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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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防御

 
 迷宮を出たら、ハルツ公爵のところに三枚めの鏡を売りに行く。
 当面これで最後になるが、公爵は何も言ってはこなかった。
 ロクサーヌのことに執着はしていないようか。
 カシアに直訴する心がまえはできていたのだが。

 ボーデから帰って朝食を取り、商人ギルドへと赴く。
 武器商人を直接呼んでいいか分からなかったのでルークを呼び出すと、二人して待合室に来た。

「お待ちしておりました。それでは、ギルド神殿にまいりましょうか」
「ギルド神殿?」
「はい。昨日は遅かったのですが、仲買人登録がしてあれば確認のために使えますので」

 武器商人の男と話す。
 何ごとか、と思ったがモンスターカードの確認か。
 モンスターカードは、見ただけではどの魔物のモンスターカードか分からない。
 俺は鑑定で分かるが。

 普通は確認のためにギルド神殿を使うのだろう。
 ギルド神殿で確認できるという話は聞いた。
 昨日取引しなかったのは、モンスターカードを持っていなかったからではなく、夕方遅くでギルド神殿が使えなかったせいか。

 モンスターカードの融合は失敗することがある。
 もしかしたら、失敗したときにただ単に融合に失敗したのかモンスターカードが贋物だったから失敗したのか判別できないような贋物を作ることが可能かもしれない。
 そうなれば報復は確実な抑止力とはならない。
 ルークが贋物を持ってこないのは仕返しを恐れてというわけでもないのか。

 階段を上がり、二階の奥の部屋に連れて行かれた。
 ギルド神殿はここにあるらしい。
 オークション会場の裏手側。
 そういえば、オークションのとき奥で確認しろと言っていた。

「こちらです。利用料は一回百ナール。二枚ですので、二百ナールになります。買い取る側の負担が原則です。ただし、仲買人登録をしていなければ使えませんので、ギルド神殿の操作は私がさせていただきます」

 ルークが部屋のドアを開ける。
 金がかかるのか。
 鑑定があるから本当はいらないが、断る理由が難しい。
 ここはありがたく利用しておくしかないか。

 部屋の中に白いボックスがあった。
 ハルツ公爵のところにあったのと同じ、ギルド神殿だ。

「ギルド神殿のご利用ですか。ありがとうございます」

 部屋に入ると、受付の村人が迎えてくる。
 俺は銀貨二枚を出した。
 村人には三割引が効かない。

 武器商人の男もモンスターカードを二枚出す。
 コボルトのモンスターカードだ。

「吸精のスタッフをお譲りいただけましたし、ここは特別に、二枚で五千六百ナールで結構でございます」

 よっしゃ。
 武器商人が相手ならば三割引が効く。
 オークションで直接落札したわけでもないので、きっちりと有効になった。

 鑑定で分かっているので別段どうでもいいが、モンスターカードの確認をする。
 ルークがギルド神殿の上にモンスターカードを載せ、スイッチを押すと、カードにコボルトという文字がカタカナで浮かんできた。
 カタカナか。
 インテリジェンスカードと同様、見る人が識別できる文字で読めるようだ。

 ハルツ公の騎士団がボーデのギルド神殿でインテリジェンスカードを読んでいたのも同じことか。
 多分同じ操作原理、同じメカニズムなんだろう。
 どういう原理かは知らないが。

 二枚めのモンスターカードもちゃんとコボルトと出る。
 当然といえば当然だ。

「確かに。いい取引をさせてもらった」
「こちらこそ、ありがとうございました」

 武器商人の男に礼を述べ、家に帰った。
 購入したばかりのコボルトのモンスターカードと、蝶のモンスターカード、ダマスカス鋼の額金をアイテムボックスから出す。
 セリーに渡した。

「コボルトのモンスターカードが手に入った。セリー、融合を頼む」
「はい」

 さすがに買ってきたばかりでは間違えようがない。
 セリーが不安も口にせずモンスターカード融合を行う。

「おお。さすがセリーだ」
「ありがとうございます」

 融合はもちろんきっちり成功した。


耐風のダマスカス鋼額金 頭装備
スキル 風耐性 空き 空き 空き


 空きのスキルスロットもちゃんと三つ残っている。
 できた額金をロクサーヌの頭に巻いた。

「これはロクサーヌが着けるようにしろ」
「よろしいのですか」
「大丈夫だ」
「ありがとうございます」

 俺が前に出るときには防毒の硬革帽子と頑丈の硬革帽子をとっかえひっかえ使っている。
 額金は、帽子のようにかぶるのではなく、はちまきのように締めないといけないから、取り替えるにはめんどくさい。
 融合する前と同様にロクサーヌが着けるのがいいだろう。
 帽子と違ってイヌミミをカバーできないのが不安だが、どうせロクサーヌには魔物の攻撃がほとんど当たらないしな。

