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女勇者セレス 作者:松宮星

ケルティの闇と光

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極光の剣 こぼれ話 ナラカ&ガルバ(11話と12話の間)

 やわらかな光の中で、ガルバは目覚めた。
 死にかけていた体に熱が戻っている……
 傷が癒されつつある……
 懐かしい気を感じた。敬い慕い続けた主人の気だ。
「御身様……」
 主人(あるじ)がたたずんでいる。黒い長髪、黒の魔術師のローブに魔術師の杖。僧侶にはまったく見えないその姿。主人は女性のように美しい顔に、微笑みを浮かべた。
「違いますよ、ガルバ。今のあなたの『御身様』は、私ではなく、私の甥っ子のナーダでしょ?」
「ああ……やはり、御身様……人を喰ったようなそのしゃべり方は間違いなく……」
「おや、ひどい。久しぶりに会えたというのに、嫌味ですか? ご挨拶ですねえ、ガルバ」
 主人が楽しそうに笑う。僧形を嫌い、髪を伸ばし、インディラ教の戒律はことごとく破り、それでいて神の愛は深く高位の魔法まで難なく用いていた主人。優美な外見とは結びもつかぬ破天荒な生き方に惹かれていたのだ。
 生涯お仕えすると忠誠を誓ったのは……主人が七つ、自分が八つの時だった。あの頃は、まだ主人は出家していなかった。
 もう五十年以上前のことだが……
 五十年?
「おや、何とした事か……御身様がお若く見える。昔、お別れした時と変わらぬお姿に見えまする」
「それはそうですよ」
 主人はにっこりと微笑んだ。
「あなたは、今、夢を見ているのですからね」
「夢……?」
「夢ならば、どんな姿も思いのまま。この姿は、あなたへのサービスです。醜いジイさん姿よりも、若く美しい私の方があなたも嬉しいでしょ?」
「どのような姿に変わられようと御身様は御身様にございます。どうせならば、今のお姿を拝見したかった……」
「ガルバ……」
「お別れしてよりの三十五年……まったくもって私は役立たずにございました……」
 ガルバは懐かしい主人を見つめる瞳を細めた。
「御身様……申し訳ございません……実は私めはたいへんな失態を犯してしまいました。御身様より託された大事な妹姫サティー様をお守りしきれず……婚家であのお方のお立場が苦しくなっていくのを救えず、あのお方とお子様を日々暗殺の危険にさらし、病で衰えられてゆくあのお方に何一つ……」
「おやめなさい、ガルバ。何でも自分のせいにするのはあなたの悪い癖だと、私、注意したはずですよ」
「ですが、私がいたらぬばかりに」
「いいえ。あなたは、本当によくやってくれました。サティーも、あなたに心から感謝していましたよ」
「……お会いになられたのですか?」
「ええ。亡くなってからですがね」
「では、御身様も……既に鬼籍に?」
「いいえ、ガルバ。私は生きています。いつかこの身に課せられた使命を終えた後、私は帰ってきます、必ず、あなたの元へ。それまではナーダを……サティーの息子を今まで通り助けてあげてください。頼みましたよ」


 良い夢を見たような気がしたが、どんな夢だったのかは思い出せなかった。
 けれども、目覚める前に、誰といたのかはわかっている。
 術をかけられ記憶を消されても、わかるのだ。
 魔法を使用すれば、魔力の痕跡が残る。魔力は術師ごとに特徴が異なる。それは、それを用いた人間の気によって変化するからだ。
 魔法に縁のないガルバが、見分けられる魔力は二人のものだけだ。
『御身様』と、彼が慕い、誠心誠意仕えてきた主人のものだけだ……
 致命傷とも思えた傷を負った自分を癒してくれたのは、ナーダではない。誰が治療魔法を使ってくれたのかは、ガルバにはわかるのだ。
(出会った記憶を消すとは……やはり、わしにつきまとわられるのがお嫌なのか……。だが、生きていてくださった。それが、わかっただけでも)


 老忍者ガルバは周囲に満ちた殺気を読み、素早い体術で雪の森に潜む襲撃者を捕らえに走った。 
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