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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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駄目人間

 風呂を入れた後で、俺もキッチンに行く。
 魔法使いのルティナがパーティーに加入したこと、手伝ってくれたこと、それに遊び人の効果や勇者のレベルアップなども合わさって、途中でMPを回復しなくても風呂を入れられるようになった。
 これはかなりいい。

「ルティナのおかげで風呂を入れるのが楽になった。これからも頼む」
「はい。ありがとうございます」

 キッチンでルティナに声をかける。
 女性五人のキッチンというのも華があっていいな。
 もうちょっと狭くてもいい。
 いや、だめか。

「これからはロクサーヌに迷惑をかけることもないだろう」
「迷惑だなんて、そんな」
「分かっている。ありがとう」
「はい」

 ロクサーヌにも今までの礼を言っておいた。
 キッチンでは、一品、デザートでも作る。
 まだまだ暑いので、冷やしたゼリーがいいだろう。

「ベスタ、手伝いを頼めるか?」
「はい」
「これを搾ってくれ」

 買っておいた果物を渡した。
 ベスタに搾ってもらい、溶かしたゼラチンに果汁と砂糖を入れたら後は冷やすだけだ。
 大柄で力も強いベスタは楽々と果実を搾る。
 任せておけばいいだろう。

「そういえば、お風呂が大きいという話ですが」

 誰かの手伝いで野菜を切っているルティナが口を開いた。
 風呂場ではしそこなった話の続きだ。

「おう」
「うちにあったのは樽みたいになっている細長い湯船でした。お湯を沸かすのも大変ですので。そこに、交代で一人ずつ、立って入っていました」
「へえ。そうなのか」

 ドラム缶風呂みたいな感じだろうか。
 使うお湯の量が少なくてすむのだろうか。
 横にすれば容積は変わらないが。
 いや。寝て入るのも大変だ。

「あ、あの」
「何だ?」
「あれだけの大きさだと、やはりみなさん一緒に入られるのでしょうか」

 ルティナが静々と尋ねてくる。
 一緒に入ってくれるのだろうか。
 ここはなんと答えるべきか、思案のしどころだな。

 なるべく、当たり前のことをしているように返すのがいいだろう。
 当然入っているが、何か、みたいな。

「当然そうだが、何か?」

 やべ。
 そのまま答えてしまった。

「そ、そうですか」
「ご主人様は、髪の毛も洗ってくれます」

 ロクサーヌ、ナイスフォロー。
 いや。ナイスフォローなのか?
 まあ体を洗うのは微妙でも、髪を洗うのはいいだろう。
 体を洗ってくれるとは言わなかったのだから、ナイスフォローだ。

「ばらばらに風呂に入るのも時間の無駄です」

 セリーのフォローも素晴らしい。
 別々に入ったのでは時間がかかる。
 実に合理的だ。

「お風呂に入れば魚の気持ちが分かる、です」

 それはフォローではない。
 魚の気持ちが分かって嬉しいのはミリアだけだ。
 というか、魚の気持ちが分かるか?

「みんなで湯船に寝転がると気持ちいいので、大丈夫だと思います」

 それは気持ちいいな。
 俺が特に。

「そういうものですか」

 だまされてるだまされてる。

「そうだな」
「情報が偏っているような気もしますが」

 気がつきやがった。
 だまされないように注意するのは諸侯会議でだけにしてくれ。
 この話題はここまでにした方がいいな。

「ベスタ、氷を出すから砕いてくれ」
「はい。分かりました」

 アイスウォールを出して、ベスタに削ってもらう。

「ルティナも、そっちを切り終わったら手伝ってくれるか」
「あ、はい」
「頼む」

 風呂のことは、このままみんなで入るのが当然としておけばいいだろう。
 一人で入ってもいいとか、気を使う必要はない。
 みんなで入るのが普段どおり。
 普通のことなのだ。

「これはアスピックみたいなものでしょうか」

 ゼリーを入れたカップを氷に埋めていると、ルティナが質問してきた。
 アスピックとか。
 フランス料理における煮こごりだな。
 名前は知っているが食べたことはない料理の代表選手だ。

 後はトムヤンクンとか。
 シャリアピンステーキとか。
 俺はピロシキもピロシキ風カレーパンというのしか食ったことはない。

 本場のものを口にしたことがないということなら、麻婆豆腐だってそうか。
 寿司だって回転するやつしか……いや、なんでもない。
 思った以上に貧しかった俺の食生活。

「確かに似たような感じですね」

 アスピックの味を知らない俺の代わりにセリーが答えてくれた。
 セリーは食べたことがあるのか。

「こんな風に作るのですか」

 アスピックの作り方は知らないが、ルティナの関心はうまくそれたようだ。
 作ったゼリーはそのまま氷にうずめておく。
 夕食が終わるころには冷えて食べごろになるだろう。