 装備を整えて迷宮に入る。
 入ってすぐ、ハルバー十七階層のボス部屋に到着した。
 探索はかなり進んでいたらしい。

「ケトルマーメイドのボスはボトルマーメイドです。強力な水魔法を放ってくるので、しっかりキャンセルすることが大事です」
「ではいつもどおり、ボスは最初三人で頼む」

 待機部屋でセリーから説明を受け、ボス部屋に入る。
 俺はお付のケトルマーメイドの相手をした。
 ラッシュを連発して速攻で倒す。
 途中で魔法を使ってこようとしたが、問題なくキャンセルした。

 魔法陣が出る間はこちらへの攻撃が途切れるから、デュランダルで戦っているときに魔法はむしろ大歓迎だ。
 詠唱中断で確実に解除できるのは大きい。

 遅れてボスの囲みに加わる。
 ボトルマーメイドは頭の先がとがった人魚だった。
 確かに何かのボトルっぽい。
 ケトルマーメイドほどひね曲がってはいないが、残念な人魚には変わりがない。

 四人で囲み、削っていく。
 ロクサーヌが正面に立ち、詠唱中断のスキルがある武器を持った俺とセリーがいれば、負ける要素は薄い。
 気を抜いてはいけないが。

 ボトルマーメイドが左腕を伸ばした。
 ロクサーヌが首を傾けて避ける。
 続いて人魚が右腕を振り回した。
 ロクサーヌが肩を引いてよける。

 ロクサーヌが上体を戻したところに、今度はボトルマーメイドが上半身を倒して頭から突っ込んだ。
 ヘッドバットだったのか噛み付き攻撃だったのか。
 ロクサーヌがスウェーして避けたので、人魚の意図は分からない。
 ボトルマーメイドの攻撃はことごとくロクサーヌが封じた。

 その間に俺はきっちりとデュランダルで削る。
 ボスが倒れた。

 二十二階層まで、ボス戦はこんな感じで続けばありがたい。
 できればその上の階層でも。
 十八階層に足を踏み入れる。

「ハルバーの迷宮十八階層の魔物はフライトラップです」
「フライトラップは火属性が弱点で、ええっと、クラムシェルにビッチバタフライが火に強いんだったか」
「そうです」

 俺の記憶力もたいしたもんだ。
 しかし、一番多く出てくる魔物の弱点が火魔法で、クラムシェルとビッチバタフライもそれなりには出てくるだろう。
 この階層は少しきつめか。
 二十二階層までなどと安心はしていられないようだ。

「じゃあロクサーヌ、この階層はちょっと大変かもしれないが、まかせる」
「かしこまりました」

 ロクサーヌが案内したところには、クラムシェル、ケトルマーメイドとフライトラップが一匹ずついた。
 貝と人魚を土魔法七発で倒した後、フライトラップはファイヤーボール四発でしとめる。
 階層が上がって少し強くなってもいるようだ。
 まあしょうがない。

「こんなもんか」
「そうですね。ご主人様の強さなら、何の問題もありません」
「その間耐えてくれる前衛がいてこそだけどな。クーラタルの十七階層にも行っておくか」
「行く、です」

 クーラタル十七階層の魔物は魚の魔物であるマーブリームなので、ミリアがすぐに食いついた。
 一度家に帰り、地図を持ってクーラタルの迷宮に入る。
 迷宮の中を地図どおりに進んだ。

「この奥がボス部屋ですね」

 地図を見ながら、ロクサーヌが腕を伸ばす。
 もうボス部屋か。
 クーラタルの十七階層は、土魔法が弱点のマーブリームの他は風魔法が弱点の魔物が多い。
 あまり寄り道せずここまで来てしまった。

