僕たちが恋する理由。(18/83)縦書き表示RDF



表現力のなさに涙します。
僕たちが恋する理由。
作:美月みゅん



☆17☆ 告白のあとで



 達成感と疲労感を背中あわせに「中学最後の音楽祭」は終了した。
 時間がおしてしまったために各教室での解散が体育館での解散に変わっていたが、結局はカバンを取りに教室へ戻らなければいけないのだから意味がない。

 「いや〜よかったよかった、大成功だね」

 優ちゃんは渡り廊下の天井の低い部分に手を伸ばす。
 背が高いので指先が天井に触れると満足そうに先頭を歩く。

 「大成功だけど、ちょっと寂しいね」

 後ろから3人の背中に向かって言う。

 「そうですよね〜、最後ですから」

 雪ちゃんは余韻を楽しむように笑うと続けた。

 「でも、楽しかったですよね」

 「うん」

 あたしたちは言い表せない充実感でいっぱいだった。
 大多数の生徒はカバンを持って下校をはじめている。
 廊下をゆっくり歩いて教室へむかう。

 「あ、そうだ」

 優ちゃんが足を止める。

 「わっ!なんだよっ!急に止まるなっ!」

 久美の身体が後ろに崩れる。
 
 「久美ちゃん、あぶなっ!」

 雪ちゃんが間一髪のところで支えていた。
 ナイスコンビ!

 「ありゃ、ごめ〜ん」
 
 あやまる優ちゃんに3人はも〜っと注意する。

 「で、どうしたの?」

 久美をなだめながらあたしは優ちゃんを見る。

 「あたしね、さっき告白した」

 「えっ!」

 今度はあたしが倒れそうになる。
 なんだか今日は驚いてばっかりだ。

 あれ、れ?驚いてるのあたしだけ?
 
 雪ちゃんも久美も驚いてはいなかった、むしろ・・・・・・。
 知っている?

