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バカ(作者)が努力して知恵を身につけていく過程で書いたエッセイ

そもそも「正しい歴史認識」という言葉がおかしい

作者:仁藤欣太郎
 歴史問題。日本人にとってこれほど悩ましい政治の問題もないだろう。というか、国内外を問わずこれを政治の問題にしたがる者が多いことが問題だと私は思う。右左は関係ない。

 それにしても、左右両翼が口にする「正しい歴史認識」という言葉にはどうも違和感がある。百歩譲って「一次資料に基づいた歴史記述を史実と見做す」という意味で用いているのであれば、その違和感も多少は払拭されるだろう。あくまで多少だが。

 しかし彼らの言い分はどうも違うようだ。曰く、日本は正しい歴史認識を持て、その歴史認識は間違っている、というわけだが、そもそも過去の話である歴史というものについて、寸分違わず事実を記述した「たったひとつの正しい歴史認識」などというものがあり得るのだろうか?

 そして歴史に関する問題で、現在の各国政府が賠償を請求、受諾という手続きをとることにどのような意味があるのだろうか? 被害者の気持ちの問題としながらやることは決まって賠償請求、というのもなにか腑に落ちない感じがするのだが。

 また国家レベルの話以前に、個々人の証言を根拠にした「正しい歴史認識」というものに重きを置く人たちがいるが、これはいかがなものか。「私たちは被害者だ」と言われれば、人はその人を責めにくくなるところはあるだろう。しかし相手のことを心情的に責めにくいということと、相手の主張が正しいということは、はたして同じことなのだろうか?

 自ら被害者だと主張する人たちのひとつひとつの証言について、それが嘘偽りのない証言だと、どう証明するのか? 仮に彼らが自分の記憶に基づいて嘘偽りなく証言しているとして、過去の記憶というものが少しも変質することなく、当時のままの鮮明さで脳内に留まり続けるなどということがあり得るのだろうか?

 また仮にこの二つの意味で真実を述べていたとしても、それはその人物の中において真実というだけの話かもしれない。「真実は人の数だけある」という言葉が示すように、人が口にする真実なるものの実体は、その人の先天的な才能と後天的な経験をもとにして判定した真実でしかない。博識な人や知能の高い人ですら間違うことはあるというのに、人間の主観的な判断にそこまでの信頼を置くというのもいかがなものか。

 最後に、この「正しい歴史認識」という言葉を口にする人たちが、歴史に道徳を絡めて正誤を判定しようとしているきらいがある点についてはどうだろう? 果たして歴史的な事実の判定に「道徳観」は必要なのだろうか? まさか「聞き手の道徳感情に訴えかける歴史観」こそが「正しい歴史」なのだとは言うまい。それではただの感情論になってしまう。

 そして嘘の歴史を押し付けられるということをある種の冤罪被害と考えるならば、他者に対し実際には犯していない罪を犯したことにしてしまうということも起こり得るだろう。果たしてこれは彼らの信ずる道徳規範から考えて道徳的なのだろうか? だとするならば、道徳というもの自体に異議を唱える必要性も出てくるだろう。


以上をまとめると、以下のような論点が提出できよう。

・今現在の歴史問題に関する諸々の主張は史学として妥当か?
・過去の歴史の謝罪を現在の金銭的な賠償で贖うという考えは妥当か?
・証言者に(意図的か否かに関わらず)偽証の可能性はないか?
・過去の事象に関する正確な正誤の判定は可能か?
・ある歴史認識について、そう認識「すべき」とする根拠はなにか?
・歴史認識に道徳を絡めることは妥当か?
・また、なんらかの道徳を理由に自身を正義の側に置き、一方的に相手を悪と見做すことは道徳的か?
・そもそもたったひとつの正しい道徳などというものがあり得るか?


 本エッセイで私は自身の歴史観を明確にはせず、曖昧なまま問題提起をしてきた。それは私の個人的な歴史観を正しいと見做すことも、他人に強要することも妥当ではないと考えるからだ。

 とはいえこのような話は、なろうで頻繁にエッセイを投稿している方々にとっては「オイシイ題材」なのではないだろうか? ちょうどお隣の国の新しい大統領が歴史認識について日本に敵対姿勢をとっているし、これはタイムリーな話題でもある。右左問わず言いたいことはいろいろあることだろう。

 この「正しい歴史認識」という奇妙な言葉を使う国や人物がいる限り、上記のような問題提起がすべて棄却されることはおそらくない。その点において、少なくともこのトピックは議論の題材には適していると言えよう。

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