転生少年の成長記 外伝 〜真夏の出会い〜
晴れ渡る空、青く輝く海、燦々と輝く太陽、日光により熱く温められた砂浜を走る小さな2つの影。
片方は赤い髪を後ろでくくり、ワンピース型の赤い水着を着ている可愛らしい少女。もう片方は金髪の短髪で、青色の短パンを履き、少女に強引に引っ張られる少年。
少女と少年は仲良く手を繋ぎながら砂浜の海際を走っていた。
「ほら、速く速く! 遅いよぉっ!」
「ま、待ってよ、姉ちゃん! と、止まってよぉ〜」
少年の言葉に少女は急に立ち止まる。その突然の急停止に少年は耐え切れずに顔から砂浜へと突っ込んで行く。
「もう、アレンは体力が無いなぁ〜」
急停止に耐え切れず、頭から砂浜へと突っ込んで行った少年、アレンを見てはぁ〜、とため息を吐く少女、エレネ。その言葉を聞いていたアレンは砂浜から頭を引っこ抜き
「体力馬鹿の姉ちゃんと一緒にしな……痛!」
エレネに対して文句を言おうとしたが、エレネに叩かれるアレン。2人は現在8歳の同い年で実際にはアレンの方が先に生まれているため兄なのだが、気の強いエレネに逆らう事が出来ずに、弟として接している。
「そんな事よりアレン。今日はパパもママたちもいなくて2人っきりだから、いっぱい遊ぶわよ!」
目をキラキラとさせてそう言うエレネ。普段は母親たちから礼儀作法や勉強などをさせられているエレネは色々と鬱憤が溜まっており、今日はそれを発散するため、勉強の途中で抜け出してきたのだ。アレンはその被害者である。
アレンは魔法の才能があり、その中でも特に貴重な魔法『空間魔法』も習得しているため、エレネに駆り出されたのである。
『空間魔法』の中には一度行った事のある場所なら移動することが出来るという『転移』の魔法があるため、エレネにそれを使って海に連れて行くように言われたのだ。(物理で)
「でも、たった2人で何をするのさ? 僕に出来る事なんて、精々砂でお城を作るぐらいだよ?」
彼の手にかかれば普通の家より立派な砂の城が建つのだが、それが普通だと思っている彼は、その事に気づいていない。そして、それを見慣れているエレネも、砂の城には飽きているらしく、腕を組みながら考える。
「うーん、そうだねぇ〜、何か面白い事……あれ? 何しているんだろ?」
2人の視線の先には、2人よりかなり年上の青年たちが何かを囲うようにして立っていた。興味に惹かれた2人はその青年たちの元へと行く。そして見てみると
「おらおら! へへっ、どんくせえやつだぜ!」
「ほら、悔しかったら攻撃してみろってんだ」
青年たちが1匹の海亀を囲んで虐めていたのだ。亀は逃げようにも仰向けになって転がっており、甲羅が下になってしまっているため、ジタバタと暴れるだけで逃げられない。
何とか腹を下にしようと動くのだが、それを青年たちは邪魔をする。正義感の強いエレネは、その行為を見過ごす事は出来ずに、その場に落ちていた木の棒を拾い
「何をしているのよ!」
と、青年たちを怒鳴る。当然怒鳴られた青年たちはエレネたちの方を見てから、ニヤニヤと笑みを浮かべながらエレネたちを囲んだ。
「これは可愛い嬢ちゃんと坊ちゃんだな。こういうのが趣味なところに売ったら高く付くぜ!」
「そうだな、あの亀よりこいつらの方が良さそうだな!」
と、好き勝手な事を言う青年たちに、エレネは我慢の限界になり、1番近くにいた青年Cの目の前に移動し、下から木の棒を振り上げた。ヘラヘラと笑っていた青年Cは、避けるどころか、迫ったエレネに気がつく事もなく顎を殴られ、そのまま気を失った。
その事を笑いながら見ていた他の青年たちは笑みを浮かべたまま固まってしまったが、そこにアレンが土魔法を発動する。下にある砂を利用して青年たちを砂の縄でぐるぐる巻きにしてしまったのだ。
