FILE 7
官次郎と理名はBブロックの中心部にいた。
辺りはコインを入れて遊ぶコインゲームや、お金を入れて遊ぶUFOキャッチャーやアーケードゲームなどが敷き詰められていた。
「こんな所に脱出口なんてあるのかよ…」
「ゆっくりはしていられないから出来るだけ早く探しましょう。」
あまりの広さに自分達がどこにいるのかも分からないくらいだ。それを察して官次郎はこう言った。
「水島、出来るだけ離れるなよ。俺が大変になっちまうからな。」
笑い半分の口調で理名に言った。理名は思った。今までずっと上に立って上から口調の男は誰一人もいなかった。そのせいでいくら向こうとの会話が弾んでも、自分は浮いてる気がしたからである。しかし、今まで一度もしゃべった事がない二人が自分の理想の人だとは思わなかった。理名は正直嬉しかった。理名は笑顔で「うん」と頷いた。
まだ周りに奴等の気配はなかった。一刻も早く見つけることが鍵となる。官次郎は、まず自分がどこにいるのかを知るために地図を探すことにした。勿論、手分けしてではなく二人で探すことにした。
ゲームにはやはり電力が来ていないのか画面がついている物は一つもなかった。それが彼等には逆に不安を与えた。
「しっかし暗いな……
近くの緊急用の明かりと月光を頼りにするしかないか。」
彼等は近くを離れないように探し回った。しばらくさがすと、
「新田くん、あれは?」
理名が何かに目をつけた。それはこのブロックの物だと思われる地図だった。
「おっ、ラッキー♪」
官次郎はまるで子供のように地図まで駆け寄った。理名もそれにつられて走った。
地図は大きいデパートだからといって地図も大きい事はなかった。普通のサイズであった。官次郎は急いで非常口がどこにあるか探した。
「……ってここド真ん中じゃん!非常口はAブロックの方が近いしな。じゃあこう
(中略)
でいいかな?」
官次郎は理名に簡単に悠介達との合流地点を教えた。理名も分かったと頷きそこまで歩くことにしようと言い出した。
……ときだった。官次郎が足場に何か無いかと探したとき、地図の右側に何かがあった。それは紛れもない死体だった。やはりこの死体も喰われていた。
「………」
官次郎は理名には言わずに手を引いて速歩きで歩いた。
「新田くん…?」
「合流地点まではかなり距離があるからこのくらいのペースで行こう。」
理名には官次郎の意図が分からなかった。
官次郎はあの死体はまだ新しいと分かっていた。だからこそまだ周りには奴等がいると直感したようだ。そしてその直感はあたってしまった。
「新田くん、少しゆっくり行かない?まだいないみたいだし……」
「いや、きてる……」
「えっ…?」
理名が少し耳をすませたとき何かが聞こえた。
「………オオオォォ…」
それは紛れもなくゾンビ共の呻き声だった。このブロックに響き渡るくらいの大きさのを上げるなら相当の量の奴等がいるだろう。
「ちっ!もうきたか…」
官次郎は理名の手を強く引っ張って走り出した。
「かなりの量がいるみたいだ。多分近くの階段から上がってきたか、もともとここにいたかだな…。」
官次郎は囲まれてる可能性があると考えたようだ。
「新田くん前!」
考え事をしていた官次郎が、理名の叫んだ方を見るとそこには一匹のゾンビが立っており、気付いたのか此方に向かってきた。
「あんまり出会いたくはないんだけど……
今は逃げるぞ!」
官次郎はゾンビの間を理名を必ず自分の後ろになるように切り抜けた。
「あいつらが心配だ!出来るだけ速く行こう。」
官次郎は強く理名の手を握り走り続けた……―
悠介達は官次郎達と別れたあとずっと同じところをうろついていた。
「…真田さん。これで何回目でしたっけ。」
「多分、六回目…。」
ふたりからは溜め息が漏れた。
「せめて地図でも探そうか。」
幸治の案で地図を探すことになった。……が、彼らはまた迷ってしまったようだ。
このブロックはBとはちがい親と子供がはぐれてもいいように、そして見付けやすくするように全体が円周上になっているのだ。だから何処に行っても同じ場所に帰るようになっている。
「もういやだぁぁ!」
悠介がとうとう痺れをきらした。さすがの幸治もこのブロックに呆れたかのように座り込んでしまった。
「もう一度やってみようか。このままだと危ない気がする。」
「…分かりました。」
悠介は嫌そうな顔でしぶしぶと立ち上がった。そして、今度は反対の方向に壁づたいで歩き始めた。
……探すこと約五分。
「あったぞ!」
幸治が見付けたようだ。それはまさしくこのブロックの地図だった。先ほどの通り、ここは円周上のようだ。
「なになに…
非常口はけっこう近いな。」
「新田達と連絡をとる必要があるな…」
幸治の指示の通りに悠介はポケットから携帯を取りだし、手早い操作により数秒後には携帯は悠介の耳にあてられていた。
(トゥルルルル……)
悠介はなかなか出ないのに苛立ちと同時に不安を感じた。
「どうだ?天宮くん。」
幸治が声をかけるのと同時に、悠介の携帯は耳から下ろされた。
「何かあったのかな…」
悠介は不安げに呟いた。この時の官次郎は丁度、理名の手を引いて歩き出したときだった。
「心配だが今は非常口を目指すしかないだろう。きっと彼等も同じことを考えているに違いない。」
幸治の案に少しホッとしたのか、無理に作っているかは分からないが悠介はコクンと頷いた。
「非常口は今来た道を戻る必要がある。早くしないとまた奴等が来てしまうかもしれない。」
幸治は手っ取り早く済ませて目的地までの道を目掛けて歩き出した。悠介も幸治の後に付いて歩き出した。
しばらくたっただろう。幸治が急に足を止めた。悠介は疑問に思い幸治に問い出した。
「どうしまし……」
「静かに。」
悠介も静かにしていると何かが聞こえてきた。それは、今までで絶対に出会いたくないやつだった。
「ゾンビか……」
幸治は、ポツンとそう言うと走り出した。悠介はあわてて追いかけた。
「真田さん、少し待ってください!」
悠介はまだなにかを分かっていないようだ。そんなことは気にせずにスパッと幸治は言った。
「喰われたいか?」
悠介はすぐに分かった。来てるのは奴等だと。その為に今逃げているのだと。
「……分かりました。」
悠介もスピードを上げた。どうやら囲まれたしまったらしい。微かにしか聞こえなかった呻き声も徐々に大きくなっていた。ただでさえ不気味な声なのに、この看板の明かりしかないブロックでは余計に不気味さが増していた。
「真田さん、ここは…」
悠介が拳銃に手をかけようとしたが幸治が止めた。
「ここでは不味い。弾の確保も後々大変だが、気付かれる可能性が高い。今は逃げるしかない。」
拳銃から手を遠ざけた悠介は、後ろを振りかえると案の定ゾンビが6、7匹固まって此方に来ている。
「感染が酷いようだ。かなりの災厄だな……
本当に人なのか……」
幸治は今さらだがと言いながら言った。悠介もまだなにかは分からない。ただ分かることは
生き残ること………
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