挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界迷宮で奴隷ハーレムを 作者:蘇我捨恥
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

100/220

コツ

 
 ドブさらいにはそれなりの人数が集まっていた。
 遠目から見ただけだが、みんな割りとみすぼらしい格好をしている。
 下水掃除だから、というよりは下男下女が集まったからだろう。
 この辺りの家でも下男下女とか結構いるもんだ。

 いや、それも当然か。
 井戸が少し離れたところにあるのだった。
 水汲みだけでも重労働だ。
 うちは俺がウォーターウォールで作っているからいいが。

 社会というのは科学技術の制約を案外受けるものらしい。
 この世界の技術では、少しでもいい暮らしをしようと思えば下男下女は必要不可欠だ。
 いい暮らしをしている階層とそれを下で支える階層とがはっきり別れる。
 奴隷を使っている家も多いのかもしれない。

 科学技術が社会に制約を与えていることが他にも一つある。
 この世界に科学捜査というものはない。
 DNA鑑定も、指紋も、血液型ですら知られていない。

 するとどうなるか。
 騎士団が行う捜査は、捜査といえるものではなくなってしまう。
 聞き込みであいつが怪しいとなれば、そいつが犯人だ。

 科学捜査がないこの世界に物証というものはない。
 ルミノール反応などないから、凶器の特定もできない。
 自白か、目撃証言が証拠のほぼすべてだ。
 町内に変なやつがいれば、何かあったときにはそいつが犯人にされる。

 隣に住んでいる人の顔も知らない、隣には文化も習慣も違う異世界人が住んでいる、などという社会は、この世界では成立しない。
 一時は成立したとしても、何か事件が起きれば、たちまち崩れる。

 クーラタルは探索者が多く集まった都市だ。
 もともとは見知らぬ者同士が住む町である。
 この世界にしては、近所づきあいも濃密ではない。

 それでも、最低限の地域活動はしなければならない。
 変なやつ、嫌なやつだと思われれば、何かあったときに困る。

 この辺りで強盗や殺人事件が起こったらどうなるか。
 地域活動をサボるやつがいたら、そいつが犯人だ。
 後は自白するまで拷問が待っている。
 うっかり犯人にされないためには、ドブさらいにも参加する必要がある。

 セリーの話を俺なりに解釈すると、要するにこういうことだろうか。
 サボってはいけないと懸命に説得された。
 この世界で生きていくコツのようなものだろう。
 ミリアをドブさらいに参加させた所以である。

 もちろん、犯人にされても抗弁する方法がなくはない。
 裁判は開かれる。
 神明裁判か決闘裁判だ。

 神明裁判というのは、盟神探湯くがたちってやつだ。
 煮えたぎった湯の中に小石を入れ、被告人に拾わせる。
 無事に拾い上げられれば無罪、失敗したら有罪となる。

 手足を縛って水に落とし、浮かんできたら無罪というのもある。
 毒を飲ませて生き延びたら無罪とか。
 有罪のときどうなるかはいうまでもない。

 決闘裁判では、告発者や目撃者や証言者と決闘することになる。
 勝てば無罪、負ければ有罪だ。
 有罪のときに処刑するコストも省けて一石二鳥である。
 そんな裁判は受けたくもない。

 捜査技術が未発達な社会ではしょうがないのだろう。
 他に犯人を決定する方法がない。
 フィールドウォークが存在するこの世界ではアリバイさえあやふやだ。

 この世界ではくじ引きで犯人を決めるというケースもごく普通にある。
 ある屋敷で人が殺された。
 外から他人が入ってきた形跡はない。
 容疑者はその家に住む六人。

 テレビドラマなら名探偵登場というシーンだが、この世界ではサイコロの登場だ。
 見た目は玩具、頭脳は神。
 サイコロが神の意思にしたがって犯人を決定する。

 もちろん、六人の中に変なやつが一人いれば、他の五人の証言が無事に一致してそいつが犯人だ。
 後は、せいぜい五対一での決闘ということになる。
 証言者が多いということはそれだけ被告人に不利な証拠だから、人数の差は問題にならない。

 俺なんかは美人の奴隷を三人も持っている。
 それだけで目をつけられかねない。
 なるべく目立たず、周囲に溶け込んで、明るく正しく生活する。
 それがこの世界に生きるコツなのである。


「ご主人様、ルーク氏から使いの者が来ています。スライムのモンスターカードを落札したそうです」

 ミリアを送り出した直後、まだ家にいるときにルークから使いが来た。

「セリー、スライムのモンスターカードは何のスキルになる」
「防具につけて、物理ダメージ軽減のスキルになります。コボルトのモンスターカードと一緒なら物理ダメージ削減のスキルになりますが、そこまですることもないでしょう」

 物理ダメージを減らせるのか。
 スライムらしいといえばスライムらしい。

「何につけるのがいいか。まあとりあえず、買い物ついでに商人ギルドまで行ってみるか」

 クーラタルの中心部に出かけ、野菜やモンスターカードを買ってきた。
 硬革の鎧につけると、俺専用になってしまう。
 防毒の硬革帽子と防水のミトンはあるから、次は靴がいいだろうか。