「うわ〜、やっぱりアレンの魔法は便利だね〜。こんな簡単に捕らえられるなんて」
「姉ちゃんも覚えたらいいじゃん。土魔法使えなかったっけ?」
「私は無理。そういうちまちましたものは苦手。それよりも亀さんを助けよう!」
エレネは縛られてバタバタとする青年たちの横を通り過ぎて仰向けに倒された亀を助ける。助けられた亀は助けてくれたエレネたちへと頭を下げた。それを見てびっくりした2人だったが、礼されたら礼を返すと親から習っていたので、2人とも頭を下げる。すると
『おおっ、これは小さいのに礼儀正しい子たちじゃ。それに2人とも精霊殿に好かれておる』
と、頭の中に声が響いてきたではないか。突然の声に2人は誰かいるのかと周りを見渡していると
『こっちじゃこっち、先ほど助けてくれた亀じゃよ』
と、再び話しかけてくれた。ようやく誰が話しているかわかった2人は亀を見る。心なし亀が笑っているようにも見える。
『いや〜、お主たちのおかげで助かったわい。姫様からのお使いで地上の世界に来ていたら、嵐に巻き込まれての。こんなところまで流されてしまったの。その時に運が悪く甲羅が下で流されたため、さっきのように逃げる事もできず、あの人間どもに虐められとったわけじゃ』
しみじみと先程の事に至るまでの話を話すが、そんな事に特に興味がない2人、中でも更に興味が薄いエレネは、速くしないと遊ぶ時間が無くなってしまうって事で
「それじゃあ、亀さん、じゃあね?」
と、立ち去ろうとする。アレンは喋る亀に興味がそそられるが、エレネの言う事を無視する訳にもいかないので、泣く泣く我慢する事にした。
これでお別れだと2人は思ったのだが
『ま、待ってくだされ、助けて下さったお礼に是非城へ招待したいのじゃ!』
と、亀が言ってきたのだ。そんな面白そうな事に目がないエレネは
「よろしくお願いします!」
と、聞いた瞬間に元気良く手を挙げていた。軽く頭を抱えるアレンだが、このような事が初めてってわけではないので、直ぐに気を取り直して、その城がどこにあるのかを聞いたりする。
亀の話によると、その城とやらはどうやら海の中にあるらしく、普通の人間なら絶対に潜れない場所にあるらしいのだが、この亀がいれば、とある魔法を使っていけるようになるらしい。
エレネはその未知なる城について興味を持ち、アレンは本来なら潜れないのに、潜れるようにする魔法に興味を持ち、2人揃ってワクワクとしていた。
それから、城に向かうの話がトントン拍子に進んでいき、気が付けば2人は亀の背に乗っていた。
『それでは出発するぞ。しっかりと捕まるのじゃぞ?』
「うん! よろしくね、亀さん!」
エレネが笑顔で言うと、亀は魔法を唱える。すると、エレネとアレンの体が淡い青色に輝き出したのだ。魔法がかかったのを確認した亀は、砂浜を走り出す。そして着水。
真っ直ぐと海の中へと迷いなく進んで行く亀に、エレネはワクワクしながら、アレンは本当に大丈夫なのかドキドキしながらも亀の背中に引っ付く。そして、エレネとアレンの体が水に入ると
「うわぁ〜、凄い! ちっとも苦しくないよ!」
「うん! 普通に呼吸も出来るし、話もできるなんて!」
『ふぉっふぉっ! この魔法はマーメイド族にのみ伝わる魔法での。我々も大昔に姫から教えて貰ったのじゃ』
それから楽しく亀と話をするエレネとアレン。しかし海の中と言ってもそこに住んでいるのは普通の魚だけではない。話せる亀のような不思議生物もいれば当然
「シャアアアアア!!」
『ぬっ! エレファントシャーク!』
像のような鼻を持つ海の魔物、エレファントシャークが襲って来たのだ。亀に向かって鼻を伸ばしてくるエレファントシャーク。亀は何とか避けようとするが、鼻は途中で曲がって亀を追いかけてくる。これは捕まる! と思った亀だが、次の瞬間
