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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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潮時

 
 昼近く、ロクサーヌはさらにレベルが上がって巫女Lv26になった。
 コハクのネックレスと原石を持ち出してペルマスクに向かう。
 夕方まで粘ってもLv27になれるかどうかは分からないし、ぎりぎりすぎるのもよくない。
 この辺が潮時だろう。

「セリー、鏡を四枚頼むな」
「はい」

 帝国の一番端にあるザビルの迷宮でMPを回復した後、セリーにコハクの原石と鏡の購入資金を渡した。

「それと、この仕事はなくなるかもしれない。ペルマスクの方へはうまく言っておいてくれ」
「なくなるのですか?」
「まだ詳細まで決まったわけではないが、多分そうなるだろう」
「分かりました」

 ザビルで準備を整え、ペルマスクまでワープする。
 思ったとおりきつい。
 ただし、準備の中には回復薬を口に含んでおくことも含む。
 無能な俺なりの工夫だ。

「わ。すごい。白くて綺麗な街だと思います」

 ペルマスクが初めてのベスタは無邪気に喜んでいた。
 俺はすぐに薬を飲んで回復を図る。
 なんとか大丈夫か。

 四人を送り出し、ハルバーの迷宮まで移動した。
 一人だし迷宮伝いにMPを回復しながらなので、このワープは問題ない。
 ハルバーの十八階層でフライトラップを倒し、MP回復薬を補充する。

 本当はボスのアニマルトラップから強壮剤を作りたいが、無理はしない。
 十八階層のボス戦では二対一の戦いになる。
 ロクサーヌだけでも連れてくれば楽勝だと思うが。
 そこまですることもないだろう。

 強壮丸だけだがたっぷりと作って、ペルマスクに戻った。
 ペルマスクの冒険者ギルドに出て回復薬を飲みながら待っていると、ロクサーヌたちもすぐにやってくる。
 鏡も一人一枚持っていた。

 ペルマスクからザビルの迷宮に飛ぶ。
 ここは途中の中継地点がないのがつらい。
 というか、ザビルがペルマスクへの中継所になるわけで。

「親方の奥さんには、次はいつになるか分からないと言っておきました。親方の奥さんとしても、あまりコハクのネックレスを広めたくはないようです。みんなが持っていても困るからでしょう。向こうとしてもちょうどよかったと考えているのではないでしょうか」
「そうか。ありがとな」

 ペルマスクの方へはセリーがうまく説明してくれたらしい。
 さすがセリー。
 役立たずな俺には過ぎたパーティーメンバーだ。

 コハクのネックレスも誰もが持てば希少価値がなくなる。
 すでに持っている親方の奥さんとしても渡りに船だったのだろう。
 ハルツ公の冒険者がどういう風に動くのかは分からないが。

 ザビルからは、一度にクーラタルまで戻るのでなく、途中に町をはさんだ。
 一気にではなく小刻みに飛べば、MPの減少も少なくてすむ。
 薬でMPを回復しつつ、家まで帰った。
 別に変な薬ではないので、依存症はない、と思う。

 時間はあるので、一度荷物を家に置いて、ハルバーの迷宮に入った。
 公爵から何時に来いという話は聞いていない。
 夕食を一緒にというだけで。
 約束の時間があったとしても時計もないし。

 こういうのはいつぐらいに訪ねればいいものなんだろうか。
 向こうにも準備があるから、あんまり早く行くのは駄目だという話は聞いたことがある。
 ボーデはクーラタルより北にあるので、日没も遅いかもしれない。
 考えるより常識人のセリーに聞くべきか。

