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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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牡蠣

 
 改めてボス部屋に向かった。
 途中、クラムシェルが三匹とビッチバタフライの団体に出会う。
 ロクサーヌが最初に言っていたやつだ。
 サンドストームで迎え撃つと、ロクサーヌを中心に前衛が陣を敷いた。

「私も前に出た方がいいでしょうか」
「あー。そうだな。セリー、ベスタと場所を替わってくれ」
「はい」
「がんばります」

 セリーとベスタが場所を入れ替わる。
 別に十八階層まで見学でもよかったのだが、自分から言い出したのだからいいだろう。
 やる気があっていいことだ。
 セリーは槍を持っているので、後ろからでも攻撃できる。

「前に出るならこれを」
「はい。ありがとうございます」

 セリーが自分が装備していた頑丈の硬革帽子をベスタにかぶせた。
 ベスタが頭を低くして受ける。
 確かに、場所を入れ替えるなら交換した方がいい。

 左から順にベスタ、ロクサーヌ、ミリアと順に並んだ。
 魔物を待ち受ける。
 なかなか強力な前衛がそろったと考えていいだろう。
 大柄なベスタが前にいると頼もしい。

 しばらくしたら、ベスタを真ん中にしてみる手もあるかもしれない。
 今は攻撃をかわせるロクサーヌが半歩前に出て魔物の注意を引きつけているが、魔物がロクサーヌを先頭と認識するかどうかは不明だ。
 遠近法的に。

「来ます」

 ロクサーヌの声が飛んだ。
 クラムシェルが水を放ってくるのだろう。
 あいつか。
 クラムシェルが貝殻を開いている。

 ちょうどいい。
 さてどっちが狙われるか。
 貝が水を吐いた。
 ロクサーヌが上半身を少しだけ右に傾け、水を避ける。

 これまでも先頭のロクサーヌが狙われることが多かった。
 魔物は誰が先頭か正しく判断できるようだ。
 ロクサーヌが後ろに逃した水をセリーが避ける。

 セリーはロクサーヌとベスタの間から槍を突き入れようとしていた。
 魔法をどこから放ってもいい俺の位置取りのようにロクサーヌの後ろから離れてというわけにはいかない。
 このフォーメーションに思わぬ課題が。

「大丈夫だったか?」
「なんとかかわしたので問題ありません」

 まあセリーにはセリーでがんばってもらうしかないだろう。
 クラムシェル二匹とビッチバタフライが前衛と接する。
 水を放ったクラムシェルは後列に回るようだ。
 前衛が魔物の前に立ちはだかり、セリーが槍を突き、俺が魔法で攻撃した。

 サンドストームでクラムシェルを倒す。
 二発めを放ってくる前に始末できた。
 ベスタも前衛を無難にこなしたようだ。
 ちゃんと戦えそうか。

 残ったビッチバタフライも片づける。
 こちらは全員で囲むので問題はない。
 魔物の団体を一つ倒し、待機部屋に入った。

「今度はボス戦も経験してもらう。攻撃をわざと受ける必要はない。雑魚は俺が片づけるから、ベスタはロクサーヌたちと一緒にボスを囲め」
「分かりました」

 待機部屋でベスタに注意を与え、ボス部屋へと移動する。
 考えてみれば、ボス戦もいきなり上の階層からではなく、徐々に経験させていくのがいいかもしれない。
 現状、ボスの正面はロクサーヌが面倒を見るので、後ろから囲んでぼこるだけだが。
 お付の魔物が出てくるようになって多少は難易度も上がっているとはいえ。

 煙が集まり、魔物が現れた。
 オイスターシェルとクラムシェルだ。
 俺は水を撃たれてもいいように反対側に回る。
 四人の戦いぶりも見ながら、デュランダルでクラムシェルを屠った。

 ベスタもしっかり戦えているようか。
 ボスの攻撃をロクサーヌがかわした隙をつき、斬撃を決めていた。
 大きいだけに目立つ。
 しかも強そうだ。

 クラムシェルを片づけ、俺もセリーの隣へ行って囲みに加わる。
 セリーは一歩下がって後ろから槍で突いた。
 全員で攻撃する。

 階層のボスとはいえ、こうなると一方的だ。
 オイスターシェルは攻撃さえ当てられないしな。
 ロクサーヌを狙う限り。

 ベスタが魔物の背後から鋼鉄の剣を叩きつけた。
 ボコッと貝殻もくぼみそうな音がして、オイスターシェルが倒れる。
 今回はベスタが倒したのか。
 人数も増えたし、ボスのとどめを俺が刺すのは難しくなっていくのだろう。

「やったな」
「はい、ありがとうございます。今は会心の攻撃ができました。竜騎士になると、ときおり自分で思った以上の攻撃ができることがあるそうです。今のがそうだったのかもしれません」

