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アンティーク・オン・イグザミネーション
作:留龍隆



CAPTURE + 15


「(英語を和訳)・・・・・・で、捕らえてきたのか」
 真っ黒なローブを着た背の高い男が、部下と思われる男に尋ねた。
 「はい。教主様が仰られたとおり、処女を連れてきました。な」
 部下Aは隣にいた部下B尋ねる。
 「はい。教主様が仰られたとおり、少女を連れてきました。なっ」
 部下Bは隣にいた部下Cに尋ねる。
 「はい。教主様が仰られたとおり、幼女も連れてきました。なあっ」
 部下Cは隣にいた部下Dに尋ねる。
 「はい。教主様が仰られたとおり、紹興酒を買ってきました。なあ」
 『バカもの〜っ!!!おまえら伝言ゲームか!!??なんだよもう!!最後なんて酒じゃねーか!!』
 「じゃ、俺らで飲むんで」
 「いらんとはいっとらん!!!よこせ!!」
 教主は部下から酒をひったくった。
 「儀式には酒も必要だ。場を清めなくてはならん」 
 「教主様、今日の儀式はなんですか?」
 教主はこの問いにニヤリと笑って返す。そのいやらしい笑みはとても「教主」とは思えないほどに醜い。その醜さは外見的なものではなく、心の中からきているように見える。
 「本日の儀式は・・・・・・生贄による召喚魔術だ」
 
 
 俺たちはシタンさんがどっかから調達パクるしてきた船に乗って南極方面の島へと進んでいた。シタンさんは運転に集中しているし、シーフはナイフの手入れ中だ。
 「ときに少年、君は戦えるんだろうな?」
 シタンさんの質問、というよりも確認が入る。自分の弟子が育てたとはいえ、己の目で見ない限りはたしかな信用を抱くことは出来ないのだろう。
 「・・・・・・足は引っ張りませんよ」
 「ならいい。自分を自分で守れる、と自負できるなら相当なもんさ」
 カカカ、とシタンさんは笑う。島まで、あと三十分・・・・・・・
 
 
 拓壬たちのこの会話の三十分前。
 
 
 「・・・・・・納得いきません!!!」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「でも・・・・・・店長さんたちは残れ、って」
 俺ら三人は頭を寄せて論議していた。勿論、助けに行くかどうかについてだ。俺はなんとしてでも実さんを助けに行きたかった。監禁されて苦しい思いをしているなら、そうした人物を叩きのめしてでも連れ帰る。そう思っていた。が、その反面、場数を踏んだ兄貴や店長が「来るなと言う以上、行かない方が良いようにも思えていた。だから、無言のままだった。
 「樹ちゃんは、僕の大事な人なんです。絶対に助けに行く」
 「愁さん・・・・・・あのですね、樹はあたしたちの妹でもあるのよ?あたしたちだってそりゃあ助けに行きたいわ。慶兄さんも、そうでしょ?でも、あたしたちは戦ったり出来ない。足手まといにでもなって、お兄さんたちを危険に晒すかもしれない」
 「そんなの関係ない!!!・・・・・・足は引っ張らない。僕らに出来ることだけでも、やらなくちゃ」
 そんなことを声高に叫ぶ愁君は、俺には羨ましいようにも、うざったくも見えた。樹に対しての思いを洗いざらいなんでもぶちまけることが出来る・・・・・・それが羨ましかった。そして、そんな思いのみで行動しようとあせる、その浅はかさがうざったかった。
 「愁君。・・・・・・俺らに出来ることがない、と判断したからこそ、店長たちは俺らに待つよう言ったんじゃないか。気持ちはわかる。だが、最善の策を選ばなかったらそれはただの自己中心的な思考にしかならないだろう・・・・・・」
 俺は諦め半分の大人の意見を言って暴走しようとする愁君を止めようとした。が、愁君は勝手に支度を整え始め、店長さんたちが何本か置いていったナイフを手に取るとリュックにしまいこんだ。
 「おい」「止めないでください」
 聞く耳持たず。かといって放っておくわけにもいかない。
 「・・・・・・・・・わかった。俺も行こう」
 「慶兄さん?!」
 麻衣子が素っ頓狂な声をあげて俺を制する。危ないのはわかってる。しかし、俺も実さんを助けたい。その思いは、愁君のまっすぐな姿を見るにつれて募る一方だったのだ。
 「慶介さん、見るからに体力なさそうですが、大丈夫ですか?」
 先程まで敵対して止めようとしていた俺にあからさまな皮肉をぶつける愁君。しかし俺にも意地がある。
 「・・・・・・・大丈夫だ。医学部志望だぞ」
 「いや、意味分かりません」
 