「今日はハルツ公より夕食の招待を受けている。後で鏡を持って全員で行こう」

 探索の途中でロクサーヌたちに話した。

「鏡ですか。分かりました」
「鏡の取引が今回で最後になるみたいだからな。そのお礼というか、詫びだ」
「では私たちは適当にすませます」

 ロクサーヌは勘違いしているようだ。

「いや。招待されているのは全員だ」
「私たちもですか。よろしいのですか?」
「向こうが来いと言うのだし」

 というか、公爵の目当てはロクサーヌだし。

「ハルツ公というのは、貴族様ですよね」
「そうだ」
「貴族でも奴隷を持つことがあるそうです。奴隷と一緒に食事をするのは禁忌ではないのかもしれません」

 ロクサーヌの疑問をセリーが解説してくれる。
 さすが常識人。
 説明が公爵と一緒だ。

「いつぐらいに行ったらいいと思う?」
「夕方、少し早いくらいの時間がいいと思います。貴族だと、当人はそれほど忙しくないでしょう」

 それもそうか。
 準備するのはハルツ公爵本人ではなく使用人だ。
 セリーの言うことはいちいち説得力があるな。
 セリーに相談して正解だ。

「分かった。では少し早めに行ってみよう」
「大丈夫でしょうか」

 俺もロクサーヌと同様心配は心配だ。
 少し違う意味で。

「決意と気合があれば大丈夫だろう。気合だ」
「気合ですか」
「ロクサーヌは絶対に手放さない」
「えっと。はい。ありがとうございます」

 大丈夫だ。
 覚悟があれば公爵も無茶は押し通せまい。
 恐るるに足らず。

 迷宮を出た後、一度冒険者ギルドに寄ってアイテムを売却した。
 家に帰って準備する。
 鏡とネックレスを用意した。

「普段着でいいと言われたが、ネックレスくらいはしてもいいだろう」
「よろしいのでしょうか」
「はい。問題はないでしょう」

 常識人のセリーが問題ないというのなら安心だ。
 俺もアイテムボックスの中身を全部取り出して準備する。
 ひもろぎのイアリングははずして身代わりのミサンガを着けた。
 ファーストジョブを遊び人に設定する。

 探索者は、結局Lv48までしか育たなかった。
 冒険者まであと一歩、いや、あと二歩というところだ。
 多分されないとは思うが、インテリジェンスカードのチェックでもされたら困る。

 鏡を持って行くので、ボーデの冒険者ギルドに出るのもつらい。
 冒険者ギルドから城まで鏡を持って歩くのは大変だ。
 ボーデの城に直接ワープするなら、探索者になっているといってごまかすことはできない。

 そこで遊び人の出番となる。
 遊び人なら、冒険者でないのにフィールドウォークが使えてもなんら問題がない。
 冒険者のジョブを所有している遊び人はフィールドウォークを遊び人のスキルに設定できるはずだ。

 遊び人そのものが知られていないという懸念はあっても、実際できるのだからトラブルにはなりにくい。
 少なくとも探索者がフィールドウォークを使うよりよっぽどいい。
 遊び人なら他にもいろいろ言い訳になる。
 魔法が使えても不思議はないし。

 もちろん、こちらからばらすつもりはない。
 あくまでも保険だ。
 何かあったときの保険である。
 保険が不要だったら、何も問題が起きなかったことを喜べばいいのだ。

 準備を整えて、ボーデの城にワープした。
 四人にはネックレスをさせ、鏡を持たせる。
 俺は剣を持たずに出た。
 何故持たないのかというと、会食のとき剣をはずす恐れがあるからだ。

 はずした剣はどうするか。
 冒険者なら、アイテムボックスに入れる。
 冒険者でない遊び人の俺がアイテムボックスに入れるのはおかしい。
 遊び人の空きスキルはまだ一個から増えていない。

 それならば最初から剣を持たないのがいい。
 石橋は叩いてから渡る。
 念には念を入れ、慎重に行動すべきだ。
 リスクコントロールはかくありたい。

「すぐに団長を呼んでまいります。少々お待ちください」

 ボーデの城に着いて勝手に中に入ろうとしたら、止められた。
 あれ。
 いつもと違う。
 会食に招待されたので扱いが違うのだろうか。

 いや。今日は俺一人じゃないからか。
 知っている人間が連れてきたとはいえ、氏素性の分からない者をすぐ公爵に会わせるわけにはいかない。
 リスクマネジメントの初歩だ。

「ミチオ殿、よくみえられました。こちらへおいでください」

 ゴスラーがやってくる。
 さすがに腰の軽い公爵でも今日は出てこないようだ。
 騎士団の危機管理もなかなかのものらしい。

 公爵は案内された大きな部屋にいた。
 他に騎士団員っぽい人も控えている。
 綺麗な板張りの何もない部屋だ。

「ミチオ殿、よくまいられた」
「本日はお招きにあずかりまして」
「よいよい。堅苦しい挨拶は抜きじゃ」
「は」

 やはり公爵は公爵か。

「彼女らがミチオ殿の?」
「はい。パーティーメンバーのロクサーヌ、セリー、ミリア、ベスタです」

 四人が公爵に向かって頭を下げた。

「余がハルツ公爵じゃ」
「はい。よろしくお願いします」

 ロクサーヌが代表して挨拶する。

「ふむ。ミチオ殿は四人しか連れてこなかったのか」
「パーティーメンバーなので」
「親でも兄弟でも知り合いでも連れてくるものじゃ」
「あー。なるほど」

 いぶかしんでいる公爵に話すと、公爵がその理由を説明した。
 実際に一緒に戦っているパーティーメンバーでなくても六人そろえて来ればよかったということか。
 せっかくの会食なのだし、普通はそうするのだろう。
 一緒に迷宮に入っているメンバーかどうかなんて分からないだろうし。

