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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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暗殺者

 
「では実験を開始する。ロクサーヌはすでにやったことがあるので、最初は俺が毒針を投げる。他の三人は攻撃しないように」

 毒針は二十個ほど集めた。
 毒針を投げつけても必ず毒になるとは限らないらしいが、これだけあれば十分だろう。

「魔法陣が浮かんだ場合にはどうしますか」
「そのときには槍でつけ」

 セリーの質問に答える。

「ニートアントのスキル攻撃なら、かわしてしまえば毒になりません」

 それはロクサーヌだけです。
 セリーを見るとちゃんとうなずいたので、分かっているだろう。

 現れたニートアント三匹の団体にウォーターストームを喰らわせた。
 二匹が一撃で倒れ、一匹が残る。
 近づくのを待って、生き残ったアリに毒針を投げた。

 ロクサーヌは、とどめだけではなく最初から毒だけで魔物を倒したかもしれない。
 最後だけ毒で倒しても暗殺者のジョブは取得できない可能性もある。
 そこはやってみるしかないだろう。

 僧侶のジョブは最後だけ素手で倒せば得られる。
 暗殺者も同じである可能性は十分ある。
 いくらなんでも最初から毒のみで倒すのはきつい。

 ロクサーヌが盾をかまえ、ニートアントの前に立ちはだかった。
 あれ。ロクサーヌが相手をするなら、スキル攻撃をキャンセルする必要はないのか。
 セリーを見ると槍をかまえずに持っているので、分かっているだろう。
 ロクサーヌが相手をするなら最初から毒のみでもいけるな。

「そういえば、毒になったかどうかって、どうやったら分かるんだ?」
「毒を受けると、魔物の色が少し青白くなります」

 毒針を投げながら訊くと、ロクサーヌがアリの攻撃を軽くかわしながら答える。
 薄暗い迷宮の中で、黒いニートアントが相手でも分かるのだろうか。
 失敗したか。

「毒、です」

 それでも毒針を投げつけていると、ミリアが叫んだ。
 と同時にアリが倒れる。

「色が変わった?」
「はい、です」

 ミリアには分かったようだ。
 俺には分からなかった。
 ニートアントはすぐに倒れたから、毒にかかって最初の一撃でHPがゼロになったのだろう。
 そのために魔法で削ったわけだし。

 ジョブ鑑定で俺のジョブを見てみる。
 無事、暗殺者Lv1を取得していた。
 とどめだけ毒で刺せばいいようだ。

「それでは、次はセリーだな」
「分かりました」

 続いてセリーに倒させる。
 俺が毒で倒したニートアントもちゃんと毒針を残した。
 使った分はほぼ補充できている。

 次は、ニートアント二匹とエスケープゴートの団体だ。
 ある程度近寄せてから、ウォーターストームを浴びせる。
 ニートアント二匹が倒れ、エスケープゴート一匹が残った。

 くそ。
 アリは全滅か。
 逃げる山羊をウォーターボールで追撃する。
 エスケープゴートも二発めで沈んだ。

 毒針が補充できたのでよしとして、次へ進む。
 今度の相手はニートアント二匹。
 うち一匹が水魔法を耐え切った。

「槍を」
「はい」

 セリーから槍を受け取り、代わりに毒針を渡す。
 ロクサーヌの斜め後ろから、セリーがアリに毒針を投げた。
 ニートアントの攻撃は前に立つロクサーヌが軽々と避け、セリーが後ろから毒針を投げつける。

「来ます」

 言うが早いか、ロクサーヌがものすごい勢いで後ろに下がってきた。
 セリーのさらに後ろで槍と毒針を持って控えている俺のところまで、一瞬で下がる。
 すっげ。
 後ろ向きなのに、背中に目がついているかのような素早さだ。

 俺もあわてて下がった。
 五メートルほどダッシュをして振り返ると、セリーとミリアがついてきている。
 ロクサーヌは途中で止まっていた。

 そんなに下がらなくてよかったらしい。
 ロクサーヌは経験で知っているのだろう。
 ロクサーヌのところまで戻る。
 その途中でニートアントが倒れた。

「毒になっていたのか」
「はい、です。最後に投げた、です」

 セリーが最後に投げた毒針で毒にかかっていたようだ。
 セリーは条件となる戦士Lv30がないから、暗殺者は取得できない。
 確認できないのが難点だが、しょうがないだろう。

