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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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石化

 
「石化をつけた武器は将来ミリアに使わせるつもりだが、ミリアのレイピアに石化をつけるべきだろうか。それとも、エストックにつけるべきだろうか」

 家に帰ると、全員を呼んで諮る。
 一応、みんなの考えも聞いた方がいいだろう。
 ことによったら今ロクサーヌが使っているエストックをミリアに渡す事態になるかもしれない。

「状態異常付与のついた武器は竜騎士に二本持たせるとよいという説もありますが、やはり信じてはおられないのですね」

 セリーが意見を述べてきた。

「そうなのか?」
「状態異常といっても、確実に相手を状態異常にできるわけではありません。二本持って手数が増えれば、それだけ可能性が増すという考えもあります」
「そうなのですか」

 ベスタも知らなかったみたいだ。

「竜騎士の二刀流を使うのか。剣を二本持つと効果が二倍になるとか?」
「いえ。そこがよく分かりません。二本持ったからといって効果が倍になったという確実な報告はないようです」

 駄目じゃん。
 効果があるのだろうか。
 二刀流といっても別に二本の剣で同時に攻撃するわけではない。
 二つのスキルで効果が重ならないのなら、意味はない。

 石化付与が五十パーセントの確率で敵を石化できるとして、石化付与のついた剣を竜騎士が二本持てば百パーセント石化できるようになるとか。
 そんなことはなさそうだよな。
 スキル効果が重複するなら、一本の剣に石化付与を二つつければいいし。

 だから、やはり俺が信じてないと言ってきたのか。
 セリーも信じてはいないのだろう。
 ただの俗説ということか。

 二刀流で石化付与の剣を二本持ったら、強そうな気はするよな。
 なんとなく。
 なんとなくというだけではないだろうか。

「駄目そうだな」
「魔物の横や後ろからなら、二本で同時に攻撃することもできます。トータルでは戦闘で魔物を状態異常にできる確率を上げることができるでしょう。また、例えば石化付与の剣と毒付与の剣を二本持って攻撃することもできます」

 それは一本の剣に石化付与と毒付与のスキルを両方つければ同じじゃね。
 と言おうとして分かった。
 この世界では一つの装備品に複数のスキルをつけることはあまりない。

 一つの武器に一つのスキルという前提での話なんだろう。
 それなら、剣を二本持てる竜騎士が有利というのも分からなくはない。

「それは一つの剣にスキルを一個しかつけない場合だな」
「いえ。あ。そうですが……」

 セリーが押し黙る。
 俺が一つの装備品に複数のスキルをつける方針であることを思い出したのだろう。
 一本の剣に複数のスキルを集約するなら、竜騎士が有利とは限らない。
 一回の攻撃で複数のスキルを発動できる。

 同じスキルを複数つけて有効かどうかは分からないが、違うスキルなら複数つけても有効だ。
 デュランダルのHP吸収とMP吸収は両方同時に発現している。

「やはり、石化付与の武器はまずミリアに使わせたい」
「はい、です」

 ミリアはやる気のようだ。
 いつも返事だけはいいが。

 状態異常を起こせる武器があるのなら、暗殺者のスキルである状態異常確率アップが有効になるだろう。
 誰かのジョブを暗殺者にするならミリアがいい。
 暗殺者には状態異常耐性アップのスキルもあるから、回避がメインのロクサーヌにつけて効果の上がるジョブとはいいがたい。
 ベスタを暗殺者にすると二刀流のある竜騎士が使えなくなる。

「よく分かりませんが、そういうことでしたら石化のスキルはエストックにつけるべきでしょう。スキルはなるべくよい武器につけた方が効果的です」

 ロクサーヌが意見を述べながらエストックを差し出してきた。
 エストックをミリアが使うのならばロクサーヌはランクの落ちるレイピアを使うことになる。

「悪いな」
「問題ありません」

 ロクサーヌの場合、あまり装備面でのこだわりはないようだ。
 順番にはうるさいのに。
 どういう構成にするのがいいかパーティー全体の効率を考えてくれる。
 ありがたいことだ。

 いずれエストックよりもいい武器を手に入れて報いてやろう。
 エストックがまたすぐ手に入る可能性もないわけではないしな。
 効果の高いスキルをつけるのはなるべくいい装備品にした方がいい。

 ロクサーヌから受け取ったエストックをセリーに渡す。
 買ってきたサンゴのモンスターカードと手持ちのコボルトのモンスターカードも出した。
 セリーの方へと差し出す。

