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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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エプロン

 
 クーラタルの服屋で買ってきたエプロンをつけて、尾頭付きを揚げた。
 エプロンというか、実用一点張りで可愛さのかけらもない前掛けだ。
 俺が着ける分にはこれでいい。

 テーブルに運んで、食べる。
 尾頭付きの竜田揚げは、やはり旨かった。

「しかし階層突破の記念料理が毎回毎回こればかりというのも味気ないよな」
「……」

 ロクサーヌが訳すと、ミリアが悲しそうな視線で俺を見てくる。
 涙目になってないか。
 そうならないよう、皿の上に竜田揚げが十分あるうちに切り出したというのに。

「い、いや。これはこれで間違いなく旨い。旨いが、いつもいつも同じというのも能がないような」
「……パン粉、です」

 少し考えてから、ミリアが告げてきた。
 フィッシュフライか。
 確かミリアが来たばかりのころに作った。

「あれか。じゃあ次の記念料理は尾頭付きのフライということでどうか」
「いいと思います」
「はい。楽しみにしています」

 ロクサーヌとセリーの賛同も得る。

「食べる、です」

 ミリアも目を輝かせた。
 それでいながら目の前の竜田揚げにもかぶりつく。
 実に嬉しそうだ。

 もっとも、次が決まっていてもミリアは最後の一個を食べるとやはり肩を落とした。
 そこまでは面倒見きれん。


 翌朝、食事の後、一人で商人ギルドへ出かける。
 ロクサーヌたちには洗濯や片づけを頼んだ。
 今ルークのところに行きたくはないが、行かないわけにもいかない。

 どこか遠くに行っていて帰ってこなかったことにするか、とも思ったが、この世界そういう言い訳も難しい。
 冒険者のフィールドウォークがあるからな。
 便利なのも考えものだ。
 どこへ行っていたことにするのかという問題もある。

 商人ギルドの待合室に出て、ルークを呼び出した。
 急病で来ていないことも期待したが、ルークはすぐに現れる。
 そんなにうまくはいかないか。

「こちらが蝶のモンスターカードです」

 会議室に連れて行かれ、モンスターカードを受け取った。

「確かに。これはコボルトのモンスターカードと一緒に融合したいが、コボルトのモンスターカードはまだ買いが出ているか」
「少し落ち着きましたが四千台ではまだ買いが入ります。五千ナールか、すぐに入手したいのならもう少し必要でしょう」
「ではコボルトのモンスターカードを五千ナールまでで」

 コボルトのモンスターカードには買い注文を入れてくる人がいる。
 前は五千二百だったが、それよりは下がったらしい。
 風属性への耐性が今すぐ必要ということもないので、五千でいいだろう。

「かしこまりました。それと、コボルトのモンスターカードを買っている人が何を狙っているか分かりました。MP吸収ですね。はさみ式食虫植物の注文もいただいておりますが、現状ではかなり値を上げないと難しいかもしれません」

 そういえば、はさみ式食虫植物のモンスターカードは多少高くても買ってくれと注文を出しているのに、今まで何の音沙汰もなかった。
 はさみ式食虫植物のモンスターカードとコボルトのモンスターカードを一緒に融合するとMP吸収のスキルがつく。
 コボルトのモンスターカードを買いあさっている人はMP吸収のついた武器がほしかったのか。

「はさみ式食虫植物か」
「先日出品があったのですが、高値で買われてしまいました」
「コボルトのモンスターカードの方は値も下がったのに、はさみ式食虫植物のモンスターカードは駄目なのか」
「オークションに出回る数は、安定して高値がつき、用途も限定的なコボルトのモンスターカードの方がどうしても多くなります。他のモンスターカードはそれだけでも使えますから、知り合いの鍛冶師にすぐ売ってしまうこともあります」

 なるほど。
 出回る数の多いコボルトのモンスターカードを全部取りに行く必要はないということか。
 コボルトのモンスターカードは、はさみ式食虫植物のモンスターカードと同じ数だけあればいい。

 数が少ないはさみ式食虫植物のモンスターカードの方は、なんとしても手に入れたい。
 出品されれば限界まで競い合うと。

「分かった。そういうことなら、はさみ式食虫植物のモンスターカードを無理に狙うことはないだろう。当面は様子見でいい」

 空きのスキルスロットつきのダマスカス鋼の剣も手に入らなかったし。
 どのくらいの効果があるか、とりあえず鋼鉄の剣で試してみたくはあるが。

「承りました。それと、ハルツ公の騎士団から顔を出すように連絡がきております」

 くっ。
 やはりきたか。

「……そういえば、どこかの家の話は知っているか」

 軽くうなずいて、話を変えた。
 露骨に嫌な顔はしなかったと思う。
 一応心の準備はしておいたからな。
 多分大丈夫、なはずだ。

「どこかの家、ですか?」

 バラダム家と確定したわけではない。
 名前を出す必要はないだろう。

「資金繰りに困っているところがあるらしい。スキルつきの装備品などがまとめて出てくる可能性もある」
「何か探している装備品がおありでしょうか」
「単なる情報提供だ。ま、世話になっているからな」
「ありがとうございます。気をつけておきましょう」