 いや。後ろにいるときにはいいが、前に出るときには俺が装備したい。
 靴を換えることは難しい。
 グローブは、できなくはないが面倒だ。
 簡単に装備品を交換できるのは、帽子ということになる。

 防毒の硬革帽子に空きのスキルスロットも残っているが、そこにはつけない方がいいだろう。
 スキルつきの装備品はまだ行き渡っていない。
 複数のスキルをつけるのは、ある程度みんなが持つようになってからだ。

 セリーに硬革の帽子とスライムのモンスターカードを渡した。


頑丈の硬革帽子 頭装備
スキル 物理ダメージ軽減


「できました」
「おお。さすがセリーだ」
「やりましたね、セリー」

 セリーがこともなげにモンスターカード融合を行う。
 盗賊が残した装備品なので、空きのスロットは一つしかない。

 早速装備して、迷宮に入った。
 水も使えないし、家にいることはない。
 ロクサーヌ、セリーと三人で迷宮に入るのは久しぶりだ。

 一応、ハルバーの十三階層でも探索はできた。
 まったく問題なしにとはいえないが。
 魔物の攻撃を俺が何度も喰らってしまう。
 作ってよかった頑丈の硬革帽子。

 前衛をミリアを含めた三人に任せていたので、俺の負担が大きい。
 デュランダルを使うときは俺も前に出るので、なまったということはない。
 ミリアがくる前にはちゃんとできていたはずだ。
 思い出せ。

 ピッグホッグの突撃をなんとかいなす。
 豚の動きに目をこらし、ウォーターストームと念じた。
 ピッグホッグ二匹が倒れる。
 目の前から敵がいなくなった。

 一匹残ったグラスビーはロクサーヌが相手をするので安全だ。
 小気味よい動きでハチを翻弄するロクサーヌの横からブリーズボールを叩き込む。
 難なく屠った。

 ロクサーヌが案内した次の相手はピッグホッグとグラスビーが二匹ずつ。
 スキル攻撃を持つグラスビーには詠唱中断のスキルがついた槍を持つセリーがあたる。
 そのため俺はピッグホッグと対峙した。

 ブリーズストームで毒持ちのハチから片づける。
 ピッグホッグが後回しになってしまうが、しょうがない。
 長時間の戦闘になったが、なんとか攻撃を受けるのは一回ですんだ。

 次の団体はグラスビー三匹にピッグホッグ一匹だ。
 グラスビーの遠距離攻撃はロクサーヌが盾で受けたので問題ない。
 正面に来たハチを注視しながら、ブリーズストームと念じる。

 グラスビーの体当たりをロッドでいなした。
 遠距離攻撃を放ったハチが遅れて最前線に参加する。
 ロクサーヌが対峙したこっちのグラスビーの動きにも注意を払わなければいけない。
 ちらりと横目で見て、俺を狙っていないことを確認した。

 大丈夫だ。
 と、目を離した一瞬の隙をついて正面のグラスビーが。
 あわてて体をひねるが、突撃を喰らってしまう。

 お返しに五発めのブリーズストームをお見舞いした。
 ハチ三匹が落ちる。
 同時に、俺の体が火照り、苦しくなった。

 毒だ。
 グラスビーの体当たりで毒を受けてしまった。
 防毒の硬革帽子を着けていなかったのが敗因か。
 毒を喰らったのは二度めのせいか、比較的冷静だ。

 肉体的には苦しい。
 胸が締めつけられる。
 それでも魔物を倒すのが先決だ。
 魔物に向かってブリーズボールを放った。

 いや、違う。
 相手はピッグホッグだ。
 間違えた。
 間違いだと分かるくらいに冷静だ。

 ウォーターボールを叩きつける。
 体が苦しい。
 あと何発だ?

 もう一発ウォーターボールを放った。
 数を数えることができるくらいに冷静だ。
 落ち着いている。

 セリーが俺の前に来る。

 薬だ。
 毒消し丸だ。
 口移しだ。
 ちゃんとその意図が分かるくらいに冷静である。

 思いっきり抱き寄せ、セリーの口にむさぼりついた。
 強く吸引し、柔らかな唇の感触を味わう。
 この機会に堪能しなければならない。
 それが判断できるほどに冷静だ。

 セリーの口から毒消し丸が送られてきた。
 丸呑みにする。

 なおもセリーの舌に吸いつき、追いすがった。
 舌を動かし、絡めとる。
 セリーの舌がゆっくり優しく動いた。

 徐々に苦しさが抜けていく。
 体の重みがなくなった。
 思考もクリアになっていく。

 俺は何をしているんだ?
 まあこのまま楽しんでも。
 いや。魔物はどうなった。
 あわててセリーの口を解放する。

 よかった。
 全滅していたようだ。

「ありがとう、セリー。もう大丈夫だ」

 深呼吸する。
 コップを用意させ、ウォーターウォールで水を注いだ。
 ロクサーヌから口移しで飲ませてもらう。
 たっぷりと時間をかけ、息を入れた。

 迷宮は危険だ。
 一人いないだけで、かなり違ってくる。
 無理はしない方がいい。

 早めに家に帰る。
 やることはたくさんある。

 まずは風呂を沸かした。
 水を流せないので、こぼさないよう慎重に行う。
 水がめを風呂桶の中に置いて、入りきらなかったウォーターウォールの水も活用できるようにした。