 しかし俺には連れてくるような人間がいない。
 変なメンバーを連れてきて変な行動でも取られたらたまらない。

「やはり遠くの出ということか」

 公爵がつぶやいた。
 何故俺が遠くから来たことを知っているのか、と思ったが、ルークか。
 あまり変な探りは入れるなとルークの前で俺の出身は遠方だと言ったのだ。
 それが公爵の耳に入ったらしい。

 壁に耳あり障子に目あり。
 情報が早い。
 それで本日の誘いになったと。

 公爵には、俺と地元の領主騎士団との関係を匂わせておいた。
 変に誘われるのも嫌だったし。
 しかし遠くの出身だというのなら、地元とのつながりは怪しい。
 ゴタゴタがあって出てきたのなら関係も切れるだろう。

 公爵の狙いはロクサーヌではないのかもしれない。
 あちらを立てればこちらが立たず。
 うまくいかないものだ。

「まずは鏡をお渡しください」

 微妙な空気を読んだのか、ゴスラーが割って入った。
 さすがは苦労人。
 ゴスラーがいてくれてよかった。
 四人が鏡を壁に立てかけて置く。

「この四枚だ」
「確かに。お代は色をつけて後でお渡しします。それと今後のことですが」
「鏡については、継続させるのも難しいし、潮時だと思っている。こちらもよい臨時収入になった。いろいろと世話になったな」

 鏡の行商に関してはあっさりと引き下がっておいた。
 ごねたところでいいことがあるとも思えないし。
 最終的に権力でも振りかざされたら、公爵に対して勝ち目はない。
 別に必要不可欠な利権でもない。

「余の騎士団に入って運搬の仕事に携わってくれたら一挙両得なのじゃが」

 公爵はそんなことを狙っていたのか。
 なんとか続けさせてくれと交渉したら、ではうちに入れと。
 俺は鏡の仕事を続けられるし、公爵は自領の正規騎士団員を使って鏡を仕入れることになる。
 一石二鳥の解決策だ。

「それほどの仕事でもないでしょう」
「であるか」

 簡単に引き下がったところを見ると、別に本気でもなさそうだが。
 公爵の騎士団に入るというのも、悪い選択ではないかもしれない。
 先々まで食いっぱぐれる心配はなくなる。
 少なくとも公爵の目の黒いうちは。

 ただ、公爵の騎士団にはエルフが多い。
 エルフは人間族をあまりよく思っていないという。
 公爵や騎士団の上の方にはそういう雰囲気は微塵もないが、下へ行けば分からない。

 正式に騎士団の団員となれば、多くのエルフと交流するだろう。
 嫌な目にあうことも出てくるに違いない。
 そんな人間関係の苦労をしょいこむことはない。

 また、迷宮に入ることは危険を伴う。
 騎士団の命令で入ればリスクが増える。
 もちろん考慮はしてもらえるだろうが、時には無理な命令もあるかもしれない。

 なるべくならフリーハンドでいた方がいい。
 自由裁量の余地はできる限り残しておくべきだろう。
 それに、戦闘ではいろいろと隠さなければならないことも多いし。

「分かりました」

 ゴスラーもあっさり引き下がった。

「して、ゴスラーが立会人を務めたというのは?」
「確か彼女ですね」

 やはり公爵の本命はこっちか。
 ゴスラーもロクサーヌのことを忘れてないし。
 ついに来た。

「彼女がロクサーヌです」
「隙のない身のこなし。さすがに強そうじゃ」

 改めて公爵にロクサーヌを紹介すると、お褒めの言葉が返ってくる。
 そうなんだろうか。
 強いと思って見るから、強く見えるのでは。
 ハーロー効果ってやつだ。

「はい。見事なかまえです」

 ゴスラーまでが騙されている。
 ゴスラーはロクサーヌの戦いを見ているが。
 というか、別に立ってるだけじゃね?

「余の攻撃では当てられないかもしれん」
「彼女の強さは特筆すべきものです」

 そういうものなんだろうか。
 分かるのだろうか。

「そちはどうじゃ」
「は。恐れながら、一度手合わせさせていただければと」
「ミチオ殿、いかがか。この者は余の騎士団でも最も腕が立つ。一度彼女との手合わせを願いたいが」

 公爵が騎士団員の一人と話し、その男がロクサーヌとの手合わせを求めた。
 男のジョブは公爵と同じ聖騎士だ。
 多分ゴスラーのパーティーにいた聖騎士だろう。
 ハルツ公騎士団の最精鋭といったところか。

「いえいえ。とても相手になるとは」
「訓練用の木剣を使わせるし、危険なことはない」
「ご主人様、私も手合わせしてみたいです」

 おまえもか、ロクサーヌ。
 どうやら手合わせは避けられないようだ。
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