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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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火花

 公爵がルティナに手を上げさせ、インテリジェンスカードを操作した。
 ルティナはおとなしく従っている。
 人質を取られているしな。

「ルティナ……」

 カシアが悲しそうにつぶやいた。
 目の前で従姉妹が奴隷に落ちるのはつらいものがあるのだろう。

「これで彼女の身分は奴隷となった。継嫡家名もはずれている。後は、ミチオ殿が知り合いの奴隷商人のところへ連れて行って、所有者の名義を書き換えてもらえばいい」
「俺の知っているところでいいのか」
「そこまでは余の関知するところでない」

 所有者を俺にはしてくれないらしい。
 継嫡家名をはずすことが目的だから、それさえ確認すれば後はどうでもいいのか。
 それともできないのか。

 騎士が持っているインテリジェンスカード操作のスキルでは、奴隷の解放や遺言の書き換えなどはできない。
 公爵のジョブである聖騎士は騎士の上位ジョブだろうから、似たような制限があるだろう。
 所有者名義の書き換えは奴隷商人限定かもしれない。

「それではお願いします。公爵を利するような命令は拒否させていただきますが、それ以外であれば一応従って差し上げましょう」

 ルティナが俺に挨拶してくる。
 挨拶はちゃんとしてくれるようだ。
 一応だけど。
 インテリジェンスカードも見せてきた。


ルティナ ♀ 15歳 村人 初年度奴隷
所有者


 継嫡家名ははずれている。
 ついでに苗字も失うらしい。
 俺が奴隷になったら加賀もなくなるのだろうか。
 所有者の欄は空白だ。

「よろしく頼む」
「能力があるというのなら、奴隷であることはわきまえるつもりです」

 能力があれば、か。
 それはわきまえるというのかね。

「閣下」

 ルティナとの挨拶を終えたころ、ゴスラーが飛び込んできた。
 この勢いだと、セルマー伯爵が捕まったか。

「見つかったか」
「は」
「ミチオ殿、今日のところはここまでとしよう。ミチオ殿のおかげで作戦は無事に成功した。助力に感謝する。彼女を連れて行ってほしい。何も持っていないようだし、このままで大丈夫だろう。パーティーメンバーともども、家に帰ってもらってかまわない。カシアもボーデに戻れ」
「ですが」

 抗議するカシアに公爵がゆっくりと大きく首を振る。
 伯爵の処刑に立ち会わせたくはないのだろう。
 ルティナに対しても同様か。

「これは余が余の責任において行う」
「わ、分かりました」

 カシアも処刑の場に行かないことを了承するようだ。
 立ち会ってもいいことはない。

「ミチオ殿は明日の朝またボーデの城に来てくれ。ミチオ殿だけでいい。今夜はもう遅いし、これからどのくらい時間がかかるか分からぬ。朝の遅い時間でいい」
「了解した」
「では、ゴスラー」

 公爵は、ゴスラーを引き連れてさっさと部屋の外へ出て行った。
 ぐずぐずしていたらカシアやルティナにごねられるとでも考えたのだろう。

「それでは、戻りましょうか」

 俺もカシアを促す。

「そうですね」

 カシアが哀愁を帯びた表情でうなずいた。
 愁いに沈む美人というのもいいものだ。
 ルティナの方は、公爵が去った後をにらむように見つめており、悲しげな顔は見せていない。
 怒っている美女というのもいいものだ。

「奥様」
「大丈夫です。ボーデに帰りましょう」

 侍女なのか護衛なのかの女性がさらに話しかけると、カシアも気丈に答える。
 俺はパーティー編成の呪文を唱え、ルティナをパーティーに招いた。
 抵抗を見せることなくパーティーに入ってくれるようだ。
 カシアたちが戻るのに続いて、俺とルティナもボーデに帰る。

「ご主人様」

 ボーデの城に出ると、ロクサーヌがすぐに駆け寄ってきた。
 戦場に行っていたのだから、心配ではあったろう。
 俺は何もしていないが。
 結局のところ戦闘があったのかどうかさえ不明だ。

「こっちでは何もなかったか?」
「はい」
「なるほど。奴隷を抱えるごく一般的なフリーの冒険者というところですか」

 ルティナが勝手に解釈して独りで納得する。
 ご主人様と言っているからロクサーヌが俺の奴隷だということは分かるし、ロクサーヌの後ろについてきている三人も仲間とは分かるか。

「ご主人様、このかたは?」
「家に帰ったら説明する。今日のところはひとまず終了でいいそうだ」

 カシアもいるし、説明は後回しだ。
 いぶかしがるロクサーヌをなだめた。

「ルティナ、今日のことにめげず、強く生きなさい」
「当然のことです」
「辛抱強くがんばれば、いつかは持ちなおすこともあるでしょう」
「再起の目があると、本当にそうお考えですか?」

