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異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
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106/220

浪費

 
 翌日の夕方、家に帰ると仲買人のルークから伝言メモが残っていた。
 これはよい知らせだ。
 悪い知らせではなく、よい知らせだろう。

 今日連絡があっても、まだ公爵からの出頭要請は来ていないに違いない。
 さすがに昨日の今日で連絡はつかないと思う。

 明日になったら、公爵が何かいってきている可能性は増す。
 明後日ならもっと増す。
 四、五日後なら、公爵にその気があるならば確実に呼び出しがかかっていると見ていいだろう。
 今日ならまだ大丈夫のはずだ。

 買い物に行く前に家に立ち寄ってよかった。
 これも虫の知らせというやつか。
 いや。虫の知らせじゃなくて願望か。

 問題の先送りでしかないが、まったく効果がないともいえない。
 決闘から十日も経ったら、細かいことを聞かれごまかそうとして矛盾が出ても、そうだったっけ、で切り抜けられる。
 そういえばそんなこともあったと笑い話にできる、かもしれない。

 今回を無事に乗り切れば、次回話が来ても大丈夫だろう。
 ルークは何か落札したときのついででしか連絡してこないだろうし。

 公爵からルークに連絡が行くのに数日。
 ルークから俺に連絡が来るのに数日。
 俺がルークのところへ行くのに一日。
 ルークから話を聞いて公爵のところへ行くのにさらに一日稼げる。

 十日くらいは経過するはずだ。

「ご主人様、芋虫のモンスターカードを落札したそうです」

 ロクサーヌがルークからの伝言を読む。
 今日は一日中注意をしていたが、ロクサーヌはいつもと変わりがないように見えた。
 昨日のことはショックだっただろうが、大丈夫そうか。

 相変わらず切れ切れの動きで魔物の攻撃を避けていた。
 ひょっとしたらあれで本調子じゃないということもありうるが。
 その可能性は怖すぎるので考えないことにしよう。

「まだ明るいし間に合うだろう。俺は商人ギルドに行ってくる」
「かしこまりました。私とミリアは装備の手入れと、スープを作っています。野菜の残りがあるので、具材も大丈夫です。夕食の買い出しは、セリーが一人いれば問題ないでしょう」
「はい。大丈夫です」
「尾頭付き、です」

 夕食のメインはミリアのいうとおり尾頭付きの竜田揚げだ。
 朝から魚醤に漬けて置いてある。

 セリーを連れて、すぐに商人ギルドへ飛んだ。
 芋虫のモンスターカードを買い取る。
 思ったとおり、公爵の話は出なかった。
 よっしゃ。

「夕食は、もう一品なんか作ってもらえるか。魚はミリアが大量に持っていくだろうし」
「そうですね。では私が炒め物を作ります」

 炒め物にする食材とパンを買って家に帰る。
 空きのスキルスロットつきのミサンガと芋虫のモンスターカードをセリーに渡した。
 セリーがあっさりと融合する。

「すごい。もう完全にお手のものだな。さすがはセリーだ」
「さすがです、セリー」
「すごい、です」
「これでミリアの分ができたな」

 セリーをほめているミリアの肩に手を置いた。
 ネコミミもいじらせてもらう。
 芋虫のモンスターカードを融合して、四個めの身代わりのミサンガができた。
 身代わりのミサンガが全員分そろったことになる。

「はい、です」
「よし、ミリア、こっちに来い。着けるのは足首でいいか?」
「ありがとう、です」

 ミリアをイスに座らせる。
 身代わりのミサンガをミリアの足に巻いた。
 ルークに対して芋虫のモンスターカードを積極的に買うよう出している指示は変更していない。
 メンバーを増やすことや切れたときの予備も考えれば、まだいくつかは必要だろう。

 その後、尾頭付きを揚げる。
 ぶつ切りにしたのですでに尾頭付きではなくなっているが。
 揚げている間、ミリアは片時も離れることなく俺のそばについていた。
 油が跳ねたときだけ、後ろに逃げる。

「今、油が飛んだだろう」
「飛んだ、です」
「やっぱり油料理を作るならエプロンが必須か」

 この世界にもエプロンはある。
 ただし、エプロンというよりは完全に作業用の前掛けだ。
 布地も分厚く安全第一。
 俺が着けるにはいいが、ロクサーヌたちに着せるには物足りないんだよな。

 ロクサーヌたちには可愛らしいエプロンを着てほしい。
 そう。男の夢が。
 男の夢が。
 大事なことなので二度言いましたよ。

「エプロンですか。あれば便利だと思います」
「ごっついのしかないんだよな」
「そうですね」

 ロクサーヌも同意のようだ。
 女性用の可愛らしいファッションとしてのエプロンがほしい。
 メイド服にはフリルがついているが、エプロン部分だけを取り外せない。
 そこまでは来ているのに、あと一歩がない感じだ。

 まあ専業主婦もいないし、しょうがないのだろう。
 この世界、女性向けの可愛らしいヒラヒラとした服を着れるような人たちは自分では料理をしない。
 自分で料理を作るような人には、可愛らしい服を着る余裕がない。
 可愛らしいエプロンがあっても売れそうにないか。

