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女勇者セレス 作者:松宮星

迷走する世界の中で

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彼女の混乱

この章の話は、完全な番外編です。
今までの話を踏まえていますが、ストーリー上はまったく関係がありません。

何でこんな話が生まれたかというと、『女勇者セレス』には萌え要素が少ないという指摘が昨年の七月にあったからです。

萌え要素満載の話に作り直したらどうなるか? と思いつきを口にするKさんと、私とのせめぎあいの結果(異世界転生ものにしろとか、ほとんどのリクエストは無理)が、この話です。
 扉を開けた瞬間、目の前がまっ白となった……


 めまいを感じて倒れかけた私を、背後からジライが支えてくれる。
 室内にいたシャオロンも、急いで駆けつけてくれた。
 アジャンはテーブルに頬づえをついて、私をフンと鼻で笑っている。
 壁の前にたたずむナーダは、両手を組み、冷めた顔で私を見つめている。


 いつも通り……
 いつも通りの仲間……


 でも……


「どうしちゃったのよ、あなた達!」


 震える指で、私は仲間を指さした。


「どうもこうもない」
 アジャンが、チッと舌うちをした。
「設定変更だ」
「設定変更……?」
「作中に『萌え』要素を取り入れるそうだ」
「『萌え』……?」


「読み手へのサービスですよ」
 ナーダが溜息をつき、右手で黒く長い髪を掻き上げた。
「ひらたく言えば、大衆受けするよう我々の設定を変更し、多くの読み手に迎合しようという事ですね」
「読者サービスなの……? これが?」
「サービスでしょ」
 嫌そうにナーダが言う。
「この程度の変更では、あまり影響はないと思うのですがね」


「セレス様、オレ、頑張ります」
 思わず抱きしめたくなるような格好のシャオロンが、グッと拳を握りしめる。
「受け入れるまで、ちょっと時間がかかりました……でも、こうなった以上、仕方ありません! やるからには とことんやりましょう!」
「とことんって、あなた……」
「トップを目指しましょう!」
 シャオロンの目は、熱く燃えていた。


「私といたしまては、今まで通りセレス様にお仕えできれば、何の不満もございませぬ」
 ジライが背後から、耳にフッと息をふきかけてくる。
「やめろって、いつも言ってるでしょ!」
 ふりむきざまに、一発ぶん殴ってやろうとして……
 私の動きは止まった。
 手が……動かない……
 ジライの頬の前で、私の右手はピタリと止まっていた。
 ジライが猫のようにニッと笑い、ぴた〜と私にすり寄ってくる。
「やはり殴れなくなりましたな……さすがセレス様、騎士道精神旺盛にございますな」
「ちょっ! やめて! くっつかないで! 気持ち悪い! いやぁ!」


「ホホホホ。なかなか愉快な事になっておるのぉ」
 移動魔法で現れ、宙に浮かんでいるのは……お師匠様みたいだけれど……
「何なんですか、その姿は……」
 私は背後からジライに抱きつかれたまま、空中浮遊で漂っている人物を見上げた。
 いつも通りの黒のローブに、魔法使いの杖。けれども、きらめくような白銀の長髪が宙に広がっている。
 お師匠様は、皺ひとつないすべすべの肌の、とてもとても綺麗な二十代ぐらいの女性になっていた……
「それって変化(へんげ)の魔法ではないですよね……?」
「うむ」
 黒のローブの上からでもわかるなかなか豊かなふくらみを強調するかのように、お師匠様が胸をそらせる。
「年齢不詳の美女という設定になった」
 えっへんと、お師匠様が得意そうにおっしゃる。
「ジジイ言葉をしゃべる美女というのは、なかなかの萌え設定らしいぞ、知っとったか?」
「知りません」
 けっこうノリノリなお師匠様から視線をそらし、私は溜息をついた。


「くそぉ……後家殺しなら良かったが……」
 アジャンは、頭を抱え、ブツブツと呟いていた。
「どうなるんだ、俺の設定……野郎なんざ御免だが、同性愛は一族の禁忌。いや、そもそも、喰っちゃ寝では、まちがいなくすぐに……」
 アジャンが髪の毛をかきむしる。
 とても見事な赤い髪。
 凹凸のはっきりした、とても見事なプロポーション。
 身にまとっているのは、鉄ビキニのような真っ赤な鎧。おなかも背中も丸だし……。防御力なさそうだし、お腹を壊しそうだけど、ああいうのが『受ける』わけ?
「良いんじゃなんですか、品行方正な生活を送れば。腹ボテで一行を離脱なんて、嫌でしょ?」 
 アジャンがキッ! と、ナーダを睨む。
「うるせぇ、クソ坊主! しゃべるな! こっち向くな! 気色悪くなりやがって!」


「仕方ないでしょ、あのまま女性化したら、ごく一部のマニアにしか受けませんもの」
 そう言ってため息をついたナーダは、女性にしてはとても大柄ではあるけれども……アジャン以上に大きな胸に豊かなお尻の、すごい悩殺ボディだった。
 その上、顔がぜんぜん、違う。糸目ではない。艶っぽい美人で、『魔法使いナーダ』様によく似ている。髪の毛も腰まであるし……
 僧衣も変。くるぶしまでの薄絹になっている。肌にぴったりとしてて、とてもHっぽい。何故か、杖まで持っている。
「インディラ教の設定からして見直しで、私、武闘僧ですらないんです。格闘ではなく、魔法と杖で戦うそうです……戦力ダウンですよね」