ブシュッ! と、エレファントシャークの鼻先が縦に2つに割れた。亀は目を見開いて驚くが、アレンは特に気にする事なく海の中を眺めている。それをやった張本人は
「もうっ! せっかく楽しく綺麗な海を眺めていたのに! 許さないんだから!」
右手に剣を持って怒っていた。せっかくの楽しい気分を邪魔されてご立腹のようだ。エレネはそのまま剣を振る。風を纏わせた剣を振ると、刀身から斬撃が飛ぶ。
初めて見る攻撃だったが危険だと感じたエレファントシャークは、エレネの斬撃を避けるが、次々と放たれる斬撃に避けるのが間に合わずに、次々と切り裂かれて行く。そして、あっという間に細切れにされてしまった。
『おおっ、エレネ殿は優しくて可愛らしいだけでなく、とても強い戦士でもあるのじゃな!』
「ふふんっ! そうなのです! 私は可愛くて優しくて強いのです!」
亀の言葉に機嫌良くなったエレネは次々と襲ってくる魔物たちを次々と倒して行く。そして海に入ってから30分ほど
「うわぁ〜、綺麗〜!」
「これは凄いや」
2人は見た事がない程の幻想的な世界に感嘆の声を漏らす。色とりどりの珊瑚群に、色鮮やかな魚たち。それに綺麗な歌声で歌うマーメイドたち。
『ほっほっほ! ここが我らの住処である竜宮城である。いかがじゃ?』
「りゅ、竜宮城って、アレン!」
「うん! お父さんのお話にあったやつだ! 本当に存在してたんだ!」
2人は父親が聞かせてくれた寝物語の中に、竜宮城が出てくる話があったため、実際に存在する事に大興奮。亀の背中ではしゃぐ2人に亀もにこにこと嬉しそうに竜宮城へと向かう。
亀が竜宮城の門をくぐると、竜宮城へと続く通路にはマーメイドたちが並ぶ。
「人魚って男の人もいるんだねぇ〜」
『ほっほっ、それはもちろんじゃ。男と女がおらなければ、新しい命は生まれんからの』
「あっ、それってたまにパパとママたちがしてるやつでしょ! みんな裸で!」
「だ、駄目だよ姉ちゃん! そんな大声で言っちゃあ!」
亀はエレネたちの言葉に苦笑いをする。亀は何も言わずにそのまま進むと、奥には他のマーメイドたちとは違う服装をしたマーメイドが佇んでいた。
「爺! 帰ってくるのが遅いので心配しましたわ!」
『おおっ、姫! 姫自らお出迎えとは、この爺感激で涙が溢れそうです!』
そう言って姫と呼ばれるマーメイドの下まで行く亀。姫と呼ばれたマーメイドはそのまま亀を抱き締める。
「うわぁ〜、綺麗な人だね〜、アレン……アレン?」
「……綺麗だ」
亀を抱き締めるマーメイドは、綺麗な水色の髪をしており、胸だけを隠すような服を着ておりるほっそりとした綺麗なお腹は丸出しで、鱗に覆われた尾ひれを持っている。
年齢は14.5歳ほどで母親たちほどではないが、とても綺麗なマーメイドに、エレネは感嘆の声をあげて、アレンの方を見ると、アレンは固まっていた。
「あら、彼らたちは?」
『彼らは地上で人間にいじめられていた私を助けてくださったのです。お礼にと竜宮城へとご案内いたしました』
「まあ! それはおもてなししないといけませんわね! お二人とも爺を助けてくださってありがとう。私の名前は、マリーシア・アトランティシア、マーメイド族を治める長の娘ですわ」
「私の名前はエレ……」
「ぼぼ、僕の名前はアレン・ランウォーカーです! 年齢は8歳、特技は魔法です! 僕はあなたに一目惚れしました! 僕とお付き合い下さい!」
そう言って頭を下げながら手を伸ばすアレン。エレネはあちゃーと額を押さえるが、周りのマーメイドたちはアレンの言葉に固まってしまう。
