アンティーク・オン・イグザミネーション(2/32)縦書き表示RDF


アンティーク・オン・イグザミネーション
作:留龍隆



CAPTURE + 2


  CAPTURE + 2

  「今日から借金の返済のため働かせていただくことになりました、前田実二十歳です。趣味は編み物、古物商巡りです。よろしくお願いします」
  「で、その趣味が災いして働くことになったわけか。ま、よろしく」
  初日から敵発見。腹立たしい台詞を吐くエプロン姿のぼさぼさ髪店員。これを店長が言ったのなら、まあ仕方ない。悪いのはわたしだから。でもね、いくらバイトでは先輩でも、こういうこと言う人は大嫌いだ。先にいたら偉いとでも思っているのか!
  「まあ、二人ともそういがみ合うこたあないだろう。実ちゃん、こいつは石垣拓壬。口が悪いけど仕事はするやつだから、こいつから仕事を教わってくれな」
  店長の柔らかな物腰に包まれた言葉は言うことを聞き易いが、果たしてわたしはこの拓壬とかいう人の命令を聞けるかしら・・・拓壬?
  「拓?うそ?え?」
  「んだよ。悪いか。先に上京しただろーが。つーか、顔見て気づけよ。名前言わないとわかんないのか」
  それは去年のこと。受験に失敗して落ち込んでいたわたしを置き去りに、「東京で予備校通いする」と言って名古屋を出て行ったぼさぼさ髪の知り合いがいた。そいつは勿論、今目の前にいる男、石垣拓壬である。そして、わたしもしばらくして上京してきた。先に言っておくが、拓壬を追ったわけではない。(それほど魅力ある顔立ちではないのだ)わたしはただ、名古屋で落ち込みっぱなしでいるのが嫌だったのだ。
  「拓、あんたなんでバイトしてんの?予備校通いの金が尽きたの?」
  「馬鹿言うな。壷叩き壊してバイトしてる奴に言う権利があると思ってんのか?」
  憎らしいところが全く変わっていない。
  「シーフ、こんなのホントに雇う気なのか?どーせ掃除してるときにも破壊工作を重ねるぞ?売るものが無くなってこの店はおしまいだ」
  「あんた、小学校六年のときに癇癪おこしてわたしの家にあったものかなり壊したよね〜。ちょーっとおつむが足りないから、少しの挑発にもがんがん突っかかってくんのよ。あ、そーかそーか、おつむ足りないから受験落ちたんだわ」
  「おめーも落ちたろうが。まさか、落ちたショックでぜーんぶ忘れたのか?そこまで頭がすっからかんになっていたとは・・・ご愁傷様。」
  「・・・・・殺す」
  「うるさい。黙れ。先輩だぜ?ああ、もうそれも忘れたのか。ほんっとにすっからか」
  調子乗って上ばっかり向いてるからだ、このカス。
  「うええええ・・・・・いてててええ」
  上を向いて下のガードが緩んだ瞬間に、わたしは神速で拓の股間を蹴り上げた。自分で言うのもなんだが見えないくらいのスピードで、着用していたエプロンの下から繰り出された蹴りは女の軽い細い足にも十分すぎる威力を与えた。
  「てめえ・・・・将来使い物にならなくなったらどうすんだ・・・おおおおいてええ」
  「使う予定は一生涯ないのではないか、と思います。知り合いだから、と贔屓目に見ても、印象の薄い顔だからね〜。モテないっ!うん、絶対モテないっ!」
  「あのね・・ここ、私の店なんだけど、ちょっとは静まってくれないかね。また割れたり壊れたりしたらさ、いくらなんでも経営できないからさ・・・」
  ようやく我に返ったわたしは、慌てて次に繰り出そうとしていた足を引っ込めた。
  「すいません店長」
  「よせー、シーフ、こんな野人はよせー、もっと美人じゃないと看板には出来ないー、よっ、ぐっほおおお!!」
  履いていたハイヒールがとっても役に立った瞬間だった。踏みつけるという素晴らしい行為によって生じるか・い・か・ん
  「このドSが!!いっ、いたい!!」
  「懐かしいわー。むかーしむかし、付き合ってたときは、あんたこうやられるのが好きだったわね」
