事件発生!!
新一を乗せた910号は,宇宙区間をひた走る。銀河鉄道の車両には人口重力発生装置がついているから快適な旅が出来る。窓の外には雄大な宇宙の景色が広がり、時折1,5宇宙km毎に設置された、空間シールド発生用の軌道リングが通り過ぎる。
惑星デスティニーを出て30分が経った。そこへ、車掌がやって来た。銀河鉄道では今も古風に車掌が一両一両回って来る。やってきたのは人間の車掌だった。最近では、ロボットが車掌を勤めている車両も少なくない。
車掌
「次の停車駅、惑星ベイカまでは約2時間です。今しばらくおくつろぎください。」
<後2時間か。>
心の中でそう新一はつぶやく。ベイカに戻るのは一週間ぶりだ。つまり、家族や彼女の顔を拝むのも一週間ぶりだ。心は自然と明るいものとなる。
しかし、そんな新一の気分をぶち壊す事態が発生した。
?
「キャアア!!!」
女性の悲鳴である。
「なんだ?」
「どうした?」
他の乗客も何事とばかりに振り返る。新一はすぐに声のした方向に走った。声がしたのは車両間のデッキからだった。この車両にはそこにトイレが設けられていた。
車両の扉が開き、新一の目にひざまずいた女性の姿が入ってきた。
新一
「大丈夫ですか?」
女性に声をかけるが、彼女は口をパクパク動かすばかりで要領を得ない。
新一
「どうしたんです?」
近づいて女性を支える。そうすると、彼女は指でトイレのある方向を指した。
新一がそっちを見ると、男性が便器にうつぶせになっていた。
新一
「これは!?」
新一が近づこうとした。そこへ、車掌が走ってきた。
車掌
「こ、これは!?お客さん。勝手に中へ入らないでください。」
新一は探偵証明証を見せる。
新一
「一級探偵の工藤新一です。銀河鉄道からも公認されています。」
一級探偵はその認められた惑星国家や組織によって司法権や事件捜査権が与えられている。簡単に言えばほとんど警官と同じだ。
車掌
「あ、失礼しました。」
車掌が敬礼する。
新一
「では、まず列車を停止させてください。それと、SDFに緊急出動の要請をお願いします。これは明らかに殺人事件です。」
車掌
「わかりました。」
SDFの司令部は、天井に浮かぶ球形の路線図を中心とした円形のテーブルに、一日中オペレーターが張り付き、列車や駅から発進される緊急信号に対処する。
その司令部に、緊急事態発生を知らせる警報が鳴り響く。
オペレーター
「白鳥座方面へ向かっていた、急行910号内にて殺人事件発生。乗客1名が死亡。列車は現状維持のために惑星ベイカより1600宇宙kmで緊急停止。SDFに出動要請入電。」
SDFの現司令官は、叩き上げの元アークトゥルス小隊小隊長、藤堂兵五郎である。彼の決断は素早かった。
藤堂司令
「ただちに、シリウス小隊に出動命令。」
|