 
 
 はあ、なんで投獄なんかされてんだろ。なんも悪いことしてないでしょ・・・・・・
 「・・・・実さん・・・・・・・」
 樹ちゃんもビビってるし。あー、やだやだ。こういうじめじめした暗がりはさ、たくさんいるんだよ?霊。見えるし。怖いんだけどちょっと。でもさ、樹ちゃんにこんなこと相談しても余計に怖がらせるだけだし・・・・・・・。
 「(英語を和訳)来い!!!!」
 突如として牢の扉の鍵が外される。どうやらいけにえの時が来たようだ。妙に頭は冷静なんだけど、多分いざとなったら泣くだろうな・・・・・・・・・
 「ちくしょー、早く来い!てんちょー!!たくー!!!」
 「(英語を和訳)黙れ!!!!」
「あ、すんません」
 ・・・・・・・こんなこと思うのもヘンだけど。拓とか店長は信頼出来るからな・・・・・きっと助けに来る、って思っちゃってるんだろーなー・・・・・。
 
 
 島に到着。そして上陸。予想通り、見張りをしていた奴らが数人、俺たちに近づいてくる。見張りは全部で七人。近づいてきて近くにいるのはそのうちの四人か。
 「(英語を和訳)おまえらは何者だ?ここで何をしてる」
 手はずは整えてある。近づいてきた四人を俺とシタンさんで仕留め、残りの三人はシーフが銃で動けなくする。ここを切り抜けるのに数分、中にいって二人を救い出すのにさらに十数分はかかる。それまではまだ危ない目には遭っていないと願いたい。
 「地獄に落ちろ・・・・・・日本語わかんねーか」
 近づいてきた一人のあごにナイフの柄でアッパーを喰らわせる。隣でそれにきづいたらしき男にも、腹に膝蹴りを決める。シタンさんも、シーフの師匠ならば相当年老いているだろうに、年齢を感じさせない素早さで相手の後ろをとり、肘鉄で二人同時に眠らせた。
 「(和訳中)てめーら何してくれとんじゃ!!!!」
 サブマシンガンの銃口がこちらを向く。が、引き金を引いたのはシーフが先だった。右手にリボルバー、左手にオートマのミリタリーを握り、三人いた見張りの手を撃ちぬいた。
 「行くぞ」
 シーフはそれだけ言うと倒れていた男達を一瞥し、要塞跡の中へと急いだ。


