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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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ハンバーグ

 
「そろそろ夕方くらいか。このくらいにしておくか」
「そうですね」

 夕方までハルバーの十九階層を探索し、ロクサーヌと話して切り上げることにした。
 結局、ベスタは今日攻撃を浴びていない。
 探索方法を切り替えたので数の多い団体といつも当たっているわけではないことが大きいのだろう。

 魔物が一匹ならロクサーヌ、二匹めもミリアが正面に立つ。
 三匹でも前衛が一対一で対応するから、難易度は高くない。
 これまで魔物の数が多いところに案内してもらっていたが、かえって難易度を上げていたわけか。
 たくさん倒した方が効率がいいから、しょうがない。

「一階層に寄って帰る。チープシープのいるところに案内してくれ」
「かしこまりました」

 帰り際、一階層によって生死不問を試した。
 賞金稼ぎはLv26になっている。

 成功はしなかった。
 あるいは魔物を一撃で倒すスキルだという予想が間違っているのだろうか。
 しょうがないので、デュランダルで屠る。

 コボルトの方が弱いから、クーラタルの一階層で試してみるべきだろうか。
 あそこは人が多いから駄目か。
 まあ日々試してみればいいだろう。

「何かの実験ですか」
「ちょっとな」
「そうですか」

 セリーが興味ありげに訊いてきた。
 また馬鹿なことをやっていると一刀両断にはしないらしい。
 セリーもだんだんと馴染んできたようだな。
 いいことだ。

 一階層からクーラタルに帰る。
 アイテムを売り払って冒険者ギルドの外に出た。

「今日の夕食は、まず赤身をミリアに渡すから頼むな」
「はい、です」
「俺はベスタに手伝ってもらって、肉料理を作ろうと思う」
「私ですか。分かりました」

 赤身は一つしかないのでメインというわけにはいかない。
 ミリアもたくさん食べたいだろうし。
 だから俺がメインの肉料理を何か作る。

「では、私とセリーでスープともう一品作ります」
「野菜炒めを作ります。ロクサーヌさんはスープをお願いできますか」
「そうですね。そうしましょう」

 ロクサーヌとセリーの担当も決まったようだ。
 食材を買って、家に帰った。

「ベスタ、ミンチって分かるか」
「名前くらいは」
「ミンチですか」

 ロクサーヌが微妙な顔をしている。
 嫌いなんだろうか。
 あれ。セリーもだな。

「駄目なのか?」
「いえ……」
「ミンチは貧しく粗野な者たちが食べるものだとされています。私の祖父も決して口にしようとはしませんでした」

 セリーが説明した。
 なんか厄介なタブーが存在するようだ。
 ブタとかタコとか食べない人や地域は地球にだってある。
 そういうのが多少出てくるのはしょうがないか。

「ご主人様もお食べになるのですよね」
「そのつもりだ」
「ご主人様なのでかまわないとは思いますが、ご主人様がミンチを食べることは秘密にしておいた方がいいです」

 ロクサーヌが提言してくる。
 タブーとはちょっと違うか。
 下々の食べる料理ということなんだろう。
 やんごとなき人は口にしないらしい。
 まあ高級食材でないことは間違いないしな。

「そうか」
「では、このことも内密でお願いしますね」
「その方がいいでしょう」
「はい、です」
「分かりました」

 ロクサーヌが全員から承諾を取りつけた。
 このこと「も」とは何だ。
 このこと「も」とは。
 いろいろ多いけどさ。

「みんなは、ミンチを使った料理でも大丈夫か?」
「私たちなら問題ありません」

 いまさらメニューを替えるのも面倒だ。
 このまま作ればいいだろう。

「ベスタはミンチを作れるか?」
「ええっと」
「ナイフで肉を細かく刻めば大丈夫です」

 製法はロクサーヌが伝授してくれた。
 ロクサーヌは作ったことがあるらしい。

「分かりました」
「ではこれをミンチにしてくれ」
「はい」

 ピッグホッグが残した豚バラ肉と買ってきたバラをベスタに渡す。
 合い挽き肉を使用するのがいいだろう。

 ベスタがミンチにしている間に、耳を取ったパンを牛乳でふやかし、野菜を炒めた。
 セロリみたいなやや堅めの野菜だ。
 タマネギを使うのはしゃきしゃきとした歯ごたえのためだろうから、多分この野菜でいい。
 ついでに小麦粉も炒めておく。

「よし。そのくらいでいいだろう。次はそれをかき混ぜてくれ」

 ミンチを作ってもらった後、かき混ぜさせた。
 ベスタがかき混ぜているミンチに塩とコショウ、卵、野菜を入れ、パンをちぎって投入する。
 よく混ぜさせてから、形を整え、中央にくぼみを作って、五人分焼いた。
 ハンバーグだ。

