FILE 4
悠介達はエレベーターの前にいた。エレベーターで行こうと言い出したのは幸治である。
「真田さんよぉ、エレベーターは危なくないのか?エスカレーターなら直ぐなんだぜ?」
官次郎は嫌みを言うような口調でいった。しかし、幸治はそんなことも気にせずにただカメラをいじってキッパリ答えた。
「バカかお前は。エスカレーターがあるのは一階の中央広場だぞ。中央広場に無事に行けたとしても二階に行くとゾンビがいるかもしれないんだぞ?死にに行くのも当然だ。」
官次郎はまた怒りだし殴りかかろうとしたが、理名が間に入ってきて大事にはいたらなかった。
幸治はエレベーターのボタンを押して、最上階の九階から降りてくるエレベーターを待った。
誰も喋らない。無言のまま迎え撃つ準備をした。悠介は拳銃の手入れ。官次郎は理名の前に立ち、幸治はカメラを構えていた。
エレベーターは一階に到着。
ポーンッ…
エレベーターのドアは開かれた。しかし中はもぬけの殻だった。四人に安堵の表情がこぼれ、エレベーターにのりこんだ。
「はぁ、よかった…」
悠介は手を胸に当てて落ち着けていた。官次郎が二階に向かうボタンをおしてドアはしまった。
「水島、大丈夫か?」
悠介は理名のことをちらちら気にしているようだ。理名はこの暗黒の中で一輪咲く百合の花のような笑顔で答えた。
「大丈夫、ありがとう。」
悠介は直感した。絶対に無理をしていると。しかし、あえてそれは言わなかった。それが悠介の優しさだったのかもしれない。
その時、また音がなりエレベーターが完璧にとまった。四人は早速準備をした。ドアが開いた。
「アアアアァァゥゥ…!」
するとそこには最悪の景色が広がっていた。そう、ゾンビがいたのだ。数は四匹くらい。エレベーターのドアの前で待っていたのだ。ゾンビはこちらに入ってこようとする。
「させるか!!」
官次郎は咄嗟に先頭に立っているゾンビの腹に蹴りをいれた。すると、まるでドミノように倒れていき一時的に自由となった彼等は、すかさず三階に向かうボタンを押してドアを閉めた。
まだ、出発しないエレベーターとゾンビ達が呻き声をあげながらドアを叩いていることに、四人は死をも覚悟していた。理名は身体がぶるぶると恐怖のために震えていた。幸治はまたシャッターチャンスを狙っている。悠介達が諦めかけたときだった。
ポーンッ
上へ参ります、のアナウンスでエレベーターは上へ向かい始めた。暗い暗闇の中に一筋が見えた時だった。
「はぁ…どうなるかと思ったわ。」
官次郎の心臓はバクバクしているようだった。それほど彼等には死が近かった事を物語っているようにも見えた。ただ一人を除いて…
「ちっ…チャンスを逃したか…」
幸治は残念そうに言った。その言葉に今度悠介が反応した。
「逃した…?」
幸治はこちらのせいかのように言った。
「あんなに大群のゾンビを目の前で撮れたんだぞ。それをお前らはいとも簡単にチャンスを壊した。せっかくの機会を…」
悠介は幸治の話の途中にもかかわらず幸治の胸ぐらを掴んだ。
「お前、自分が言っていることが分かってるのか?人の命をまるで塵のように言っていることも承知済みか?」
「あぁ、それが?」
悠介は二人が止めようとする前に幸治の顔面に一発撃ち込んだ。幸治はその場に倒れ込んだ。エレベーターからは「エレベーターの中ではお静かにお願いします」と、アナウンスが流れた。
「ふざけるな!!」
幸治は起き上がったが何も言わなかった。
「何か言え!」
「悠介、やめろ…」
官次郎がようやく止めにはいったと同時に三階に着いたようだ。
「……今度については絶対に許しません。肝に免じておいてください。」
悠介は幸治に一言言うとエレベーターから降りた。二人も急いで悠介を追った。
「ちっ…ガキが。」
幸治もしぶしぶついていった。
三階にはゾンビはいなかった。あの状態でゾンビがいたら彼等は死んでいただろう。またまた彼等は不幸中の幸いだった。
「ここは安全なのか…?」
悠介は不安そうに言った。誰もが「分からない」と答えるしかなかった。
「薄暗いな…やっぱりここも電力がきてないのか。」
ここの明かりも店の看板くらいの明かりくらいしかなかった。またさっきみたいなのがいるとも考えられる。
「周りには十分気を付けろ。またいるかもしれないからな。」
初めて幸治が言い出した。やっとその気になったようだ。悠介もああ、と言わんばかりの態度を見せた。
此所はいわゆる化粧品のフロアのようだ。どうやら二階と三階が合同でなっているようだ。辺りは高級そうな匂いと腐臭の匂いが混じっているため今にも鼻がイカれそうになるほどである。
「下手に動き回らない方がいい。四人だと動きやすいから固まった方がいいだろう。」
悠介の案はなかなかのものだった。しかし、官次郎は違う意見だった。
「2:2に分かれないか?四人だと動きも遅くなるし道を探すのも大変だろう。」
悠介はすこし戸惑ったが、官次郎の意見に賛成した。
「じゃあ振り分けはどうするんだ?」
「俺と真田さんでやろう。カンちゃんは水島といてくれ。」
「いや、真田さんは俺に任せてくれ。悠介は水島といてくれ。」
官次郎はあえて幸治といることを選んだ。自分の幸治を悪く思うとする癖を直そうとしたかのかもしれない。しかし、自分が幸治と組むことで悠介と理名の危険を少なく出来ると考えていた官次郎は思っていた。
「真田さんいいよな?」
官次郎はやっと幸治に声をかけた。
「ふん、よろしく頼む。」
悠介も理名と喋っていた。
「また水島とだな。」
悠介はうっすら笑いを見せた。それは理名を落ち着けさせるため。
「天宮くんはいつでも頼りになるから助かるよ。」
理名も笑顔を見せた。悠介は少しボヤッとしたようだ。
「おーい、お二人さん!」
官次郎が急いでこちらを呼び、作戦を決めると言い出した。
「どうするんだ?」
「悠介は何を考えてるんだ?さっき今決めるって言ったんだが…」
「あぁ、ごめんごめん。」
悠介はあわてて謝った。さっきまでボヤッとしていた悠介には到底聞こえないだろう。
「やっぱりフロアで分けた方が速いな…」
「そうだね。じゃあどっちが違う階にいく?」
「…私はここを探索したいんだが。新田くんの意見を聞かないとな。」
「じゃあ俺達はここに残るよ。水島達は違うフロアに頼む。」
「おし、じゃあ集合場所はどうするんだ?」
「携帯を使おう。なら直ぐに連絡が出来るはずだ。いくら街がヤバくなっても携帯は大丈夫なはずだ。」
官次郎は悠介が携帯を持っていること確認すると頷いた。
「よし、じゃあ行くか!」
「みんな、絶対に生きろよ!」
「まぁ足手まといにはならんよう頑張るが、シャッターは降ろすぞ。」
「皆で頑張ろうね!」
それぞれが声をかけると、それぞれの組み合わせに別れた。それぞれが向かう場所はただ一つ。
友のいる場所…
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