「尾頭付きが二個出るまで、この辺りで狩りまくるか」
「はい、です」
「ではマーブリームの多いところに案内しますね。こっちです」

 ここまで尾頭付きはまだ一個も出ていない。
 美味しい食事のためにボス部屋近くでマーブリームを狩る。

「そういえば、ロクサーヌは騎士になったのだから、ボス戦では防御のスキルを使う手もあるな」
「防御ですか」
「ハルバーの十七階層ではスキル呪文を教える暇もなくボス部屋への扉が開いてしまったが」
「ここら辺の敵では必要はないですね」

 一応、雑魚戦ではなくボス戦なわけですが。
 必要ないのは確かだ。

「そうだな」
「ただ、迷宮では何が起きるか分かりません。使えるようになっておいた方がいいので、教えてもらえますか」
「分かった」
「お願いします」

 マーブリームを求めて移動しながら、僧侶をはずして騎士をつける。
 詠唱省略もはずして防御と唱えれば、スキル呪文が頭に浮かんでくる。

「仕えし司大君に、まつろうものの身を守れ、防御」

 ロクサーヌに聞かせながら防御のスキルを使った。
 これで防御力が上がったのだろうか。
 どうも実感がないのは困る。

「さすがご主人様です」
「ブラヒム語はすごいです」
「さすが、です」

 ブラヒム語は、は余計だろうとセリーには言いたい。

「仕えし司、大君に、まつろう?」
「まつろうもの、だな」

 ロクサーヌに教える。
 蝦夷のことをまつろわぬものと呼んだという話は聞いたことがある。
 従わずに反抗する者という意味だったはずだ。

 まつろわぬ者だと否定形だから、その肯定形であるまつろう者も当然あるのだろう。
 騎士だしな。

 ロクサーヌにスキル呪文を教えた後もマーブリームを倒す。
 しばらく狩り続け、尾頭付きを二つ出した。

「はい、です」

 ミリアが二個めの尾頭付きを持ってくる。
 受け取ってアイテムボックスに入れた。

「よし。尾頭付きはこんなところでいいだろう。ボス部屋に行くか」
「分かりました」

 ロクサーヌが歩き出す。
 あ。
 ボス部屋の位置が分かるんだ。
 俺には分からないが。

 いやいや。
 代わり映えのしない洞窟の中をマーブリームを求めてうろうろしたら、絶対に分からなくなるって。
 記憶力の問題ではない、はずだ。
 俺としては、最初ボス部屋に行くときに通ったボス部屋一番近くの小部屋までダンジョンウォークで移動しようと思っていたのだが。

「セリーはボス部屋がどっちだか把握していたか」
「分かりません」

 大丈夫だ。
 セリーも分からないと言っている。
 俺の記憶力だけが悪いのではない。

「あ。このT字路は見覚えがあるような気もするな。まあ違ったとしても見分けはつかないが」
「先ほど、人のにおいが扉の向こうに消えていくのを感知しました。どこかのパーティーがボス部屋に入ったのだと思います」

 なるほど、ロクサーヌはにおいで分かったのか。
 それは反則だ。
 においだと曲がった先の先までは分からないと思うが。
 T字路の先に四つ角がある。

「四つ角があってその先がT字路になっているところは確かに通った。そうすると、そこを左に曲がってずっと奥に行ったところがボス部屋だな」
「そうです。右に曲がるとすぐ近くにマーブリームの団体がいますが、どうしますか」
「近くなら倒していくか」

 行きがけの駄賃に魔物を倒した。
 白身を拾って引き返す。
 残念ながら尾頭付きは残さなかった。
 料理人はすでにはずしているのでしょうがない。

「マーブリームのボスはブラックダイヤツナです。強力な突撃をしかけてくるので注意が必要です。また水魔法も使ってきます」

 セリーによるブリーフィングを受けながら、戻ってくる。

「今度は右に曲がったところにビッチバタフライとグラスビーの団体が湧いたようです。どうしますか」
「いただくとしよう」

 ともに風魔法が弱点なので効率がいい。
 もう一つ団体を倒してから、ボス部屋に進んだ。
 デュランダルを出して待機部屋に入る。
 待機部屋に人はいなかったが、ボス部屋への扉は閉じたままだ。

「さっき入ったパーティーがまだ戦っているようです」
「時間かかってるな」
「えっと。ご主人様が強すぎるのです。このくらいは普通だと思います」
「そうなのか?」
「そうです」

 セリーの顔を見るとうなずかれたので、そうなんだろう。
 こっちは団体を二つ倒してきているが。
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