「スキル攻撃は必中だと思っていましたが、こんな避け方があるのですね」
「避け方というか、力業だな」

 セリーに槍を戻す。
 スキルで魔法陣を構築するのに少しは時間がかかる。
 その間に射程圏外に出てしまえば、物理的に当たらないということか。
 作戦と呼べるものではない。

 ロクサーヌ以外には厳しいだろう。
 俺が逃げられたのは予め後方にいたからだし。

「さすがお姉ちゃん、です。がんばる、です」

 ロクサーヌだからと諦めるのではなく、ミリアのこの積極さが必要なのかもしれないが。

「えっと。スキルが発動してからでも避けられますが、今回はセリーやミリアもいるので」

 できんのかよ。
 ロクサーヌの回避辞書に不可能という文字はない。
 思わずセリーと視線をかわしてしまった。

「つ、次はミリアだな」
「はい、です」

 まだまだ毒針は十個以上あるし、今ので二つ戻ってきたので、続けることにする。
 次の団体はニートアント四匹だった。
 これなら一匹は残るだろう。

 ウォーターストームを放つ。
 二匹が倒れた。
 近づいてくるうちの一匹をウォーターボールで片づける。

 ロクサーヌが前に出て、残った一匹の進路に立ちふさがった。
 ミリアが斜め後ろから手持ちの毒針を投げる。
 俺も毒針を持ってミリアの後ろに控えた。

「ほら」

 体は半分後ろに向けながら、ミリアに毒針を渡す。
 いつでも逃げ出せるように。
 ロクサーヌがニートアントの突撃を軽くいなした。

「毒、です」

 さらに次の毒針を渡そうとしたのをミリアがとめる。
 魔法陣が浮かぶより毒になる方が早かったか。
 ニートアントの突進をロクサーヌが盾で受け止めた。

 色が変わっているだろうか。
 俺には違いが分からないが。
 青白くなっているか?

 次の攻撃もロクサーヌはなんなくかわす。
 アリがそのまま倒れた。
 ちゃんと毒にかかっていたようだ。

 これで全員暗殺者のジョブを取得できるようになった。
 前衛のミリアにとっては有用なジョブだろう。
 装備品がそろったら、ミリアを暗殺者にする手もありそうだ。

 実験の後はハルバーの十七階層で探索を行い、夕方家に帰る。
 帰ってくると、ルークからの伝言メモが残っていた。 

「ご主人様、ルーク氏からの伝言ですね。至急来られたしと書いてあります」

 聖槍のことだろう。
 何かの返答があったのだろうか。
 仲買人から客に連絡を取ったにしては早すぎると思うが。
 相手の仲買人がふざけるなと怒ったとか。

 ……。
 行きたくなくなったが、憶測を重ねてもしょうがない。
 至急といっているし、すぐに行くことにする。

「では、ちょっと商人ギルドまで行ってくる。後は頼む」
「はい。いってらっしゃいませ」

 商人ギルドの待合室に飛んだ。
 ルークを呼び出すと、すぐにやってくる。

 もう一人誰かが一緒だ。
 武器商人Lv8。
 ちょっと優男風。
 見た目、いいとこのお坊ちゃんという雰囲気だ。

 MP吸収のスキルがついたスタッフを武器鑑定させるつもりだろうか。
 持ってきてないぞ。
 まだ作らせてもいないし。

「お待ちしておりました。こちらへきていただいてよろしいですか」
「分かった」

 会議室に行く。
 イスに座ると、いつもどおりルークが正面に腰かけ、もう一人の男はルークの横に座った。

「こちらが例の仲買人です」
「MP吸収のついたスタッフを提供できるというのは本当ですか?」

 男が挨拶もそこそこに切り出してくる。
 聖槍を落札した仲買人か。
 オークションのときにはちゃんと見てなかった。

 至急といって呼び出したし、急いでいるのだろうか。
 そうまでしてほしかったことは確かなんだろう。

「本当だ」
「では、MP吸収がついた武器の名称を答えてもらえますか」

 男が問題を出す。
 知力二倍のスキルがつくとひもろぎのロッドとか、詠唱遅延のスキルがつくと妨害のなんとかとか、名称には決まりがある。
 MP吸収にも何かあるのだろう。
 まだ作ってないからもちろん俺は知らない。

 持っているなら知っているはずだということだろうか。
 あれ。そうか?
 例えば、ハルツ公爵のところにあった決意の指輪みたいに先祖代々伝わった装備品とか。
 名前が失われていても不思議はない。