「明日にでも帝都の服屋に行って作ってもらうか」
「えっと。よろしいのですか」
「ロクサーヌたちには可愛らしいものを着てほしいしな」
「はい。ありがとうございます」

 今日のところはエプロンなしで尾頭付きを揚げる。
 皿いっぱいに黒い竜田揚げができあがった。

「よし。食べるか」
「はい、です」

 テーブルに運んでイスに座ると、ミリアがせかすように俺を見てくる。
 ミリアが監視する中、尾頭付きの竜田揚げを口に入れた。

 スライムスターチの皮はサクッと軽く、中の尾頭付きはジューシーだ。
 歯ざわりのよい薄皮を噛み裂くと、弾力のある熱々の魚肉が弾ける。
 ほのかに辛い魚醤のアクセントが効いた濃厚な味わいが、口の中いっぱいに広がった。
 そして、なめらかに舌の上で溶けていく。

 旨い。
 想像した以上に旨い。
 三ツ星確定。
 絶品といっていいだろう。

「旨いな」
「ご主人様がお作りになられる料理はいつも素晴らしいですが、今日のは最高です」
「これはすごいです」
「おいしい、魚、食べた、ない、です」

 こんなに美味しい魚は食べたことがない、か。
 ミリアも喜んでくれているようだ。

 竜田揚げはハイペースでなくなっていった。
 ミリアだけでなく、ロクサーヌやセリーも頻繁に手を出している。
 もっとも、残り少なくなってからは遠慮して誰も取らなかったが。

 終わりの方はミリアが一人で片づけた。
 そして、最後に一個だけ残った皿を俺に差し出してくる。
 俺にくれるのか。

「それはミリアが食べていいぞ」
「はい、です」

 遠慮してやると、ミリアが喜び勇んで最後の竜田揚げをほおばった。
 名残惜しそうにゆっくりとあごを動かす。
 食べ終わると、肩を落とした。

 まあ気持ちは分かる。
 確かにそのくらい旨かった。

「次は、ハルバーの十五階層を突破したときだな」
「食べる、です」

 予定を話すと目を輝かせた。
 これで迷宮でも張り切ってくれるだろう。


 翌日、帝都の服屋に赴く。
 女性用のきらびやかな衣装を扱っている店だ。
 エプロンは置いていない。
 エプロンはこういう店に置いておくようなアイテムではないらしい。

「彼女たちには料理も作ってもらうのでな。料理を作るときに汚れてもいいような薄手のエプロンがほしい」
「エプロンですか」
「前だけを軽く覆えればいいので、後ろは紐で結べるようにして、帝宮の侍女服にあるようなフリルもつけてほしい」
「はあ」

 ミリアのメイド服を作るとき世話になった男性店員に依頼する。
 メイド服が分かるならエプロンも分かるはず。
 と思ったのに、メイド服の素晴らしさは理解してもエプロンの破壊力は想像できないようだ。
 俗物め。

「どうだろうか」
「素材はいかがいたしましょう。絹であれば、薄手で最高のものができると思いますが」
「汚れてもいいようにするための保護服だからな。洗える素材がいい」

 絹のエプロンとか。
 それはないだろう。

「一から作ることになりますので、加工費の方がどうしてもかかってしまいます。素材による値段の違いはあまりありません。通常の布を使えば千ナール、絹を使っても千三百ナールで素晴らしいものが仕上がります」
「うーん。そんなものか」

 結構高い。
 こっちからの依頼をフルオーダーで作ってもらうのだからしょうがないか。
 絹を使えばさらに跳ね上がる。

「色はいかがいたしましょう。絹の光沢にあったカラフルなものもご用意できますが」
「白でいいだろう」

 粘るね。

「そうですね。白もよろしいでしょう。絹の白い光沢も素敵なものです」

 色とか素材とかは本当にどうでもいいわけだが。

「そうか」
「想像してみてください。トップラインは水平にして、裾は膝丈。絹のなめらかな布地が前を覆い、優しく包み込みます。美しい光沢に加えて肌触りのよい絹のエプロン。最高の品であることをお約束いたしましょう」

 ば、馬鹿な。
 理解していなかったのは俺の方だというのか。
 絹のエプロン。確かにそれもありのような気が。

 絹のエプロンなんかに。
 くやしい。でも、注文しちゃう。

「通常の布を使ったやつと、絹のものと、彼女たち三人に一つずつ作ってもらえるか」
「かしこまりました。では採寸させますので」
「ありがとうございます」

 礼を述べたロクサーヌたちが女性店員に連れ去られた。

「肩紐などにフリルをあしらい、裾はレースで飾りましょう。その他細かい意匠はこちらにおまかせください。お渡しは五日後になります」

 やはり店員の方が分かっている気がする。
 完敗だ。

 三割引で四千八百三十ナールも取られてしまった。
 結構な出費である。
 痛いというほどの額ではないが。
 ただ、オークションに向けて少しでもお金を貯めておきたい時期ではある。