 焼いた後、残った肉汁に炒めた小麦粉とワインときのこ、少しの魚醤を入れて強火で煮詰める。
 ハンバーグの作り方は知っていてもソースまでは作ったことがなかったが、
大丈夫そうか。
 ソースをかけて食卓に運んだ。

 スープを取り分け、ミリアが煮つけた赤身と一緒にいただく。
 ハンバーグはふんわりと柔らかく、肉汁が染みていた。
 多めに入れたコショウがしっかり効いている。
 ソースも初めて作った割になかなかだ。

「これは美味しいです。パンを入れるのは見たことがありませんでした。さすがご主人様です」
「そうなのか。まあつなぎを使った方が柔らかくなるからな」

 ロクサーヌはミンチを知っていたし、ミンチを焼く料理はあるのだろう。

「確かに柔らかくて美味しいです。貧しい人が食べるものだと思っていましたが、ここまで美味しいと認識を改める必要があるかもしれません。食材アイテムをそのままミンチにしましたから、美味しくても当然ですが」

 そのまま焼いて食べられるような肉は、焼いて食べればいい。
 ミンチにするのは、それに適さない肉ということだ。
 下賎な食べ物になるのもしょうがないのか。

「さすが、です」

 などと言いつつ、ミリアの標的は赤身にロックオンされている。
 その赤身の煮付けも、結構な味だった。

「こちらに来てから美味しいものばかりいただいています。ありがたいことです」
「手間のかかる部分はベスタにやってもらったからな」
「あのぐらいは何でもありません」

 ミンチを作るところから自力でとなると、結構手間がかかる。
 単にステーキでも焼いた方が楽ではある。
 ベスタも手伝ってくれるだろうし、また作ることにしよう。


 生死不問は、翌日賞金稼ぎLv30まで育てて試すも不成功。
 翌々日には賞金稼ぎLv32で挑んだのに成功しなかった。
 やり方が間違っているのだろうか。
 それとも何か条件があるのか。

 相手を指定するのだから、使い方は大きく間違っていないと思う。
 念じてから斬りつけるラッシュのようなスキルとも異なるし。
 魔物相手には使えないとか。
 それもどうなんだろう。

 生死不問だから死んだ魔物が生き返るかもとやってみたが、もちろんそんなことはなかった。
 蘇生のようなすごいスキルが簡単に手に入るはずもないか。
 戦士Lv30まで育てているから、そう簡単ともいえないが。

 あるいは、確率で成功するのなら、もっと数をこなさないといけないのかもしれない。
 チープシープを見つけてからデュランダルで斬るまでに五回くらいは生死不問と念じているが、一度失敗した相手には二度と成功しないということも考えられる。
 数を増やすことにして、次の日からは迷宮に出入りするたびに一階層に寄ってみることにした。
 早速効果が現れたのか、早朝ハルバーの迷宮から帰るときに生死不問に成功する。

 チープシープが崩れ落ちた。
 生死不問と念じただけで、ばったりと倒れる。
 一撃だ。
 確かに一撃で屠るスキルで間違いない。

「あ」

 ロクサーヌがすぐ異変に気づいた。

「ようやく倒れたか」
「えっと。ご主人様がおやりになったのですか?」
「そうだ」

 ロクサーヌの問いに答える。
 今の生死不問は、二回めだった。
 一度失敗した相手には成功しないということはない。
 まあMPはきっちり消費しているわけだし。

 となると、Lv30を超えてからでも二十回近く失敗しているのか。
 成功率は相当に低いようだ。
 レベル依存とか、そういう問題ではないのかもしれない。

「さすが……ご主人様です」
「今までこんな実験をしていたのですか」
「すごい、です」
「何かとんでもないことのような気がします」

 確かに、ベスタの言うとおり生死不問はとんでもないスキルだ。
 傍目から見たら、何もしていないのに魔物が勝手に倒れるのだから。
 賞金稼ぎというよりは、暗殺者向けといっていい。
 証拠が残らないからほぼノーリスクだ。

 いや。これは俺の場合だけか。
 普通は詠唱でばれる。
 詠唱省略がある俺なら、何食わぬ顔で誰かの命を狙える。
 どう考えてもドン引きだ。

「このことは絶対に内密にな」
「は、はい。もちろんです」

 ロクサーヌ以外の面々もうなずいている。
 俺に近づくと周りのやつがばたばた死んでいくとか。
 そんなことができるのがばれたら、えらいことになる。

 ジョブを確認した。
 生死不問には成功したが、博徒のジョブは得ていない。
 盗賊を鍛える必要があるようだ。
 フィフスジョブの賞金稼ぎを盗賊に替える。


 その日はハルバー十九階層のボス部屋にもたどり着いた。
 尾頭付きの煮付けを食べたのは昨日だったのだが。
 それは赤身を食べたので日をずらしたからか。
 いずれにしてもミリアは大喜びだろう。