  店長が五メートルほど後ずさった。とゆうか引いた。
  「付き合う?はっ、おまえから懇願してきたんだろうが!!『先輩ずっと見てました、付き合ってください』この台詞もう百回も聞いた!!もう飽きた!!つーかストーカーだろおまえ!!朝登校しようと外に出ると待ってる、学校行けば授業終わるとやってくる、昼飯時になれば弁当持ってくる、あーんってしないと切れて文鎮で殴ってくる、トイレに行っても外で待ってる、家に帰ると合鍵で家の中に入ってるいたたたたたた!!!」
  「それ以上言ったらマジで殺すぞオイ。あのころのあんたもわたしも狂ってたわ。が、今は違う。わたしはずいぶんと趣味がまともな美少女になった・・・」
  「うるせー!!自宅行ったら引き出し抜いた下にあるデッドスペースから鞭出てきたぞ!おまえあのまま関係が進んでたらあれ使う気だったんだろそうなんだろいあたたたたった!!たんま!!」
  「ねえ・・・ここ私の店・・・・もうそんな話やめて」
  「あーあ、もうやだやだやだやだ全部嫌!!なんでここまで来てこいつに出くわすのよおお・・・・・オイ、今覗いたろ」
  「何の話げふううっ!!!お、折れた!!骨いった!!いたっ!!!」
  「スカート履いてきたのがまずかったわー。あーあ、セクハラ、いや先輩という立場を利用したパワーハラスメント、つまりパワハラ。裁判沙汰だわ」
  「うるせー!!!踏みつけやがって暴行罪だからな!!!!」
  「『このひと踏まれるのが趣味の超ど級の変態性欲の持ち主なんです・・・』(超純真そうな声)っていうから大丈夫。そしてわたしにハッピーライフ到来」
  「ねえ・・・・・・・・ここ誰の店?ねえ、誰の?」
  「変態はてめーのことだろうが!!!生きがいは男を嬲ることだろ!!!」
  「実はさ、こういう日の到来を予期して、わたしあんたがわたしに踏まれてる写真を残しておいたの。よかったーとっておきにしておいて」
  「・・・うそだろ」
  「ほんとよー。わたしの顔は覆面で隠れてるけどね」
  「てっめええ!!!返せ!!!返さないんなら知り合いに言いふらすぞ!!!」
  「こんな純真そうな美少女と確実にドMであることが判明しているあんた、みんなはどっちを信用するかしら」
  「もう聞かなくていい?・・・・・・もういい」
   「うおおおおお・・・・・助けて・・・・・・」
  「ひとつだけ助かる方法があるわ」
  「・・・・・なんだ?」
  「わたしの好きな時に好きに言うことを聞く犬になりなさい。そうすれば、考えないこともないわ。無論、鞭ではたかれることも想定しなさい」
  「ふざけんな!!!!絶対やらねえ!!!」
  「じゃあネットに配信するわ。わたしのブログの糧となる。」
  「畜生・・・・・わかったよ、犬になるよ・・・・とほほ、これでいいんだろ実」
  ノってきた、ノってきた!!波がわたしを運んでるう!!となれば少し顎を掴んで上目遣いにさせて、
  「実、じゃなくて女王様、でしょう?あー、楽しみだわ、わたしかあんたの知り合いが誰か早く来ないかしら。この姿を見せてあげたい・・・」
  ぐすっ、ひっくと泣いている拓を見ると、ますますそそるわたしでした。さっきは印象のない顔、と言ったけど、それはただ似た顔で有名人などがいなくて例えられないだけのこと。別に顔は悪くないし、頭も良いほうだ。従順なだけの馬鹿犬よりは、歯向かうくらいの性格をしたこっちのほうが数倍面白いに決まってるし。さあ、鞭の手入れもしとこうっと。



          「なあ、私は店長だよな?そうだよな?」
    就労時間内に帰宅していったバイト二人に向けて放たれた、店長の嘆き。




読んでくださっているなら何も言うことはございません。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう