僕たちが恋する理由。(42/83)縦書き表示RDF



 祝! 40話♪
 何かにつけてオマケを考えてしまう私・・・・・・。
僕たちが恋する理由。
作:美月みゅん



☆40☆ いい子でいたい



 白い部屋。
 シューッとヒーターの音だけが聞こえる。
 普段は利用することはほとんどない一室。
 
 カーテンで仕切られた小さな空間、狭くて硬い保健室のベッドの上でやわらかい毛布に顔をうずめて横になり、あたしは目を閉じていた。

 

 

 ―――カタカタ。

 「あの〜・・・・・・」

 カーテンの向こうで話し声が聞こえた。
 
 「あら、お迎え? 今、眠ってるかも」

 「あ、私が起こします。カバンも持ってきてるんで」

 「あら、そう? じゃあ先生もちょっと用があるからお願いしてもいいかな」

 「はい」

 「じゃあ、ここに名前書いて帰ってね」

 しばらくすると部屋の中はまた静かになった。
 
 サッ。
 
 カーテンの動く音。

 「さーちゃん」

 優ちゃんの声が近くで聞こえてゆっくりと目を開けた。
 
 「大丈夫?」
 
 心配そうな顔があたしを見ている。

 「・・・・・・うん。大丈夫、保健室でサボるのってこういう気分なんだね」

 あたしは天井を見ながら微笑む。

 「サボりじゃないよ。具合悪かったんだから」

 あたしのコートとカバンをベッドの脇に置く。

 「ごめん、それ勘違いだから・・・・・・。本当は具合なんて悪くないんだ」

 「え?」

 あたしは優ちゃんの方に顔を向ける。
 保健の先生がいないことはわかっていたから、ためらいもなく本当のことを言った。
 
 優ちゃんになら。
 話しても大丈夫・・・・・・。


 「嘘なの・・・・・・」

 あたしの顔をまっすぐ見つめて、見つめ返す。
 驚いた顔はしないで、静かに微笑む。



 「・・・・・・そっか」

 優ちゃんはベッドの脇にある椅子に座る。

 「知ってたくせに・・・・・・」

 あたしはゆっくりと身体を起こす。

 「ん〜でも、わかってたけど、わからなかったよ。どうしていいかわかんないし・・・・・・だって、何かあった? って聞いたら教えてくれたの?」

 確かに、あの時に聞かれても答えなかった。
 でも、今なら・・・・・・。

 「教室にいるのが嫌だったの? 今なら言えるの?」

 優ちゃんの問いにあたしはコクンと頷く。

 「あたし・・・・・・」

 乾いた唇をゆっくりと動かす。
 
 何から言えばいいんだろう。
 できれば、あまり悪く思われたくないんだよな・・・・・・。

 ああ・・・・・・まただ。
 あたしのズルイところ。
 良く思われたいなんて、こんな時でも思うんだな・・・・・・サイテー。

 唇をきゅっと噛んでからもう一度言い直す。

 「・・・・・・あたしね、怖い人になっていくの」

 ベッドの上で布団を握る手を見つめていた。
 爪の切りそろえられた指が不恰好に見える。

 「怖い人?」

 「うん。朝ね、玄関で緑川君が田巻さんと話してるの見てたら・・・・・・あたしね、田巻さんがいなくなればいいって思ってた・・・・・・田巻さんを見てると嫌な気分になるの、どうしてかわかんない。だけど物を投げつけたくなるの・・・・・・」

 こんなにひどいあたしを知ったら優ちゃんでも嫌いって言うかもしれない。
 不安だよ、優ちゃん。
 あたしはどうしてこんなに優しくないのかな。
 

 「うん、それで?」

 優ちゃんはきょとんとした顔でそれだけ?と首をかしげた。

 「それでって・・・・・・ひどい人みたいでしょ、あたし・・・・・・おかしいでしょ?」

 ぎゅっと布団を握る。

 「おかしいの? 普通でしょ?」

 優ちゃんはな〜んだと笑い出してあたしの肩をたたいた。

 「そんな事? な〜んだ心配して損しちゃった〜」

 「そんな事って! だって、田巻さん見ると嫌な気分になるし、でも友達だし、いつものことなのに全然ちっとも平気って思えないんだよ!」

 優ちゃんは優しく笑う。
 
 「でも、田巻さんに譲る気はないんでしょ?」

 あたしはビクッと身体を震わせた。

 譲る?
 緑川君を?

