第三十五話〜一歩前進〜
〜二ヶ月後〜
朝からコナンはベッドの周りの固唾けを始めた。一ヶ月半前から足のリハビリをやっていた為、少しぎこちなさが残るが歩けるようにはなっていた。
「あら、固唾け中? 無茶しないでよね?」
固唾けに参加するため灰原が病室に入って来た。
「此だけでどう無茶するんだよ」
クスクス笑う灰原に少しムスっとした顔で言い返した。
「あら、貴方なら些細な事でも無茶するじゃない?」
まだ笑う灰原にハァとため息を漏らすコナンを無視して灰原は固唾けを開始した。
「貴方……小説有りすぎよ」
「良いじゃねぇか。此がなきゃ、退屈すぎてまじ死にそうだったぜ」
「あら、そう」
灰原は興味なしに答えた。
二人は黙々と固唾けをした。
「此で全部ね」
「みたいだな」
荷物の殆んどが小説に呆れながら灰原は博士の車に荷物を積んだ。
病院の先生達が笑顔で出迎えて花束などを渡してくれた。
「おめでとう。コナン君。退院しても無茶は駄目だよ」
次々に祝いの言葉を貰うコナンは照れながら
「ありがとうございます」
と言い返し、車に乗り込んだ。
「退院ってこんな大袈裟に祝うか!?普通」
「貴方がまれなのよ」
「まれってなんだよ」
「だから子供が彼処まで普通怪我しないわよ」
「ハハハ……それもそうだな」
乾いた笑いをするコナンに灰原は真剣な眼差しでコナンを見た。
「ねぇ、工藤君?」
「な、なんだよ。改まって」
笑っていた顔が一気に真面目な顔になった。
「帰ったらすぐにでも、血液とるから覚悟しといてね」
ふふっと笑う灰原にコナンはゾクっと身体を震わせた。
「オメーの発言こえーよ」
「あら、工藤君にも怖いものあるのね」
相変わらずシニカルな笑いを見せコナンを見た。
「あぁ。オメーの脅しは犯人に脅されるよりこえーよ」
「ニリットル分のベットボトルに貴方の血液注ぎ込むわよ?」
怒った表情を見せる灰原と違ってコナンは
「すみません」と謝る表情を見せた。
(やっぱり逆らえねぇなこいつには……)
心の中でため息をつくコナンであった。
〜博士の家〜
「さぁて、工藤君? たっぷり血液採らせて頂くわよ?」
「は、はい……」
素直に返事をするしかないコナンは車の中での話しを後悔した。
そのまま、荷物は博士に任せて二人は地下へと向かった。
「んで? 本当に二リットルもとらねぇよな?」
結果はわかっているが顔を引きずりなから灰原を見た。
「安心して、そんなに採らないから。そんなに採ったら私殺人者になってしまうわ」
灰原の言葉にコナンは胸を撫で下ろした。
「あ、そうそう。明日あの子達が退院パーティーを博士の家でするみたいよ」
「ハハハ……好きだねぇあいつら……」
「良いじゃない。あの子建ちにしたら二・三ヶ月はあってなかったんだら」
「そういや、あれからそんなに経つのか……」
灰原は作業をしながら、コナンは椅子に座って話した。
「手伝う事あるか?」
「あら、薬品知識に欠ける探偵さんに、手伝わされたら早死にする薬が出来てしまうわ」
「灰原おまえな……」
呆れた顔を見せる灰原にコナン少し怒った顔を見せた。
「それに、貴方はもう悩まなくていい。今まで、組織だの、正体がばれるだの、彼女を泣かせまいと悩んだりしてた貴方にこれ以上悩ませたくない。苦労させたくない。これは私の償いの一つ。誰にも手伝わせない。例え博士がいてもね。貴方の役割は血液を採集するだけ……」
灰原の言葉に少し驚くものの、直ぐにいつもの自信満々で無邪気な顔戻った。
「そっか。おまえ、そこまで考えてくれてたんだ。ありがとうな。でも、俺を楽させてくれるかわりに一つ条件がある」
「え?」
注射の準備をしていた灰原の手が一瞬止まりコナンを見た。
「睡眠はしっかりとれ。おまえ、ずっと睡眠不足だろ? どんなに博学な医者でも睡眠とらねぇと、手術ミスを起こしかねない。それと、一緒だよ」
灰原は、止まっていた手を動かしながら答えた。
「そうね……最近あまり薬が進展しなかったから夜中も試行錯誤だったから三時間程度しか寝てなかったわ」
「今日から絶対六時間はとれよ。これでも、少ねぇくらいだ」
「わかったわよ。じゃぁ、準備出来たから此処に座ってくれるかしら?」
そういい、一人分の丸い椅子を指で示した。コナンはソファーからそっちに移った。
「腕捲ってこっちに出して?」
言われるがままに、腕を出した。その後、灰原は素早く脈を探し消毒液を塗り、注射針を其処にさした。
「っ……」
コナンの顔が歪みそれど同時に赤い血がドンドン注射器の中へと吸われていく。
「はい、終わったわ」
少しの目眩、少し前まで毎日のように咳き込んでいたせいか、病院暮らしが長かった為身体的に体力が付ききっていないのか、身体がだるく茫然となる。其を見た灰原は心配しつつも次の指示を出した。
「大事をとって、今日はここにいなさい」
「あ、ああ」
そのままふらつくコナンを支えながらソファーに寝かせた。
疲れていたのかコナンはすぐ寝入ってしまった。
「これで一歩前進、貴方の役割も終わり、後は私次第なのね。絶対治すから」
眠るコナンの手を両手で握り願う体制で寂しく話しかけた。
その後、灰原は言われた通り、午前一時に眠りに着いた。明日からまた薬の研究が前進するよう願いながら。
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