「御身様」
 フッと現れたのはガルバさん……
 て、あれ?
「ガルバさんは……今まで通り?」
「はあ」
 恐縮したように、インディラ忍者装束のガルバさんが兜で覆った頭を掻く。
「絵的に『忠義の老くノ一』より『忠義の老忍者』の方が美しいので、今まで通りで良い事になりまして」
「それに、ナラカとの身分差ラブ・ストーリー話も加えられるし、の」
 ホホホと笑うお師匠様。ガルバさんが慌てて、首をぶんぶんと横に振る。
「とんでもない! そのような恐れ多い関係ではございません! 私は忠義をもって、ただお仕えして」
「ガルバ……あなた、行きたかったら、伯母上のもとへ行って構いませんよ。私のことなど気にせず、心のおもむくままに、さっさと行ったらどうです?」
 ツーンとそっぽを向くナーダ。
 とりつくしまもないナーダに、とりすがるガルバさん。
 いつも通りの光景ではあるのだけれども……


 ジライが、スリスリと頭をこすりつけてくる……
 あぁ〜〜〜〜もう! 女性だから殴るわけにはいかないし!
「いい加減にしてよ、H! 変態! ちょっとはこの異常な状況に悩んだら、どうなの? あなた、神経おかしいわ! まともじゃないわよ!」
 ジライが、ぽわんと頬を染める。
「殴れない分、いつもより言葉責めに熱が入りますな……」
 何なのよ、その嬉しそうな顔は……
 というか、いいわけ? 覆面、外しちゃって。
 肩を過ぎる黒髪、忍としてどうかと思うほどお化粧の濃い顔、そして……素肌に鎖帷子、ミニスカの胴衣。手甲と脚絆は付けているけど、太腿がモロ見え。袴を履きなさいよ……
「読者サービスにございます、セレス様」
 うっふんと妖しく微笑むジライ……心臓に悪いほど色っぽいんだけど……
「サービスするほど胸ないじゃない、あなた……」
 と、つっこんだら、どうも、ジライのツボを刺激してしまったようだ。
「ああああああ、さすがセレス様! 貧乳に対して容赦がない! ですが、セレス様、世の中にはこのあるかないかの微かな胸に興奮を覚える男性もおりまして」
 うるさいから、もう話しかけるのやめておこう……


「セレス様、オレ……」
 はしっ! と、シャオロンに手を握られる。
「こんなオレじゃ、父さんから見捨てられてもしょうがないですけど……」
 つぶらな瞳、ふっくらとした頬、桜色のかわいらしい唇。シャオロンは完璧な美少女だった。
 身にまとっているのは道着ではない。いかにもな少女趣味の、ふわふわのレースのドレス。今のシャオロンにはぴったりだ。お人形みたいで可愛い。
「でも、オレ……」
 うるうると目をうるませて、シャオロンが私を見つめる。
「嬉しいです……」
「嬉しい……?」
 シャオロンは大きく頷いた。
「アジャンさんと、ジライさんが脱落した今……オレだけです。オレだけがセレス様の恋人になれるんです!」
 そのままガバッ! と、シャオロンが抱きついてくる。
「お慕いしてました、セレス様! オレとつきあってください!」
 ちょっ!
 背後からジライ、前からシャオロンって!
「落ち着いて、シャオロン! あなた、今、女の子なのよ!」
「いいえ!」
 強い口調で、シャオロンが否定する。
「オレ、性別そのままです。女装っ子って設定なので……いわゆる『男の()』です」


「は?」


 頭がまっしろ……


「……こんな日がくるなんて、私もまったく夢想だにしてなかったのですが」
 シャオロンとジライに抱きつかれて硬直している私。そのすぐそばに、ナーダがたたずんでいた。
 ナーダが、重苦しいほどの溜息をついた。
「新しい設定に基づいての事ですし……甚だ遺憾ではありますが……仕方ありませんよねえ」
 くいっと、顎を持ちあげられる。
 目の前にナーダのアップ。
「かわいいですよ、セレス。あなたを愛しく思える日がくるとはね。今の私には、あなたがとても魅力的に見えます……」
 顔、近い!
 なに、その、無駄なまでに過剰な色気!
 もしかして、このナーダってレ●?
 近い、近い、唇、近い!


「いやぁ! もう、何、これ!」
 どうにか三人をひきはがし、肩で息をしている私……


 お師匠様がホホホといつも通りに、でも、すごく華やかに、女性らしく笑う。
「実はの、セレス。性別逆転という事での」
 悪戯っぽくお師匠様がおっしゃる。
「おぬしの性別も逆転させてはどうかという案もあるのじゃ」


「は?」


 にんまりと、お師匠様が笑う。
「美少年セレスの美女ハーレム話よ。そっちもいってみるかの?」


 急に私の意識は遠のいていった……
 時が流れたおかげで、猫耳ではなく男の娘になりました、シャオロン。良かった……かどうかは微妙。

 すみません、次回、セレス美少年+今回のメンバー(シャオロンを除く)でいきます。
 アジャン=男好きのアマゾネス。鉄ビキニの鎧。
 ナーダ=黒髪、大柄なお姉様僧侶、男嫌いのレ●。
 シャオロン=男の娘じゃセレスとCPになれないので、美少女で。
 ジライ=両刀のくノ一。白子はカツラとお化粧で隠しています。
 カルヴェル=年齢不詳の妖しい女大魔法使い。
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