それは、マリーシア姫に対するお付き合いの申し込みのせい……ではなく、アレンの家名にあった。アレンの家名はこの世界で知らない者がいないほど有名な家名だったからだ。
綺麗なマリーシア姫を見てテンパってしまったアレンは、そんな事御構い無しにフルネームで告白してしまったのだ。
じわじわとみんなの中にランウォーカーという名前が浸透して行くと、全員が跪く。マリーシア姫も例外ではなかった。
その事にようやく気が付いたアレンは、顔を真っ青にしてみんなを立たせるのに20分近く経つのだった。
◇◇◇
「ま、まさかランウォーカー家の王子様と王女様がいらっしゃるなんて、早くわかっていましたらもっと豪勢に準備いたしましたのに」
「い、いや、僕たちも突然来てしまってごめんなさい。それで、さっきの返事なのですが……」
「そ、それなのですが、わ、私には許嫁がおりまして。申し訳ないのですが……」
申し訳無さそうに顔を俯かせるマリーシア姫に、アレンも残念そうに顔を俯かせる。我関係無しと目の前に次々と運ばれる魚料理を次々と頬張るエレネは
「マリーはその許嫁とは仲が良いの?」
と、マリーシア姫に尋ねる。既に愛称で呼んでいるあたりエレネの人付き合いの上手さが伺える。エレネの質問にマリーシア姫は
「……仲良くは無いです。お父様が種族のためだと決めた政略結婚ですから」
「くくくっ、私は愛しているがな!」
マリーシア姫の言葉に被せるように響く声に、部屋へと入って来た男たち。亀は男たちを睨み、周りのマーメイドたちも物凄く嫌そうな顔をする。
「これはこれはランウォーカー王国の王子様。私の名前はシャークスと申します。残念ですがマリーシアは私の将来の妻、諦めて下さい」
サメの人魚であるシャークスは、マリーシアとあまり変わらない年齢で、同年代の中でも体が大きい。尾ひれも合わせれば既に190cmほどの身長になる。
そんな高さから見下ろされるアレンは悔しそうに歯をくいしばる。親が決めた結婚ならアレンが口を挟む事は出来ない。しかし
「勝てば良い」
と、再び部屋に響く声。新しく入って来たのは、シャークスより大きなマーメイド。マリーシア姫の父親であり、マーメイド族を治める長であるグスタフ・アトランティシアである。
全員が直立不動になる中、動いているのはマリーシア姫とシャークス、アレンに、魚料理を口いっぱいに入れているエレネだけだった。
「それはどういう事ですか、族長!」
「言葉の通りだ。シャークス、お主とアレン殿が戦い、勝った方にマリーシアが引っ付けば良い」
「し、しかし」
「なんだ、シャークス、自信がないのか?」
グスタフのこの言葉が決め手となった。これにより、マリーシアを賭けた戦いが決められる。アレンとシャークスは誓約書を書かされる。どのような大怪我を負っても責任は問わないと。
場所は、海底闘技場で行われる。そこには竜宮城にいたマーメイドたち全員が集まって、勝負の行く末を見届けようとしている。
海底闘技場の中心には杖持ったアレンと、槍を持ったシャークスに、審判が立つ。観覧席では、羨ましそうに見るエレネに、グスタフ族長、亀に、心配そうに手を合わせるマリーシア姫がいた。
「エレネ様、アレン様は大丈夫なのでしょうか? 体格も倍以上大きくて、年齢も差があってそれから……」
「んー、アレンなら大丈夫だよ。なんたって……英雄の長男だもん!」
◇◇◇
「逃げるなら今のうちですぞ、アレン様。私は勝負事には手加減が出来ないタチでしてな。怪我をさせるかもしれませんぞ?」
まるで負ける気は微塵も無いと余裕の笑みを浮かべているシャークス。それに対してアレンは大きく深呼吸をするだけ。そして
「僕は負けないよ。ランウォーカーの名前を背負っているんだ。君なんかに負けないさ」
