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女勇者セレス 作者:松宮星

勇者として

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勇者の家 後日談 セレス&ジライ

 ヤンセンがウエスコ地方巡回裁判の旅に出発してから三日後……
 セレスは忍者ジライの捕獲に成功した。
 忍者は大胆にも、セレスの寝室に潜んでいたのだ。
 逃げられぬよう、忍者を麻縄でぐるぐる巻きに縛りあげ、床の上に正座させる。
 その前にたたずみ、セレスは、氷のごとく凍てついた表情で忍者を見下ろした。
「ジライ……正直におっしゃい。正直に答えたら許してあげるから。あなた、何でお父様のお部屋をめちゃくちゃに荒らしたの?」
 その問いに対し、覆面から覗く眼がへらぁ〜と笑う。
「実は、セレス様の為にパティを探しておりました」


 ぷっつんと、セレスの内側で何かが切れた。


「嘘つき!」
 セレスはジライの顎を蹴り飛ばした。で、相手が床に転がったところを、すかさず踏みつける。
「しかも、あなた、やっぱり覗いていたのね! あんな騒動を起こした後も、しょうこりもなく私につきまとってたんでしょ! 恥を知りなさい! この変態!」
「あああああああ」
 セレスは忍者の胸倉をつかみ、上半身を起こさせた。
「もう一回だけチャンスをあげる。良いわね、ジライ、ふざけないでちゃんと答えるのよ。あなた、何でお父様のお部屋を荒らしたの?」
「実は……」
「実は?」
 覆面から覗く眼がへらぁ〜と笑う。
「セレス様所縁(ゆかり)品物(グッズ)が無いものかと、セレス様のお父上様のお部屋を漁りに行きました。セレス様がどのような童女だったのか興味がございましたのでぇ~」


 ぷっつんと、再び、セレスの内側で何かが切れた。


「どーして、そーいう見え透いた嘘ばっかつくのよ!」
 ドカスカバキと殴られ蹴られまくるジライ。
 正直に答えたのに暴力を振るわれているわけだが、文句はなかった。女王様趣味の忍者にしてみれば、今回のお仕置きはふってわいたような幸運なのだ。


 セレスが疲れるまでいたぶってもらってから、ジライは用意しておいたもっともらしい嘘をついた。
「お父様が担当した裁判に、大魔王教徒が絡んでると思われる事件があった? え? それって本当?」
「は。半年前に一件、あやしき事件がござりまする。まだ裏が取れていないのでお話できる段階ではございませぬ故、秘密にしていたのですが」
「そうだったの……ごめんなさい、ジライ。あなた、私の為に調査してくれていたのに、私ったら」
「いいえ。私もやり過ぎましたので、セレス様のお怒りもごもっともです。裁判記録を求めて部屋に忍び込んだところ、セレス様の御名が記された箱などがございましたので、何が入っているのかつい好奇心に負け……」
「もういいわ」
 セレスはフーッと息を吐いた。
「あなたのおかげで、パティと再会できたのですものね。でも、ちゃんと、お父様にお詫びの手紙を書いてよ」
「は。心得ました」
 セレスは忍者の体中に巻きつけた縄を解いてやろうとした。が、絡まっていてなかなか外れない。セレスが縄と悪戦苦闘している間、ジライの顔はセレスの寝台の傍のサイドテーブルに向いていた。その上に飾られているペン画を見ているのだ、女勇者一行の絵を。
「アレ、ナーダが描いてくれたのよ」
「存じております。あやつが描いている所は、屋根裏より覗いておりましたから」
「ん、もう! あなたって、そればっかりなんだから!」
 ジライはずっと女勇者一行の絵を見続けている。
「気に入ったのなら、ナーダに頼んで同じものを描いてもらうといいわ。すぐに描いてくれるわよ」
「いえ。要りませぬ」
 ジライがあまりにもきっぱりと答えるので、不思議に思って、セレスは忍者の顔を覗き込んだ。
「どうして? あの絵、好きじゃないの?」
「……私めは忍にござりますれば」
 ジライはにっこりと微笑んだ。
「無くしたくない物は持たぬようにしておるのです。大切な物を失うと、平常心を損ねますゆえ」
「……ジライ」
 覆面から見える目元は非常ににこやかなのだが、セレスにはそれがとても悲しそうに見えた。セレスの目の前で、ジライは大切な仲間を何人も失っている……
 セレスは力強く言った。
「……わかったわ! ナーダに、これと同じ絵、あなた用にも描いてもらう!」
「は?」
「だけど、あなたは忍。お仕事に熱中するあまり、絵をなくすかも知れない。だから……」
 セレスはジライの両肩を掴んだ。
「あなたの絵、私が預かっておいてあげる!」
「……セレス様」
「この額縁にあなた用の絵も重ねて一緒に入れておくわ。私、コレ、旅先にも持って行くから、見たくなったらいつでも言って。あなたの絵をすぐに見せてあげる!」
「………」
 しばらくセレスの顔を見つめてから、忍者はかたじけのうございます、と、深々と頭を下げた。
 その声は、とても嬉しそうだった……


「それはそうとセレス様、縄はまだ解けませんか?」
 セレスは麻縄と格闘し続けていた。絡まって、あっちこっちにたくさんコマができている。
 ナイフで切った方が早そうだった…… 
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