第三十二話〜絶対、諦めない〜
〜一週間後〜
大分落ち着いたため、米花総合病室へと移された。
「また病室生活かよ。もう完治してるっての」
「何言ってるのよ。ミイラが少し回復しただけで完治なんて全くしてないじゃない!しかもまだ車椅子」
灰原が呆れたような目をした。服部はもう大阪へかえり、今は博士と三人である。
「なぁ…人をミイラ扱いすんの辞めてくれねぇか?」
「あら、見た目ミイラだと思うけど?」
二人の会話を見守っていた博士が話しを割って入った。
「新一君、こっちに帰ってきたこと蘭君達に話すのか?」
「いや、まだだ。」
「そうよ、こんなミイラ見たいな人みたら蘭さんが可哀想だわ」
「おい!」
なるほどっと納得した博士とは違いコナンは不機嫌になっていた。
「まぁ、まだまだ病院生活続けることね」
無言の空気が続く。何もない灰原はフッファッション雑誌に目をとうし、博士は毎日の疲れがたまっていたのかソファーでグッスリ眠っていた。
しかし、そんな無言の空気も束の間。
小さな咳をしていたコナンが今では激しい咳えへとかわっていった。
その姿をみて灰原が医者を呼ぼうとナースボタンを掴もうとしたが、その手をコナンが遮った。
苦しそうな顔をしながらも、必死に首を左右に振った。
「すぐ…おさま……から」
途切れ途切れな言葉を必死に伝えた。
「な、何言ってるのよ!早く呼ばなきゃ…貴方がヤバいじゃない」
少し怒鳴り気味の声をだが、コナンはナースボタンを一向に押そうとしなかった。
「こんなんで…呼んだりしたら…迷惑…だろうが」
「わかったわよ」
何も出来ない事に灰原は苛立ちを感じた。
その後、数分間か発作が続いた。灰原はコナンの背中を擦る事しか出来なかった。
「もういいよ。大分落ち着いたから…」
「なら、いいけど、当分探偵できないわね。ごめんなさい」
灰原は深々と礼をした。
「だーかーら。謝るなって言ってるだろ。丁度いい休憩になるよ」
コナンは灰原に言い聞かせた。
「そうね、いい休暇になるわね。無茶ばかりしてる貴方には丁度いい機会よね」
「あのな、おまえ一言多いんだよ」
「フフフ、さぁ博士帰るわよ。ミイラさんも今日は相当疲れてるだろうし…」
灰原は博士をひっぱりながら廊下へと向かった。
「おい!」
コナンの声もむなしく二人はでていった。
(たく…一日に何回ミイラって呼ばれなきゃいけねぇんだよ…)
呆れ果てたコナンは二人が出ていったドアを眺めていた。
(ばか…本当は怖いくせに。三年なんて怖いくせに、一回くらい弱音吐いてもいいじゃない。)
灰原は車の窓から暗い風景を睨み付けながら、心の中で呟いた。
阿笠邸につくやいなや、一直線に地下へ足早に行った。
「あ、哀くん!夕飯は?」
「今日はいいわ。博士一人で食べといて。」
「哀くん!」
最後の博士の声も無視して地下へと姿を消した。
(やらなきゃ、いけないのよ。あの人の人生三年で終わらしたくない。絶対に!)
灰原はパソコンと睨み合いながら夜中を過ごした。
(もう四時なのね…ついこの間まで時間が経つの遅かったのに…今は早いものね…)
灰原はパソコンから目を離そうとしたが、一気に釘付けになった。最後のフロッピーにはこう書いてあった。
《この薬を作るには投与された人の血液が必要となる。投与された日から一年以内に解毒剤を作らなければ、効き目はない。》
この文に灰原は目を大きく見開いた。
残酷だけど、まだ諦めたくない思いでパソコンを睨んだ。
面会の時間になるやいなや、コナンへと駆け寄った。
「工藤君話かあるの!少し時間もらえるかしら?」
血相をかえた灰原をコナンは驚きながら、頷いた。
「隠せないから伝えるわね…まず、貴方の血液を分けて欲しいの」
そこで一呼吸おきコナンの反応をまった。
「別に良いけど。『まず』ってことは他にもなにかあんのか?」
聞き返えされ灰原は戸惑った。今ここで話していいのか、彼をただ苦しめるだけな気がしてなかなか言い出せなかった。
「灰原? 大丈夫か? 言いたくないなら言わなくていいぞ?」二回目の問いかけに灰原は決心したように口を開いた。
「工藤君…一回しかいわないから聞いて。
貴方が投与された薬、投与された日から一年以内に解毒剤を作らなきゃ、効き目がなくなるように作られてるの」
早口に言った言葉でもコナンに衝撃を与えた。それでも、コナンは不適な笑みとともに、返事を返した。
「一年あるなら出来るはずだよ。今のおまえなら精一杯な。でも焦るなよ。俺、何も出来ねぇから偉そうな事いえねぇけど、これだけは言える。諦めるな、諦めたらそこで終わりだ。何があっても諦めないかぎり前進するよ」
ニッと笑いかけるコナンに目を合わせる事が出来ずに下を向いた。
「絶対。助けるから…すべての事から諦めないから。」
そういい、顔を上げコナンに向いた。
「ああ、信じるから。でも無茶はするなよ?」
「その言葉貴方に言われたくないわ。散々無茶した貴方にね。」
笑いながらドアへと向かった。
「可愛くねえやつ…」ポツリと吐いた言葉は灰原に聞こえたらしく、
「何か言った?」と言わんばかりの目でコナンを睨んだ。
コナンは冷や汗をかきながら
「いや、何も」と手だけを振って布団の中に隠れた。
隠れたコナンに灰原は不適な声で返した。
「血液タップリ退院したらもらうから。覚悟しておきなさい」
その後スタスタと病院を後にした。
「まじ…怖ぇ」
コナンは出ていった灰原に視線を移した。 |