エピタフ
正午の鐘の音が、ゴ~ンゴ~ンと高野山に鳴り響いていた。それは、まるで天にも達する大巨人が天空を叩くように。アキラは呟くように口を動かしていた。
「兄貴、お昼だよ。」
「そのようだな。」
二人に不安がよぎった。昼食が来ない…
荷物モノレールの音がして、二人は首を少し回した。
「兄貴、マイケルが帰って来たみたい。」
「そのようだな。」
そのようなマイケルが、無事に帰って来た。
「ごめん、ごめん!遅くなっちゃった!」
モノレールの運搬車が止まると、マイケルは微笑みながら降りてやって来た。左手に弁当を大事そうに持っていた。
「そこで、食堂の女の人に弁当を渡してくれと頼まれたよ。」
マイケルは、弁当を二人に渡した。「はい!」
ショーケンは、軽く頭を下げて礼を言った。「どうもすみませんね~、わざわざ。」
「いいんですよ、ここまで持って来るのは大変ですから。」
猫が寄ってきた。マイケルの足元でじゃれていた。マイケルは軽く撫でた。
「腹が減ったか、ソクラテス?」
ソクラテスは、ニャ~~ンと鳴いた。
「今、おまえの好きなサンマを焼いてやるからな。」
アキラが質問した。「ソクラテスって言うんだ?」
「そうです。」
「ソクラテスって、確か、偉い人の名前だよね。」
「ギリシャ時代の有名な哲学者です。」
「どうして、そんな名前をつけたの?」
「彼は、いつも無知の知を教えてくれるんです。」
「無知の知って?」
「自分が何も知らないってことを知っているってことです。」
「知らないことを知っている?」
「ほんとうは知らないのに、知ったようなことを言うなってことです。」
「な~~るほどね!今時は、そういう奴多いからね。それが、無知の知って言うのか。」
「そうです。」
「大変、勉強になりました。」
「ただ単に、日々、反省しながら生きてるだけですよ。」
「反省しながら?」
「そう。毎日無の視点で見てるんです。そしたら、心が楽になるんですよ。」
「へ~~~え?」
「あ~~、また下らない話しをしてしまった!」
彼は、大きなレジ袋を木のテーブルの上に置いた。
「どうぞ、お食事をなさってください。」
そう言うと、建物の階段を登り、ドアを開けて中に入って行った。建物は、一メートルほどの木造の高床式の建物だった。大きな柱が六本あった。
出前の箱のようなものを持って降りてきた。まさしく、出前の箱だった。テーブルの上に置いた。
バーベキューコンロに点いていた小さな炭火を起こすと、レジ袋の中からサンマを取り出して焼き始めた。猫のソクラテスがやってきた。
「もうちょっと待て!」
マイケルは二人に呼びかけた。「お茶は、自由に飲んでください。」
ショーケンが「はい。」と答えた。
二人は、弁当を食べ始めた。小鳥が、騒がしくさえずっていた。
「あっ、そうだそうだ!」と言いながら、マイケルがやって来た。出前の箱を開けて、お椀を二つ出した。
「この中に、粉末の味噌汁が入ってます。お湯を注いで召し上がってください。」
そう言うと、急いでサンマのところに戻って行った。
アキラが「じゃあ、遠慮なく!」と言って、ヤカンの湯を取りに行った。
サンマが焼けると、マイケルは皿に載せテーブルに持って行き、出前の箱の中からセラミックの御櫃を取り出した。目を閉じ合掌すると、たんたんと静かに、まるで忍者のように食事を始めた。
アキラは御櫃を見ていた。「これ、何で出来てるの?」
「セラミックです。お客さんが来たときには、電子レンジで温めらえるんですよ。」
「電子レンジって、ここ電気あるの?」
「ありますよ。ちゃんと通ってます。」
「ああ、そうなんだ!」
食事が終わると、マイケルは二人に言った。
「わたしの部屋の隣は、休息室になっているんですよ。」
建物には、階段だ二つあった。
アキラが答えた。「休息室?」
「どういう訳か、お客さんが、ときどき来るんですよ。それで作ったんですけどね。よろしかったらどうぞ。簡易ベッドも二つありますよ。」
「簡易ベッド?」
「はい、ちょっと硬いですけど、わたしは、これから一時まで寝ますので。」
マイケルは二人に軽く会釈すると、建物の中に入って行った。
「兄貴、俺たちも、ちょっと横になるか?」
「そうだな。」
二人は、隣の階段を登り、ドアを開け中に入って行った。中には大きな窓があった。風の音はなく小鳥の声だけがが聞こえていた。
「お~~いいねえ~、兄貴!」
「なかなかいいな。」
「兄貴、腕時計の目覚ましを一時にセットしといたよ、おやすみ!」
アキラは、そう言うとイビキをかき始めた。
「もう寝たのかよ、早えな~~!なんちゅうやっちゃ!」
二人は寝入った。起きて外に出ると、マイケルは窯の中から、何かを持ち出そうとしていた。
アキラが尋ねた。「何してるの?」
「あ~~~、ちょうど良かった。片方を持ってくれない?」
「ああ、いいよ。」
石みたいに硬かった。「中は空洞だから、そんなには重くはないよ。」
「はいよ!」
「落とさないように、気をつけてね。」
「分かった!」
それは、一メートルほどの四角い陶磁器だった。近くに、それの台みたいな陶磁器があった。
「それの上に、静かに下ろしてください。」
「あいよ!」
ちょうど合わさって、ぴたっとはまった。陶磁器には、アルファベッドの活字体で、何か書かれてあった。
「何、これ?」
「マイケル・ジャクソンのエピタフです!」
「エピタフ?」
「 詩で書かれた墓碑銘です。」
ショーケンがやって来た。
「エピタフ!キングクリムゾン!」
「さすが、ショーケンさん!よく御存知で!」
マイケルとショーケンには、キングクリムゾンの荘厳なる名曲エピタフが流れていた。雲が静かに流れていた。高い上空を大鷲が、舞うように大きく静かに飛んでいた。
二人は、お互いに同じ匂いを感じ、寂しく微笑んでいた。二人の心の中に、大菩薩と同じ虚しい風が吹いていた。
ドラゴンルーレットをやってみる 六角オセロの掲示板
六角オセロにメール あんた、頭が硬過ぎるよ!

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作画:11さん(どうもありがとう!)
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