 なるほど、クリティカルか。
 竜騎士のスキルであるクリティカルが発生したのだろう。
 本人には分かるらしい。
 アクティブスキルでないから、クリティカルというスキルがあることは知られていないのかもしれない。

 クリティカルだからといって派手なエフェクトがあるわけでもない。
 大きな音がして見事な攻撃が決まったから、完全に分からないというわけでもないが。
 後、クリティカルが分かるとすれば攻撃を受けた側か。
 分かりたくはない。

「そういう思った以上の攻撃って、竜騎士以外でも出せるのか?」
「聞いたことはないですね」

 竜騎士以外でクリティカルを出せるジョブがないかとベスタに聞いてみたが、それも知られていないようだ。

「セリーは?」
「はっきりとした話は。攻撃がたまにうまくいくことなら誰でもあるかもしれませんし」
「噂レベルでもいいが」

 はっきりしない話ならあるのだろうか。

「ロクサーヌさんは知っていますか?」
「知りませんが」
「獣戦士で長年修行を積むと、百獣王というジョブに就けることがあるそうです。その百獣王になると、ときどきすごい攻撃を出せるらしいという話を聞いたことがあります」
「そうなのですか。知らなかったです」

 ロクサーヌも知らない狼人族のことを知っているセリーはさすがだ。
 マジぱねえっす。
 しかし、獣戦士の上級職が百獣王なのか。
 狼なのにいいのだろうか。

「さすがはセリーだ」
「本当のことかどうかは分かりませんが」

 百獣王にもクリティカル発生のスキルがあるのだろうか。
 獣戦士の上級職ということは種族固有ジョブになる。
 残念ながら俺には取得できない。

 しかし、竜騎士と百獣王にあるなら、他の種族固有ジョブにあってもおかしくない。
 色魔の上級職にもクリティカル発生のスキルがある可能性が微粒子レベルで存在するのではないだろうか。

「あ。そのボレーはベスタに渡せ」
「はい、です」

 オイスターシェルのドロップアイテムを拾ったミリアに話しかけると、ミリアがベスタのところに持っていった。

「よろしいのですか」
「必要なんだろう」
「はい。ありがとうございます」

 ベスタがミリアからボレーを受け取る。

「お姉ちゃん、です」

 ミリアが何故か自慢げに胸を張った。
 まあ別にいいけどさ。
 そして何故か俺の方をうかがうように見る。
 百獣王について何かいいたいことがあるのだろうか。

「じゃあ十八階層に行くか」
「……はい、です」

 ボス部屋の外に出た。
 あれ。
 ミリアが心なしかうなだれたような。

 あ、なるほど。
 ミリアのいいたいことが分かった。

 十六階層の次は十七階層でボス戦を経験させるべきだと。
 ハルバーの十七階層じゃなくクーラタルの十七階層で。
 ブラックダイヤツナでと。
 そういうことね。

「あー。そういえば、この間の赤身がまだアイテムボックスにあるんだよな。ミリア、明日の夕食の材料に提供するから、何か一品作ってくれるか」
「はい、です」

 ミリアへのフォローはこれでよしと。
 しかし、ボス戦ではこれからますます俺が最後の一撃を入れることが難しくなるだろう。
 俺が倒せること前提でハルバーではトロが残るまでなどと約束してしまったが、大丈夫なんだろうか。
 トロが出るまでブラックダイヤツナを倒し続けるのが大変になりそうだ。

 実際問題どうするのだろう。
 料理人のレア食材ドロップ率アップは、俺がとどめを刺さなくても有効なんだろうか。
 あるいは全員料理人にして挑むか。
 探索者Lv30まで上げないといけないし大変だが。

 パーティー全員が料理人だとレア食材のドロップ率が五倍になるとか。
 ないか。
 ドロップ率五倍はないにしても、とどめを刺さなくても有効かどうかは確認しておきたい。
 来るべきブラックダイヤツナ戦に備えて。

「セリー、オイスターシェルは牡蠣も残すんだよな」
「はい」
「ベスタが加入した祝いということで、今夜の夕食に牡蠣料理などどうだ」

 提案してみる。
 さっきは料理人をつけずにオイスターシェルに臨んだ。
 目的はボレーだったし。
 料理人をつけて、どれくらいで牡蠣が残るか試してみるのもいいだろう。

