハーブを見たことがないしな」
「そうですね」

 ロクサーヌに頼んで、三十階層のハーフハーブとも一戦してみる。

「簡単におっしゃるのですね」

 ルティナは気を引き締めているが、二十九階層のボス戦がこなせるなら、三十階層で問題になることはない。
 実際に問題はなく、その後は二十九階層に移動してボス戦に戻った。
 快調だ。
 問題点は、ある。

 一つは、ボスを石化させるには状態異常耐性ダウンがないと難しいということだ。
 石化させないと倒せないわけではないが、戦闘時間が三割四割当たり前に違ってくるので大きい。
 早く倒せばそれだけ何度も戦えるのだし。
 やっぱ博徒はないと駄目か。

「また、です」

 二周三周と回って、また石化させられなかったと肩を落とすミリアを見るにつけても。
 もう一つ問題がある。
 料理人だ。

 ボスタウルスはレア食材のザブトンをドロップするらしい。
 それをここまで一つも見ていない。
 モロクタウルスの三角バラも今日は一個も残っていないし、三角バラ同様かなりドロップしにくいのだろう。
 それだけに、ボス戦を繰り返す今日明日の間に一つは手に入れておきたい。

 ドロップするまでボス戦を繰り返す、というのが王道的対処方法だが、ロクサーヌが何と言うか。
 ルティナにも食い道楽と思われてしまうし。
 魚だったらミリアが繰り返すと言い張るのに。
 ここはやはり、こっそりと料理人をつけておくのがいいだろう。

 英雄、冒険者、遊び人、魔道士をつけ、神官、勇者、博徒、料理人とつけると、ジョブが八個になってしまう。
 最大数オーバーだ。
 しかも、セブンスジョブまで取得するのでボーナスポイントを経験値系のスキルに回せない。
 料理人どいて、ボーナスポイント回せない。

 より経験値を稼ごうとボス戦を繰り返すのに、ボス戦で使うジョブのために経験値が少なくなってしまうのでは本末転倒だ。
 目的を忘れてはいけない。
 目標を見誤ってはいけない。

 まあここは最大限譲歩して、料理人は二十九階層に限りいいとしよう。
 ボスと戦わなければボスのレアドロップもないのだから。
 虎穴に入らずんば虎児を得ず。
 ちょっと違うか。

 経験値のためでなくボスのレアドロップのためにボス部屋に入ると考えればいい。
 逆に考えるんだ。
 経験値なんかあげちゃってもいいさ、と考えるんだ。

 目標はザブトンだ。
 食い道楽と言われて否定はできん。

 では何をはずすべきか。
 まず神官をはずすべきだろう。
 ボス戦はシャットアウト前提で戦っている。
 回復まで考える必要はない。

 もちろん万が一のことを考えればつけた方が安全だ。
 しかしそれをいうなら、危険を考えるならボス戦などしない、迷宮になど入らないことが安全なのだ。
 日常のルーティンワークとしてボス戦をこなそうというのだから、こちらの準備もルーティンでいいだろう。

 あとはもう一つ、英雄と勇者も役割がかぶっているからはずせる。
 勇者をはずすと勇者の成長が見込めず、いつまでたってもつけられないので、はずすのは英雄の方だろう。
 勇者ならアイテムボックスも使えるし。
 ファーストジョブから英雄をはずすとボーナスポイントが減ってしまうが、これはやりくり可能な範囲だ。

 ファーストジョブが英雄の次にレベルの高い遊び人になってしまうのが、少々やな感じだが。
 それはしょうがない。
 遊び人のジョブはまったく知られていないわけでもないので、万が一ばれても大丈夫だという利点もある。
 ルティナにばれると食い道楽の遊び人になってしまうとはいえ。

 まずは、英雄をはずして博徒をつけた。
 いきなり全部変えるのは怖い。
 英雄をはずして一、二戦した後、神官をはずして料理人をつければいいだろう。
 それで問題がなければ、最後にデュランダルを出さないようにすれば完成だ。

「ルティナも少しは慣れたか?」
「わたくしなら問題ありません」
「ま、慣れたからといって気は抜かないようにな」
「はい」

 ルティナをだしにしてさりげなく注意をするように促してから、ボス戦に向かう。
 英雄をはずしたので多少は戦力がダウンしているはずだ。
 何をどうしているのかは、めんどくさいしいちいち説明はしない。

「やった、です」

 しかし、戦力ダウンを感じるゆとりもなく、ボスはミリアが石化させた。
 ミリアの明るい声が響く。
 おまけに残りのモロクタウルスまで石化させ、今回のボス戦はミリアがパーフェクトで抑えた。
 博徒をつければたちまちこれか。

「さすがミリアだな。ありがとう」
「はい、です」

 声も弾んでいる。
 博徒なしでボスを石化できなかったときは鬱憤も溜まったのだろう。
 鬱積を晴らすかのような大活躍だ。
 モロクタウルスには状態異常耐性ダウンをかけなかったのに、自力で石化させたしな。

 ベスタからデュランダルを受け取って石化した魔物を始末する。
 博徒をつけてミリアがボスを石化させるなら、始末するときだけ料理人をつけてもいいような気がしたが、それはやらないでおく。
 戦闘の途中でジョブを変更したときなどの経験値の入り方が分からない。
 不利になるようなこともあるかもしれないし、無理にいじることはないだろう。

 その後、様子を見つつ、神官をはずしデュランダルも出さないようにした。
 ルティナもある程度慣れただろうし、ここから本格的なスタートだ。
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