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女勇者セレス 作者:松宮星

勇者として

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シャオロン奮戦す VSカルヴェル

「ホホホホホ。なにせ、わしは高名な大魔術師。北方にもちょっとしたコネがある。これ、この通り、通行許可書を貰って来てやったぞ。これさえあれば、ケルティ・バンキグ・シベルアの三国の行き来は自由じゃ。セレスよ、ありがたく受け取るがよい」


 食堂で朝食をとっていた五人(忍者は食事をとらず、セレス専用給仕に徹していたが)の前に、老人が移動魔法で突然現れ、そう言って五つの巻物を女勇者に手渡したのだった。
 女勇者一行は、既に、エウロペ、シルクド、シャイナ、ジャポネ、インディラ、ペリシャ、トゥルク、エーゲラを回り、数多くの魔族や大魔王教徒を退治していた。
 しかし、未だに大魔王の今世の憑代の正体がつかめず、大魔王の本拠地もわからなかった。
 セレスはこれからどうするか悩んでいた。
 見落としはないか、もう一度シルクドから諸国を巡るか……或いは、北方に向うか、隣接する大陸――アフリ大陸へ向うか……北方にしろアフリ大陸にしろ向うには通行許可書が必要だった。
 エウロペ国王の働きかけをもってしても許可書はなかなか発行されず、セレスは三週間近くを自宅で無為に過ごしていた。
 エウロペは、北方とは国交が断絶しており、アフリ大陸諸国とは国交を結んですらいない(しかも、アフリ大陸の中央より南はユーラティアス大陸のものには未開の土地でもあった)。許可書発行まで、数ヶ月から数年待たされそうな雰囲気が漂っていた。
 だが、その待ちに待っていた通行許可書を老人が貰って来てくれたのだ。
 これで、大魔王退治の旅を再開できる!
 女勇者は目をきらきらと輝かせた。
「あああああ、お師匠様、ありがとうございます!」
 セレスはカルヴェルから受け取った巻物の一つを開き……
 思わず、うめいてしまった。
「……読めない」
 模様のように綺麗な文字が紙の上をのたうちまわっている……ようにしかセレスには見えなかった。
「シベルア語じゃないですか」
 背後から覗き込んできた武闘僧ナーダが、冷たい視線をセレスに送る。
「北方三国では共通語が通じません。国境を閉鎖した百年ほど前から共通語を捨て、シベルア語を代わりに共通語として用いているのです。つまり、シベルア語ができなきゃ、会話も読み書きもできないんですよ」
「う」
「あなた十七歳の小娘とはいえ勇者、旅のリーダーです。各国の国王や政府との交渉ごとは、あなたがやらなきゃいけないんですよ。わかってるんですか?」
「……わかってるわよ」
「では、何で今までシベルア語を学ばなかったのです? この三週間、みっちり勉強していれば、のみこみの悪いあなたでも人並みにしゃべれるようになったでしょうに」
「しょうがないでしょ! 私、王宮に行ったり、あれやこれやで忙しかったんだから!」
 武闘僧が糸目をきりりとひきしめた。
「セレス、特訓です。今日から寝る暇がないと思いなさい」
「え〜!」
「一週間でシベルア語をマスターしましょう」
「一週間……それで、覚えられるの?」
「『覚えられる?』ではなく、『覚える』のです。何事も真剣に取り組めば道は切り開けるものです」
「いやよ、あなた、鬼教師なんだもの! トゥルクでは、ひどい目にあったわ!」
「血のにじむような努力なくして、成功はありません」
「努力はするわよ! でも、血がにじむのはいやぁ!」
 と、わめく女勇者の背後を忍者がとる。
「ご安心なさって、セレス様。いざとなったら、このジライがセレス様のお声の影武者になりますわ」
 忍者の声に、一同が身をのけぞらせた。カルヴェルですらほんのちょっと驚いていた。
 忍者は……セレス本人がしゃべっているとしか思えない声で話しかけてきたのだ。忍の変装術の変声術だ。前よりも、セレスの真似がうまくなっている。
「私、忍者ですもの。シベルア語もケルティ語もペラペラよ。セレス様は日常会話程度の言葉を覚えてくださればいいわ。難しい話は、ぜ〜んぶ、私がひきうけるから」
「ああああ……ジライ、ありがとう」
 セレスはハシッ! と力強く忍者の手を握ったのだが。
「駄目です!」
 武闘僧は顔を真っ赤にして怒っていた。
「ジライ、セレスを甘やかしてはいけません! シベルア語ができなくて困るのは、セレス本人なのですから!」
 そこで呼吸を整え、武闘僧は言葉を続ける。
