僕たちが恋する理由。(23/83)縦書き表示RDF



 ちょっとお仕事が忙しくて1時間もPC前にいられず更新がノロくなってます><
僕たちが恋する理由。
作:美月みゅん



☆22☆ かわいくなりたい


 朝、目覚めると壁にかけられたチョコレート色のマフラーだけが異国人のように目立って恥ずかしい。
 昨日、急いで帰宅したけれど、やはり母に怒られてしまったし、なんだか照れくさくて誰にも電話しなかった。

 今も机の椅子にそっと置いてあるマフラーは何かと気になる存在だった。
 
 緑川君はどうしてるかな・・・・・・。

 以前だったら絶対に思わないような言葉が次から次に溢れてくる。

 「さーちゃん聞いてる?」

 「え? あ、うん」

 突然、声をかけられて視線をマフラーから目の前でシャーペンをカチカチと鳴らしている優ちゃんへうつす。

 「この文法とか絶対テストにでるよ!」

 優ちゃんはあたしのノートにしるしをつける。

 「ここのところわかんねー」

 久美は床に寝転がりながらノートを優ちゃんに出す。

 「あー、これか〜」

 ふたりは顔をつき合わせて教科書と参考書を開きはじめた。
 あたしも開いた参考書を手にとってノートに書かれた問題を解き始める。
 昨日とは別世界の空間であたしは遠くから眺めるみたいにこの勉強会に苦笑する。

 「あと1問なんだから、がんばろー!」

 優ちゃんの号令にあたしと久美が適当におーっと返事をする。

 「あー、雪がいれば楽勝なのになー!」

 久美は右手で頭をかく。

 「仕方ないよ、雪ちゃんは塾の模試なんでしょ? いきなり勉強会しようなんて久美が言うから雪ちゃんだってびっくりしてたよ。でも、大変だよね・・・・・・やっぱレベル高い進 学校を目指すって」
 
 ノートに英文を写しながら今朝の雪ちゃんからの電話内容を伝えた。

 「第一っていったら、毎年学年上位から50人くらい?あたしたち一般生徒には関係ない話なんだけど、久美もさーちゃんも範囲外でしょ?」

 「優ちゃんなら行けそうなんじゃない?」

 「行けそうだよな、行けよ!」

 「行けません! そこまで受験に前向きじゃないしね〜」

 久美に数式を丁寧に教えている優ちゃんは、はぁ〜と肩を落とす。
 
 「東高校だってレベルが低いわけじゃないんだし、がんばんなきゃ入れないんじゃないの? 特に久美!」

 「ひっでーな! わかってるっつーの! 東商業よりは楽勝だって!」

 「ま、そうだよね。一緒の高校行けるといいよね」

 あたしは写し終えた英文の端をシャープの先端でつつきながら言う。

 「ほら! 無駄話は終わってからにしよ!」

 優ちゃんはすでに宿題も塾のプリントも終わっていた。
 できないのはあたしと久美だけだ。

 勉強は嫌いじゃない。
 ただ、わからないだけ。
 好きなのと理解することは一緒じゃないんだよね。
 
 「おわったー!」

 やっと解けた英文のプリントとノートを閉じると両手を天井に向けて伸ばす。

 「うえ〜・・・・・・あともうちょっと」

 久美がもううんざりだと言わんばかりの顔であたしに言う。
 
 優ちゃんが先生じゃそうなるか。

 「ゆっくりどうぞ〜、あたしお茶でも持ってくる〜」

 「緑茶!緑茶のみたい」

 優ちゃんがハイハーイと手をあげた。

 「は〜い」

 あたしは部屋を出て台所へ向かい緑茶とチョコレートの箱をひとつ持って戻る。
 部屋にもどると久美は魂の抜け殻のように倒れているし、優ちゃんは満足そうにテーブルの上を片付けていた。

