FILE 8
両者は走っていた。もちろん、奴等から逃げるために。そして友と会うために。
「よし!目的地まで着いたぞ!」
先に着いたのは官次郎達だった。目的地はいたって損傷はなく、かなり綺麗な状態だった。
「悠介達はまだか!」
官次郎が叫ぶ。が、くるのは悠介ではなく大量のゾンビ達だった。
「ちっ、あの薄のろ!」
「悪かったな!」
声がした方に向くとそこには悠介と幸治が立っていた。
「よぅ、生きてたか。」
官次郎は冗談まじりに言った。
「おいおい、そんなに縁起の悪い事を言うなよ。こう見えても陸上部だぜ?」
悠介は半分笑って、半分は厳しい顔で言った。
「二人とも喋ってると来ちゃうよ!?」
理名が二人の会話を遮るように言った。辺りは囲まれているのだろう、声や足跡が聞こえていた。幸治も先に先導していた。
「じゃあ急ぐぞ!」
悠介は走り出し、後の二人もそれに合わせて追いかけた。
「近くにエスカレーターがあるから其所を使おう。次は六階のはずだ。」
幸治の速い判断で四人は素早く動けたようだ。
六階はイベントエリアである。先月は戦隊ショーが開かれていて子供達ばかりで賑わっていた。今月は有名な刀や着物といった【和】のイベントが開かれている。有名な鍛冶屋が叩いた刀が置いてあった。
「すげぇなぁ……」
こんな窮地にいてもつい出てしまう言葉。悠介はしばらく立ち止まって眺めていた。
「天宮くん、今はそんな時じゃないはずだ。速く行動しよう。」
悠介はしぶしぶその場から離れた。しかし、悠介と同じ行動している奴がいた。
「新田!!」
官次郎だった。しかし、幸治の声に反応しない。幸治は少し怒り気味に官次郎の近くに歩み寄った。
「新田!聞いてるのか!?」
幸治の声が上がった後にようやく官次郎が声を出した。
「これにするか……
幸治さん、少し離れていてください。」
幸治はわけがわからなかったが官次郎の言うとおりにした。
「せーのっ!」
官次郎が助走をつけて刀を守っているガラスを蹴り破った。ガラスの割れる音に驚き、悠介と理名は慌てて戻ってきた。
「なにがあったんですか!?」
理名が強い声で言った。官次郎がハイッと手を上げた。
「何してんのカンちゃん!」
「こうするため。」
官次郎はずかずかガラスの中に進入し、中に展示してあった刀を手にとった。
「これがかの有名な村雨か……剣道を習っている俺には夢のまた夢の名刀が俺の手中にか。」
官次郎は剣道を習っていたようだ。その腕はかなりのもので名人も顔負けである。実際に本物の刀を使って実践をしたことあるようだ。
「これからお前は俺のもんだ。よろしくな!」
官次郎は刀に向かって笑いかけた。そんな姿には誰も声をかけることはできなかった。今まで堅かった官次郎が久しぶりに見せた初めての笑顔だったからである。
「……わりぃ。行こうか。」
官次郎は悠介達の元に戻った。
「悠介、お前ばっかりがいい格好させないぜ。」
官次郎が悠介に刀を突きつけて言い放った。悠介も、刀を自分から反らすと「あぁ」と一言言って笑顔を見せた。それだけでも官次郎に伝わったようだ。
「話はそのくらいにして今は脱出口を目指そう。黙って待っていても危ないだけだ。」
幸治は偶然見つけた地図からエスカレーターを探し、そこから屋上を目指すようだ。
エスカレーターは上の階に行きたくても、エスカレーターは一階と二階とを繋ぐようになっていて、一階分しか繋がっていないのである。それは、不便の面ばかりが目立つようだが、様々な所に移動していい商品を見つけて欲しいという願いもこもっている。そのためにエレベーターがあるようだ。
四人は足音で気付かれないよう、遅くもなく速くもない速度で歩き出した。
七階のエスカレーターを探すために通った六階の通路は安全だった。四人は無事に七階へ続くエスカレーターに乗れた。
「ふう、いつもひやひやするぜ…」
官次郎が刀を杖がわりに使って休んでいるなか、悠介は常に拳銃を眺めていた。
「何時来るかわからん。また初めてデパートの中に入ったときにいた奴がいるかもしれんしな…」
幸治は念おしに言った。官次郎は分かってると簡単に流した。
「七階につきますよ。」
理名の声に反応し、辺りを注意しながら七階に降り立った。見た目は大丈夫のようだ。
「まずは地図を探そう。普通ならエスカレーターを降りた場所にあるんだがな…」
幸治はぼやくように言った。今度はその話に悠介が入ってきた。
「なにか意図があってつくったんだろう。こんな設計じゃあ移動に不便だよな。」
悠介もこのデパートについて分かってきているようだ。エレベーターを使えない彼らにとってはまったくのことだ。
「とにかく、ここから次のエスカレーターまでは距離があるがあるのは確実だ。出会す可能性はかなりあるから、気を付けろ。」
幸治は三人に離れるなと付け足しで言った。
七階はフードエリアのようだ。あらゆる地方の特産品で作った料理店がずっと道に沿って並んでいた。
「この一本道は逃げる時に危ないようだ。だが、この先にエスカレーターがある可能性は高いはずだ。」
幸治は、様々な道を巡ったあとにエスカレーターがあると考えた。それは、この道が一番の近道で、一番の危険な道を意味する。
「どうする?」
幸治は今度は尋ねた。しばしの沈黙。その沈黙を破ったのは官次郎だった。
「俺が守るから大丈夫だって!こんなところで死んだら報われないからな。」
官次郎はにかにかしながら言った。あとの二人は幸治の方に向き直り、悠介が「だ、そうですよ。」と言った。
「分かった。だがあまり拳銃は使わない方がいい。奴等に気付かれたらまずい。」
幸治は悠介に忠告すると、悠介は一度拳銃を見直し、握っているのを話した。
「じゃあ俺の力を信用してるってことか。じゃあ頑張るか!」
官次郎は先頭に立ち、そのまま前に進み出した。呆れた顔見せた三人だったが、その中にも笑みはあった。
それは、彼等がこの災厄から抜け出せるかもしれないという一筋の希望の光だと信じよう……
|