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  人間村 作者:六角オセロ
タイガーマスク
熊さんが出てくると、みんなは野球を止めて、仕事を始めていた。ポンポコリンとサキは集会所に戻り、熊さんと紋次郎は、鳥小屋を作っていた。腰の悪い杉本だけがベンチに座っていた。
「熊さん、俺も何か手伝おうか?」
「いいよ、杉さん。ゆっくりと休んでなよ。」
「そうかい。」
正男と真由美は、まだ二人で野球をしていた。ボールが転がってきた。杉本は拾った。
「なんだ、ビニールで巻いてあるだけのボールか?」
杉本は、ボールを取りに来た正男に手渡した。そして熊さんに尋ねた。
「熊さんが作ったの?」
「そうだよ。」
「中は紙か?」
「そうだよ。」
「どっかで、ゴムのボール、売ってるんじゃないの?」
「あれは駄目、飛びすぎるんだよ。」
「飛びすぎる…」
「ああ、飛びすぎて練習にならないよ。」
「そうか~~、じゃあ、プラスチックとかビニールのがいいんだな?」
「それだと、いいかもな。」
「分かった!」
杉本は、集会所の方に向かって歩き出した。熊さんが呼び止めた。
「杉さん、どこに行くんだよ?」
「集会所の物置を探してくるよ。」
「そんなのないよ。あるのは、本物の軟球とバットとグローブだけだよ。」
「テニスのボールだったらあるんじゃないの?」
「あれも駄目、飛びすぎる。」
「そうか…、高野山には、そんなのは売ってないしなあ~。」
「俺が、後から買ってくるよ。クルマで下に行って。」
「下に行くの?」
「ひよこを買いに行くんだよ。」
「あっ、そう。だったら大きいのを買ってくればいいのに?」
「高いんだよ。それに直ぐに大きくなるし、子供の情操教育にもなるだろう?」
「そうか、なるほどな。熊さんは顔はごっついが心は優しいな~。」
「なんだよ~、ひどいな~!」
「悪い悪い!」
「杉さんの好きな天野の濁り酒も買ってきてやるよ。」
「えっ、そう。ありがとう!」
「退院祝いの、おごりだよ。」
「えっ、そうなの!?」
「同じハウスの住人だからな。」
「ありがとう!」
「そのかわり、買ってきたら、俺にも飲ませてよ。」
「ああいいよ。」
真由美が大きな声で叫んだ。
「熊さ~~ん、今何時~~?」
「一時半だよ。」
「じゃあ、わたし、もう行くわ~!」
正男は、寂しい顔になった。「もう行っちゃうの~?」
「まったね~~!」
真由美は、「商売、商売!」と言いながら、赤い小さなアルミのリアカーを引いて去って行った。
正男は、しきりに手を振っていた。「ばいば~~~い!」
杉本は、真由美を見ながら、「真由美ちゃんは、たくましいな~~。」と呟いた。
ラジオでは、タイガーマスクのニュースが流れていた。熊さんは聞き入っていた。
「また、伊達直人か~。俺の世代のアニメだな~~。」
杉本も聞き入っていた。
「懐かしいな~~。」
「心の優しいやつが、けっこういるんだな~~、涙が出てくるな~。」
「そうだな…」
二人は少し涙ぐんでいた。
歌の好きな杉本が、タイガーマスクのエンディングの、みなしごのバラードを歌いだした。

 温かい人の情けも 胸を打つ熱い涙も 知らないで育った僕は みなしごさ~ ♪
 強ければ~ それでいいんだ 力さえあれば~いいんだ~ ♪
 ひねくれて~ 星を睨んだ~ 僕なのさ~~ ♪
 あ~あ~~ だけど~ こんな僕でも~ あの子等は慕ってくれる~ ♪
 それだから みんなの幸せを祈るのさ~ それだから みんなの幸せを祈るのさ~ ♪

熊さんも思い出していた。
「その歌、親父と喧嘩して、よく歌っていたよ。」
「俺も、そうだよ。」
「そういう時代だったよな~~。」
「昔はよく、戦争時代の親父に反抗してたよな~。」
「戦争の過酷体験を言い出したら、何も言えなかったな~。」
「そういうことだ。」
「あれは、ずるいよな。」
「考えてみると、反抗できるだけ幸せだったのかも知れんな~。」
「うん?」
「親に反抗もできない子供がいるってことだよ、児童虐待の子供たちのように。」
「反抗もできない地獄を体験してきたってことか、可哀想にな~~。」
「どういう理由があっても、そういう親は、人間のクズだな。」
「親になる資格がないってことだな。」
「熊さん、俺たちも何かを送ろう!」
「何を?」
「そうだな~~?」
「近くの児童養護施設を調べるのが先決だな。」
「全国は無理だからな。」
「とにかく、近くの子供から助けるのが大切だよ。」
「そうだな。そしたら全国に広がるな。」
「そういうこと、近くの人で余裕のある人が援助すればいいんだよ。」
「そうだな。」
「子供は、みんなの未来の財産だよ。」
「そいうことだ。」
「調べるのは、インターネットだな。」
「そうだ、インターネットだ。」
「送ろうったって、先立つものが要るぞ。」
「人間村には百人いるから、一人千円集めたら十万円になるよ。」
「それは、いい考えだな~。」
「中古の子供用の自転車とか集まるんじゃないか?」
「それもいいな~。」
「とにかく、近くの施設を調べて、何が不足してるか調べよう!」
「そういうのは、サキちゃんに調べてもらおう!」
「そうだ。熊さん、今から集会所に言って、サキちゃんに頼んでくるよ。」
「ああそう。じゃあ頼むよ。」
「龍次さんは、何て言うかなあ?」
「あの人は、お坊ちゃんの御人好しだから賛成するよ。」
「そうだな。」
杉さんは、足取りも軽やかに、集会所に向かって歩き出した。咲いたばかりの、秋の幼い小さな花が風にも負けずに、生きるために懸命に揺れていた。




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あんた、頭が硬過ぎるよ!
">
作画:11さん(どうもありがとう!)


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