 ミリアが帰ってくるのはもう少し後だろうから、熱めにしておく。
 ミリアが帰ってくるまでは久しぶりに三人だ。
 久しぶりに何をするのか。
 真実はいつも一つ。


「ただいま、です」

 終わったころ、ミリアが帰ってきた。
 あちこち泥だらけだ。
 奴隷商人のところから着てきた一番安物の服を着ていったが、ぐちゃぐちゃにして帰ってきた。

「ミリアにすぐ脱ぐように言いました。もう水は流してもいいそうです。私が外で洗濯してきます」
「風呂に入れてやりたいが」
「そうですね。今日はいいでしょう。私とセリーは可愛がっていただきましたので」

 順番にこだわるロクサーヌの了承を得る。

「ミリア、今日はご苦労だったな。風呂を沸かしてあるから、一緒に入るぞ」
「風呂、です」

 先にミリアを風呂に入れた。
 湯船につかる前に全身をくまなく洗う。
 あらゆるところを、つぶさに、残らず、徹底的に洗った。
 ミリアの全身を泡だらけにして、優しく丁寧に洗い上げる。

 水で流した後、髪の毛も洗った。
 頭を洗ってから、もう一度ミリアの身体を洗う。
 二度も洗い上げれば、大丈夫だろう。

「ミリア、今日は仕事をさせて悪かったな」
「夕食は魚、です」
「大変だったか」
「魚いない、です」

 洗いながら話したが、通訳のロクサーヌがいないので微妙に会話がずれているような気が。
 ドブ川に魚はいなかったらしい。
 セリーと、遅れてやってきたロクサーヌも洗って、風呂に入った。

「なんとかいう植物も植えてきたのか」
「はい、です」
「リコリスですね。川の堤などによく植えられる植物です。リコリスは根にも花にも葉っぱにも毒があります。そのために動物が寄ってきません。巣穴などで堤が崩れるのを防いでくれます。それに、毒は水にさらせば抜けるので、いざというときには食料にもなります」

 セリーが教えてくれる。
 生活の知恵というやつか。
 異世界には便利な植物があるもんだ。

 海女Lv31、村長Lv1、海賊Lv1、村人Lv5、商人Lv1、探索者Lv1、戦士Lv1、薬草採取士Lv1、剣士Lv1、僧侶Lv1。

 ただし、ミリアのジョブを見てみても農夫は獲得していなかった。
 まあ毒草を植えても農夫にはなれないか。
 あるいは、植えるのではなく収穫しないといけないのかもしれない。

「ロクサーヌとセリーは先にあがって、スープを作ってくれ。後の料理は俺が作る」
「かしこまりました」

 ロクサーヌとセリーを風呂から出す。
 ミリアと風呂に残った。
 やることはいつも一つ。


「何でも食べたいものを言ってくれ。まず俺はエビからいってみるかな。ロクサーヌは何が食べたい」

 夕食の準備を整え、ロクサーヌに訊いた。
 七輪みたいな土器のコンロに鍋を置き、オリーブオイルを温める。
 食材を用意し、テーブルの上に並べた。
 魚、エビ、腸詰め、ハム、各種の野菜。

 小麦粉にスライムスターチとシェルパウダーを削った粉を入れて、水と卵で軽く溶く。
 後は食材をつけて揚げるだけだ。
 エビにまぶし、鍋に投入した。

「私もご主人様と同じくエビが食べたいです」
「ハムをお願いします」
「魚、です」

 ミリアは当然魚か。
 追加のエビ、スライスしたハム、魚にころもをつけて揚げる。
 すなわち天ぷらだ。
 レモン果汁と酢を混ぜたタレにつけ、食した。

「旨いな」
「ご主人様の作る料理はいつも最高です」
「美味しいです」
「すごい、です」

 菜箸を使えるのは俺しかいない。
 俺が揚げる。
 エビの天ぷらは、地球と同じ、弾けるような歯ごたえがあった。

「次は葉野菜でもいってみるか」
「私もお願いします」
「私は、キノコを食べてみます」
「魚、です」

 キノコというのは、シイタケの代わりに用意したマッシュルームみたいなやつだ。
 天ぷらにしたことはないが、多分大丈夫だろう。

「次は腸詰めにしてみるか」
「私もご主人様と同じでお願いします」
「私はエビを食べます」
「魚、です」

 ……。

「なくなる前に魚も食べておくか」
「私もお願いします」
「一つは魚も食べておきたいです」
「魚、です」

 ミリアに全部食べられる前に、魚の天ぷらも食べておく。
 かりっとサクサクだ。
 天ぷらはかなりうまくいった。

 グルテンが生じると粘りが出てサクサクしない。
 グルテンを少なくさせるためにスライムスターチを混ぜる。
 さらには重曹であるシェルパウダーも混ぜる。
 天ぷらを作るときのコツである。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