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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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「ありがたい。さすがはミチオ殿だ。余が見込んだだけのことはある」

 セルマー伯の居城へ侵入する尖兵の役を引き受けると、公爵が勝手なことをのたまった。
 貴様のために受けたのではない。
 カシアのためだ。
 き、貴様のために受けたんじゃないんだからね。

 セリーが心配そうな表情で見てくるが、口をはさむつもりはないらしい。
 公爵が相手だしな。

「ま、なんとかなるだろう」

 セリーにも聞こえるように、楽観論を口にした。
 ロクサーヌはあまり心配そうではないが、俺のことを信用しているのだろうか。
 俺の力を過大評価していることは考えられる。

「出撃は今夜遅くになる。酒はないが、たっぷりと飲み食いして英気を養ってくれ」

 泊りがけで来いというのはそういうことだったのか。
 手回しのいいことで。
 酒がないのも、酔って出撃するわけにはいかないからだろう。
 今回ドワーフ殺しを用意するつもりは元からなかったと。

 仕方がない。
 せめてやけ食いでもしておくか。

「閣下、ゴスラーです」

 しばらく料理に没頭していると、ノックの音がして外から声がかかった。
 ゴスラーだ。
 緊急事態と言ってゴスラーがいなくなったら、本当に公爵が厄介ごとを持ち込んできた。
 ゴスラーがいないとやっぱり駄目か。

「ゴスラーか。今ドアを開ける。入ってはくるなよ」

 公爵が立ち上がり自ら扉に向かう。
 この会議室は入ったら終わるまで出られない。
 そういえば、俺たちはいつまで出られないのだろう。
 今夜遅くという作戦決行までここで軟禁だろうか。

 公爵がドアを開けた。
 ドアの向こうにはゴスラーが一人で立っている。

「セ二号作戦はほぼ計画通り順調に推移しております。予定した者の八割とはすでに連絡がつき、現在集結しつつあるところです」

 ゴスラーが小声で報告した。
 ばっちり聞こえているけどね。
 胸を張ってえらそうに報告を受ける態度なんかを見ると、公爵はさすが公爵だ。
 腐っても鯛というか腐った鯛というか。

「突発で行う計画なので、全員と連絡が取れないことは織り込み済みだ。八割取れれば十分だろう」
「ですが、困ったことが一点」
「なんだ?」
「よろしいので」

 ゴスラーが微妙に俺の方を見ながら告げる。
 部外者には聞かせられないことらしい。

「大丈夫だ。ミチオ殿にはご助力いただけることに決まった」
「ミチオ殿にですか?」
「ミチオ殿がセルマー伯のところに行ったことがあるのは知っていよう」

 俺を仲間に引きずり込むことはゴスラーにも言ってなかったようだ。
 やはりゴスラーが知っていればあくどいことは行われなかったのだ。

「そうですか」

 ゴスラーが同情するようないたわるようなまなざしで俺を見る。
 苦労人仲間ということだろう。
 ゴスラーの方も日々公爵に振り回されているに違いない。

「それで。困ったことというのは?」
「実は」

 その後のゴスラーの話は、小声だったこともありあまりよく分からなかった。
 固有名詞ばっかりだし。
 誰それがどこそこへ行ってなにそれ、みたいな。

 とりあえず、非常召集の連絡に手違いがあったらしい。
 ミスなのかアクシデントなのか。

「それでは決行を早めた方がいいだろう」
「そうですね」
「最低限の人数がそろい次第、作戦を開始する。ミチオ殿を除いて、四十四人だ」
「了解しました」

 決定を受けてゴスラーが立ち去る。
 公爵は、ドアを閉め、自分のイスに戻った。

「すまんな。少々作戦の修正が必要となった。決行を早める」
「弟に何かあったのですか?」

 公爵が座ると、カシアが問いかけた。
 ゴスラーの報告に出てきた固有名詞の中にカシアの弟の名前があったらしい。

「いや。彼に問題はない」
「そうですか」

 カシアが安心したように息をつく。

「弟というのは、カシアの従弟でな。次期セルマー伯爵になってもらう予定だ」

 公爵が俺の方を見て説明した。
 弟といっても従兄弟か。
 カシアの親戚なら、当然セルマー伯爵家の一族ということになる。

 爵位を継いでもらうのにふさわしいのだろう。
 セルマー伯を討つといっても、討ち滅ぼすのではなく本当にトップをすげ替えるだけのようだ。
 あるいは傀儡にするのに都合がいい人材なのか。

「その人が次のセルマー伯に」
「そのためには彼にも今回の挙兵に参加してもらわねばならん。だが、騎士団の冒険者が迎えにいったところ、運悪く他の人と一緒にいたらしい。まったくの無関係者ならよかったのだが、セルマー伯とも通じている者だ。余の騎士団がセルマー伯の親戚を呼び出すのは何故か。聡い者がいれば関係に気づくかもしれん」
「それで決行を早めると」