 ルークに見送られ、商人ギルドを後にした。

 翌朝、迷宮から帰ったらいよいよタイムリミットだ。
 ハルツ公のところへはいつもこの時間に行っている。
 この時間に行くしかない。

「俺はボーデの城へ行ってくる。朝食の準備は三人で頼む」
「かしこまりました」
「気をつけて行ってきてください」
「はい、です」

 俺に連絡したという話はルークから公爵に伝えられるはずだ。
 いつまでも行かないわけにはいかない。
 それに、延ばしたところでどうにかなるものでもない。

 いや。一日延ばせばそれだけ記憶が薄れる。
 やっぱり明日にしようか。
 明後日がいいか。

「お出かけになられるのではないのですか」

 部屋でぐずぐずしている俺にセリーが声をかけてきた。

「ちょっと準備が」
「そうですか」

 心なしか声が冷たい、ような気がする。
 いや。目が、目が冷たい。
 セリーのことだから俺の窮地を理解しているに違いない。

 くそっ。
 行けばいいのだろう、行けば。
 行くと宣言した以上は行くしかない。
 俺はリビングの壁からワープした。

「公爵かゴスラー殿はおられるか」
「奥におられると思います」

 勢いでボーデの城のロビーに出る。
 案内の騎士団員に尋ねると、絶望的な答えが返ってきた。
 いない可能性は元々あまりなかったが。

 騎士団員はさっさと行けとばかりに道を空ける。
 よそ者に対する警戒心が足りないのではないだろうか。

 まああの公爵だからな。
 一応公爵自ら許可を与えているわけだし。
 冒険者は中に入ることあたわず、みたいな態度をとられるよりはいい。

 執務室の前まで来た。
 深呼吸をする。
 意を決してノックした。

「入れ」
「ミチオです」

 ゴスラーの声を聞いて中に入る。
 公爵はイスに座り、ゴスラーが机の前に立って書類をいじっていた。

「おお。ミチオ殿か。先日の件はゴスラーより聞いておる。たいそうな活躍だったとか」
「いえ」

 さっそくか。

「しかも剣も使わずに倒したとか。見事じゃ」
「は」
「さすが余が見込んだ者じゃ。ゴスラーにも動きが見えなかったと言っておる」
「はい。確かにあれでは自分がされても何をされたか分からないでしょう」

 ゴスラーはLv99じゃないからやられることはないんじゃないか。
 教えないけど。

「まあ余やゴスラーに対して使ってくることもあるまい」
「は」

 なんか違うプレッシャーが。

「相手のことも多少分かっておる。サボー・バラダムというかなりの達人じゃ。暴れ者で周囲の評価は高くないが、実力は確かなようじゃ」
「は」
「それをあっさりと倒したのだ。誇ってもいい」
「は」

 ここは耐えるしかない。

「うーむ。どのように倒したのか聞いてみたいが、その様子だとやはり秘中の秘なのじゃろうな」
「申し訳なく」

 忍の一字に徹していると、公爵が勝手に変な解釈をしだした。
 ここはそれに乗っておこう。

 我が拳は一子相伝の暗殺拳。
 哀しみを背負う者のみが奥義を極められるのだ。

「やはりか。まあ致し方あるまい。手の内をみすみすさらすのは愚か者じゃ」
「一流の探索者、冒険者であれば当然のことでしょう」

 ゴスラーまでが何故か乗ってきた。
 よかった。
 この世界では自分のやり方を広く公開して、という考えはないのだろう。
 誰かに真似されればそれだけ自分が弱くなる。

 自分が知りえたことは自分のみが使う。
 残すにしても、子どもか、ごくわずかな弟子に対してのみ伝える。
 それがこの世界の常識だろう。

「ミチオ殿の前に戦った女性もすさまじく強かったと聞いておるが、彼女にはその技を教えたのか」
「確かに、あの尋常ならざる戦いぶりもミチオ殿の技を授けられているのなら納得です」