 翌日には、さらにお金を使う事態が発生した。
 武器屋に立ち寄ると、カウンターの奥にたくさんの武器が並んでいる。
 カウンターの奥にあるのはワンランク上の装備品だ。
 今までこんなことはなかった。

「大量に入荷したのだな」
「はい。すべてさる家から持ち込まれたものです」

 まとめ売りか。
 全部一度に売ったとなると、かなりの大金を手に入れただろう。
 うらやましい。

「エストックが多いな。少し見せてもらえるか」
「もちろんでございます」


エストック 片手剣
スキル 空き 空き 空き 空き


 あったよ。
 空きのスキルスロット四個がついたエストック。
 数が多いだけあってか、あっさりと見つかった。
 レイピアは空きのスキルスロットが最大三個だし、エストックでも四個が最高だろう。

「ロクサーヌ、これなんかどうだ」
「えっと。よろしいのですか」
「見てみろ」
「は、はい」

 エストックをロクサーヌに渡す。

 両手剣のダマスカス鋼の剣も数はあったが、空きのスキルスロットが二個では性能微妙か。
 デュランダルの代わりに使うには、MP吸収とHP吸収の他に詠唱中断が最低限必要だ。

 ダマスカス鋼の槍は、数も少ないし、空きのスキルスロットつきのものもなかった。
 セリーを見て、小さく顔を振る。

「はい」

 セリーが返事をした。
 伝わったようだ。

 スタッフは、在庫は少ないながら空きのスキルスロットつきのものがある。
 空きのスキルスロットが一個では微妙といえばいえるが。
 しかし知力二倍をつけてひもろぎのスタッフにすれば、それだけで現行より戦力アップになる。

 ひもろぎのスタッフはカシアが使っていた武器だ。
 カシアと同じ武器か。
 これはありだろう。

「よい品のようです」

 ロクサーヌがエストックを渡してきた。
 エストックとスタッフを購入する。
 金貨が十数枚、羽の生えた小鳥のように飛んでいってしまった。
 今の時期に痛い。

 武器屋の方にあるならと、すぐに防具屋にも行ってみる。
 防具屋の方は、いつもと変わらなかった。
 売ったのは武器だけか。

「防具屋の方にはまとめ売りしなかったのか」
「耳がお早い。よくご存知ですね」

 小さくつぶやいたのを防具商人が聞きとがめた。
 もみ手でにじり寄ってくる。
 やっぱり防具も売ったのか。

「ちょっとな」
「仕入れたばかりで、店の方にはまだ出しておりません。店の裏に置いてあります。ご覧になりますか」
「いいのか」
「はい。どうぞ」

 防具商人が店の裏に案内してくれた。
 カウンターの後ろから店の奥に入る。
 数多くの装備品が並んでいた。

「結構な数があるな」
「まだ本日仕入れたばかりでございます」
「さる家が一気に売り払ったのか」
「どうやらかなり無理をして集めていたようですね。その家には相当に強くて名の通ったかたがおられたようです。その強さを頼みに、強引なやり口で周囲には迷惑を与えていると聞きました。しかし無謀な拡張はつまずきの元。先日、その強いかたが亡くなったそうです。噂では決闘で返り討ちにあったとか」

 決闘ね。
 どっかで聞いたような話だ。

「返り討ちか」
「強いかたがいなくなったとあれば、今まで被害を受けていた分、周りの態度は激変します。踏み倒したり無理やり期日を延ばさせたりしてきた分も含めて、借金や集めた資金などの返済をいっぺんに求められているようです。かなりお金に困っているみたいでしたね」

 世知辛いことになっているらしい。
 態度でかかったしな。
 ロクサーヌに対してだけじゃなく普段からあんな感じなのだとしたら、反発を喰らっていそうではある。

 バラダム家が手放したのだろう装備品は、そこそこ豊漁だった。
 空きのスキルスロット四つつきのダマスカス鋼の額金、空きのスキルスロットが三つついた竜革のジャケット。

「これは?」
「アルバですね」
「魔法の防御力が高く、魔法の威力も上げてくれる服です。神官や僧侶、魔法使いが着る装備品です」

 空きのスキルスロット二つつきのアルバという胴装備もあった。
 初めて見る。
 防具商人が名前を言い、セリーが説明した。

「素材に聖銀を使っております。ただ、聖銀がたくさん手に入るのならもっとよい装備品が他にあるので、作られることも出回ることもあまりありません。このクラスの装備品になりますと、ローファーなど性能よりもファッション性を重視した装備品も多くなりますが、こちらに関しては性能の確かな品です。魔法防御力が高いので、魔法を使ってくる魔物がいる階層では他のジョブのかたが着用することもございます。いかがでございましょうか」

 防具商人が売り込んでくる。
 魔法の威力が上がるというのは魅力だ。
 空きのスキルスロットもあるしな。

 その他には、空きのスキルスロット一つの、竜革のグローブに竜革の靴。
 空きのスキルスロットが一つというのは微妙だが、買っておくことにする。
 せっかくのチャンスだ。
 なんなら、モンスターカードを融合してすぐにうっぱらってもいいだろう。

 だから、これは浪費ではない。
 先行投資だ。
 たとえ金貨が何十枚と消えていったとしても、である。
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