「今まで国王との交渉の場には、必要に応じて可能な限り私がつきそってあげましたが……北方諸国ではそうはいきません。あちらでは、インディラ教は邪教扱いなのです。私は迫害こそされど、尊敬の対象となりえません。ようするに、あちらでは、王侯貴族と直接話せる身分なのは、セレス、あなただけなのですよ」
「………」
 旅の仲間を見渡せば……
 アジャン……エーゲラ(いち)の戦士だが、仕官しておらず、爵位はなし。
 シャオロン……シャイナ(いち)の武闘家の息子だが、子供。
 ジライ……忍の里(いち)の忍者だったが、現在は抜け忍。そのうえ、忍者は賎業。
 で、ナーダの大僧正候補の肩書きが効力を無くすとなれば……やはり……
「……私が全部やらなきゃいけないのぉ、そんなぁぁ」
 ズズゥ〜ンと暗くなったセレス。
 やっとわかったかという顔のナーダ。彼は赤毛の戦士へと視線を向けた。アジャンはテーブルに座ったまま、睨むように目の前の皿を見つめている。老人が現れてからずっと、食事の手も止まっているようだ。
「アジャン、あなた、シベルア語は?」
「あ?」
 手に持ったままだったパンを皿に落とし、アジャンはナーダを見つめた。
「……呼んだか?」
 武闘僧は片眉をしかめた。
「シベルア語を話せるかお尋ねしたのです」
「……話せる」
 アジャンは表情を曇らせていた。
「ケルティに行くのか?」
「そのようですね」
 ナーダはセレスの手から巻物を奪い、目を通した。
「指定された日時に指定された航路を通って、ケルティの港ハーグナに向うようにと記されています。そこで入国審査に通って初めて、この通行許可書が有効になるみたいです。指定日まで、まだ一カ月近くありますねえ。当分、エウロペに足止めですね、これは」
 そうと聞いて、セレスの表情が明るくなる。
「一ヶ月あるの? よかった!なら、一週間でシベルア語マスターしなくても大丈夫じゃない。余裕があるわ!」
 武闘僧が冷たい視線を女勇者に送る。
「あなたが、北方三国の宗教、政治事情、風習、マナー、歴史などをご存じでしたら、時間に余裕があるでしょうね! 事前学習が言語だけになりますからね!」
「う」
「あなたの学習スケジュールは私がたてます。異存はありませんね?」
「……ないわ」
「私、セレスの勉強をみますので、アジャン、あなたは、自分の分とシャオロンの雪国での装備を準備しておいてください。パーティで必要なものは後日、まとめて準備しますので、個人的なものだけでいいですから」
「シャオロンの分を準備するのは構わんが……」
 赤毛の戦士は眉間にしわをよせていた。その顔から血の気が引いている事に、隣に座る東国の少年は気づいていた。少年は赤毛の戦士をジッと見つめていた。
「……これから冬になるっていうのに」
「は?」
「今から北方に行くなんざ、馬鹿だな。吹き荒ぶ雪嵐にのまれ、凍死するのがオチだ」
「でも、春までここで待っているわけにもいかないでしょ? 大魔王を倒さねば、地上に真の平和は訪れないのです。エウロペでこれから更に一月近くも足止めされるのが忌々しいぐらいです」
「……まさか」
「ん?」
「まさか北方行きの許可書が発行されるとはな……天地がひっくりかえってもそれだけはありえんと思っていた」
「大魔術師様のご威光に感謝しなくてはですね」
 ナーダがそう言うと、老人が耳にうるさいほどの声でホホホホホと得意そうに笑う。武闘僧は小さくつけくわえた、その点においてだけはと。
 赤毛の戦士が大儀そうに頭を振る。
「正直、面くらっている……ありえんと思っていた事態になったので、な。だが、まあ……そうなっちまったんなら仕方ねえ」
 歪んだ笑みを口に浮かべアジャンは、落ち込んでる女勇者へと声をかけた。
「セレス、北方行きが決まった事を王宮に報告に行くんだろ?」
「ええ」
「俺も同行する」
「あなたも?」
 珍しいこともあるものだという顔のセレスに、アジャンは肩をすくめてみせた。
「契約上の問題だ。俺はエウロペ・エーゲラ・ペリシャ・トゥルク・インディラ・シルクド・シャイナ・ジャポネにおけるおまえさんの護衛と魔族及び大魔王教徒の討伐を引き受けた。北方は契約に入っていない」
「あら、じゃあ、契約しなおさないとね」
「待て、待て。今日のところは待て」
 ニコニコニコと笑いながら、老人が瞬間移動で赤毛の戦士のすぐ横の宙に現れる。
「赤毛の傭兵、わしは、おぬしに貸しがある」
「あん?」
「『聖王の剣』の貸し賃と、くれてやった魔法の分。わしはいつでも好きな時に二回、おぬしを使える事になっておったであろう?」
「ああ」
「今日これから果たしてもらいたい。それほど時間はかからぬ、おぬしの部屋でちょちょいですむことであるが……今日のところは王宮に行くのはナシじゃ。セレス、おぬしは行って来い。国王陛下によろしく、の」