 ゴスラーの目から見てもロクサーヌは尋常じゃないらしい。

「いいえ」
「そういえば、戦いぶりを常に身近で見ていたと言っておりました」
「なるほど。そういうこともあるか」

 門前の小僧習わぬ経を読む、ってやつだね。
 違うけどね。

「彼女はまた特別で」
「ほうほう」

 公爵が興味津々といった感じで耳を傾けてくる。
 いやいや。
 ロクサーヌはあげませんよ。

 絶対に無理。
 何があっても無理。
 カシアとの交換……でも無理だ。
 セリーやミリアも手放す気はない。

 公爵がニコニコと微笑みかけてきた。
 俺もにらみ返す。
 この件で引く気はない。

「えー。ミチオ殿に今日お越し願ったのはペルマスクの鏡のことです。領内の有力者の慶事に二つほど配りましたが、なかなか好評を得ているようです」

 俺と公爵との間の微妙な空気を読んだのか、ゴスラーが話題を変えた。
 さすがゴスラー。
 ザ・苦労人。
 この公爵の下で苦労しているに違いない。

「それは何より」
「すでに他にも一つ、贈ることが決まっております」
「あそこじゃな」
「そうです」

 公爵の確認にゴスラーがうなずく。
 あそこではどこだか分からないが。
 別に俺が知るべきことでもない。

「タルエムの枠で装飾したペルマスクの鏡は、今後とも当家の贈り物として十分使える、使っていきたい品になったと考えております。減ってしまう三つの分の補充をお願いしたいのですが、よろしいですか」

 俺を呼び出した一番の理由は、ペルマスクの鏡のことだったのか。

「まいどどうも」

 注文を受けた。
 オークションに向けてお金のほしい時期だ。
 断る理由はない。

「特に急ぐわけではありません。前のように一枚ずつ持ってきてもらっても結構です。枚数は二、三枚余計でも買い取ります」

 決闘のことを深くは追求されなかったし、注文ももらったし、いいことずくめだ。
 案ずるより産むがやすし。
 世の中えてしてこんなもんである。
 晴れ晴れとした気分で家に帰った。

 その日はペルマスクへもコハク商のところへも行かず、帝都へ向かう。
 帝都の服屋との約束の日だ。
 夕方少し前に赴いた。
 エプロンを受け取って帰ってくる。

「これはいいですね。ありがとうございます」
「よくできています」
「かわいい、です」

 帰ってくると早速三人がエプロンを広げた。
 エプロンを見てはしゃいでいる。
 気に入ってくれたようだ。

 帝都の服屋が作ったエプロンは、フリルがふんだんにあしらわれた可愛らしいものだった。
 絹のエプロンには裾にレースがあしらわれている。
 通常の布で作られたエプロンもレースまではないものの可愛く仕上がっていた。

「これを着けて食事を作るんですよね。料理が今まで以上に楽しくなりそうです」
「絹だと汚すと大変そうですが」
「絹のエプロンは、台所では使わない」

 もっともなセリーの懸念に答えてやる。

「それではどこで」
「絹のエプロンは寝室で使う。俺の住んでいたところに伝統があってな。エプロンは料理をするときに使うものだ。だから、寝室で何も着ずにエプロンだけを着けると、私のことを好きに調理してください、という意味になるのだ。三人にも是非やってみてもらいたい」

 エプロンの解釈として多分間違ってはいないと思う。
 古式ゆかしい風習だ。

「へえ。そうなのですか。あの。今夜にでもやってみますね」
「エプロンだけを身に着けるのですか」
「やる、です」

 ロクサーヌとミリアはやってくれるらしい。

 夕食の後、お湯で体を拭き、三人に遅れて寝室に入った。
 新婚初夜のような期待感が。
 胸をときめかせながらドアを開ける。

 そうはいっても三人の身体は毎日俺が洗っているが。
 それはそれ、これはこれだ。
 甘いものは別腹。

「おおッ」

 確かに別腹だ。
 部屋に入って思わず声を上げてしまった。

「どうでしょうか」

 不安げに尋ねてくるロクサーヌの姿は、見えそうで見えないというか、頭隠して尻隠さずというか、巨乳は隠しても大きいというか、栴檀は双葉より芳しというか。
 ボリュームのある山が下から突き上げ、元々ゆるいエプロンと肌との隙間をさらに広げている。
 頂こそ確かに白いエプロンに覆われているものの、実り豊かなふくらみが横からあふれ出し、かえって胸の大きさを強調していた。

「素晴らしい」

 その一語に尽きる。

「ありがとうございます」
「セリーもすごいな」

 小柄なセリーの身体を小さく覆うエプロンの威力はすさまじい。
 幼な妻のようだ。

「少し恥ずかしいです」

 その恥ずかしがっている感じが最高なのだよ。

「ミリアも、似合ってるぞ」
「はい、です」

 青みがかった尻尾が一本伸びているところがいい。
 ネコミミとの相性も抜群だ。
 フリルのついた肩紐や裾とのコントラストがたまらない。

 すごい。
 素晴らしい。
 むさぼりつきたい。

「えっと。ご主人様。どうぞお好きに調理なさってください」

 などと申告してくるロクサーヌをどうしてむさぼらずにいられようか。
 ここは理想の別天地。
 桃源郷。
 乳と蜜の流れる約束の地だ。
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