「コボルトのモンスターカードも使ってスキルを強化するのなら、なるべくいい武器に融合するのがいいでしょう」

 セリーも賛成してくれるらしい。
 両手剣でなく片手剣につけるのは、複数のスキルをつけることを承諾したと考えていいな。
 ありがたいことだ。

「あの。融合するところを見させてもらってもいいですか」

 セリーの手に武器とモンスターカードが渡ると、ベスタが申し出てきた。

「別にいいよな?」
「はい」
「大丈夫だ」

 セリーに確認してから答える。
 いちいち言ってこなくても別に追い出したりはしない。
 今までもそうだったし。

「では、融合します」

 セリーがスキル呪文を唱え、モンスターカードを融合した。
 セリーの手元が輝く。


硬直のエストック 片手剣
スキル 石化添加 空き 空き 空き


 やがて光が収まると、融合も完了していた。
 硬直のエストックというのか。
 スキルは、石化付与じゃなく石化添加だ。
 コボルトのモンスターカードも使ったからだろう。

「おお。さすがセリーだ。成功したな」
「成功したのですか?」
「そうだ」

 硬直のエストックを持って、ベスタにも見せる。

「すごいです」
「セリーはすごいですから」

 ロクサーヌもセリーを褒めた。
 当のセリーはやや微妙な表情をしている。
 俺が選んだ装備品には融合できることを分かっているからだろう。

「では、この剣は最初はロクサーヌが持て。ミリアはしばらく見学な」
「よろしいのですか」
「はい、です」

 硬直のエストックをロクサーヌに渡す。
 暗殺者にするには戦士をLv30まで育てなければならない。
 戦士Lv1で戦わせるのは不安もあるから、最初は見学がいいだろう。

 家からハルバーの二十階層にワープした。
 ミリアのジョブを海女Lv33から戦士Lv1に替える。

「セリーとミリアはしばらく位置を替わってくれ」
「分かりました」
「はい、です」
「しかし後ろに下げてまで見学させる意味があるのですか?」

 セリーが鋭く突っ込んできた。
 確かに、見学させるのは戦士Lv1にするからだ。
 硬直のエストックはロクサーヌが使うとしても、ジョブを替えないならレイピアで戦わせればいい。

「たまには後ろから広い視点で戦闘を見ることも大切だろう。ミリア、槍を使えるか?」
「使う、です」

 適当にごまかし、ミリアに聖槍を渡す。

「まあそうかもしれませんが」

 セリーはミリアと帽子を交換すると、曖昧にうなずいた。
 ミリアが暗殺者になれば、その防毒の硬革帽子の効力もアップするだろう。
 無理に話を決着させ、探索を開始する。

 石化添加の効果が出るのは、案外時間がかかった。
 魔物が石化したのは四つめの団体のときだ。
 ロクサーヌが斬りつけたハットバットが床に落ちる。

「あ」
「落ちた、です」

 ロクサーヌとミリアが同時に声を出した。
 ミリアはロクサーヌの戦いぶりをしっかりと見学していたらしい。
 あれは参考にならんだろうに。

 ハットバットは床に転がって動かない。
 石化しているようだ。

「石化するとどうなるんだ?」
「石のように固くなって通常の物理攻撃に対しては強くなります。魔法に対しては弱くなるようです。倒せばアイテムも手に入ります」

 ロクサーヌと場所を替わり後ろに下がってきたセリーに聞いた。
 石化させて終わりではなく倒さないといけないのか。
 魔法使いのいないパーティーでは石化の使い勝手は微妙だろう。

 ファイヤーストームで焼き払う。
 確かに床に落ちたハットバットも燃えていた。
 倒さないといけないにしても、こちらが攻撃を受けなくなることは大きい。
 ありがたいスキルではある。

 ただし、石化する確率はたいしたことはない。
 ロクサーヌは数十回は攻撃している。
 確率数パーセントというところだろう。
 ベスタのクリティカルが出る確率とどっこいどっこいだ。