「ラブシュラブのボスはラフシュラブです。攻撃範囲が広く厄介な魔物らしいので注意が必要です」

 セリーの説明を聞いて、ボス部屋に入った。
 ラフシュラブとフライトラップが現れる。
 ラフシュラブは、ラブシュラブと同じくらいの大きさの木の魔物だ。
 枝はラブシュラブより広がっている。

 まずは盗賊の替わりにつけた戦士のラッシュでフライトラップを片づけた。
 ラフシュラブの囲みに加わる。
 枝が広がっているので確かに大変そうだ。

 ラフシュラブの枝が振られた。
 ロクサーヌは軽く避けるが、俺の目の前も通る。
 気をつけないと横にいても攻撃されそうだ。

 ラッシュで斬りつけた。
 が、反撃を喰らってしまう。

 枝が厄介だ。
 大きく広がっている上に動きも激しい。
 乱暴ラフな枝である。

 まあ多少の攻撃はHP吸収で回復できる。
 俺はかまわず攻撃を続けた。
 何度もラッシュをぶち込む。

 ラフシュラブがお返しに枝を振った。
 無視してデュランダルで斬りつける。
 ノーガードでの叩きあいになってしまった。
 デュランダルのHP吸収頼みで反撃をものともせず攻撃する。

 デュランダルがある以上叩きあいで負けることはない。
 痛みにさえ我慢すれば。
 ボスとはいえ、泣き言をいうほどではない。
 ベスタの竜騎士の効果である体力上昇も効いているのだろう。

 最後も俺のラッシュで片づけた。
 デュランダルをぶつけると、ラフシュラブが大きく揺れる。
 横倒しになって転がった。
 ようやく倒せたか。

「素晴らしい戦いぶりでした。さすがご主人様です」
「ちょっとむきになってしまったな」
「何度も攻撃を受けていたようですが、大丈夫ですか」

 ベスタが心配そうに尋ねてくる。
 ロクサーヌと違って俺は魔物の攻撃を浴びるのがデフォだから、問題ない。
 織り込み済みである。
 情けない。

「鍛えてあるからな。ボスとはいえ、ベスタでいえば迷宮の外の魔物に何度か殴られたくらいのものだろう」
「それなら大丈夫ですね。さすがです」

 大丈夫なのか。
 俺ならLv1の魔物だろうが一度だって攻撃を受けたくはない。
 かっこうをつけた俺がびっくりだ。

 ベスタは、先日十九階層で攻撃を受けたが、なんでもないと言っていた。
 二十階層へ行っても大丈夫だろう。

 ボスが煙となって消える。
 アイテムが残った。
 何かのひらひらとした膜だ。
 鑑定してみると削り掛けと出た。

 樹皮をカンナで削ったような感じの膜である。
 ミリアが拾って持ってくる。

「削り掛けか」
「抗麻痺丸の材料ですね」

 セリーが教えてくれた。
 薬の材料なのか。
 ジョブを切り替え、削り掛けを持ったまま生薬生成と念じる。

 手の中の削り掛けが抗麻痺丸に変わった。
 何個かこぼれ落ちる。
 あわてて拾い、アイテムボックスに入れた。

「え? ……あ。ご主人様のジョブですか」

 ベスタが驚いているが、混乱はしていないようだ。
 慣れてきたな。

「いくつかセリーのアイテムボックスにも入れておけ」
「分かりました」

 セリーのアイテムボックスにも抗麻痺丸を入れさせる。
 万が一を考えて薬は分散させておくのがいいだろう。
 麻痺はそのうち自然治癒するので、これまでのところ抗麻痺丸の世話にはなっていない。

「セリー、ハルバー二十階層の魔物は何だ」
「ハルバー二十階層の魔物はハットバットですね」

 ハットバットか。
 せっかく火魔法が弱点の魔物がフライトラップ、ラブシュラブと続いたのに。
 ハットバットは弱点の属性が多いくせに火魔法だけ弱点ではない。
 しょうがない。

 二十階層に移動した。
 探索を進めながら、Lv20の魔物の強さも確かめる。
 やはりLv20だとそれなりに強くなっていた。

 まだ限界ではないが、一階層上がることによる厳しさは増していくだろう。
 果たして現状のままでどこまで行けるか。
 二十二階層までは大丈夫だと思うが。

 ロクサーヌがハットバットの突撃を盾で受け止める。
 ミリアがラブシュラブの攻撃をかわす。
 ベスタも、ハットバットの突撃を剣で合わせて弾いた。
 そこにブリーズストームが襲いかかる。

 厳しくなるのは、後ろで魔法を放っている俺よりも主に前衛で戦っている彼女たちだ。
 俺があれこれ考えてもしょうがないだろう。
 俺が前に出たときにデュランダルのHP吸収が間に合わなくなるほどの攻撃を受けるようにならない限りは。
 さすがにそこまで急激に魔物が強くなることは考えにくい。
四月三十日に『異世界迷宮でハーレムを 2巻』が発売になります。
よろしくお願いします。
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