 気づかれた可能性があるので、向こうが動く前に動いてしまおうということか。
 ゴスラーでさえ決行の日にちを知らなかったのだから、カシアの従兄弟が知るはずはない。
 知らなければ、たまたま誰かと一緒にいることはあるだろう。
 行き当たりばったりな公爵の責任か。

「確実を期して寝静まる時間帯まで待つつもりだったが、そうも言っていられなくなった。必要最小限の準備が整い次第、セルマー伯の居城に突入する。今からの時間でも大きな問題はないだろう。夜になれば謁見の間に人はいないはずだ。こことセルマー領との距離はそれほどないから、時間が変わることは考えなくていい」

 少人数で寝込みを襲うならもっと遅い時間の方がいいはずだ。
 早くする分危険は増すが、情報が伝わってしまうよりはいい。
 セルマー伯領との時差は、考えなくていいらしい。

「閣下」

 再び、ノックの音が響いてゴスラーの声がした。

「ゴスラーか」
「お連れしました」
「準備はいいか」
「すべてできています」

 返事を聞くと、公爵はオリハルコンの剣を抜く。
 驚く俺に軽くうなずいてから、ドアを開けた。
 ドアの向こうには、ゴスラーの他に男が二人いる。
 一人は会ったことのある騎士団員だ。

「久しいな」
「こ、これは?」

 もう一人の男が驚いている。
 ドアを開けたら剣を持った公爵がいたのでは、驚くだろう。
 男がカシアを見つけ目線で何か問いかけるが、カシアは首を振った。

「端的に言おう。貴公には次期伯爵になっていただきたい」

 前もって話しておかなかったのかよ。
 今ここで説得をするらしい。
 つまり、この連れてこられたかわいそうな人がカシアの従兄弟だ。

 今日になってから話をするとか。
 行き当たりばったりどころの騒ぎじゃない。
 他の人とかち合ったのを運悪くとはいえない。

 ただし、話を持っていって断られる可能性もある。
 断られればセルマー伯側への情報漏洩を心配しなければならない。
 断られなくても、こっちにつく振りをして土壇場で裏切るかもしれない。
 それなら最初から知らせないという手もありなのか。

 今からならセルマー伯へ伝える時間はない。
 反対されても、ことが終わるまで拘束しておけばいい。
 寝返って何かをしようにも準備をする余裕もないだろう。

「伯爵を……討たれるのですか?」

 男が顔を白くしながら言葉を搾り出した。
 顔面蒼白というのは、本当にそうなるらしい。
 血の気が引いたのだろう。
 公爵は無言のまま大きくうなずく。

「こうなることは分かっていたはずです。しっかりしなさい」

 代わりにカシアが男に声をかけた。

「それは……そうですが」

 この男も分かってはいたようだ。
 貴族にとって迷宮が倒せないというのはそこまでの不祥事なんだろうか。
 討たれて当然なんだろうか。

 逆にいうと、セルマー伯が待ちかまえている可能性もやはりある。
 討たれて当然なら自分が危ないと分かっているだろう。
 いや。そんな戦力があるなら迷宮に投入しておけと。

「分かっていよう」
「しかしそんなことをすれば」
「非公式ながら全エルフ最高代表者会議の賛同は受けている。非公式なのは、セルマー伯もメンバーだからにすぎない。というよりも、この件は会議からの要請だ。伯爵が減って困るのはエルフ全体の話だしな。貴公が次期伯爵になればすべては丸く収まる」

 すでに根回しも十分にすませているらしい。
 公爵の勝手で攻め込むのでもないようだ。

「そこまで話が進んでいるとは……」
「余が実行役に選ばれたのも会議からの恩恵と思ってくれ。余と貴公が組めば、被害を最小限に抑えられる。なっていただけるな」
「は、はい」

 公爵が無理やり引き受けさせた。
 剣を持っているし、説得というよりは脅しだ。

「貴族の責務を忘れてはいけません」

 引き受けざるをえなかった従兄弟にカシアが声をかける。
 慰めているのだろうか。

「では、作戦決行時までこの部屋にいていただく」
「私も兵を呼び寄せます」
「残念だが、その余裕はない。心配せずとも城内では存分に働いていただく」

 男の申し出を公爵が断った。
 仲間を連れてくるといってセルマー伯に情報を流す恐れもあるから、当然だろう。
 参加させるといっても本当に形だけのようだ。
 かえって足手まといではあるのかもしれない。