「作らせたものなので名前は知らない。知らなくても、そちらで信頼できる武器商人を用意すれば問題はないだろう」

 素直に知らないと答えた。
 いや。まだ作ってはいないし、武器商人を用意する必要がないことも分かってはいるわけだが。
 全然素直ではない。

 伝世品だということにしても知らない理由にはなるが、古いというのはどうなんだろう。
 値下げ交渉に使われるかもしれない。
 これから作るのだから、実物を見せて新品同然だと言い張る手はあるとしても。

「そうですね。では、何故せっかくの武器を手放す気になったのでしょう」

 いらないからと答えたら買い叩く理由にでもするつもりだろうか。

 自分で作ったのなら何故それを手放すのかという話になる。
 伝世品なら古いので安くしろという話になる。
 どこかで盗むか奪ったものなら、名称を知っているだろう。
 名称を知っていれば、盗品の疑いが出てくる。

 先ほどのは単純な質問のように見えて、案外大変な質問だったのか。
 さすがは仲買人だ。
 抜け目がない。

「うちには槍を使える巫女がいる。力があるので、聖槍の方が使い勝手がいい。せっかくのチャンスだしな」
「なるほど。スタッフは今お持ちですか」
「持ってない」

 なんとかごまかせたようだ。

「すぐにお持ちいただくことは可能でしょうか」
「持ってくることはできるが、客の承諾はもらえたのか?」
「実はMP吸収のついた武器を欲しているのは私の実家になります。このたび、本家の嫡男に公女をお迎えすることになりましたので」
「それはめでたい」

 仲買人の客は仲買人の実家だったのか。
 だからいちいち相談する必要はないと。
 半分仲買人本人がほしかったようなものか。
 調達をまかされているのかもしれない。

「婚儀にあたってはMP吸収のスキルがついた武器を用意することが決まっております。そのため、商売でつき合いのある鍛冶師に無理をいって作らせているのですが、なかなかうまくいきません。聖槍はいい武器ですが、MP吸収のついたスタッフとなら引き合うでしょう。確認が取れましたら、そちらの申し出た条件で交換させていただきます」

 MP吸収のついたスタッフは結納みたいなものなんだろうか。
 結婚前に用意する必要があるから早めにほしいのだろう。
 俺は席を立った。

「分かった。すぐに持ってこよう」
「お願いします」

 待合室まで戻り、ワープする。
 見送りについてこられたのが邪魔だ。
 誰もいなかったら無言でワープできたのに。
 ごにょごにょとフィールドウォークの呪文を口誦し、ワープで移動した。

「セリー、これを融合してくれ」

 アイテムを出しながら、夕食の準備をしていたセリーを呼ぶ。
 セリーならモンスターカード融合も朝飯前だろう。
 夕飯前だが。
 はさみ式食虫植物のモンスターカードにコボルトのモンスターカード、空きのスキルスロットがついたスタッフをテーブルの上に置いた。

「カードは間違いないですか」
「大丈夫だ」
「今日一回外に出していますが、入れ替わったりしていないですね」

 モンスターカード融合に不安がなくなったかと思ったら、今度は別の心配か。
 浜の真砂は尽きるとも、心配事はなくならないようだ。

「大船に乗ったつもりでまかせてほしい」
「さっきはかなり無造作に扱っていましたが」
「問題ない。記憶力はいい方なんだ」
「……」

 そこは疑念の目を向けてくるところではないといいたい。
 仕方なくという風にセリーがイスに座ってスタッフを手に取る。
 モンスターカード融合を行った。

「おお。成功だ。さすがはセリーだな。いや、むしろ俺の記憶力がさすがだ」

 記憶力を使ったわけではないが。
 だから疑わしげな目で見てくるんじゃない。
 ひょっとしたら記憶力を使ったかもしれないじゃないか。

 いや、むしろ使ったといっていい。
 使った。
 確かに使った。
 私の記憶力が確かならば、記憶力を使ったはずだ。

「ありがとうございます。違うスキルがついている可能性もありますが」

 そこまで疑うか。
 ロクサーヌならほめてくれたに違いない。
 キッチンにいてここにいないのが残念だ。

 しょうがないので自画自賛しただけで杖を受け取る。
 ちゃんとMP吸収のスキルもついている。
 吸精のスタッフか。
 仰々しい名前のようだ。
+注意+
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