「アスピックってどういう食べ物でしょう?」

 ベスタが尋ねてきた。

「俺も食べたことはないな」
「わたくしは食したことがありますが、口当たりがよくて深い味わいのする美味しい食べ物です」

 ルティナが胸を張る。
 煮こごりだから、いろいろ出汁が出て美味しいのだろう。
 深い味わいというのは分かるような気がする。

「へえ。そうなんですか」
「じゃあルティナに作ってもらうか」
「い、いえ。わたくしは作り方を知らなくて」

 ルティナがあわてた。
 馬鹿め。
 自慢などするからだ。

「うちの食事を食べなれているベスタなら無理して求めるものでもないと思います」

 食べたことのあるらしいセリーがフォローした。

「そうですか」

 ベスタも納得してくれたようだ。
 まあ無理に求めるものでもないだろう。

 セリーが作っていたスープの完成を待って、夕食にする。
 後はロクサーヌが作った肉野菜炒めに、メインはミリアが調理した尾頭付きの煮付けだ。
 全員で和やかに食卓を囲んだ。

「人々の労働と貢納に感謝します。慈しみをもって」

 ルティナが行う食前の儀式は、慣れないが。
 ただし、ルティナが食事を取る姿は美しい。
 尾頭付きの煮付けも綺麗に取り分け、そのままナイフの背に載せてしなやかに口元へと運んでいく。

 桜色の唇を小さく開け、魚肉を素早く取り込む。
 ナイフの上の食材が、音もなく軽やかに、すっと口の中に消えた。
 美少女の小さなあごがゆっくりと上下し、食べ物が咀嚼されていく。

 洗練された動きだ。
 俺が食べられたい。
 あの口の中に入れてほしい。
 咀嚼してほしい。

「何でしょう?」

 やべ。
 ちょっと見すぎていたようだ。

「尾頭付きの煮付けはどうだ」
「はい。美味しくいただいております。特別なお客様をお迎えしたときなどにうちの料理人が作ったパーティー料理の尾頭付きと遜色のないできです」
「うちでは割と頻繁に食べる。ミリアの好物で得意料理だしな」
「とくい、です」

 なんとか誤魔化せたか。

「頻繁……」
「といっても、さすがに毎日ではない」
「ざんねん、です」

 俺が残念だよ。
 毎日では飽きるだろう。

「希少な食材だと聞いていますが」
「迷宮に入っているのだからな。時々行って直接獲ってくる」
「なるほど。それならば時間をかければ。食い道楽ということですか。やはりなかなか大変な人の世話になってしまったようです」

 そんなに時間はかけてないけどな。
 これは、料理人のスキルプラスロクサーヌがマーブリームを的確に探し出してくれるおかげだ。
 その辺の勘違いは別にいいが、食い道楽というのはどうなんだろう。

 ルティナの俺に対するイメージが変な趣味人になってしまいそうだ。
 風呂好きの上に食い道楽。
 相当な駄目人間。

 朝寝朝酒朝湯が大好きだ。
 それなら美少女の奴隷をはべらすのもしょうがない。
 もっともだ。

 メインの後に、デザートを取った。
 ゼリーの入ったカップを配る。
 ゼリーは、きんきんに冷えているわけではないが、ちゃんと固まった。

「じゃあこれを食べたらみんなで風呂に入るか」

 ルティナからの反応はない。

「そうですね。全員で入りましょう」
「は、はい。分かりました」

 おおっ。
 ロクサーヌが全員でと言ったら、ルティナがうなずいた。
 さすがはロクサーヌだ。
 説得力が半端ないのだろう。

「では」

 プルプルのデザートを食べる。
 風呂場でもプルプルデザートだろうか。
 プルプルなんだろうか。

「これは。デザートなんですね」

 ウィ、マドモアゼル。
 プルプルだ。
 プルプルに違いない。

「はい。夕食の後にときどき出していただけます」

 ベスタがルティナに説明した。

「やはり食い道楽……」

 なんか俺のイメージが。
 食事を終えたら、一足先に風呂場に向かう。
 ルティナの脱衣シーンはもちろん見たいが、その場にいない方がいいだろう。

 ロクサーヌたちを信じてまかせよう。
 一緒に風呂まで連れてきてくれるはずだ。
 俺はみんなより先に服を脱いで風呂場に。
 ロクサーヌたちが食事の片づけをしている間に、風呂の温度を調整した。