「そろそろ人数がそろいます」

 騎士団員が一人駆けてきて、部屋の入り口から報告した。

「すぐにまいる」
「は」

 公爵の返事を受け、戻っていく。

「それでは、本日の会議はここまでとする。以後はこの部屋から外に出てもよい。カシアは、結婚のときにセルマー伯からついてきた者たちを集めて見張りを頼む。そろそろ騒ぎをかぎつけられかねん」
「わたくしも城へまいります」
「もちろん行ってもらうつもりだ。ただし、先陣としてではない。今は決行前に向こうへ情報が伝わらないようにすることが最優先だ」
「分かりました」

 公爵は最初にカシアを部屋から出した。
 見張りと言っているが、要するに参加させたくないのかもしれない。
 実家の転覆に立ち会わせるのも酷だろう。

「余らも行こうか」
「ミチオ殿たちも、こちらへ」

 ゴスラーが俺たちを招く。
 全員で移動した。
 行ったのは、前にロクサーヌが試合をやった部屋だ。
 部屋には大勢の人がいた。

 いつものボーデの城とは様子が違う。
 空気が張り詰めている。
 これから攻め込むのだから当然か。
 明かりも、蝋燭やカンテラでなく、かがり火がたかれていた。

「簡単に作戦を説明しよう。まず、貴公にはこちらの用意した人員とともに城に飛んでいただく。今回倒すのはセルマー伯爵一人でいい。正面から入ってその旨を触れ回り、伯爵側に抵抗させないようにしてくれ。抵抗が弱ければ、その功績は貴公の手柄となる」

 公爵が次期伯爵の方を向いて説明する。
 本当に力の行使は最小限にとどめるつもりのようだ。
 味方に手を上げるのは嫌だろうし、これならカシアの従兄弟も動きやすいだろう。
 一族の者までが敵に回っているとなれば、セルマー伯側の抵抗も弱まるに違いない。

「精一杯のことをします」

 気丈に答えているこの男がどういう地位にあってどれだけの影響力を発揮できるのかは知らないが。

「その隙に、ミチオ殿にも飛んでもらう。続いてが余らの出番となる。一気に攻め込み、城内を押さえる」

 エンブレムに飛ぶとは言わなかったし、詳しい説明もない。
 セルマー伯爵の親戚にあたるこの男を完全には信用していないのだろう。

 俺は騎士団員の冒険者を引き連れて移動することになる。
 一度行けば、次は騎士団員の冒険者もエンブレムに飛べるようになる。
 表側でこの男が騒いでいる隙に、裏から入って一気に押さえようということだろう。

「分かりました」
「簡素な装備品でよければ、こちらで用意したものを使ってくれ」
「ありがとうございます」

 男が騎士団員に連れられて場所を離れた。

「ミチオ殿も使うのであれば」
「いえ。アイテムボックスがあるので」

 剣やグローブや帽子はアイテムボックスに入れてある。
 硬革の鎧は着用していた。
 念のための用心だ。

「そうであったな。ではしばしここで待機してくれ」

 公爵がゴスラーと一緒に立ち去る。

「待ってください。最初はご主人様と一緒に私が行きます」

 それをロクサーヌが止めた。

「ロクサーヌが?」
「はい」

 思わず俺が口にするとうなずく。

「どういうことだ?」

 公爵が立ち止まって尋ねた。

「ご主人様の行かれる場所は絶対安全ではないのですよね?」
「そうだ、な」
「そのような場所にご主人様を一人で行かせるわけにはいきません。私が一緒に行って、何かあったときには必ずお守りします」

 ロクサーヌがまくし立てる。
 今日はここへ来てからほとんど黙っていたのに。
 勇気あるな。

「しかし、人数が」

 公爵は戸惑っているようだ。
 作戦を簡単に変えるわけにもいかないだろう。
 一度俺が五人の冒険者を連れて行けば、次は三十六人を一気に送り込める。
 ロクサーヌが入って四人になれば、俺を含めても次は三十人にしかならない。

 しかしこれはチャンスだ。
 考えていたことを提唱できる。

「それならば、作戦決行の前に俺が一度偵察に行ってこよう」
「偵察だと?」
「待ちかまえられていないかどうか、一度行って見てくれば分かる。俺とロクサーヌだけで行ってくればいい。それならロクサーヌも安心だし、作戦の変更もほとんどない」

 ロクサーヌの提案に便乗した。
 狙いは、俺たちだけで一度移動することだ。
 何も馬鹿正直にフィールドウォークでエンブレムに移動することはない。
 俺たちだけで行くなら、ワープで飛べる。

 謁見室の片隅にでも出ればいいだろう。
 ワープなら遮蔽セメントが使ってあっても飛べる。
 エンブレムに罠を張っていたり仕掛けがしてあっても、違うところに出てしまえば問題を避けられるだろう。
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