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女勇者セレス 作者:松宮星

ケルティの闇と光

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極光の剣 こぼれ話 アジャン&ケルティ人(1話)

 北の国の戦士達は驚きの声をあげた。
 役人達に駆り出され、南から来た勇者一行を脅せと命じられた北国の戦士達。漁に出るはずだった者、エウロペに略奪に出かけるはずだった者、皆、今日はしぶしぶとドラゴン船を出していた。ケルティ新王朝の役人は威張りくさるくせに、金払いが悪い。一日拘束されるのに、実入りが悪いのだ。
 しかし……女勇者一行の中の男が、アジ・ハリの部族言葉を使った為、そんな不満は吹き飛んだ。入国審査官のハリの小僧っ子が泡を食ったような顔をしている。シベルア教育に染まり、ケルティ新王朝の役人になったバカとどよりも、南から来た男の方が部族語が達者だ。
「おめえ、アジの生まれだか?」と、尋ねると、
「そういうおまえは、エク族だな?」と、質問が返された。
「お、わかるだか?」
「んだばよぉ、おれっちは何処のもんかわかっか?」
「ネスパ族」
 おおおおおお! と、戦士達は歓声をあげた。南から来た男は、部族ごとの微妙な言葉使いや発音の違いがわかるのだ。最近のケルティの若者は、部族語を『忘れられた言葉』などと呼び、収穫祭にすら部族語を用いようとしないというのに。
「俺のひい祖父(じい)さんがアジ族だったんだ。国境閉鎖前にエウロペで獄に繋がれちまってな、赦免後にエウロペの女と結婚して南で生涯を終えたんだ」
「南で? ほう、そりゃ、また、酔狂だで。戻りゃ、えかったのに」
「牢獄で脚が萎えちまって、ドラゴン船を操れなくなったんだ」
「そら、まあ気の毒に」
「ドジったもんだなや」
「おれっちはよぉ、まだ、エウロペにはようけ行っとる」
「んだ。エウロペの船は軍船でもトロくせえ。デカいだけで小回りがきかんで、浅瀬や川にも入れねえ。エウロペじゃ、お宝、奪い放題よ」
 男達は、がっはっはと豪快に笑った。
「おっと、エウロペの女勇者様の前で略奪の話しはマズいだな」
「大丈夫だ、あの女は馬鹿だ。こっちの話はわからん」
「へえ、バカなんだか」
「あんなお綺麗なのに、頭が足りねえっか」
「んだども、他の男どもは?」
「心配ねえ。あの大男も忍者も、どうしようもねえアホの馬鹿のカスだ。何、言ったって、わからんさ」
「ほうほう」
「あの女やそばのバカどもには、何、言ってもいいぜ、『ちんちくりん』でも、『どこに目玉があるんだ、糸目』でも、『顔に自信がないから隠してるんだろ?』でも」
 そのまましばらく待ったが、悪口を言われた三人は無反応だ。何の会話をしているのだろうと探るかのように、こちらを眺めるばかりだ。
 北の戦士達の顔が、明るく綻んだ。
「ああ、あっちの子供には言うなよ。あの東国の子供は、家族の仇の魔族を自ら倒した『戦士』だ。今は外見は細っこいが、見所のある奴なんだ。悪口は他のバカどもに言ってくれ」


「何言ってるんだか、さっぱりわかんないんだけど……」
 女勇者セレスは、アジャンとケルティ人達を見つめた。
「なんか、ムカムカするのよね」
「実は……私も」と、ナーダ。
「私めも」と、ジライ。
「そうですか? オレは、今は別に……」と、シャオロン。


 入国審査官が『くだらない話はやめろ!』、『忘れられた言葉をしゃべるな!』と、止めるまで、ケルティの戦士達はわいのわいのと明るく、誰が一番うまい侮辱が言えるか面白半分に三人を囃し立てたのだった。文字にすると伏字だらけとなってしまう、たいへん下劣な表現で……
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