 「・・・・・・・・・行きましたかね?」
 「おう」
 「はああ・・・・・・・なんであたしもこんな戦場に・・・・・・・」
 敵が去った後の船から下りた俺たちは、倒れている男達の横を過ぎ去り、兄貴たちの後をつけた。
 「でも、僕らもよくばれなかったですよね。船に乗り込んでたのに」
 実さんたちを救う方法は、俺たちにはなかった。というわけで、店長たちが船に乗る隙を見計らい、後ろから乗船したのだ。こんな危ないところに来たのだ、ばれれば色々言われるだろう、というわけで、俺たちは兄貴たちとは別行動という形をとり、後はつけるが道は途中で別れよう、ということにしていた。
 「船ってのは案外うるさいからな。それに気がたってもいたから、気づかれなかったんだろうよ」
 「ねえ、なんか迷いそうなんだけど」
 「心配するな。俺たちは方向音痴じゃあない」
 「いや、そんなんじゃ安心できないんだけど」
 そうこうしているうちに道は別れた。コンパスを取り出すと兄貴たちが行った道は北。違うルートを選択することにしていた俺たちが進むのは、東となった。
 「暗いな」
 要塞というだけあって、ゲリラ戦の時などに占拠されにくくしたのだろう、迷い易い構造になっている。外から見た感じではこの道と兄貴たちの道も繋がっていそうではあったが、実際に進んでみると突き当たる可能性も出てきた気がする。
 しばらく無言で進んでいると、前方でギイ、ガシャン、と音がした。咄嗟に俺と愁君はナイフを構えたが、そこから聞こえたのは実さんたちの声だった。
 「・・・・・行ってみるか」
 「いや、他の男達の声が聞こえます。多分、牢から出されただけでしょう」
 足音はこちらに近づきつつあった。俺たちは慌てて脇道に逸れ、やりすごした。実さんと樹は手錠に繋がれて通り過ぎていき、角で曲がって兄貴たちが行った方向へと姿を消した。
 「・・・・・・慶兄さん・・・・・・」
 麻衣子は半泣きで俺を見つめる。俺だって、なんとかしたかった。でも、そのために俺が死んでも仕方がない。少なくとも、今は奴らの後をつけなくては。そしてまたも、無言で歩き続ける。男達が兄貴たちに追いついているそぶりがないということは、兄貴たちが先を急いで歩幅を広くしているということだろう。更に言えばそれは、兄貴たちがあせっていることにも繋がる。あせる余りに失敗はしないだろうか・・・・・・いや、兄貴たちはプロだ。その点は大丈夫だろう。
 「・・・・・・・着いたみたいですよ。最悪な場所に」
 愁君の舌打ちをしたそうな顔が、どんな場所なのかを形容していた。覗き込んでみると、そこにはギロチンなどの各種拷問具、死刑道具が鎮座されていた。
 「うえっ・・・・・・・」
 生々しい場所のただならぬ雰囲気に、麻衣子が嗚咽を漏らす。こびりついた血を拭っていないところさえあるそこは、文字通りの地獄絵図。
 そして、実さんと樹がギロチンの前に立たされた。
 
 
 「・・・・・・・シタンさん。なんでここの連中に追われてるんです?」
 俺は隠れる間も周りへの気配りを欠かないようにしながら、シタンさんに尋ねた。答えるシタンさんも、気配を探ることに余念はない。
 「あー、あれだ。昔、ここの奴らが儀式をしてる最中に乱入して、いけにえ役になったやつを助けちゃった。あと、その時に金目の物を片っ端からパクってさ・・・・・・わしは、イギリスの方でも仕事をしてんだけど、そこの方のやばいやつらに目ぇ付けらてて。そいつらとここの黒魔術団体は繋がってんだ。そのせいでこんなことになって・・・・・・・申し訳ない」
 シタンさんはギロチンの前に立たされて泣きそうになっている実と樹を見て、心底悲しそうな顔をした。
 「いえ、いいです・・・・・・ところで、いけにえを助けた、というのは?」
 「・・・・・・ああ、黒魔術の儀式とかぬかしてここの奴らが人を殺そうとしてたのさ」
 なんてこった。正に今の実たちの様じゃないか。
 「師匠、そろそろ行きますよ」
 シーフは「危険」と呼称するナイフを鞘から抜き払い、バッと飛び出した。なるほど、その動きは理性を取っ払った野獣そのもので、殺人鬼の様相を呈していた。さすがは三十人切りの悪行を達成したナイフ。凶悪な刃は実を押さえていた男の二の腕を切りつけ、腹にも重症を負わせていた。
 「じゃ、俺も」
 遠くから銃を取り出した相手を視認すると、すぐさまこちらも対抗、フルオートでぶっ放してやった。一人目は見た目から防弾ジャケットを着ているのは明らかだったので、腹や胸に遠慮なくぶち込む。撃たれた男の手からショットガンが落ち、ガツーンと金属音を立てながら部屋の入り口へと転がっていく。もう一人はシーフと同じ型のミリタリーを持っていたが、肘を狙って容赦なく撃つ。深目に撃ったので神経が切れたかもしれないが、まあ自業自得だろう。
 