 そんな事・・・・・・絶対に嫌。

 「さーちゃんの事だから、どうせわがまま言うと緑川が困るとか田巻さんがかわいそうだとか変な思いやりっていうか同情してたんだろうけどね。それってさ・・・・・・緑川もかわいそうだし田巻さんなんて惨めになるだけなんじゃないの?」

 優ちゃんの言葉が見えない透明の殻を壊すみたいにあたしを取り巻いていた嫌な気持ちを壊していく。
 
 わかっていた事なのに、それこそ自己満足の思いで完全に引く事もできないくせに中途半端に道を譲ったって田巻さんは喜ばないに決まってる。

 だって、欲しいのは少しの緑川君じゃなくて全部なんだから。

 「やきもち妬くぐらい、いいじゃない、そのくらいじゃ、あの男は逃げ出さないでしょ。むしろ喜ぶかもよ」

 「喜ぶ・・・・・・?」

 「そう、だって嬉しいでしょ。好きな人が自分を独占したいって言うんだよ。きゃーっすごいよ! 恥ずかしいね! あたしも言われたーい」

 「優ちゃん・・・・・・」

 頬に手をあてて顔を振る優ちゃんが誰を想像してるかなんてすぐにわかった。
 

 「それに! 田巻さんだって、そんな風に同情されたら女のプライドが傷つくでしょ。泣いたっていいじゃない、泣かせておけ! そんな事で隙を見せてたら盗られちゃうよ!」

 盗られる。
 確かに、高校へ行ったらあたしには接点がなくなっちゃう。
 隙どころか大きな穴だ。
 いつか・・・・・・盗られちゃうの?

 急に不安になる。

 「ほらほらほら! また余計な事を考えたでしょ〜」

 「だって、怖いよ。みんな変わっていくんだよ。こんな事、こんな事っ今まではなかったのに・・・・・・」

 優ちゃんは、はぁ〜っとため息をつくとベッドの上へのりだしてくる。
 

 「あのね、さーちゃん。田巻さんはもっとすごく酷い事を考えてると思うし、緑川だってさ、さーちゃんなんかよりずっと怖いこと考えてるんじゃないの? あたしに対してさ。そうでしょ? いつも睨んでるもん。ねえ?」

 優ちゃんはカーテンの向こう側に話しかける。

 「え?」

 誰もいないはずじゃ・・・・・・。

 カーテンが揺れると隙間から緑川君がゆっくりとあらわれた。
 恥ずかしそうに目を泳がせている。

 「ぜ、全部・・・・・・聞いてたの!?」

 あたしはひっくりかえる声を必死で出して驚く。

 「聞いてた・・・・・・」

 「なっ!」

 あたしの顔がぐんぐん赤くなっていくのがわかる。

 「あたしだってね、さーちゃんが熊田と仲よさそうにしてると妬くんだから」

 「どっちに妬くんだよ」

 優ちゃんの言葉に緑川君がつっこむ。

 「それは・・・・・・あれ? なんであんたが知ってるの!? さてはさーちゃんが言ったな!!」

 「う・・・・・・」

 あたしが硬直するのをみて優ちゃんはやっぱりとうなづく。
 
 「ま、熊田が言ったんじゃないならいいか〜」
 
 優ちゃんはケラケラと豪快に笑う。

 「ま、やきもち、独占欲なんてどーんと来いって事でしょ! ね、緑川」

 緑川君は優ちゃんを呆れたように見ると、視線をあたしに向ける。
 一瞬、目が合う。
 
 もう限界! こんな恥ずかしいの耐えられない!