 ルティナがカシアを詰問した。
 やっぱり駄目なのか。
 それはルティナも分かっているらしい。

「ですが」
「大丈夫です。いただいたチャンスは活かすつもりです。心配には及びません」
「ミチオ様、ルティナのことよろしくお願いいたします」

 カシアは、諦めて俺に頭を下げる。

「はい。ルティナ、移動するけど、もういいか?」
「十分です」
「それでは、ルティナ。どうか息災で」
「姉様こそせいぜい長生きを」

 ルティナの態度はかたくなだ。
 まあ親である伯爵が打倒されて、倒した相手にすぐ弱みを見せるわけにはいかないか。
 時間が必要だ。
 時間が解決する、よね。

 俺たちは家に帰った。
 フィールドウォークの呪文を唱えながらワープで移動する。
 ルティナにワープを見せてしまうが、しょうがない。
 家の壁には遮蔽セメントが使われているので、ワープでなければ移動できない。

 フィールドウォークでクーラタルの冒険者ギルドに出て、そこから歩いて帰るのも大変だ。
 フィールドウォークもワープも見た目違いはないから、分からないだろう。
 実は俺の生活はこんなところからやばかったのか。
 結構綱渡りだ。

「ミリア、カンテラを頼めるか」

 家のリビングに出たら真っ暗で何も見えないので、ミリアに頼る。
 遅い時間だとはいえ、何も説明しないわけには行かないだろう。
 遅いといっても日本ならまだ宵の口だ。
 この世界の生活はいたって健全だよな。

「はい、です」

 ガサゴソと音がしたので持ってきてくれたみたいだが、それすら分からん。
 暗い夜にもだいぶ慣れたとはいえ。
 慣れだけではいかんともしがたいこともある。

「ベスタに渡して、火をつけてもらってくれ」
「はい、です」
「待て。気をつけてもらえよ」
「大丈夫だと思います」

 ベスタの声がした。
 ベスタのいる位置はなんとなく分かる。
 でかいのがいるなという威圧感があるから。
 他のメンバーがどこにいるかはあまりよく分からない。

 パーティーメンバーなので大体の方角は分かるが。
 そんな状態でベスタが火を吹いたらまずいのではないだろうか。
 人のいない方向に吹いたらすぐに壁とか。
 大丈夫なんだろうか。

 ルティナがいなければ俺がファイヤーウォールを出すところだ。
 別にファイヤーウォールを使っても危険が減るわけではない。
 出す場所を指定できるので俺だけは安全、というだけで。
 それもまた酷い話だ。

 やがて、部屋の片隅が薄明るくなった。
 思ったより遠い。
 炎が上から下へと延びている。
 カンテラを下に置いて、ベスタが上から火を吹き降ろしていた。

 なるほど。
 ああやれば他人や壁に火を吐きかける心配はほとんどない。
 確かに大丈夫だ。

「じゃあ全員座れ」

 明るくなったので、みんなをテーブルに着かせる。
 何から話したものか。

「失礼します」

 ルティナも座った。
 六人がけで他の五つは固定席みたいなものだから、空きは一つしかない。
 俺の左隣だ。

「彼女はルティナだ。いろいろあって俺のところで預かることになった」
「はっきりおっしゃればよろしいのに。敗残兵を下賜されたと」

 ルティナから思わぬ突っ込みが。
 いいんだろうか。

「敗残兵ということは」
「どんなに言いつくろっても同じことです。戦利品の分配は当然のことです」
「戦利品って」

 ひどい言い方だ。

「本日の戦いでみじめに負けた敗者のルティナです。ミチオ様に戦利品として与えられることになりました。みなさまにとっては後輩ということになります。どうぞよろしくお願いします」

 ルティナがそのまま挨拶してしまった。
 戦利品として与えられた、は人聞きが悪いような気がする。
 事実だとしても。

「彼女も奴隷なのでしょうか?」
「そうだ」

 ロクサーヌの質問に答える。
 性奴隷ではないが。

「一番奴隷になろうとは思わないので安心してください」

 ルティナが変なことを言い出した。
 ロクサーヌの競合相手にはならないということだろうか。
 それとも、一番奴隷程度で満足するつもりはないということだろうか。
 ロクサーヌは微妙な表情でルティナを見ている。

 そもそも、ルティナに誰が一番奴隷か分かるのか。
 ロクサーヌが一番最初に質問したから、ロクサーヌが一番奴隷か。

「まあ変更するつもりもないし」

 とりあえずロクサーヌにフォローは入れた。
 ロクサーヌとルティナの仲が悪くなったりしたら大変だ。

「将来は諸侯会議で活躍したいと思います。それはわたくしにとって夢でした。あの男のせいですべて失われたと思ったのですが、まだ可能性として残っているようです。わたくしは一番奴隷になるよりそちらの道を進みたいと思います」