「牡蠣は高いので、売却するか主人だけが食べるのが一般的です。食されてもいいと思います」
「いや。もちろん全員で食べるが。ベスタも、食べたいよな?」

 セリーが変なことを言い出したのでベスタに援護射撃を求める。
 ミリアに援護を求めても魚以外では危険だ。

「ええっと。はい、いただけるのであれば」

 ベスタはちゃんと空気の読める子だ。
 えらい。

 ダンジョンウォークで移動した。
 小部屋から待機部屋まで進み、ボス部屋に入るとき料理人をつける。
 錬金術師は残し、僧侶をはずした。

 万が一の時には僧侶があった方がいいが、戦いぶりを見る限りそれほど心配はないだろう。
 今かけているメッキは錬金術師をはずしたら無駄になるかもしれないし、それはもったいない。
 戦闘では俺がクラムシェルの体当たりを喰らったりしたが、ご愛嬌だ。
 俺ならデュランダルのHP吸収で回復できる。

 今回は俺の一撃でオイスターシェルを倒した。
 ボスが煙と消え、ボレーが残る。
 駄目だったか。

「ボレーなんて別に腐らないよな」
「大丈夫だと思います」
「じゃあそれはベスタが持っておけ。なくなりそうになったら、ちゃんと言えよ」
「はい。ありがとうございます」

 何個も持たせたら確実に忘れるので、ベスタから申告してもらうことにする。
 一個だって忘れそうだから、任せておけばいいだろう。
 主人に申し出るのはやりにくいかもしれないが、やってもらうしかない。

 再度周回した。
 今度はセリーが槍で倒したのに、牡蠣が残る。
 煙が消えると、乳白色のプルプルした物体が残った。
 牡蠣だ。

 殻はつかずに中身だけなのか。
 貝殻がついたらボレーとどう違うのかとなるが。
 鑑定してもちゃんと牡蠣と出る。
 俺が慎重に拾い上げ、アイテムボックスに入れた。

「これが牡蠣か。どうやって食べるんだ」
「焼くか、煮るかだと思います。私も小さいころに一度食べたかどうかなので詳しくは知りません」

 セリーは食べたことがあるらしい。
 生では食べないのだろうか。
 ちょっと気持ち悪いか。
 魔物のドロップアイテムだし、俺も生で試してみる気はない。

 大きさは手のひらサイズだ。
 牡蠣としては大きい方だろうが、特別でかいわけではない。
 一人一個はほしいところだろう。
 今回はセリーが倒したし、料理人のレア食材ドロップ率アップは本人がとどめを刺さなくてもパーティー内で有効なのかもしれない。

 一人一個を目指して周回を重ねてみる。
 重ねてみる。
 重ねてみる。

 何度も周回を重ねてみた。
 さらに重ねる。
 大事なことなのでもう一度いうが周回を。

「また残りました。さすがはご主人様です」
「すごい、です」
「そうなんですか」

 ロクサーヌやミリアは褒めてくれるが。
 いやいや。五個めが出るまでに二十周以上はしたからね。
 それでも悪くはないのだろうが。

 レア食材ドロップ率アップがパーティー内で有効かどうかもよく分からなかった。
 俺が倒したときだけ牡蠣が残ったわけでもなかったが、俺が倒したときの方が残りやすいような気もする。
 元々オイスターシェルが牡蠣を残す確率も分からないし。

 まあブラックダイヤツナと戦うときはそのときでいいだろう。
 一個でいいなら二十周もすることはないはずだ。
 十八階層に移動する。
 十六階層では問題なかったようだし、十八階層でいい。

「一度攻撃を受けてみるまで、ベスタは見学な。一匹残ったら、前に出て攻撃を受けてみろ。十八階層は毒持ちが多いから気をつけるように」
「はい。大丈夫だと思います」
「こっちにフライトラップとクラムシェルのいる群れがありますね。フライトラップは複数いますが、クラムシェルは単体だと思います」

 毒持ちのフライトラップやケトルマーメイドでしょうがないかと思ったが、ロクサーヌがあっさりとクラムシェル一匹のところを発見した。
 さすがロクサーヌだ。
 まずはフライトラップ二匹をファイヤーストームで片づける。
 クラムシェルは火属性魔法に強いという問題はあるが。

 サンドボールを当てながら残ったクラムシェルを囲んだ。
 ベスタが正面に立つ。
 クラムシェルの体当たりを受けた。

 メッキだけかけなおし、土魔法を放つ。
 攻撃を喰らった後すぐ倒そうとしたが、一発では倒れない。
 ロクサーヌがベスタと場所を替わった。
 さらにサンドボールを追加して、クラムシェルを屠る。

 貝を始末するのにやはり多少時間がかかってしまった。
 追加の攻撃は受けなかったのでよしとしよう。

「どうだ」
「このくらいなら問題ありません。この帽子の効果かもしれません。まだまだ大丈夫だと思います。盾も必要ないかもしれません」
「じゃあ前に出てもよさそうか」
「はい。あ、回復はもう大丈夫です」

 手当て一回でベスタが止める。
 一応十八階層なのに盾もいらないのか。
 ダメージ軽減のスキルは恐ろしいな。
 メッキをかけているおかげもあるのだろうが。
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