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  人間村 作者:六角オセロ
迷い大人のブルース
三十分ほどで、二人はアルパカ牧場を出た。アニーは、少し厳しい顔になっていた。
「いよいよ本丸です。」
「はい。」
中年の男がやって来て、二人の前で立ち止まった。
「すみません。」
中年の男が、アニーに尋ねてきた。アニーは親切そうに返事をした。
「何でしょうか?」
「実は、道に迷いまして。」
「どちらへ?」
「それが分からないんです。」
「えっ?」
「それが、さっぱり分からないんです。」
「えっ?」
「どこに行きたいんですか?」
「それが分からないんです。」
「それが分からない?」
「はい。」
「じゃあ、教えようがありませんわ。」
「じゃあ、日本人のルーツを御存知ありませんか?」
「日本人のルーツ?」
「はい、日本人の起源です。」
「専門家ではないので、あまり知りませんけど、モンゴリアンというくらいですから、モンゴルじゃあないんですか?」
「そうですか、じゃあ日本人は日本に初めからいたんじゃないんですね。」
「初めからいたのは、アイヌの人かも知れません。」
「アイヌの人は初めからですか?」
「初めからからではないかも知れませんけど、専門家ではないので、よく分かりません。ごめんなさい。」
「どうしたら分かるんでしょうかねえ?」
「さ~~、DNAとか調べると分かるんじゃないんですか?」
「DNAですか、ありがとうございます。」男はぺこりと頭を下げると、去って行った。
男が立ち去ると、アニーは首を傾げていた。
「何かしら?」
姉さんは、少し口を尖らせながら、男を見ていた。
「変な人ですね。行くところが分からないなんて、どういうことかしら?」
「ホームレスの人でもなかったようだし…」
「ホームレスの人も、ここに来るんですか?」
「来ます。特に最近は、涼を求めて。」
「涼を求めて?」
「下界は暑いんですよ。」
「そういえば、今年もエアコンのない人が、夏に沢山死んでますねえ。」
「寒さは、何とか防げますけど、暑さはねえ…」
「エアコンがないと、ホームレスは死にますねえ。」
「いよいよエアコンなしでは生きられなくなってきましたね。」
「恐ろしいことですねえ。」
「多くの二酸化炭素を出してる金持ちは楽して、二酸化炭素を出してない出してないホームレスは死んでるんですよ。皮肉な世の中ですよ。どっちが正しい人たちなんでしょうねえ。」
「う~~~ん、なるほど、アニーさんは考えが深い!」
頭脳の単純な姉さんは、感心して頷いた。姉さんは、ふと空を見た。
「どうなるんでしょうねえ、これから。早く温暖化を、人間の英知で止めないと。」
「昔は、エアコンなしでも生きて行かれたんですけどねえ~。」
「そうですねえ。」
「体脂肪率をアフリカ人なみにすれば、エアコンなしでも生きて行けますけど。」
「それは無理ですよ。」
「そうですねえ、汗腺の数も違うし。」
「えっ、そうなんですか?」
「アフリカの人たちは、汗腺の数が多いんです。」
「そうなんですか~。」
アニーは腕時計を見た。
「行きましょう!」
「はい。」
「あそこに見えてるのが、人間村研究所です。」
一階建ての長屋風の木の建物だった。姉さんは、あまりにつまらい建物に、がっかりした。
「ここが研究所ですか?」
アニーは、建物の方には行かずに、アルパカ牧場の牧場塀に向かって歩き出した。
「こっちですか?」
「正面からは偵察できませんよ。」
「はい。」
アニーは、背中にしょってるリュックから、スケッチブックを取り出した。
「はい。これ葛城さんのです。」
姉さんは黙って受け取った。
「これで怪しまれませんね。」
「だといいんですけど。」
二人は、牧場と研究所の良く見える少し高台に陣取った。アニーは、芝生になっているところに、膝を立てて座った。
「ここにしましょう!」
「はい。」
「とにかく、描く振りをしましょう。」
「はい。」
「葛城さん、絵は上手なんですか?」
「いや~、あんまり。」
「わたしも、あんまりなんですよ。」
二人は、お互い顔を見合って笑った。
高野山に、初秋の気持ちいい乾いたロックな微風が吹いていた。
「アニーさんは、どうやってここに来たんですか?」
「電車で来ました。」
「いつもなんですか?」
「はい。アメリカでは電気自動車で移動してるんですが、日本は狭くて渋滞だらけなので、いつも電車なんです。限られた地域内では、セグウェイや電動自転車なんかも使ってます。」
「そうなんですか。」
「日本の渋滞は身体に悪いです。」
「そうですねえ。」
「病気になるために乗ってるようなものです。」
「そうですねえ。このままでは、日本人はみんな、渋滞イライラ病になってしまいますね。」
「もうなってますよ、目が血走ってます。狭いのに、自動車が多すぎるんですよ。」
「そうですねえ。」
「無秩序な便利さは、不便になるんです。」
「無秩序な便利さは、不便になる?」
「保土ヶ谷龍次の言葉です。」
「龍ちゃん、しゃれたこと言うな~。」
「この前は、用事があって、バスで来ましたけど。」
「下からバスがあるんですか?」
「少ないですが、あります。」
「さすがに、高野山に来る人は少なかったですよ。」
「そうですか。ここは、凡人には用のない聖地ですからねえ。」
「そういうことみたいですね。」
「こんなにいいとこなのに。」
二人は喋りながらも色鉛筆で絵を描いていた。不慣れな手つきで一生懸命に描いていた。
後ろに男が立っていた。
「二人とも、下手な絵だなあ~~。」
二人の絵を見て、男は笑っていた。


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あんた、頭が硬過ぎるよ!
">
作画:11さん(どうもありがとう!)


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