 「あ、終わった?」

 「今、終わったとこ、久美は死亡中」

 優ちゃんは楽しそうに笑う。

 「ほら、久美。チョコでも食べて元気だそ」

 カタカタッと久美の顔の上で箱を揺らして起こす。

 「甘いな〜、このくらいでヘタってたら受験どうするのよ」

 「優ちゃん、意地悪言わない」

 お茶を入れながら優ちゃんはペロッと舌をだす。

 カップから熱そうな湯気がたつ。
 それを見ながらあたしはやっぱり緑川君を想う。
 何を見ても思い出す。
 
 マフラーなくて大丈夫かな・・・・・・。
 
 「さーちゃん! またぼーっとしてるよ」

 「あ、ごめん」

 恥ずかしくてうつむいた。

 だめだな〜。
 どうしちゃったんだろう。
 
 「あれだな、色ボケだ」

 「なるほど〜、仲直りしたっぽいし。これから本格的に燃え上がる? や、でもライバルもいるし程よく刺激的? 受験の邪魔?」

 「優ちゃん・・・・・・何が言いたいのかわからないけど・・・・・・そういう優ちゃんこそ言わないといけない事あるんじゃない・・・・・・」

 熊田君の事は言わないつもりなの?

 あたしはまっすぐに優ちゃんを見る。
 一瞬、困ったように皺をよせるけど、すぐに笑顔になる。

 「いいの」

 「え? ・・・・・・いい?」

 「うん。熊田ってバカみたいに真面目でさ、そこが好きなんだけど。好きかどうかもわからないのにいい加減には答えられないって」

 あたしも久美もただ黙って聞いていた。

 「好きじゃないって言えばいいのにさ、好きって気持ちがどんなのかわかんないから答えないって言うばっかりで、ひどいヤツ」

 「優ちゃん・・・・・・熊田君は」

 「わかるわかる。あいつってそういうヤツだよ。どうでもいいなら適当に答えちゃうとかすっぱり切っちゃうとかしていいのに・・・・・・優しいしバカだから本当の事しか言えないんでしょ、本当の事って余計に傷つくこともあるのにさ〜・・・・・・本当、腹立つ」

 カップの端を指でトントンとたたきなら優ちゃんはうつむきながら笑う。
 
 「おまえ・・・・・・なんで笑ってんだよ」

 ずっと押し黙っていた久美が厳しい口調で言う。

 「なんで、笑ってるんだよ」

 繰り返した言葉は優しく、泣けと促しているように聞こえる。

 「久美・・・・・・」

 「おまえ、ばかだろ。言いたいことほとんど言ってなくて悔しいくせに! オレの時は泣けって言ったくせに!」

 それ知らない・・・・・・。
 久美がセンパイの事を好きだと知った時にはもうすでにふられていて、どこまでも
 あきらめないと闘志をもやしていた。
 泣いていた久美をあたしは知らない・・・・・・。

 「だって、かっこ悪いじゃない。いけると思ってたなんて・・・・・・少しは脈ありかな? なんて。あたしだけだったなんて・・・・・・この時期に、最悪だよ。でも言いたかった〜、このまま別々になって、忘れられて、あたしの好きはなくなっちゃう のかなって、言えば何かが変わるかなって。変わらなかったけど・・・・・・変えたかったな」

 「変わったよ、言わなかったら何もなかったよ、だから変わったよ」

 「さーちゃん・・・・・・好きって痛いんだね」

 優ちゃんの大きな目がキラキラと輝き始めて、端からキラキラがこぼれ落ちる。
 止まることなく流れるキラキラが頬をつたってあごから下へ。
 
 「おまえ、あきらめるのかよ! まだ時間があるしチャンスもある、オレはあきらめない! いいじゃないか、相手がどう想ったって。納得がいくまで気持ち伝える!」

 久美・・・・・・・。

 泣いたところなんて見たことなかった。
 いつも男の子みたいに振舞って。
 恋なんて知らないとはねのけてきたような友達。
 痛い恋を知っていて。
 あたしよりも優ちゃんの気持ちがわかるように黒い瞳から溢れる涙。

 「久美・・・・・・優ちゃん・・・・・・」

 「ご、ごめんね・・・・・・泣くなんて。さーちゃんは幸せなのに」

 幸せ。
 あたしは幸せなんだ。
 好きだといってくれる人がいて、あたしもその人を想う。
 通じ合って幸せになる。
 
 「言えばよかったな・・・・・・もっと好きだって言えばよかった。そしたら通じたのかな、あたしバカだ。かっこつけて強がって。言えばよかったのに」

 泣きながら久美と優ちゃんは抱き合っていた。

 優ちゃんが泣いてる。
 あのいつもしっかりしていてあたしの目標みたいに胸をはっている優ちゃんが泣いている。
 誰よりも一番かっこよくてさっぱりしてて強い優ちゃん。
 そんなに、そんなに好きなの?
 あたしよりも好き?
 泣くほど好き?
 