 「あ・・・・・・れ?」

 あたしはそれぞれの顔を順番に見回す。

 雪ちゃんと久美は微妙な表情で口を閉ざしている。
 優ちゃんだけがニコニコと笑顔のまま。

 「こんなところじゃ、アレですし・・・・・・教室に」

 雪ちゃんが廊下を通り過ぎる生徒を気にして促す。
 
 「じゃあ、教室で・・・・・・」

 あたしもまたゆっくりと歩きはじめた。

 教室には数人のクラスメイトが残っていたが、ほとんどあたしたちと入れかわりで帰っていった。

 「あたし、ここの席の人に言ったの」

 優ちゃんは誰も座っていない廊下側、後ろから3番目の席を叩いている。

 「そこって・・・・・・」

 「そう、熊田」

 あ〜、そうだったんだ・・・・・・。
 
 そういわれてみれば、と思う事はたくさんあった。
 その時は気がつかなかったけど、この告白を聞いてはじめていろいろな事がひとつになった様な感じだった。

 「ずっと・・・・・・ってわけでもないんだけどね、なんとなく好きになっちゃったみたいなの、言うつもりなかったんだけどね」

 うつむいて机の角を指でなぞる。
 言うつもりはなかった。
 どこかで同じセリフを聞いたような・・・・・・。

 久美も雪ちゃんも、もちろんあたしも優ちゃんに何も言えないでいた。

 「熊田ってさ、本当はすごく努力してるんだよ。あんなだけどね」

 フッと笑みをこぼして、つけたすように言う。

 「いっつもさ、がんばってるとこ隠すんだよね、本当はテストも点数が悪いとすごく落ち込んでて、次こそって顔するんだよ、その顔がかっこいいの。それに・・・・・・」

 それってすごいじゃない?と熊田君の事を話す優ちゃんの顔がキラキラしている。

 「優ちゃんが彼の事、好きなのなんとなくわかってたんですよ」

 雪ちゃんがいつの間にか優ちゃんの隣に立っていた。

 「でも、本当に言っちゃうとは思わなかったな」

 久美もはぁ〜っとうなだれている。

 「それって、熊田君に直接言ったの?」

 あたしは優ちゃんに聞く。

 「うん」

 「いつ?」

 「トイレに行ったとき」

 ああ、あたしが緑川君に呼び止められた時か。
 また、大事な時に一緒にいなかった。

 「で、どうだった?」

 おそるおそる顔色をうかがう。

 「それがですねっ!優ちゃんって」

 「そうなんだよっ!こいつ逃げやがったんだよ!」

 雪ちゃんと久美がありえない!と大きな声。

 逃走・・・・・・?。
 優ちゃんらしいといえばらしい。

 「言い逃げ?」

 そうそう!と久美と雪ちゃんはコクコクと上下に首を動かす。

 「別に・・・・・・返事なんて・・・・・・」

 小さな声で呟くのを聞き逃さなかった。

 「熊田君、驚いただろうね」

 「うん」

 「優ちゃん、言っちゃったんだから、やるしかないよっ!」

 あたしはグッとファイトポーズをつくる。

 「そんな事言われたって・・・・・・怖いし・・・・・・」

 はっきりとした性格なくせに、臆病だったりする優ちゃんは肝心なところをおさえない。

 「はっきり言っちゃえよ!オレみたいにあたって砕けろって」

 ガハハハッと久美は自虐ネタを披露してくれた。

 「ま、あきらめてないけどな」

 「よっ!久美ちゃんっ!ステキです〜」

 「うるせ〜っ」

 雪ちゃんと久美のコンビネタも今はホッとできたが、今はそれよりも、この目の前のキノコが生えたみたいな人だ。

 「優ちゃん・・・・・・言われた人だって大変なんだからね」

 あたしのひとつしかない経験から思う。
 告白は、される人もする人もそれなりのパワーがいる。
 普通の日に突然、バケツで頭を殴られたような衝撃を受けるのは告白される側だ。
 それなりに返事のしやすい告白ならいいのだけど「好きです」だけではどう答えていいのかまったくわからない。
 
 具体的にどうしたいのか言ってくれなかったらわかるわけないじゃない・・・・・・。
 そもそも、告白された人はその瞬間まで「好き」かどうかだってわかんないんだから。

 「言うほうが勇気いるんだから!」

 優ちゃんは負けじと言い返してきた。
 
 確かに、告白なんてとてもあたしにはできない。
 そこまで・・・・・・。

 「でも、言い逃げはよくなかったですよね」
 
 やんわりと諭す雪ちゃんは4人の中で一番、大人だ。

 「わかってる・・・・・・だって、困ってたもん」

 「好きなヤツ困らせて逃げてどうすんだよ、嫌われるぞ」

 「やっ、久美ひどいっ」

 優ちゃんはわーっと熊田君の机に倒れこむ。

 ――――ガラガラッ。
 
 「お取り込み中、悪いんだけどさ」

 顔をだしたのは熊田君本人だった。
 倒れこんだ優ちゃんがピクリとも動かなくなった。

 「ちょっといい?」
 
 熊田君はあたしたち3人に優ちゃんを貸してくれと手で合図する。

 「あ、うん」
 
 あたしはなんだか恥ずかしくて急いでカバンを持つ。
 
 「優ちゃん、先に帰りますからね」
 
 「また、明日な〜」

 あたしたちは優ちゃんの背中を軽くたたいてから、熊田君に手をふって外にでた。
 しばらく、心配なのと興味で廊下で盗み聞きをしたが。
 笑い声が聞こえてきたので安心して帰ることにした。

