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女勇者セレス 作者:松宮星

剣と仲間と

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あなたがいれば 《ナーダ》

 ナーダ様は『じきだいそーじょーこうほ』で、とても身分の高いインディラ僧です。オレの隣村のお坊さんも『ごそんがんをはいえつし、きょうえくしごく』って感激してたし、ペクンのお坊様も『ほんらいなら、しもじものものとは、まじわるきかいすらない、たっといおかた』なんだって教えてくだすったし………
 えっと………すっごく偉いみたいです!


 ペクンでは、ナーダ様のお供の役をしてインディラ寺院に行きました。すごく大きな建物がいっぱいあって、神像もいっぱいあって、お香が焚かれていました。隣村の寺院もけっこう大きいと思ってたんだけど、ペクンのは比べらんないほど大きくて、お坊様がいっぱいいました。みんな、ナーダ様に拝礼するんで、びっくりしました。


 ナーダ様は、とても物知りで、いろいろためになる事を教えてくださいます。
 それに、格闘技も手取り足取り教えてくださいます。ナーダ様は兄さん達より、ずっとずっとお強いです。もしかしたら、父さんと同じくらいお強いのかも。武闘の型がぜんぜん違うので、はっきりとはわからないけれど。





 野宿の、焚き火を囲んでの、さびしい夕食の時間のことだった。


「旅に出た理由?」
 と、尋ね返すセレスに、シャオロンはにっこりと笑みを見せた。
「はい。ぜひ、みなさんのお話をうかがいたいんです」
「私はもちろん世直しの為よ。でも………」
 セレスはちらりと視線を赤毛の傭兵に向けた。その視線を感じながら、アジャンはフンと鼻を鳴らし、
「金と名声の為だ」
 と、虚飾なく、きっぱりと答える。
 そう言われても、シャオロンはショックを受けた様子もなく、そうなんですかと、にこにこと笑っている。どうも少年は傭兵の言葉を額面通りに受け取らず、頭の中で好意的に解釈し直して理解しているようにみうけられる。
「ナーダ様は?」
「私も世直しの為ですね」
 と、武闘僧が答えると、女勇者と赤毛の戦士が驚いてぎょっと目を丸める。
「え?そうだったの?」
「見栄をはるなよ、クソ坊主」
「見栄なんてはってませんよ」
 乾燥しきった固いパンを食べながら、武闘僧は言葉を続けた。
「中庸の精神を貴ぶ私達インディラ僧には、この世の均衡を崩す魔族は忌むべきもの、滅ぼすべきものなのです。セレスの従者とならなければ、私はインディラで魔族と戦ってましたよ」
「ふぅん」と、セレス。
「でも、じゃ、どうして、あなた、従者になったの?従者にならなくても戦えるのなら、無理に私に付き合わなくても良かったんじゃないの?」
「初対面の時に『勇者の従者になんかなりたくなかった』って言いきってたもんな、おまえ」と、アジャン。
「ええ、そうなんですよ」
 ふーっと、ナーダは溜息をついた。
「できればインディラで大僧正様の下にずっといたかったのですが………私、優秀すぎるもので………」
「は?」
「大僧正様から勇者の従者になるよう、直にご命令をいただいてしまったのです。勇者の従者になるのは最も力のある修行僧に課せられる使命………ある種の名誉職なんです。始祖バラシンの昔から、勇者の傍らには必ずインディラ僧が居ました。勇者の従者となるのは、インディラ僧侶の由緒正しい伝統。だから、大僧正候補という身分の高さに加え、学問も魔法も武術も容姿も性格も申し分のない私が選ばれてしまったというわけです」
「………」
「ああああ、もっと何事にも手を抜いておくんだった!大僧正様からお褒めのお言葉をいただきたい一心で、学問も武術も全力を尽くしすぎたが為に、大僧正様のお膝元を離され、こんなドサ回りの境遇に堕とされようとは!」
「………悪かったわね。私ごとき女の従者になんかなっていただいて」
 セレスはプンプン怒りながら、干し肉を口にした。
「それじゃあ、ナーダ様は、今、ご不幸なんですか?」
 しょぼんとした顔で、シャオロンが尋ねる。
「オレ、ナーダ様にいろいろ教えてもらえて、とても嬉しく思っていたんですけど………ナーダ様にとって旅が嫌なものならば、オレなんかといるのも」
「あ、いや、それは、そのぉ」
 武闘僧はうろたえた。
「嫌々、始めた旅ではありますが………寺院にいてはできない経験もできましたし………そのぉ、今ではあなた方と一緒に見聞を広めるのも悪くないかと思っていますよ」
「本当ですか?」
 少年の顔がパッと輝く。
「はい」
「良かった!オレ、セレス様もナーダ様もアジャンさんも大好きです!みなさんと旅ができて本当に幸せです!」
 シャオロンがそう言うと、セレスとナーダは微笑み、ひねくれ者の傭兵でさえ口元を微かに緩めるのだった。
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