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光のもとでⅡ-1 作者:葉野りるは

約束(09/04~09/12)

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Side 翠葉 02話

 二学期が始まると、翌週には全国模試と課題テストが行われる。今はそれに向けて勉強をしているところ。
 テスト前からゲストルームに人が集まってみんなでご飯を食べる習慣も変わらず。
 プラネットパレスが完成した今となっては、御園生家は総出で参加しているし、結婚した楓先生は果歩さんと赤ちゃんを連れてくることもある。
 みんなでご飯を食べたあとはお勉強タイム。
 ご飯前はツカサの家で勉強するけれど、ご飯のあとはゲストルームのリビングで勉強。
 一見して何も変わっていないように見えるけれど、小さな変化はそこかしこにある。
 今までなら勉強会にはいつだって海斗くんがいた。けれども、今回から日中の勉強会に海斗くんはいない。どうやら、日中は飛鳥ちゃんと勉強することにしたらしい。
 それでも六時からの会食には間に合うように帰ってくるし、夕飯を食べたあとは一緒に勉強している。
「海斗くん、今度こそ勝つからねっ?」
「おっ! 受けて立とうじゃないのっ!」
 そんなやり取りをしていると、
「海斗、一位脱落は許しても二位脱落を許すつもりはない。そんなことが起きようものなら、次回のテスト勉強には立花も連れてこい」
「いいけど、司が飛鳥の勉強を見れると思わないんだけどなぁ……」
「安心しろ。俺が見るのは海斗と翠だけだ」
「じゃ、なんで飛鳥も一緒?」
「海斗の勉強が疎かにならないよう監視するため以外になんの理由が?」
 ツカサの言葉以降、会話が止まってしまったのは言うまでもない。

 ツカサが飲み物を淹れに席を立つと、
「翠葉と司って、ふたりでいるとき何してるの?」
「え……?」
「ほら、司も翠葉もゲームはしないだろ? デートは? どっか行った?」
「ゲームはしないかなぁ……。お休みの日にはちょこちょこ会っているけど、デートは誕生日のときに藤倉市街へ出かけたくらい」
「なんだよそれ、楽しかったの?」
「うん、楽しかったよ」
「ま、翠葉が楽しいって言うならいいけどさ。普段は? 普段は何して過ごしてんの? テレビやDVD見るとか?」
「ううん。お互い本を読んでいるか、勉強しているか……? ときどき一緒にレシピブックを見るくらいかな。お昼を一緒に過ごすときは一緒に料理したり……」
 すると、海斗くんに驚いた顔をされた。
「なんでふたりでいるときまで勉強してんだよっ。さらにはお互い違う本読んでるって、それ楽しいのっ!?」
「えっと……ものすごく楽しいわけではないけれど、落ち着く、かな?」
「もっとほかにもやることあるだろっ?」
「やること……?」
「たとえば……いちゃつくとかいちゃつくとかいちゃつくとか」
「いちゃつくって……何?」
「だからさ、たとえばキ――」
「き……?」
「ナンデモアリマセン。イマノハナシハワスレテクダサイ」
 突然棒読みになった海斗くんの視線の先にはきれいに冷笑を浮かべたツカサが立っていた。
「無駄口を叩く余裕があるのなら、その答案用紙には正しい回答しか並んでいないんだろうな」
「やっ、そのだなっ」
 海斗くんが「勘弁してください」と答案用紙を死守するもむなしく、ツカサにそれを奪われる。
 ツカサは無常にも答案用紙と回答を見合わせ、
「二問不正解。今日は数学以外やらなくていいから」
「んな殺生なぁ~」
「翠は?」
「今答え合わせしているところ。今のところミスはなし。たぶん全問正解」
「がんばってるな」
「うん。今度こそ海斗くんに勝つ心づもりだものっ!」
 そんなこんなの勉強を十時半まですればゲストルームでの勉強はお開き。
 ツカサは海斗くんを先に玄関から出すと、ふたりきりになった途端にキスをしてきた。
「つ、ツカサ……向こうに人いるっ」
「ここにはいない」
「でもっ――」
 キスをしたあと、
「見られるようなドジは踏まない」
 そう言って玄関を出ていった。
 少し強引なツカサにもドキドキするし、廊下の先――扉一枚隔てたところに家族がいる状態でキスをされることにもドキドキした。
「悔しいなぁ……。今、脈を測ったら間違いなく私のほうが脈拍数多い気がする……」
 あまりにも悔しくて恥ずかしくて、私は自室に戻ってラヴィをぎゅっと抱きしめた。

 ベッドの上に転がりここ数日を振り返る。
 あの日、秋斗さんと話して以来、秋斗さんは実におとなしい。
 挨拶と一緒に手が伸びてくることもなければ、ふたりきりになることもない。
 一度マンション内で鉢合わせたことがあるけれど、秋斗さんは挨拶を交わすとすぐに私から離れた。
 あまりにも私に都合よく動いてくれる秋斗さんに申し訳なさと、若干気持ち悪さも感じている。
「……でも、ツカサとの約束は守れているからいいのかな」
 しかし、この気持ち悪さはどうしたら拭えるのか……。
 そもそも、どうしたら秋斗さんは私のことを諦めてくれるのだろう。
 秋斗さんが私を諦めてくれればこんなまどろっこしいことはしなくてもいいはずなのだ。
「迷惑と言われたら」と言っていたけれど、そんな言葉を口にしなくてはいけないのだろうか。
 うんうん唸っていると、携帯がオルゴール音を奏でだした。
 携帯には「藤宮雅」と表示されている。少し緊張しながら通話ボタンを押すと、
『雅です。今、お時間よろしいかしら?』
「大丈夫です。雅さん、帰国されたんですか?」
『えぇ、さきほどホテルへ着いたところなの』
「おかえりなさい! いつまで日本にいらっしゃるんですか?」
『来週の木曜日までなのだけど、その間にお会いできるかしら?』
「実は、来週の月曜日火曜日が全国模試と課題テストなんです。なので、水曜日以降でしたら大丈夫なのですが、水曜日は授業が八限まである日なので、帰宅するのは五時を回ってしまうんです」
『水曜日は……私も六時までは予定が入っているから、それ以降なら大丈夫だわ』
「わ、良かったです!」
『会う場所はどうしましょうか。最初は秋斗さんがホテルまで連れてきてくださる予定だったのだけど、それは都合が良くないのでしょう?』
 ものすごく心苦しい。どこからどう考えても私の自己都合なのだから。
「あのっ、雅さんの都合のいいところまでうかがいます」
 雅さんは少し間を置いてから、
『高校生を夕方以降に連れまわすのは良くないわね。私がそちらへ出向くのでもいいかしら? そのマンションなら談話室を借りることもできるし……』
「談話室、ですか?」
『あら、知らない? 別棟のコミュニティータワーの中にはそういったお部屋が用意されているのよ。訪問者を自宅へ招きたくない人が利用したり、大勢の来客を招くときにも使われるわ』
「初めて知りました」
『ただし、予約は住人しかできないから、談話室の予約は翠葉さんにお願いしてもいいかしら?』
「はい。明日にでも予約します」
 話は早々にまとまり、「お喋りするのは会ってからにしましょう」という雅さんの言葉に通話を切った。






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