第四十三話〜またね〜
〜一ヶ月後〜
「皆に報告がありまーす。明日江戸川君と灰原さんが転校することになりました。」
一年B組の担任・小林先生が朝のホームルームで皆に知らせた。
「短い間だったけどありがとな。親の都合でイギリスに住むことになりました」
コナン少し丁寧な言葉で皆に話した。灰原も一言お礼をいった。
「少しの間だったけれどありがとう。会えて嬉しかったわ」
行き先は隠した。皆はそんな事気にせずに泣いていた。
余程二人の存在感が大きかったのだろう。歩美も元太も光彦も泣いた。コナンとしてではなく新一として会える事はこの三人だけは知っている。それでも新一とはまた違うコナンの存在に会えなくなることに悲しくなる。灰原も三人にとっては今でさえお姉さん感があったのに、ほんとのお姉さんになってしまうことは寂しいものだった。
「では、一時間目始めるわよ」
先生の声がして皆は姿勢をただした。それでもすすり泣きは止まることはなかった。
〜帰り道〜
「すごかったな。一時間目終わるまで全員泣いてたぜ」
元太が振り返り二人に話しかけた。
「だな。一年も過ごしてねぇやつらに彼処まで泣かれるとは驚いたよ」
「そうね」
「でも、寂しいな。二人ともいなくなっちゃうなんて……」
少し涙目になる歩美。コナンも、灰原も返す言葉がなかった。それをフォローするかのように、光彦が会話に加わった。
「みんな、寂しいですけど、これからもあえるじゃないですか。ただ先に大きくなるだけです。きっとこれからも米花町に二人共いますよ! ね? コナン君!灰原さん」
「ああ(ええ)」
二人の声がピッタリ揃った。
「哀ちゃんはこれから何処に住むの?」
歩美は心配そうに灰原を見た。
「大丈夫。博士の家にいるわ」
歩美は一気に元気になった。もちろん光彦や元太も満面の笑みを見せた。
「じゃぁ、大人の哀ちゃんがいつでも見れるね」
無邪気になる歩美はいつもの明るい歩美に戻っていた。
「じゃぁな!」
「バイバイ」
「それじゃ」
三人とはいつもの場所でいつも通り別れをつけだ。
「あの子達とはもう良いのかしら?」
皆と別れかてから程なくして灰原から質問にコナンは“ああ”っとだけ答えた。
〜次の日〜
「今日は江戸川君と灰原さんのお別れ会をします」
「はーい!!」
先生の言葉と皆の返事に二人して驚いた。まさかお別れ会を一日潰してすることなど思ってもいなかったからだ。
「さぁ、江戸川君と灰原さんは図書室に行って下さい」
小林先生はコナンと灰原を教室から追い出した。
「まさかクラス全員で“別れの会”をするとはな」
廊下を歩きながら灰原に話しかけた。
「いいんじゃない。それだけ貴方あの子たちに気に入られてるのよ」
フフっと笑う灰原にコナンが言葉を直した。
「“貴方”だけじゃねぇだろ?」
その顔は満足そうな顔だった。灰原は“そうね”っと答えたまま図書室まで無言で歩いた。灰原の顔はにわかに微笑んでいた。図書室に入り何分か経った時灰原から話しかけた。
「ねぇ 」
「あん?」
本に集中していたコナンが顔を上げた。
「貴方、ほんとに体大丈夫なの?」
疑うような目をコナンに向けた。
「大丈夫だ。体育でもサッカーで走り回ったけど何にも起こらなかった。お前だって見てただろ?」
疑いの目で見る灰原を自信満々の瞳で返した。
「なら、いいけど」
「それに、あれからもう一ヶ月経ってるし、この前犯人追い掛けたけど何ともなかったぜ?」
得意気に話すコナンに灰原目が余計に鋭くなった。
「貴方また無茶して犯人追い掛けたの!?」
コナンはまるで、“しまった”っと言うような顔を見せた。
「む、無茶なんかしてねぇよ」
言い返してみたけれど丸っきり説得力がなかった。
「哀ちゃん!コナン君。準備できたよ」
ドアの方から三人が覗いていた事に二人は少し驚いた。そのまま話しは中断し教室に向かった。ドアを開けると教室は折り紙などでたくさん飾られ黒板には“哀ちゃんコナン君ありがとう。また会おうね”と書かれていた。“さよなら”の言葉は一切書いてはいなかった。“さよなら”とは最も言いたくない別れの言葉、少し前に灰原が言っていた事。それを聞いていた三人が言葉を考えたのだろうと二人は納得した。その後はワイワイはしゃいで校歌を歌い一日に終わりを告げた。小五郎や蘭には一週間前から、事務所を去る事を伝えてあった。
「今日なんだね」
晩御飯中に蘭がふと声を出した。
「うん。今までありがとうね。おじさんもありがとう」
蘭の瞳は涙ぐんでいた。小五郎は無言のまま、ご飯を食べ続けた。
ご飯も終わり一段落ついた頃呼び鈴がなった。其処には江戸川文代が立っていた。
「長い間、この子を引き取って下さりありがとうございます」
文代は一礼をしてコナンを見た。
事務所の下には車が一台止まっており、コナンは助手席へと誘導された。
「蘭ねぇちゃん。またね。おじさんもありがとう」
「うん。コナン君もまたね」
「元気でな。また居候なんかで来ても許さんからな」
小五郎は素っ気なくコナンに言い事務所へと入っていった。
「それでは」
また文代は一礼して、運転席に乗り去っていった。
「バイバイコナン君。次会うときは新一だったらいいな……」
蘭はコナン達が去っていったほうをもう一度見つめ、事務所に帰った。
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