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道筋
作:治伎


「くっ……くるな!」

目の前にいる男は、僕に向かって鈍く銀色に光るナイフを突き付けている。
男は、時折威嚇するようにナイフを振り回す。鋭い刃が風を切り裂く音はいつまでたっても聞き慣れることはなかった。

「来るな!来るな!」

男はもはや理性を失ってしまったようにその言葉だけを連呼する。
僕はその男に一歩近づいた。

「うわぁぁぁ、くるなぁ!」男はまるで手負いの獣のようにがむしゃらに突進をかけてきた。
本来の目的はこの男の殺害ではない。用があるのは男の後ろにある研究資料、計画ではレプリカとすり替える予定だったがどんな偶然か、本来なら無人の研究室に一人の男が残っていたのだ。しかも凶器となる刃物を持って。
チッという舌打ちが自然と漏れる。突進してきた男をかわすと、男はその勢いのまま壁へと激突した。
鈍い音が室内に響くと男は呆気なく崩れ落ちる。
「くそ、時間を食ったな」

施設のセキュリティーを解除してすでに二時間が経過している。ぐずぐずしているとセキュリティープログラムが再起動してしまう。見つかってしまったら今回の潜入は失敗してしまうだろう。
山のように重なった資料の中から《道筋》の書かれたものを探し出す。

「これか」
『全機械化計画』世界を機会に委ねてしまおうという人類の堕落の象徴とも言える世界の機械化計画。
懐に資料をしまうと僕は駆けた、出口へ、出口へ。
途中セキュリティーが再起動し、瞬くまに施設中に警報が響渡る。
僕の脳裏に先程の男が思い浮かぶ。強大な存在に貧弱な武器を持ち、必死に立ち向かおうとする弱者。
まるで強大な組織と単独で戦っている僕を見ているようで、ほんの少し胸が苦しくなった。














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