 あたしは飛び上がって布団の中へもぐった。

 「あらら〜・・・・・・さーちゃん、隠れちゃったね」

 「松田さんが挑発するからだろ・・・・・・」

 「なぁ〜に〜、助けてあげてるのにその言い方〜。あたしなんて別れてくれてもぜんぜんいいんですけど」

 優ちゃんと緑川君の言い合いを聞きながら、あたしは布団の中で消えてしまいたかった。

 全部!?
 優ちゃんと一緒だったの?
 ずっと!?
 やだやだやだっ!

 布団の中でどうしようもない恥ずかしさで身体を丸めた。


 「じゃ、あとはまかせて帰ってくれていいけど」

 「は? 何いってるの? 意味がわかんないんだけど」

 「だから」

 「あーっ、わかってるって! 帰れって言いたいんでしょ! ったく、ひどい男だな〜・・・・・・」

 優ちゃんが立ち上がる音がする。
 
 やだやだやだ。
 今、ふたりにされたら困る!
 
 「さーちゃん、根性だしなよ! そんなウジウジしてるんだったら別れさせるからね!」
 
 そういって優ちゃんの足音が遠ざかる。

 「あとさ! 田巻さんじゃないけど学校でみせつけるのはやめてよねーっ! 次に見つけたら別れさせてやる! まあ、今日は大目にみてあげる。じゃあね〜」

 保健室のドアのしまる音がするとまた静かになった。
 でも確かに気配はする。
 ベッドの隣、さっきまで優ちゃんがいた場所に緑川君がいる。


 「さて・・・・・・どうやってそこから出すかな〜」

 やだやだやだ!
 絶対にでないんだから!
 どんな顔で会えばいいのよ・・・・・・。


 「か、帰っていいよ・・・・・・」

 布団の中からモゴモゴ言う。

 「ダメ。まずはそこから出して話をしなくちゃね」

 「話なんかしなくていいっ」

 「ふ〜ん・・・・・・。」
 
 面白くなさそうな声が背筋を冷たくする。
 
 嫌な予感がする。
 こんな時の緑川君は一見、笑っているように見える。
 だけど、かならず後からぎゃふんと言わされる。

 「ちょっとくらい・・・・・・見逃してよ。あたしがどれだけ逃げたしたいかわかるでしょ?」

 「逃げ出したいときたか・・・・・・」

 ひゃーっ。
 逆効果なの〜っ?
 どうしろっていうのよ。
 
 「ごめんなさいっ! だからっ、今日だけは、ねっ?」

 息苦しい毛布の中であたしはめいっぱい叫んだ。
 もうあやまるくらいしか思いつかないのがなんともとんちんかんだ。

 「なによ・・・・・・そんなに嫌われたいわけ?」

 ボソッと出た言葉にしまったと思った。
 
 はぁ〜っ。
 
 大きなため息が嫌味のように聞こえてくる。

 「なんでもいいけど、帰らないよ。これだけ言われてさ、帰れないでしょ。覚悟しろよ」

 いつもとは違う低くて、ちゃんと男の人の声が聞こえた。
 
 覚悟って・・・・・・。

 あたしは小さくうずくまってぎゅっと目を閉じた。

 保健の先生ーっ!
 早く戻ってきてーっ!


※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。
















 ■あとがきという名の懺悔■
 
 本日もご来場ありがとうございました!
 保健室攻防戦のしりきれ状態、ごめんなさい!!
 時間がなくて今日はここまでしか書けなかったーーーっ!!
 くやしい・・・・・・。
 苦しいまとめ方でキツキツです。
 続きは次回ということで。
 


 さて次回♪ ☆41☆ 午後の保健室

 なんていうか・・・・・・続きです。
 まだどうするか考えていませんので、とりあえず時間・・・・・・。
 がんばりますのでよろしくお願いします!!
 意味ありげなしりきれと次回タイトルがあやしいですがノーエロです!! 
 そこんとこ期待はナッシングで。
 
 
 






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