 はじめて見る優ちゃんの大泣きの姿にあたしは緑川君に対するものとは違う胸の痛みを感じた。

 熊田君が嫌いだ・・・・・・。 
 
 それまではなかった気持ち。

 「熊田君は、優ちゃんが本気なの知ってる。ただ、戸惑ってるだけなんだと思う。
 チャンスはあるんだよ! だから・・・・・・だから・・・・・・泣かないでよ」

 本当はこんな事がいいたいわけじゃない。
 優ちゃんの好きな人が嫌いなだけ。
 本当はやめちゃって正解なんだよ!って言いたい。
 あたしだけの優ちゃんでいて!って言いたい。
 どれだけ自分勝手でわがままなのかもわかってる。
 だけど、優ちゃんは泣いている。
 だからどうしたら優ちゃんが泣かないでいられるか片っ端から試してみてるだけ。
 だから泣かないで。
 あたしは優ちゃんが大好きだから。

 優ちゃんも緑川君に同じ気持ちになった?
 あたしは今、ものすごく優ちゃんが大好きで熊田君が嫌い。
 優ちゃんは熊田君の事で泣いてて、あたしは何にもできないなんてあんまりだ。
 あたしを見てよ。
 どうしてみんな変わっちゃうの? 男の子なんていらないよ。
 女の子で集まってるほうがずっとずっと気楽で楽しいじゃない。
 そんな風に泣かなくてもいいし。
 それでも、熊田君がいいって言うんだろうね・・・・・・そうでしょ? 優ちゃん。

 ねえ、優ちゃんが泣くのはあたしのせいかもしれない・・・・・・。
 あの時、あたしが熊田君にお願いしたら変わったかもしれない。
 あの時、熊田君に・・・・・・。

 あたしの視線に気がついて優ちゃんは小さな声で大丈夫だよと言って続ける。

 「さーちゃん、あたしみたいに意地ばっかりはってたらダメだよ」

 泣きながら笑いかける優ちゃんはとってもきれいで。
 あたしは涙を止めることができなかった。

 この涙は自分のため。
 優ちゃんのために泣いてるんじゃない。
 あたしは悔しくて・・・・・・。

 「もっと、あたしがさーちゃんみたいに小さくてかわいかったらよかったに・・・・・・」
 
 「そんな・・・・・・」

 極めつけにあたしを苦しめる言葉。

 誰よりもかっこよくて。
 誰よりも優しくて。
 本当は誰よりも女の子っぽい優ちゃん。
 あたしが一番知ってる。

 だからどれだけあたしががんばっても熊田君のかわりにはなれないって事も。
 
 「かわいくなりたいな・・・・・・」

 優ちゃんは久美の肩に頭をのせて笑った。

 「ばっか、おまえはかわいいよ」

 「はは。そのセリフ、男のセリフじゃん」

 ふたりの会話を聞きながら、あたしは罪悪感のようなものを感じていた。
 椅子にかけあるチョコレート色のマフラーが少しだけ邪魔に感じて目をそらした。
 


 ※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。
















     ■あとがきという名の懺悔■

 本日もご来場ありがとうございました。
 泣く話と泣く話を書きたくて書きました。
 女の子の女の子スキーっていう気持ちもやんわりとだせたらいいな〜と思いました。
 あぶない思想とかじゃなくて女の子同士のやきもちってあると思うんですけど。
 あれってなんでなんでしょうね?女の子が好きというよりは特定の友達に対してなんで しょうけど。
 人として好きになれちゃうんでしょうね。

  さて次回♪ ☆23☆ テスト前につき
 期末テストってことは12月ですね。やっと12月だ・・・・・・。
 あと何ヶ月あるんだろう・・・・・・。がんばれ! 私! 
 






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