 
 「・・・・・・・僕ら、来なくても良かったですね」
 「ああ・・・・・・・・」
 「怖い・・・・・・・・・・」
 兄貴は銃の達人だった。俺たちはここで鳴りを潜めるしかないというのに、なんて軽やかに、戦っているのだろう。すでに二人を打ち倒し、店長たちの援護に向かっている。
 「うわっ!!」
 観戦するしかない俺たちのところへ、兄貴が撃った相手が持っていたショットガンが滑ってきた。黒光りする銃身は、恐怖の象徴とさえ思える。
 「出る幕なし、よ。あたしたちは待ってるだけで大丈夫・・・・・・・」
 麻衣子は怯えている。その怯えは、見知っている人々があんなにも変わるだなんて、という感情が込められていたように感じた。
 「あれ・・・・・・?慶介さん、あれ」
 「ん?」
 俺たちが見ている方向からしか、見えない位置。そこに、実さんや兄貴たちを狙っている人影があった。ライフルを構えて狙われているのに、兄貴も実さんも誰一人気づいてはいない。
 「役に、立てそうですね」
 愁君はそういい残すと転がってきたショットガンを手に戦場へと突っ込んでいく!!!
 「待て!!ショットガンなんて素人が使ったら、」「知ってますよ」
 ポンプアクション、そして、発砲。耳が張り裂けそうな音がして、ライフルを持っていた男が倒れる。幸いにも防弾服を着ていたらしく、愁君が殺人者になることはなかった。
 
 『いいいっでえええ!!!!』
 
 そして、愁君の悲鳴。無理もない、ショットガンなんてものは訓練してからでなくては使用できない。撃った反動で肩が抜けたか、さもなくば腕が折れたかもしれない。
 「和泉クン?!!」
 「愁!!」
 店長と兄貴が反応する。二人共死闘の最中だろうに、愁君に気づくとなるだけ守ろうと努力していた。
 「バカ野郎!!!死ぬぞこんなとこ来たら!!!!!」
 兄貴はそう叫びつつも周りの奴らを蹴散らし、愁君に近づいた。
 「・・・・・・・すい、ません・・・・・・・」
 やがて戦闘には幕が下ろされ、後には二十人近い黒魔術愛好者が倒れていた。しかし兄貴たちの凄いところは、一人も殺してはいないところだ。
 「(和訳中)おい、『教主』殿」
 シタン老人が一番偉いと思われる男にナイフを突きつけた。
 「(和訳中)はっ、はいいい!!!!」
 「(和訳中)わざわざ儀式中に防弾チョッキなんて着ないだろう?何か意図があったんではないのか?」
 「(和訳中)いや、その・・・・・・・」
 「(和訳中)殺すぞ」
 「(和訳中)はいいいいっ!!!!さる筋の情報屋とイギリスにある黒魔術教団の方から人質をとって集会をするよう仰せつかったんです!!!!」
 「ちっ・・・・・・『召喚』ってのはわしたちを呼び出すための皮肉か」
 教主にわからないよう、日本語でそうぼやくシタン老人。
 「(和訳中)なにとぞ命だけは!!!ご勘弁を!!!!!」
 「(和訳中)てめーの汚い命なんざはなからいらん。うせろ」
 教主は逃げ去り、店長たちは銃撃戦があったと警察に通報。ようやく全ての事態は収束し、俺たちは兄貴たちに叱られながらもホテルに戻ることとなった。
 


なんだか話が大きくなってきました。さてさて、ワールド規格で進行する話の結末は!?・・・・・・余談ですが、この物語を執筆中の「留龍隆」の性格は、
 3割:和泉 愁 2割:前田 実
のこりの4割をあとの四人で分けている、というような感じです。ええ、和泉です。30%が愁君です。でも私は二次元にも興味がいってますので、そこが愁とは違います。・・・・・・いやいや、そんなにヤラシイ二次元じゃないよ。
 そして実のSな部分も入ってたりなかったり。友人いわく、「いや、おまえはMマダオだ」とのこと。
 
 ・・・・・・・・この台詞で死にたくなりました。











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