 その日の午後、三週間前にナーダから貰った『シベルア語 日常会話集』、『シベルア語 綴り方』、『シベルア語 辞典』を片手に、東国の少年は廊下を走っていた。
 北方諸国やアフリ大陸の代表的な言語を覚えておきなさいとナーダが準備してくれた十冊以上の本を、少年は、暇を見つけては目を通し勉強していた。セレスの重荷にはなるまい! と、彼なりに真剣に。けれども、あまり身についていない。
 シベルア語にアフリ大陸の言語が三、それらをいっぺんに習得しようとするのには無理があったし(ナーダは自分が本を読むだけで何でも暗記できるので、凡人の学習速度が理解できていないようなのだ)、そもそもあまり学習時間がなかったのだ。
 シャオロンはアジャンの部屋で立ち止まると、まず深呼吸。気持ちを落ち着けてから、ノックをしようとした。
 その時だった……
 扉がびりびりと震えたのは……
 アジャンの怒声だ。
 その振動で揺れているのだ……
 赤毛の戦士が誰かと言い争っている……
 まだカルヴェルの用事がすんでいなかったのだろうか……?
 シャオロンはためらい……
 右手を下ろした。
(帰ろう)
 そのまま背を向け、自分の為に用意してもらっている部屋に戻ろうとした。
 そこへ、背後から声がかけられる。
「これ、シャオロン、赤毛の傭兵に用ではなかったのか?」
 振り返ると、空中浮遊の魔法で大魔術師カルヴェルが宙に浮かんでいるのが見えた。長い白髪白髭、黒の魔術師のローブがゆらゆらと宙に揺れている。
「カルヴェル様……あれ? カルヴェル様、中じゃなかったのか」
「ん?」
「あ、いえ、あの、アジャンさん、今、お部屋でお取り込み中みたいなので」
「案ずる必要はない。取り込みのもとは無くなった」
「はい?」
 カルヴェルはホホホホホと笑った。
「あやつ、わしに怒鳴っておったのよ。このように、わしが、あやつの前から消えたから、もはや、あの部屋の中、取り込んではおらぬわ」
「……アジャンさんと、どんな話をされたのです?」
「うむ。まあ、あやつにとっておもしろくない話を、の。こちらも怒られるのは承知の上で話したのじゃが、まこと、あやつ、豪快に怒鳴りおる」
「………」
「すまぬ、シャオロン。おぬしといえども、何を話したかは言えぬ。赤毛の傭兵の個人的な事情に関わる話なので、わしの口からは言えないのだ」
「……わかりました」
 少年はうつむき加減だった顔をあげた。
「アジャンさん、今、怒ってらっしゃるだけですか?」
「ん?」
「カルヴェル様のご用事をまだやってらっしゃるんですか?」
「ああ、いやいや、それはとうに終わっておる。何もしておらんとは思うぞ、今は」
 カルヴェルは、にやりと笑った。
「派手に怒っておったからの、床を蹴って怒りを発散しておるぐらいじゃろ、やってる事は」
 シャオロンはにっこりと笑みを浮かべ、深々とカルヴェルに頭を下げた。
「じゃ、オレ、行きます。失礼します」
 元気よくそう言うと、少年はアジャンの部屋をノックした。
 だが、返事がない。
 もう一度、ノックすると……
「うるせえ! 聞こえてる!」
 と、乱暴に扉が開けられた。
「あ……」
 少年に気づき、赤毛の傭兵は少々罰の悪そうな顔をし、視線をそらした。
「……何の用だ、シャオロン?」
「すみません、アジャンさん、シベルア語、教えてください」
「シベルア語……?」
「はい。三週間前に、ナーダ様から勉強用の本はいただきました。書く方は辞書があれば何とかなりそうなんですが……しゃべる方がさっぱり。発音とかわけわかんなくて。お願いです、アジャンさん、オレ、セレス様の足手まといになりたくないんです。シベルア語、教えてください!」
「………」
 アジャンは緑の瞳を細め、その髪を乱暴に掻いた。
「ナーダか忍者に習え。俺のは俗語だ」
「でも……ナーダ様はセレス様のお勉強にかかりっきりだし……ジライさんは、たぶん、お部屋に居ませんよ。情報収集に行ってると思います」
「じゃ、ジジイに習え。その辺にまだ居るだろう」
「カルヴェル様?」
 きょとんとして、シャオロンは背後を振り返った。そこには、ニマニマ笑っている老魔術師が居る。扉から顔を覗かせているアジャンだとて、位置的に見えないはずがない。しかし、目に入っていないようなのだ。
(姿隠しの魔法って、特定の人間からだけ自分が見られなくなるようにもできるんだ)
 素直に感心したシャオロンに、カルヴェルは口元に二の指をあててウインクを送った。黙っていてくれという事だ。
「カルヴェル様は……その、何処にいらっしゃるかわからないし……」
 少年は真っ直ぐな瞳で、赤毛の傭兵を見上げた。
「オレ、アジャンさんに教わりたいんです! 駄目でしょうか!」
「………」
 アジャンは眉をしかめ、迷惑そうに少年を見つめていたが……
 その口元が緩み、笑みが刻まれる。
「……俺から教わると、『シベルア語を教えろよ、ケチケチすんな、このボケ』みたいになるぞ」
「大丈夫ですよ」
 にっこりと、シャオロンが微笑む。
「絶対、大丈夫です」
 少年は絶対の信頼を赤毛の傭兵に寄せていた。根拠は、全くなさそうなのに。
 その純粋な敬意に多少鼻白みながらも、アジャンは凍てついていた表情を捨て、いつもシャオロンに見せている年長者の顔となった。
「……シベルア語とケルティ語を教えてやろう」
「ケルティ語も? でも、オレ、物覚え、悪いですよ」
「大丈夫だ。北方の言葉はどれも根が同じだ。どれか覚えれば、あとは何となくわかるようになる」
「そうなんですか……なら、頑張ってみます! アジャンさん、ありがとうございます!」
 赤毛の戦士はにやにや笑っている。
「クソ坊主じゃ、絶対教えてくれないような単語や言い回しも教えてやる。とびっきり下品なヤツを、な」
「あはははは」
「どうせ、当分、暇だ。王宮には、焦って行く必要がなくなった。俺の契約に関してはおせっかいなあの女が今日、国王に話してるだろうし……今度、セレスが王宮に用がある時にでも、くっついて行って済ませりゃいい。しばらくは、おまえにつきあおう」
「やったー! ありがとうございます! 買出しの時にはオレ、アジャンさんの分も荷物、持ちますね」
「買出し……ああ、旅の装備か……シャオロン、おまえ、雪は見たことあるのか?」
「ありますよ。けっこう積もるんですよ、オレん()の方は」
「そうか……冬は、シャングハイから南に下ってインディラだったからなあ、女勇者一行は。雪とは無縁だったよな」
「でしたね。お山の上の雪ならいっぱい見ましたけど」