そう言い杖に魔力を纏わせる。杖に様々な属性を纏わせるアレンに、シャークスはここに来て恐怖を覚える。そして同時に
「始め!」
審判の合図がかかる。審判の声に反応したシャークスは、アレンへと向かおうとしたが、アレンの姿は既に無かった。
「しっ!」
そして、アレンの声が聞こえると同時に、シャークスの顎に激痛が走った。アレンがシャークスの懐に入り、下から杖を振り上げたのだ。アレンの杖はシャークスの顎を打ち上げ、シャークスの口からは血と一緒に歯が飛び散る。
アレンの攻撃はそれだけでは止まずに、杖を回転させながら跳び、シャークスの右肩口から杖で叩きつける。
シャークスは当然反応する事が出来ずに地面に叩きつけられ、次には腹部に痛みが走る。
地面に着地したアレンが回転しながら杖でシャークスの腹を殴ったのだ。
殴られた勢いで壁際まで吹き飛ぶシャークス。壁にぶつかり海底闘技場は大きく揺れる。壁にぶつかったシャークスは、そのまま気を失い目を覚ます事は無かった。
アレンはそのまま大きく息を吸い、マリーシア姫の方を見る。そして
「マリーシア姫! 僕はあなたに一目惚れしました! 僕と付き合ってください!」
と、観衆みんなの前で大声で告白したのだった。その言葉にマリーシア姫は、顔を赤く上気させて、アレンと同じように大声で
「はい! よろしくお願いします、アレン様!」
こうして、アレンに恋人が出来たのだった。この事が後で大陸全土を揺るがす問題になるとは、この時は子供のアレンは、思いもしなかったが。
◇◇◇
「ランウォーカー女王には、後日私が挨拶しに行かせてもらおう」
「はい。僕もここにはいつでも来れますので、そ、その、マリーシア姫、また会いましょう」
「ふふっ、そんな余所余所しくなくてよろしいですわ。私の事はマリーとお呼び下さい、旦那様!」
顔を赤くさせてイチャイチャとイチャつく2人を見てエレネはため息を吐くが、弟が幸せそうな顔をしているのは嬉しい。ただ、このまま放っておくと帰られないので
「それじゃあ、アレン帰ろ!」
と、アレンに声をかける。アレンは頷き名残惜しそうにマリーシア姫を見る。
「うん! またね、ま、マリー」
「はい!」
アレンとエレネは、アレンの転移でそのままランウォーカー王国へと帰ったのだった。
帰った場所はランウォーカー王国の王城の一室、2人が勉強に使っている勉強部屋である。海に行って色々な事があった2人は、興奮して色々と思い出しているが、とある事を忘れていた。それは
「「どこに行っていたの、あなたたちは!」」
勉強部屋で待っていた2人の母親だった。片方はアレンと同じ金髪で、丸いお尻ぐらいまで伸びた髪をしている女性で、もう1人は、エレネと同じ赤髪でポニーテールをしている女性だ。
2人はアレンたちが帰って来るのならこの部屋に帰って来るだろうと予想して、待ち伏せをしていたのだ。
勉強をサボって海に行っていた事を思い出した2人は、直様転移で逃げようとしたが、逃げる前に捕まってしまった。
2人の母親は、今では国の女王とその補佐をしているが、昔は父親と共に戦争を生き抜いた実力者。まだ子供であるアレンたちが、魔法を発動する前に捕まえる事なんて簡単な事だった。
「2人にはこれから」
「お尻ぺんぺんの刑ね」
「い、いやぁ〜〜〜」
英雄の息子、娘であるアレンもエレネも母親たちの前ではごく普通の子供であった。その日の夜は、お尻を押さえながら廊下を仲良く歩く王子と王女の姿があったとか。
夏の特別編という事で書いて見ました。途中からあまり夏感は無くなってしまっていますが、楽しんでいただけたらと思います。
今回登場したマリーシア姫は「英雄の妹」でも出て来る予定ですので、よろしくお願いします!