 単純に他の道を選ぶということか。
 一番奴隷なんかクソだという意味ではなかったらしい。
 あの男というのは、公爵のことだろう。

「諸侯会議ですか」
「貴族が参加して法律を制定する会議のことですね」

 ロクサーヌのつぶやきにセリーが説明を入れる。

「いろいろあって、俺が迷宮を倒して貴族になったらルティナにそっちの仕事をまかせることになった」
「……ご主人様ならいつか迷宮を倒すことは間違いありません」

 ロクサーヌの表情がなにやら険しくなったような。
 いや。カンテラの薄暗い明かりだからそう見えるだけだろう。
 そういえば、ロクサーヌには貴族になるつもりはないなどと言ったような気もする。

 ロクサーヌのためには意見を変えなかったが、ルティナのために意見を変えたということだろうか。
 そのとおりだけど。
 貴族になるつもりはないと言ったな。
 あれは嘘だ。

「迷宮に入ることは問題ないか?」

 ルティナに質問して話題をそらした。

「父がやる必要はないと言い出して、幼いころにパーティーを組んでわたくし以外のパーティーメンバーが迷宮に入ることはあまりしていないそうです。ある程度の経験を積めば魔法使いに転職できると思いますが、それまでは迷惑をかけるかもしれません。ですが、魔法使いとしてお役に立てると思います」

 あまりしていないということは、少しはしたのか。
 村人Lv2までは育てたのだろう。
 初陣で盗賊を倒さなければいけない英雄のジョブは無理っぽい。

「最初はパーティだけ組んで、魔法使いになるまでは迷宮に入らないという手もあるな」

 迷宮へ行けば俺の秘密が嫌でもばれる。
 信頼できそうか判断するまで、しばらく様子を見る手はありだ。
 迷宮に連れて行かない口実ができた。

「心配なさらずとも、刺したり逃げ出したりするようなことはいたしません」

 ただの口実なのに、ルティナが変なことを言ってくる。
 ロクサーヌは、やはり微妙な顔でルティナを見た。
 殺したり逃げたりしないと発言するのは、多分考えたことはあるからだ。
 そのぐらいは考えるだろう。

「俺と刺し違えるなら公爵を狙うか」
「チャンスがあれば、あの男はどうなるか分かりません」

 危険だから公爵には近づけさせない方がいいな。
 公爵からのちょっかいが減ったら幸いだ。
 ただし、諸侯会議で活躍するのが夢だというのだから、俺にとってはお目付け役がついたようなものではある。

「逃亡して生きていくのも大変だろうし」

 奴隷が逃亡すると盗賊になるらしいから厳しい。
 とりわけ、今日まで伯爵令嬢であった身としては。
 逃げ出す心配はしていない。

「そのとおりです。そもそも、伯爵にならずセルマー伯爵家に残ったとしても、将来の火種として扱いは微妙だったでしょう。外に出たとしてわたくし一人の力で再興がかなうと考えるほどうぬぼれてもいません。それならば今の状態の方がよっぽどよいといえます。あの男の書いた筋書きに乗るのは癪ですが。ミチオ様には感謝を」

 ルティナが俺への感謝の言葉を口にして、ロクサーヌの表情がやや柔らかくなったか。

「伯爵様の関係者なのですか?」
「そうだな」
「そうですか」

 セリーの質問に答えてやるが、それ以上は何も言ってこない。
 伯爵を倒すという公爵の計画はセリーも知っている。
 本人の前で立ち入って聞くことでもないと判断したのだろう。
 戦利品というからには作戦は成功したということだ。

「公爵が憎いなら、秘密をばらすこともないか?」
「どういうことでしょう」
「いやまあ、あまりパーティーの戦略や手の内を第三者に知られるのはな」

 直に訊いてみた。
 これだけ嫌っていれば、公爵に情報を流すことはしないだろうか。
 ばらす気があってもばらすとは言わないだろうが、参考にはなるだろう。

「あの男を利するような行動は考えられません。それに、情報は将来諸侯会議で役立つかもしれません」

 安心していいのか安心できないのか分からん。
 駆け引きしだいでは情報を有効活用されることもありそうだ。
 ロクサーヌの表情も険しくなっているような。

「俺も実行部隊の一員だったのだが」
「参加させられただけの雑兵まで恨んでも仕方がありません」

 俺は雑兵扱いなのか。
 そのとおりだけど。
 ルティナは割とはっきり口に出して言うタイプらしい。

 ロクサーヌも、はっきりと厳しい顔つきでルティナをにらんでいた。
 ロクサーヌとルティナとの間で火花が飛んでないか?
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