 扉が閉ざされ、二人が部屋に消える。
 カルヴェルは笑みを浮かべたまま、扉を見つめていた。
 赤毛の戦士の心を闇より遠ざけられる人間は……シャオロンと、セレスだ。
 アジャンにとって、シャオロンの真っ直ぐな気性は光であり……癒し――救いなのだ。
 そして、セレス。
 二人がどう動くかによって、アジャンの運命は変わる。
 闇に堕ちるか、光の使徒としてとどまるか……
 ケルティは、アジャンにとって忌むべき土地なのだ。
 彼は憎んでいる。
 ケルティにある全てのものを……
 そして、自分自身を……
 その凄まじい憎悪を、魔族が見逃すはずがない。大魔王四天王最後の魔――ゼグノスがケルティで待ち構えている以上……
(堕ちるなよ、赤毛の傭兵)
 打てるだけの手は打った。魔除けのペンダントも祝福の魔法も、多少は、魔を防いでくれるだろう。しかし、本人が光であり続ける事を望まなければ、何の効力もないアイテムになる。
 全ては、アジャン本人とシャオロンとセレス次第なのだ。
 だが、アジャンのセレスへの思いは屈折している。あの鈍いセレスに思いが通じるかどうか……
(やはり、頼りはシャオロンじゃな)
 アジャンの亡くなった弟によく似ている、素直な性格のシャオロン。カルヴェルが百万の策を弄するよりも、シャオロンの笑顔がアジャンの救いとなるだろう。
(わしのような邪な人間では、人を真に救う事はできぬ。頼んだぞ、シャオロン……)


