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お母さーん
作:雛祭パペ彦


 ○×高校2年7組の花山ポペ助は、授業中、担任の教師に向かって、ついうっかり「お母さーん」と呼びかけてしまった。
 ところが、担任は男性だった。しかも、ポペ助には母親がおらず、普段は父親との2人暮しである。
 と、まあ、そんな家庭の事情はさておき、男性教諭に向かい「お母さーん」などと口走ってしまったのはまだしも、周りの同級生たちに、まるで普段から母親のことを「お母さーん」という高2男子にしては少し甘ったるい呼び方をしているのではないかという誤解を、えー、このたび、花山ポペ助17才は大々的に発表してしまったというわけだ。
 このように、学園生活において必ず1度は目撃される珍事の張本人となったポペ助は、われを忘れて取り乱した。
 何よりも、同級生29人の前で失態を演じてしまったことに、ポペ助は戸惑っていた。さらに言えば、そのなかには、ポペ助が日頃より密かに想いを寄せていた女子がいたので、戸惑いの度合いは凄まじいものだった。

 ポペ助は、とても恥ずかしかった。
 そして、恥ずかしさのあまり、顔が真っ赤になった。
 まもなくして、顔から火が出た。

「うぼあぁぁぁぁぁっ!」

 突然に起こった叫び声は、ポペ助の正面にいた女子のものだった。
 なんと、このクラスの美化委員を務める女子の髪が、チリチリという音を立てて燃えていたのである。
 どうやら、恥ずかしさのあまりポペ助の《顔から出た火》が燃えうつってしまったようで、それはさらに窓際のカーテンに飛び火して、派手な炎をあげはじめた。
 それからしばらくの間、2年7組は大パニック状態に陥った。



 その日の放課後。
 担任教諭と、ポペ助の父親と、すこし前髪を焦がしたポペ助の3人が、職員室で話しあっていた。

「このバカ野郎が!」

 ポペ父が、我が子に向けて声を荒げる。

「……まあまあ、お父さん。ポペ助くんも悪気があったわけでは無いのですから」

 担任がそうなだめても、ポペ父の怒りは治まらなかった。当のポペ助は、うつむいて恐縮している。

「いや、そうは言いますが、こいつが原因で、人様の大事な娘さんに大火傷させてしまったわけで……おまえ、わかってるのか!」

 ポペ父は、きわめて激しく怒っていた。
 手がつけられないほど、怒っていた。
 まるで《烈火のごとく》怒っていたのだ。

「あっ……うぼあぁぁぁぁぁっ!」

 いきなり、なんの前触れもなく担任のネクタイが燃えあがり……まもなくして、職員室は火の海と化した。














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