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光のもとでⅡ-1 作者:葉野りるは

紫苑祭準備編(09/14~10/29)

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Side 翠葉 01話

 課題テストと全国模試が終わるとすぐに、体育祭の準備が始まる。藤宮学園では、体育祭のことを紫苑祭しおんさいと呼ぶらしい。そして、こちらのお祭りも一日ではなく、二日かけて戦うのだという。
 紫苑祭も紅葉祭と肩を並べる大きなイベントではあるものの、紅葉祭とは違って外部から客を招くことはなく、大掛かりな警備体制もなければ外部への働きかけもない。
 まず、実行委員を集めた会でくじ引きが行われ、一学年七クラスが赤、白、黒、黄、青、紫、桃の組に分けられる。そして、各組で応援団長ひとり、副団長ふたり、チアリーダーをまとめるリーダーひとりと、サブリーダーふたりが選出され、それらのもとに集結するのだ。
 紅葉祭ではクラス委員と紅葉祭実行委員が中心となって物事が進んだのに対し、紫苑祭では体育委員と紫苑祭実行委員が中心となって物事が運ぶ。
 生徒会の役割は紅葉祭のときとほとんど変わらない。ただ、紅葉祭と決定的に違う部分がひとつ――祭りにかけられる資金が大幅にダウンするのだ。
 各組には決まった額の資金が割り当てられ、その金額の範囲内で以下のものを用意しなくてはならない。
 モニュメントのほか、応援団とチアの衣装、全員分のハチマキ。
 モニュメントは高さ三メートル、横二メートルの大きさという規定があり、それを作るにあたっては、紅葉祭のモニュメント製作に引けをとらない大変さだという。
 応援団の衣装とチアの衣装はすべて手作りであることが条件となり、通例では、女子が自分の衣装と男子の衣装のふたつを担当するとのこと。
 しかし、ここには様々な伝統があるのだ。
 自分の衣装と好きな人の衣装を作ると両思いになれる。また、カップルの場合は末永く仲が続く、といったジンクスがあるため、同じ組に好きな人や彼氏がいない場合は、裏でトレードすることもあるという。
 そういう意味では紅葉祭よりも恋愛色が強いイベントと言えるだろう。ゆえに、盛り上がらないわけがないのだ。
 そして、紅葉祭と同様に加点方法も様々。通常の競技に加え、応援合戦やモニュメントの審査、紫苑祭で一番活躍した人にはMVPが贈られ、それ相応の加点にもつながる。
 そして忘れておきたかった姫と王子の出し物ももちろん存在する。
 今回も、何をさせられるのかはまだ知らされていない。去年の出し物が出し物だっただけに、あれ以上のことはさせられないと思っているけれど、実際のところは何をさせられるのか――。
 最後に、紫苑祭の写真を使ったコンテストがあり、コンテストで入賞した写真は後日編集され、デジタルアルバムに掲載されるのだ。

 今日は生徒会の会計のみが図書室に集まっていた。
 各組から上がってくる、「初回申請書」が揃ったのだ。
 初回申請書は三年生たちだけで話し合って決められる。それが七枚揃って始めて、会計の仕事がスタートする。
 紅葉祭では各組、各部から上がってくる申請書を捌かなくてはいけなかったのに対し、紫苑祭では七枚のみ。そこに記された金額を精査して、ほぼ平均に近い金額を組の口座へと入金するところから始まる。
 追加申請されるものも紅葉祭よりは用途がシンプルでわかりやすいこともあり、審査に時間はかからない。ただし、追加申請した分は組の減点対象になってしまうというルールがある。
 また、生徒会へ追加申請するよりも、組間での資金援助を受けられるほうが減点ポイントが低くなるため、組間での駆け引きも存在する。当然、資金援助をした組には取り分け大きな加点が約束されている。
 紅葉祭と異なる部分はいくつかあるものの、特筆すべき点はこれだろう。
 紅葉祭では金銭が絡む駆け引きや減点が行われなかったのに対し、紫苑祭では駆け引きが存在し、さらには減点が生じる。そしてそれらの管理は会計職に一任されているのだ。
「大きな金はすでに動かした。あとは小さな金額の追加申請しか上がってこない。それらを滞りなく入金するほか、組間で行われる金銭取引を明確にすべく収支報告の計上。それがダイレクトに加点減点につながる」
 ツカサの視線がこちらを向くと同時、
「翠葉ちゃん、大丈夫かな?」
 優太先輩に声をかけられ、「がんばります」とだけ答えた。
 今回も、前回と同じように仕事を私に振ってもらえたのだ。
 なぜなら、運動ができない私はいくつかの競技にしか出ない都合上、組で行われる練習に拘束されることが少ないため、誰よりも自由に動けるから。
「ここまで手放しなのは申し訳ないと思うけど、やっぱ助かるよね」
 優太先輩の言葉に頷いたのはツカサのみ。飛翔くんはどこか面白くなさそうな顔をしていた。
「それに、ずっとってわけじゃないけど、ほとんどの時間を翠葉ちゃんが本部にいてくれるから、引継ぎも最低限で済むし。翠葉ちゃんは何に出るんだっけ?」
「一日目は綱引きと色別パレードと応援合戦。二日目はダンスのワルツと玉入れです」
 綱引きは走ったりするわけではないので参加することができる。そして、色別パレードも応援合戦も同じく。ダンスにおいては、私が参加できるように、とテンポの遅いワルツが選曲されていた。
「五つかぁ……俺たちは全部で十個以上あるからね。俺らが一年のときにやった紫苑祭は、人が入れ替わり立ち代わりで本当に大変だったよ。実行委員の会計も一緒になって集計してたけど、人が多すぎて逆にトラブルの原因になったり。だからだろ? 今回得点管理を生徒会の会計だけでやるようにしたのって」
 優太先輩が話を振ると、ツカサは肯定を示すように頷いた。 
 確かに、全員が競技に参加していたら、その都度引継ぎをする必要があり、ケアレスミスの発生率が上がってしまうだろう。それを防ぐ物理的な方法は、単純に引き継ぎ回数を減らすこと。あまり多くの人間を介さないことだ。
 その点においてはほとんどの競技に出ない私は役に立てそうだけれど、うっかりミスができなくなるというプレッシャーはなくもない。
「何、急に表情硬めてんの?」
 斜め前に座っていた飛翔くんに声をかけられ、苦笑いのみを返すと、
「あんたが集計の要だとしても、あんたひとりに責任があるわけじゃない。そこのところ勘違いしているんだとしたら、どれだけひとりよがりなわけ?」
 どうしてだろう……。フォローの言葉に思えなくもないけれど、飛翔くんが口にすると痛みを伴う。
 でも、もしかしたら飛翔くんも香月さんと同じで悪気はないのかもしれないし……。
 気を取り直すために一呼吸すると、
「追加申請で悩むようなものが上がってくるとは思わないけど、少しでも不安を覚えたら訊いてくれてかまわない。あとは、収支報告の入力さえ間違えなければすべてエクセルが数字をはじき出してくれる。そんなに構える必要はないから」
 ツカサの言葉は正真正銘のフォローで、優しさに包まれたら身体の力がす、と抜けた。
「以上、各組への入金をもってミーティングを終了する」






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