「何か知らんが、クソ坊主、急用なんだと。で、今日一日、おまえの勉強もみてほしいと頼まれた」
 シベルア語の勉強を始めてから四日目……
 武闘僧ナーダは寺院の使いの者に呼ばれて出かけていった。
 やった――! 休める――! と、セレスが喜んだのも束の間、赤毛の傭兵がシャオロンを伴って教師として現れたのだ。
 予想通り……赤毛の傭兵は武闘僧以上の暴力教師だった。
「『私は勇者ラグヴェイの末裔、セレスと申します。偉大なる国王陛下におめもじかないまして、恐悦至極にございます』って言ってみろ」
「『ワタクシハ……ウシャ』」
「違う! 『ウシャ』じゃねえ! 『勇者』だ!」
「痛ぁい! ぽんぽん叩かないでよ!」
「殴られたくなきゃ覚えろ、もう一回!」
「『ワタクシハ……ウシャ』」
「違うって言ってるだろうが、馬鹿女!」
「痛い! いやぁ! もう、いやぁ! 臨時の先生ならジライにして! 暴力教師はもう嫌よ!」
「ジライさんはお部屋にいませんよ」
 と、シャオロン。赤毛の傭兵から命じられて、動詞の活用形の語尾変化をせっせとノートに書いている。
「情報収集に行ったんじゃないんですか?」
「そんな……」
「ナーダからおまえを甘やかすなと言われているんだ」
 アジャンはにやりと笑った。
「さあ、百っぺん言ってみろ! 『勇者』ってな!」


 ケルティに旅立つ前……
 いたって平和な女勇者とその仲間達だった…… 
『シャオロン奮戦す VSカルヴェル』 完。

《第二章 勇者として》完結です。

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次回は……

* 十八歳以上で男性の同性愛話でもOKという方 *
 ムーンライトノベルズの『女勇者セレス――夢シリーズ』をご覧ください。
 『夢の絆』。舞台はエウロペ。ナーダとジライの話です。

* 十八歳未満の方、男性の同性愛ものはパスという方 *
 このまま『小説家になろう』で。
 次回より《第三章 ケルティの闇と光》が始まります。

 最初の話は『極光の剣』。舞台はエウロペからケルティへ。 
 過去を思い出すまいと心を縛っていた赤毛の戦士アジャン。昔以上に黒く醜く歪んだ国を見て彼は……

+ + + + +

 第二章、おつきあいありがとうございました。
 ご感想等、いただけると嬉しいです。励みとなります。

 ムーンライトノベルズの『女勇者セレス――夢シリーズ』の話が続いてすみません。あちらも、『夢の絆』でひとくぎりがつきます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
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