 ラブシュラブ二匹を焼き上げた。
 続いて動かないハットバットにブリーズボールを叩き込んでいく。
 はずすような距離でもないが、動かないので必中だ。

「石化するとこんな風になるんですね」
「麻痺と違って石化してしまえば自然に回復することはないそうです」
「白い、です」
「そうなんですか」

 みんなも興味深げにハットバットを見て、槍でつついたりしている。
 というか、ハットバットはこれでも石化して白くなったのか。
 よく分からん。

「ロクサーヌ、もう一匹ぐらいいってみるか」

 ハットバットを始末してから、ロクサーヌに訊いた。

「いえ。私なら十分です。ありがとうございました」
「ならセリーがやってみるか」
「私は片手剣を使ったことがありませんので」

 セリーは使ってみなくてもいいらしい。
 好奇心が強いからやってみたいと言うかと思ったが、そうでもないようだ。

「じゃ、やっぱりロクサーヌだ。石化する率はあまりよくないようだが、確認のためだ」
「えっと。実験ですか」
「そうだ」
「分かりました」

 本当は確認のためではない。
 確率ならミリアの戦士で嫌というほど試せるのだし。
 ただ、その戦士は今Lv3でしかない。
 もう少し上げておきたい。

 ロクサーヌのジョブを暗殺者にして試してみる手もあるが、そこまですることもないだろう。
 暗殺者Lv1になるので多少は危険もある。
 ジョブの効果はレベル依存でパーティーメンバー全員に効いてくるから、複数のメンバーを低レベルにすることは避けたい。
 ベスタの竜騎士もまだLv24だし。

 硬直のエストックをロクサーヌに持たせて狩を続ける。
 二匹めに石化したのも、やはりハットバットだった。
 ハットバットは動きが厄介でロクサーヌが相手をすることが多いから、当然か。
 ハットバットが石化して墜落する。

 ラブシュラブが一匹残った。
 ファイヤーストームに切り替えて攻撃していく。
 ロクサーヌとベスタがラブシュラブを囲んだ。
 セリーとミリアは遠目から槍で突く。

 動きが厄介なハットバットから先に倒そうと、さっきまでブリーズストームを使っていた。
 厄介な魔物だからロクサーヌが相手をし、その厄介な魔物から倒そうと弱点魔法を使っているのに、石化したら無駄になってしまう。
 ロクサーヌと硬直のエストックとの相性はあまりよくないようだ。
 そこまでは考えなかったが、ミリアにしといてよかった。

 俺は一歩後ろから魔法を放つ。
 火魔法に切り替えたのに、ハットバットが先に煙と化した。
 石化によって魔法に対して弱くなった結果だろう。
 残ったラブシュラブもファイヤーボールで仕留める。

「状態異常付与のついた武器は戦う相手の選択が難しいですね」

 セリーもやはり硬直のエストックの持つ欠点に気づいたようだ。
 欠点とまではいえないか。
 贅沢な悩みというところだ。

「竜騎士に二本持たせると効果的だというのも、案外そのとおりだったな」
「なるほど。確かにそうかもしれません」
「そうなのですか?」

 ベスタは分からないらしい。
 必要なことなので説明しておこう。

「例えば、ラブシュラブが二匹とハットバットが一匹出てきたとする。この場合ラブシュラブの弱点である火魔法を使う。二匹いる方を先に倒したいからな。石化したいのはハットバットだ。火魔法を使っているのにラブシュラブを一匹だけ石化してもトータルの戦闘時間は変わらない。後回しになるハットバットを石化できれば危険は大きく減らせる。ここまではいいか?」
「はい」

 今回の石化は割と早かった。
 それでも二十回以上はロクサーヌが攻撃している。
 発動する確率はそんなに高くないのだろう。

 石化するのは完全にたなぼたと考えた方がいい。
 望むままに次々と石化していくようなことは無理だ。
 一つの団体との戦闘で狙えるのは一匹まで。
 それも石化しないことの方が多い。

 一か八かを狙うのは、後回しになる魔物の方だろう。
 ロクサーヌが翻訳してミリアに聞かせているのも確認しながら、先を続ける。

「ハットバットが二匹とラブシュラブが一匹出てきたら、今度はハットバットから先に倒す。石化したいのは何だ?」
「ラブシュラブです」
「そうだ。石化はラブシュラブを狙わなければならない。つまり、状態異常のスキルがついた剣が二本あったなら、普通のジョブの人が二人で一本ずつ使うよりも竜騎士が一人で二本使った方がいい。二人が一本ずつ使えば攻撃対象が分散する。一人が使った方が石化する相手を絞りやすい」
「あ、なるほど。確かにそうです」

 竜騎士に状態異常のスキルがついた剣を二本持たせるというのも、一つの局所的最適解ではあるのだろう。
 暗殺者は珍しいようだし。

「もっとも、ミリアに使わせる方針なのは変わらない。ミリアがどの魔物を相手にするのか。そこら辺はうまく前衛陣で対応してくれ。相手のあることだからいつも選べるとは限らないしな」
「そうですね、分かりました」
「やる、です」
「大丈夫だと思います」

 いちいち指示するのも大変だし、そこは丸投げでいい。
 迷宮では生死がかかっているのだし、ミリアも覚えるだろう。
 魚ではなくとも。
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