 生徒玄関にはもう人影はなかった。
 冷たい夕方の風が吹きこんでコートのボタンをしっかりとおさえる。

 「なんか・・・・・・すごいね」

 あたしは靴を履き替えながら言う。

 「優ちゃんですか?」

 「うん、なんだかみんなすごいなって思う」

 あたしなんて、ただ流されてるだけだ。

 なんとなく自己嫌悪。

 「久美もあきらめてないって言い切るし、優ちゃんは告白しちゃうし、雪ちゃんは好きでもあきらめちゃったんでしょ?」

 「あ〜・・・・・・あれですか?2年生の時の話ですよね」

 「へ〜、その話ってやっと解禁なの?」

 久美が驚いたように下駄箱の横から顔をだす。

 「解禁って禁止してたわけじゃないですよ〜、話題にならなかったんですよね。みんな興味なかったですから」

 雪ちゃんはゆっくりと話し出す。

 「酒井君は幼馴染なんですよ、ずっと一緒に遊んでたのでお友達っていうには何か違ってたと思うんですよね」

 「へ〜・・・・・・」

 酒井君といえば今は3組だったかな。
 確かサッカー部で真っ黒なイメージしかない。

 「家も近所ですし、小学校のころは本当にいつも一緒だったんですよ。それが、中学になるとお互い男の子、女の子ってなんだか意識しちゃって・・・・・・というかあきら君が、あっ・・・・・・酒井君がですね、なんだか避けていくようになっちゃったんですよ」

 雪ちゃんはいつも呼ぶ名前を口にして一瞬、頬を赤らめる。

 へ〜・・・・・・雪ちゃんも優ちゃんと同じ顔してる。

 あたしはこんなにもみんながいろんな気持ちを持っていたことに驚いていた。
 仲良しでも知らないことがたくさんあった。

 「雪は泣いてたもんな」

 「雪ちゃんが?」

 久美が思い出したように言った言葉がひどく悲しく聞こえた。

 雪ちゃんが泣いていた。
 久美は知っていて、あたしは知らなかった。
 優ちゃんは知っていたのかな・・・・・・。

 「はい。でもそれは、酒井君の気持ちを聞いてからなんですよ。あんまり避けるので問いただしたんです、そしたらずっと好きだったって言われて」

 また「好きだ」か・・・・・・。
 答えられないっての。

 「私は、今はまだ早いと返事したんです。そしたら酒井君、泣いたんです・・・・・・私は自分がとてもひどい人間に見えて、怖くて誰にも言えなかったんです」

 「そんな・・・・・・」

 「人に噂されて悪く言われるのが怖くて泣いてるんだってずっと思ってたんです。でも本当は私も酒井君が・・・・・・」
 
 雪ちゃんは黙ってしまう。
 あたしも久美もどうしよう・・・・・・と顔を見合わせる。

 「ごめんなさいっ、やっぱりこの話は禁止ですね」

 慌てて雪ちゃんが重くなりつつあった空気を払拭するために明るい声をだす。

 「そんな事ないよっ!だって雪ちゃんはまだ―――」

 「それはないです、あの時も今も受験が先だってことは変わってないんです」

 あたしが言い終わる前に言い切る。
 笑った雪ちゃんの目が潤んでいるのを見逃さなかった。
 見逃せばよかった。
 
 好きって大変なんだ・・・・・・。
 人を好きになるってこんなにもみんな苦しいんだ。
 みんなすごいな。

 あたしは・・・・・・。

 空を見上げると冬の風が吹いていた。

 「優ちゃんの気持ちが熊田君に伝わるといいですね」

 雪ちゃんはいつもどおりにやわらかい笑顔を見せてくれた。

 「雪の話はもうなしにしてやろうな・・・・・・受験が終わるまで」

 雪ちゃんに聞こえないように久美が言う。
 わかった、とあたしは頷く。

 受験が終われば、雪ちゃんは何かから開放されるのかな。
 久美も何かに向かっていくのかな。
 あたしも変わっていくのかな。

 あたしは2人とわかれて家へ帰った。

 その夜、優ちゃんからの電話を待ったけど電話は鳴らなかった。


 


 ※下にあとがきと次回予告がひっそりとあります。
    (あとがきパスな方用に見えないようにしています。
















     ■あとがきという名の懺悔■
 本日もご来場ありがとうございます><
 欲張ってあれもこれもって書いてると首がまわらなくなりそうです。
 それでも女の子達がいろんな意味で成長していく過程や
 登場人物への愛着みたいなのがあたしに生まれたらもっと作るのが楽しいのかなと
 思うのでいじってみてます。
 
 さて次回。☆18☆ ちょっとしたすれ違い
 
 まさにベタドラマ!悲恋とか切ないのとかもいいですけど。
 お決まりのパターンでお決まりのセリフ。まさにステキポイント!
 あ、でもこれもまだ2パターン考えていて決まってません。
 いい加減さがにじみ出るフラフラストーリーです><ノ






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