 お湯の温度はほぼ適温だったので、調整はすぐに終わってしまう。
 うーん。
 手持ち無沙汰だ。
 石鹸でも泡立てながら待つか。

 石鹸を泡立てていると、外から足音が。
 来る。
 来る。
 来た。

「失礼します」

 扉を開けてロクサーヌが入ってくる。
 目の前に大きな二つの果実が。
 待っているものとは違ったが、もちろん素晴らしい。

 その後ろから、セリー、ミリア、ベスタと入ってきた。
 ロクサーヌのものよりもさらに大きな果実が。
 ベスタの後ろから、ルティナが身体を隠しつつ遠慮がちに入ってくる。

 輝かんばかりの白い肌は白磁のようになめらかだ。
 これがルティナの。
 これがエルフの。

「ぜ、全員で入るというので、わたくしも来て差し上げました」

 残念ながら、ルティナは風呂場に入ってきたとき大きいとはつぶやいてくれなかった。
 風呂桶は一度見せてしまったからな。
 失敗した。
 作業をさせずに初めて見せればよかったかもしれない。

「ルティナの肌はとてもなめらかですね」
「すべすべ、です」
「きめ細やかだと思います」
「ありがとうございます」

 ルティナは美肌らしい。

「こんなになめらかなのはエルフだからでしょうか。エルフの人はみなそうなのでしょうか。しかも胸も大きいですし。エルフには気をつけろというドワーフの教えはやはり間違っていないようです。滅びればいいのです」

 誰かが毒を吐いている。
 やはりルティナの胸はそれなりにあるのか。

「ええっと。これはわたくしが磨いているからで。エルフ全員というわけではないと思います。それに、みなさんの肌も美しいです。胸はベスタ姉様の方が大きいようですし」
「胸が大きい竜人族は戦士として活躍できるとご主人様に言っていただけました」
「そうなのですか?」
「なにやらそうらしいです。しかし気嚢が入っているベスタはともかくとして。むむむ」

 なにがむむむだ。
 諦めろ。
 そんなガールズトークを繰り広げている四人を尻目に俺は何をやっているかというと、ロクサーヌの身体を洗っていた。

 順番だ。
 ルティナが風呂に入ったのはロクサーヌのおかげなのだから、あだやおろそかにするわけにはいかない。
 というかこんなものが目の前にあったら。

 けしからん。
 洗ってやる。
 滅びるまで洗ってやる。
 滅びればいいのだ。

「よし。こんなものだろう」

 神々しい肉体は毎日磨き上げねば。

「ありがとうございます」
「次はセリーだな」

 セリーの小さくて可愛らしい身体を抱きすくめるようにして洗うのもいいものだ。

「ひょっとして、ああやって全員を洗うのですか」
「そうです。お優しいご主人様ですから」

 石鹸をつけたままのロクサーヌとルティナが会話している。

「時間の無駄では」
「かしこくもご主人様に洗っていただけるのです。ありがたくお受けするようでないと」
「ひっ。は、はい」

 ロクサーヌさまさまだ。
 その後、全員の身体を隅々まで洗い、ルティナの肌も石鹸の泡で覆われていない場所がないところまで堪能した。

 白い肌。
 白い胸。
 たっぷりと満喫させてもらった。

 俺の体も全員に洗ってもらった後、風呂に入る。
 全員で入るとさすがにやや狭いが、しょうがない。
 いや。むしろ狭い方がなにかと素晴らしい。
 ベスタの健康的な薄小麦色の肌とルティナのとろけるような白い肌との対比が美しい。

「今日からはルティナもベッドで寝かせていいと思います」

 さらさらの尻尾をなでていると、ロクサーヌが俺の横で告げた。

「ベッドですか?」

 ルティナにも聞こえていたらしい。

「ありがたくもベッドで寝かせていただけるのです。かしこまってお受けするべきです」
「は、はい」

 ロクサーヌがルティナの異論を封じる。

「寝る前と起きた直後に、ご主人様への挨拶をすぐしなければなりません。欠かすことは許されません」

 挨拶というのはあれのことだろう。
 何ごともロクサーヌにまかせておけば万事オッケーのようだ。
 もちろん挨拶だけで済ますわけがない。
 色魔の出番だ。
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